転職が一般化し人材流動性が高まりつつある中で、自社が取るべき採用施策に頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。流動性の高い市場での採用手法を考える際には、人材の流動性とは何か、また、背景には何があるのかを把握することがおすすめです。
この記事では、人材流動性とはどういうことを指すのか、また、その背景やメリット・デメリット、人材流動化の中で自社の採用力を高める方法について解説します。
人材流動性とは?
人材流動性とは、一人の人材が一つの企業で働き続けるのではなく、転職などを通じて企業間を行き来し、それによって雇用が活性化することを意味します。
従来の日本の企業では、新卒一括採用や終身雇用といった体制のもとで入社から定年まで1つの会社にとどまる傾向が強く、世界的に見ても人材の流動性が低いとされていました。
しかし、近年、終身雇用といった仕組みにほころびが見え始めたことやインターネットの普及やデジタル技術もあり、人々の価値観や働き方が変化してきました。1ヶ所で長く働き続けるよりも転職を希望する人が増えてきたといえます。
これにより、人材流動性が高まっているといわれています。
日本で人材の流動化が注目されている理由
日本で人材の流動性が注目されている理由としては、主に次の3つが挙げられます。
- 「転職」に対する意識の変化
- 「就労」に対する意識の変化
- 転職成功事例の可視化
以下で具体的な内容について解説します。
1. 「転職」に対する意識の変化
一つ目は転職に対する意識の変化といえるでしょう。
かつては、新卒一括採用を行い定年まで1社で働くという終身雇用が当たり前で、転職は一般的ではなく、ネガティブなイメージで捉えられることが少なくありませんでした。しかし、現在は転職への悪いイメージが払拭され、魅力的な選択肢としての認識が広まっています。
例えば、パーソル総合研究所の2022年調査によると、転職のイメージについて「積極的にしていく方が良いことだ」とする20代前半の社員は78%います。2019年の64%から3年連続で増加していることを考慮しても、若手層で転職が年々ポジティブに捉えられていることが分かります。
転職が肯定的に捉えられ一般的になりつつあることが、人材の流動性への注目度を高めているといえるでしょう。
※出典:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」
2. 「就労」に対する意識の変化
就労に対する意識の変化も、人材の流動性が注目される理由の一つです。
年々、働くことに対する意識や優先順位は変化しているといえるでしょう。
例えば、パーソル総合研究所の2022年調査によると、「好きな時間に働きたい」「好きな場所で働きたい」といった自由な働き方を希望する20代・30代が、2017年以降増加しています。特に20代前半で自由な働き方を希望する人が多く、「好きな時間に働きたい」とする人が約52%、「好きな場所で働きたい」とする人が約44%と多くいます。
こうした意識の変化に合わせて、就労先企業の選び方も変わってきており、就労意識の変化に合わせた人材の流動に注目が集まっています。
※出典:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」
3. 転職成功事例の可視化
転職成功事例が可視化されて転職希望者が増えていることも、人材の流動性が注目される理由の1つといえます。
現在はSNSの発達により、情報の共有がしやすくなりました。日本におけるSNS利用者は年々増加しており、2022年末には8,270万人で普及率は82%にも達するといわれています。
SNSの普及で、転職による年収アップ、キャリアアップなどの成功事例が広くシェアされるようになりました。こうした情報を見て、転職を希望する人も増え、人材の流動化を進めているといえるでしょう。
転職の成功例や事情の共有が進むことは、人材の流動性が高まる要因にもなり、流動性が注目される理由となっています。
※出典:株式会社 ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」
人材流動性が高まるメリット
人材の流動性が高まることにはメリットがあります。具体的に挙げると次の4点です。
- 即戦力の人材を採用できる
- 新人を育成するコストを削減できる
- 短期間で人材採用しやすくなる
- 社外のスキルやノウハウを知れる
以下で詳しく紹介します。
