人材不足とは、企業で活躍できる人がいない状態を指します。昨今においてさけばれる「人手不足」と同様に、企業担当者を悩ませる問題です。活躍できる人材がいなければ、生産性の低下はもちろんのこと、企業の成長を阻害してしまうでしょう。
当記事では、人材不足の解消法をはじめ、日本が人材不足に直面する原因を解説します。人材不足を解消し、企業の持続的発展を目指したい担当者様はぜひ参考にしてください。
人材不足とは
人材不足とは、企業が求めるスキルや能力を保持する人材が不足している状態を指します。
たとえ100人の人材がいても、必要なスキル・能力をもつ人が皆無であれば、人材不足状態だといえます。
一方「人手不足」は、労働者そのものが足りない状態です。サッカーを例に挙げると、人材不足はチームに11名以上が存在するものの、得点を決められる選手がいない状況を指します。一方で人手不足は、サッカーチームに在籍するメンバー自体が11名に満たない状況です。
日本の人材不足に関する現状
人材不足の解消を考えるには、日本の人材不足に関する現状を知る必要があります。
ここでは、「人材不足に悩む企業の状況・原因」および「人材不足が顕著な業界」について解説します。
人材不足を問題と考える日本企業の割合
人材不足の問題を考える際に、そもそもの人手が不足していれば、人材不足になる可能性も高まるでしょう。
日本では以下の通り、人手不足に悩む企業の割合が「2009年」から増加傾向にあります。
図の引用元:帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査
2020年~2022年にかけて「新型コロナウイルスによる消費の冷え込み」によって、人手不足は一時的に緩和されました。その後、アフターコロナに向けて消費が回復し、2023年時点では再び人手不足が顕著になっています。
日本が直面する人材不足の原因
日本が直面する人材不足の原因とは、どういったものなのでしょうか?
主な原因とされる内容は、以下の通りです。
労働力人口の減少
日本では少子高齢化がすすんでおり、この先も続く見通しです。少子高齢化がすすめば、働き盛りである「生産年齢人口(一般的に15歳~64歳が該当)」が減少します。労働力人口が減少すれば、働ける人の母数が減るため、活躍できる人材も比例して不足します。
需要・供給の不一致
求職者が希望する業界・職種と、人材不足の業界・職種が一致しない点も、人材不足における要因の1つです。たとえば事務職は人気の職業であり、応募が多い傾向にあります。一方で建設や介護関係などの仕事は「肉体労働」や「給与が割りに合わない」といった傾向にあり、応募者が少なく常に人手不足です。
DX化の遅れ
DX化とは、ITツールや情報技術を駆使し、業務効率を高める動きのことです。DX化が加速すれば業務の生産効率が高まるため、効率的に仕事をすすめられるでしょう。企業全体が効率的に仕事をすすめられるようになれば、人手不足や人材不足であっても、少ない人材で仕事をまわせられるようになります。
しかし昨今の日本では、「IT人材やDXの主導者が不足」「属人化した古いシステムの刷新が遅れる」などの背景から、DX化が遅れています。
人材不足が顕著な業界・業種
人材不足が顕著な業界・業種では、人材不足の解消が思うようにすすまず、担当者が頭を抱えるケースも多いでしょう。以下のような業界・業種は、人材不足が顕著な傾向にあります。
IT業界(エンジニア・SEなど)
エンジニア・SEといったIT業界の人材は、常に不足しています。経済産業省のデータによると、2030年には約79万人のIT人材が不足する見込みです。
図の引用元:経済産業省
IT業界の人材不足の背景には、IT需要の拡大が挙げられます。目まぐるしく拡大するIT業界では、IT人材の需要が伸び続けています。しかし労働人口が減少する昨今において、需要増を補うだけの人材を充当できないのが現状です。
またIT技術は進歩し続けており、クラウド・ソーシャル・IoTなどの技術拡大に対応できるIT人材が慢性的に不足する点も、IT業界の人材不足に拍車をかけています。
