年間を通して採用活動を行う通年採用。さまざまな要因で採用難易度が高まっている昨今において、一括採用に代わる手段として改めて注目されています。
しかし、通年採用の特徴やメリット・デメリットなどがわからず、なかなか導入に踏み切れないという担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、通年採用の概要や一括採用との違い、メリット・デメリットなどを網羅的に解説します。新卒採用に苦戦している人や通年採用の導入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
通年採用とは
通年採用とは、新卒採用・中途採用にかかわらず、企業が必要に応じて年間を通して採用活動を行うことです。
特に日本における新卒採用では、長らく春に向けて一斉に採用活動を行う「一括採用」が主流でした。これは、企業間の採用競争が激化することで学生の学業に支障が出ないよう、採用活動の長期化により学生側・企業側の双方が疲弊しないよう経団連(日本経済団体連合)が制限を設けたことに起因しています。
しかし、採用活動の難易度が増すにつれて、採用ターゲットや働き方の多様化に対応しながらより広く募集を行う必要性が生まれ、通年採用が注目されるに至っています。
新卒の通年採用の現状
春の一括採用が主流だった新卒採用ですが、近年は通年採用にシフトする企業が増えています。就職活動期間の短期化や若手人材の減少にともなう売り手市場が続くなか、新型コロナウイルス感染症の拡大が追い打ちをかけたことで、従来の手法による新卒採用が急速に困難になったためです。
株式会社リクルートキャリアの研究機関である就職みらい研究所が公表した「就職白書2021」によると、2022年卒採用において通年採用を実施予定と回答した企業が27.0%に上っており、その後も通年採用を検討・実施する企業は増加傾向にあると考えられます。
通年採用が広がった背景
新卒の通年採用が広がった背景には、大きく2つの理由があります。
1つ目は一括採用の仕組みでは有名企業・大企業に応募が集中してしまうという構造上の問題です。一斉に採用活動をスタートした場合、知名度が低い企業や中小企業はどうしても苦戦を強いられるため、あえてタイミングをずらしたり、第二新卒までターゲットを広げて採用活動を行わざるを得ません。
2つ目の理由は経団連の方針変更です。市況の変化や各所からの問題提起を受けて、経団連は2018年10月に採用活動に関する協定や指針を撤廃することを公表しており、通年採用の流れが加速する大きな要因になっています。
通年採用と一括採用の違い・通年採用の特徴
通年採用と一括採用は具体的に何が異なるのでしょうか。それぞれの違いや通年採用の特徴を、以下4つの観点から解説します。
- 募集期間
- 募集対象
- 入社時期
- 内定辞退の対応
募集期間
通年採用は一年を通じて求人募集を行うのに対し、一括採用は毎年3月~7月頃を目処に集中的に行われるのが一般的です。
これは経団連の協定にもとづくもので、あらかじめ設定されていた3月の解禁日を皮切りに各企業が一斉に採用広報を開始し、これをもって新卒採用活動が始まるという流れが通例となっていました。
募集対象
一括採用は翌年春の卒業予定者のみを募集対象としていましたが、通年採用はこの限りではありません。
全ての学年の大学生や既卒者、さらには海外へ留学しており、一般的な採用シーズンに帰国が間に合わない学生なども幅広く対象としているのが大きな特徴です。
募集対象は企業により異なりますが、必要とする人数を確保するために、可能な限り対象を広げている企業も少なくありません。
入社時期
一括採用の場合、その年度に採用された人は4月1日に一斉入社するのが一般的ですが、通年採用は採用した時期に応じて入社時期を柔軟に調整します。
4月1日入社にこだわらないことでスケジュールに余裕が生まれるため、相互理解の促進やミスマッチを軽減できるといった側面もあります。
内定辞退の対応
一括採用の場合、内定辞退者が出るとその年度は予定採用人数を確保できなくなる可能性が高いため、内定辞退を防止するための内定者フォローに重きが置かれていました。