1. 即戦力の人材を採用できる
1つ目は即戦力の人材を採用できることです。人材の流動性が高まると、即、自社で役立つ専門知識やスキルを持った人材の中途採用がしやすくなります。
例えば、新規事業を立ち上げる際などで、自社が持たない専門知識やスキルが必要となった場合に、外部から必要な知識やスキルを持った人材を採用しやすくなるといえるでしょう。また、既存事業を拡大する場合や、自社に欠員が出た場合などでも、自社の既存社員と同等の知識やスキルを持つ人材を、外部から調達しやすくなります。
即戦力となる人材が採用できる点が、人材の流動化が進むことのメリットといえます。
2. 新人を育成するコストを削減できる
新人を育成するコストを削減できることも、人材の流動性が高まることのメリットといえます。
人材の流動化が進むと、即戦力を外部から採用できるため、自社で人材を育成する必要がなくなります。人材育成の必要がなくなる分、コストを削減することが可能です。また、社会人の長い人材を採用すれば、新人育成のためのビジネスマナー研修などは不要になります。同業他社から人材を採用すれば、業界専門知識やスキルを磨くための研修も不要といえるでしょう。
人材の流動性が高まると、そうした人材を育成する手間や費用を軽減できることが利点といえます。
3. 短期間で人材採用しやすくなる
短期間で人材採用しやすくなる点も、人材の流動性の高まりから得られるメリットです。
流動性が高まったことにより、転職のハードルが下がり、以前よりも転職を考える人も増えたといえるでしょう。そのため、以前は中途採用の募集をしてもなかなか人材が集まらなかったのが、人が集まるようになり、採用も短期間で行なえています。
また、人材の流動化で中途採用がしやすくなったことにより、人材の確保を年に1度の新卒採用にこだわらず、通年での中途採用で対応できるようにもなりました。そうした意味でも、短期間での採用がしやすくなっているといえるでしょう。
4. 社外のスキルやノウハウを知れる
人材の流動性の高まりで中途採用がしやすくなったことにより、社外のスキルやノウハウを知れるようになったこともメリットです。
同業種でも異業種の人材でも、自社にはない知識を持っていたり、自社では積めない経験を積んでいたりします。外部からそうした人材を採用することで、自社では保有していなかった考え方やノウハウなどをもたらしてもらえます。
外部から採用した人材の新しい視点により、変革を起こしたり、革新的なアイデアを生みだしたりすることが期待できます。
人材流動性が高まるデメリット・課題
人材流動性が高まることにはデメリットや課題もあります。具体的には下記の4点です。
- 若手社員が育てづらくなる
- 自社の方針に馴染めない可能性がある
- 採用コストが上がりやすい
- 定着・リテンションコストが上がりやすい
以下で詳しく解説します。
1. 若手社員が育てづらくなる
若手社員が育てづらくなる点が、人材流動性が高まることのデメリットとして挙げられます。
流動性が高い中では、若手の人材を長期間かけて育成したとしても、離職されてしまう可能性があります。自社のノウハウをしっかりと身に着けてもらいたい企業にとっては、人材を育てにくい環境といえるでしょう。
また、中途採用の即戦力に頼ってばかりいると、自社内の若手社員の成長機会を奪うことにもつながり、若手社員が育ちにくいともいえます。
2 .自社の方針に馴染めない可能性がある
採用された人材が自社の方針に馴染めない可能性がある点も、人材の流動化が進むことのデメリットです。
流動化で中途採用がしやすくなる反面、他社で長期間働いていた人材は、他社での仕事の進め方に慣れており、自社の方針に馴染めないことも少なくありません。方針に馴染めない場合は、仕事のパフォーマンスの低下やモチベーションの低下につながることもあります。会社が合わないとなると短期間で離職してしまう可能性も否定できません。
人材を中途採用する際には、自社の方針に合うかどうかも見極める必要があるといえるでしょう。
3. 採用コストが上がりやすい
採用コストが上がりやすい点も、人材流動性の高まりから生じるデメリットです。
人材の流動性が高まると、自社の人材の流出・流入の頻度が増えるといえるでしょう。離職が増えると採用が増え、採用の際には、人材紹介や採用アウトソーシングの費用、社内の面接人件費などがかかります。
また、せっかく採用できたとしても、自社の方針や価値観と合わないといって早期離職をされると、それまでかけてきた採用コストも無駄になってしまいます。また、さらに欠員補充のための新たな採用コストも発生します。