福祉業界(介護職)
福祉業界も慢性的な人手不足であり、今後も人手不足が深刻化する恐れもあるでしょう。
経済産業省のデータによると、2019年には需要と供給がほぼ一致していたものの、2023年時点では約22万人の介護職員が不足しています。2040年には約69万人もの介護職員が不足すると予想されます。
図の引用元:厚生労働省
福祉業界における人手不足の原因を語るうえで、少子高齢化の話は避けられません。少子高齢化によって高齢者が増えれば、介護を必要とする人が増加します。一方で、子どもの減少によって労働人口も減っており、高齢者を介護する人が不足しています。また重労働かつ労働に見合わない賃金も、福祉業界の人手不足を加速させる要因です。
医療業界(看護師・医師など)
看護師や医師といった医療業界の人材不足は深刻化しており、採用に苦戦する医療機関は多く見受けられます。医療業界では夜勤や変則的なシフトをはじめ、休憩中もナースコールや急患への対応が必要など、常に緊張を強いられます。また人の命に関わる仕事であり、ほかの業界よりも責任が重くのしかかるでしょう。
ストレス過多な環境下であるため、離職者も多く慢性的な人手不足が続いています。慢性的な人手不足の環境下では「能力開発の効率化」も難しく、非効率的な環境で医療を提供し続けるケースも見受けられます。
建設業(施工管理者・職人など)
建設業における人材不足も顕著です。背景には建設業全体の高齢化が挙げられます。建設業は「長時間労働できつい」「危険を伴う」といったイメージから若者離れがすすんでいます。
建設業の人材不足には、給与水準の低さも挙げられるでしょう。とくに現場の作業員に対する給与水準は低く、経験やスキルがない未経験者は給料が低くなりがちです。日給制を採択する企業も多く、悪天候や作業停止になればその分の給与は支払われません。
また「災害対策による公共工事」や「建物の老朽化対策」などで建設業界の需要が増えている点も、人材不足を助長させる要因です。
製造業(生産技術・製造技術など)
ものづくりに携わる製造業も、人材不足の傾向にあることが特徴です。製造業には、いわゆる3Kである「きつい・汚い・危険」のイメージが先行しており、若者の応募意欲を阻害することがあります。
実際に24時間体制の現場もあり、きついシフトを組まれるケースもあるでしょう。また、機械を扱う関係上、ケガをする可能性もあります。負のイメージや実際にきつい環境であることから、若い世代の求職者が集まりにくい点も、人材不足につながっています。
人材不足が企業にもたらす影響
人材不足は企業にどういった影響をもたらすのでしょうか。考えられる主な影響を見ていきましょう。
離職者数の増加
人材が不足すると、2人分の仕事を1人が担当するなど、各自への業務量や責任が増えます。業務時間内の対応が難しく、残業せざるを得ないケースもあるでしょう。
人がいないため、有給休暇を取得しにくい環境になることも予想できます。「残業時間の増加」や「休暇の取得数が減る」と従業員のモチベーション低下を招き、離職者の増加につながります。
採用活動の効率低下
採用活動に従事する人材が不足すれば、採用業務の効率性が低下するでしょう。採用に知見のない者が採用活動を実施すると、採用のミスマッチが生じやすく、再び採用活動を行なう可能性があるでしょう。人材不足から焦りが生じれば、自社が求める人物を採用しにくくなることも考えられます。
また採用活動には「採用担当者が費やす時間的なコスト」と、採用媒体などに支払う「金銭的なコスト」がかかります。多くのコストが発生するほど、採用活動の効率性は低下するでしょう。
倒産
人材が不足すると、商品やサービスの提供に必要な人員が不足します。一定のクォリティを保持できなければ、事業規模を縮小せざるを得ないでしょう。事業規模が縮小すれば、一般的に売り上げが下がります。
また人材不足であるため、社内教育に人員を割けず、教育環境や職場環境の悪化が懸念されます。事業規模を縮小し、満足いく教育環境や職場環境を提供できなければ、最悪の場合には倒産の可能性も否定できません。
企業で対策可能な人材不足問題の解決策
人材不足問題は企業に与えるデメリットも大きく、そのまま放置することは危険だといえます。ここでは、企業で対策可能な「人材不足問題の解決策」を紹介します。
採用活動の見直し
採用活動を見直し、「再雇用者」「60代以上」「外国人」「障がい者」などの採用も視野にいれると、人材不足問題の解決につながります。
派遣・アルバイト・業務委託といった雇用形態の拡充も、人材不足問題の解決につながるでしょう。
求める人物像を明確化しターゲットにそった優秀な人材を採用できれば、業務効率化が実現し、限られた人数でもより高いパフォーマンスを発揮できると期待できます。「適性検査」の実施によるマッチ度アップや、適切な求人情報の発信による「母集団形成」も人材不足問題の解決に効果的です。
人材育成の課題解決
目まぐるしく環境が遷移する昨今において、変化に対応する手腕が求められます。同時に、新たな技術も次々と生まれています。環境の変化や新たな技術に対応するには、人材育成が不可欠です。
~人材育成の例~
- 若手社員のフォロー体制を強化
- 各種研修の充実
- キャリアアップのチャンスを提供(研修や評価制度)
人材育成によって能力の底上げが実現できれば、少ない人数であっても、業務パフォーマンス向上が期待できます。
同時に、適材適所の人材配置を実施すれば、能力発揮およびモチベーションアップが叶うでしょう。モチベーションアップは定着率向上にも直結するため、離職率の改善面でも人材不足の解消が実現します。
業務の効率化
業務を効率化すると、少ない人手でも業務を適切にこなせるため、人材不足対策として役立ちます。たとえばデジタル技術を活用した「DX化」や、ロボット技術を用いた「RPA」の活用などです。DX化ではクラウドツールの活用や、オンライン会議の実施などが挙げられます。またRPAとは、ソフトウェアロボットによる業務効率化であり、データの集約やチェックなどが可能です。
また日常的な業務フローを見直すと、「不必要な会議」や「余計な書類作成業務」が見えてくるでしょう。業務効率化がはかれると、作業環境の改善が期待でき、従業員の定着率アップも見込まれます。
労働環境の改善
労働環境の悪化は、生産性低下や離職を招きます。生産性低下や離職者の発生は、人手不足を加速させ、企業活動に悪影響を与えるでしょう。
一方で労働環境を改善すれば、生産性アップや離職者の減少につながるため、人手不足問題の解消に寄与します。
~労働環境の改善例~
- リモートワークの導入
- 長時間労働の抑制
- 子育て世代が働きやすい環境づくり
- 清潔・安全な環境の保持
また副業の解禁なども「多様な価値観の醸成」につながり、労働環境の改善および企業の発展に結びつきます。
待遇の改善
従業員に対する待遇(給与・福利厚生など)を改善すると、労働者のモチベーションアップにつながるため、人材不足対策として有効です。モチベーションアップで「日々の業務にやりがい」を感じるようになれば、質の高い仕事につながり、各自のパフォーマンスを高められるでしょう。
パフォーマンスを高めて仕事ができれば、限られた人員で、効率よく仕事をすることにつながります。またモチベーションが高まれば、「この会社で頑張ろう」という気持ちになり、定着率アップも期待できます。
まとめ
人材不足につながる要因としては、少子高齢化といった「企業として対策を講じるのが難しい課題」もあるでしょう。一方で、企業の取り組みで乗り越えられる課題も存在します。
人材不足で悩む場合には、少しでも早い段階で「企業として取り組める課題」を解決する姿勢が大切です。「具体的な対処法がわからない」や「自社に合った対策法を講じたい」と考える場合には、プロの力を借りることをオススメします。
とくに「採用活動の効率性アップ」は、人材不足の解消につながりやすいでしょう。母集団の形成や「自社の求める人物」を採用することなどによって、人材不足の課題解消が期待できます。
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