流動性が高まると、このように採用コストが上がりやすいのが課題といえるでしょう。
4. 定着・リテンションコストが上がりやすい
社内の人材に自社にとどまってもらうための定着・リテンションコストが上がりやすいことも人材流動性の高まりに起因するデメリットです。
リテンションコストとは人材流出防止のためにかかる費用のことです。流動性の高まりで人材が確保しやすくなった反面、人材が流出しやすい危険性もあります。人材の流出を防ぐために給与や福利厚生といった待遇をよくする施策がとられることが少なくありません。
人材を定着させ流出を防ぐためには、待遇改善などの費用がかかりやすくなります。
人材流動化のなかで自社採用力を高める方法
人材流動化が進む中で、自社の採用力を高めるにはどうすればいいか、その方法について紹介します。
- 自社に合った採用手法を選択する
- SNSなど転職潜在層へのアプローチを強化する
- 労働条件や職場環境を時代に合わせる
- 自社事業の価値を見直し改善する
詳しくは次の通りです。
1. 自社に合った採用手法を選択する
採用力を高めるには自社に合った採用手法を選択することが大切です。
例えば、有名企業であれば、大手転職サイトに求人を掲載することで多くの応募者を集められますが、知名度のない企業が同じことをしてもなかなか応募者が得られないといえます。また、大手転職サイトで応募者を募るには多大な費用もかかります。
また、専門職の人材を募集するのに、一般的な大手転職サイトを利用することも効率が悪いといえるでしょう。
予算がない場合は、社員から知人を紹介してもらうリファラル採用を使う、専門職の人材を募集するには専門職特化型サイトやヘッドハンティングを利用するなどの工夫が必要です。効果的に採用を進めるためにも自社の求める人物像、知名度、予算などに合った採用手法を選択しましょう。
2. SNSなど転職潜在層へのアプローチを強化する
転職希望者だけでなく転職潜在層にSNSなどでアプローチすることも、効果的な採用手法です。
現在転職のニーズを感じていない転職潜在層でも、今後、転職をしたいという転職顕在層に変わる可能性は十分あります。早いうちから、SNSを活用してそうした潜在層に企業のトピックス・サービス・イベント情報などを発信し、ファンとなってもらうことがおすすめです。その後、転職顕在層となった際に自社を検討してもらえるでしょう。
年代問わずSNSを利用する人々が増えているため、SNSでのアプローチは、新卒採用だけでなく中途採用においても効果的といえます。
3. 労働条件や職場環境を時代に合わせる
労働条件や職場環境を時代に合わせることも、採用効果を高める手段として大切です。
採用手法や求職者へのアプローチを工夫しても、自社の労働条件や職場環境が魅力的でなければ、転職を希望してもらうことができません。また、入社したとしても、定着せずに早期に離職してしまう可能性もあります。
そのため、現代の多様化した働き方に合わせて労働条件や職場環境を見直すなど、時代に合わせることが採用を成功させる上で重要です。
4. 自社事業の価値を見直し改善する
自社の事業が社会にどのような価値を提供しているか見直し、改善することも大切です。
昨今は、仕事選びに際して、「仕事を通じて他者に貢献できること」を重視する若者が増えています。例えば、株式会社学情の調査によると、「仕事選びにおいて、社会課題の解決に貢献できるかを意識するか」との問いに「意識する」と回答した学生が7割以上でした。
就職・転職先選びにおいて他者への貢献実感が得られるなど精神的な充実を求める労働者が増えているため、自社の事業が誰にどのような価値を提供しているのか、改めて見直すことも重要といえるでしょう。
※出典:株式会社学情、「あさがくナビ2025(ダイレクトリクルーティングサイト会員数No.1)」へのサイト来訪者へのアンケート調査。
人材流動性が高い社会にあった採用施策を実施しよう
人材流動性が高まる中で、採用に成功するためには、「転職」や「就労」についての意識の変化を理解し、社会に合った採用施策を実施することが大切です。
具体的には、自社の求める人物像や知名度、予算に合った採用手法を採用することや、SNSで転職潜在層へアプローチすることなどが挙げられます。他にも労働条件や職場環境を時代に即したものに変えることや、自社の事業価値の見直しや改善も必要といえるでしょう。
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