一方、通年採用の場合は内定辞退者が出ても、改めて採用活動を行う余地があるため、一括採用に比べて欠員補充やリカバリーがしやすい傾向にあります。
通年採用のメリット
通年採用を実施する主なメリットは以下の4点です。
- 新卒一括採用よりも幅広い学生と接点が持てる
- 自社に合う学生を見極める時間をつくれる
- 早期に優秀な学生を確保できる
- 学生側にもメリットがある
新卒一括採用よりも幅広い学生と接点が持てる
通年採用は、新卒一括採用に比べて幅広い学生と接点が持てる点がメリットです。
一括採用の場合、活動期間が限られる関係で、学生側は選考に参加する企業に優先順位をつけて集中的に活動せざるを得ませんでした。しかし、通年採用では単純に双方の活動期間が延びるため、企業側からすると一括採用に比べてより多くの学生に出会うチャンスが増加します。
一括採用では出会えなかった属性の学生や、より多くの学生と接点を持てるのは、企業側にとって大きなメリットといえるでしょう。
自社に合う学生を見極める時間をつくれる
自社に合う学生をじっくり見極める時間的余裕があるのも通年採用のメリットです。一括採用のような期限がなく、自由にスケジュールを設定できるためです。
お互いがスケジュールに余裕を持てることで、従来よりも選考や対話に時間をかけられるため、相互理解の促進やミスマッチの軽減にもつながります。
早期に優秀な学生を確保できる
通年採用は、一括採用ではリーチできなかった優秀な学生と早期に接点を持てるのもメリットです。
一括採用の場合、募集対象は翌年春の卒業予定者のみに絞られるため、どうしても企業間で少ないパイを取り合う構図になってしまいます。しかし、通年採用の場合は卒業年度や学年などを問わないため、早期に優秀な学生と接点を持ち、数年後に採用するといった新たな可能性も生まれるでしょう。
学生側にもメリットがある
通年採用は企業側だけでなく、学生側にもメリットがあります。
一括採用は企業側の募集期間が限られており、より多くの企業を比較検討したい学生にとって、その期間は決して長いものではありません。選考準備や企業研究にかけられる時間が足りないという問題は、企業に対する理解度が低いまま入社してしまうなどのミスマッチにもつながっています。
一方、通年採用の場合は学生にとってもスケジュールの余裕が生まれるため、これらの一括採用の弊害が解消される可能性があります。
通年採用のデメリット
通年採用には、以下4つのデメリットも存在します。
- コストが高い
- 採用担当者の負担が大きい
- 滑り止めにされる可能性がある
- 学生側にもデメリットがある
コストが高い
通年採用は、一括採用に比べて採用コストが高くなる点がデメリットです。
たとえば、期間が延びることで就職イベントなどへの出展機会が増加し、求人媒体の掲載期間が延びることで広告費も増加します。さらに、入社時期が分散することで入社手続きや教育研修などの実施回数も増加するでしょう。
このように、社外に支払う外部コストだけでなく、既存社員が採用活動に費やす時間も増加するため、人件費をはじめとする内部コストも増加してしまいます。
採用担当者の負担が大きい
通年採用は、一括採用に比べて採用担当者の負担が大きくなる点もデメリットです。
一括採用は業務量こそ多いものの、繁忙時期は比較的限定的といえます。しかし、通年採用の場合は年間を通して常に採用活動を行うため、採用業務も恒常的に発生する通常業務とみなす必要があります。
採用担当者に時間的余裕が少ない場合や、ほかの業務と兼務している場合は、通年で業務負担が増加する点に注意が必要です。
滑り止めにされる可能性がある
通年採用を実施する場合、自社が滑り止めにされてしまう可能性があります。一括採用に比べると募集期間がかなり長く、そのぶん学生間の競争率も下がるためです。
より志望度の高かった企業から内定を獲得できなかった学生が応募してくること、そのような学生は自社に対する志望度や熱意が低い可能性があることを想定しておく必要があるでしょう。
自社が通年採用を行う方針であったとしても、より良い学生を採用するためには一括採用のスケジュールも考慮しながら動く必要があります。
学生側にもデメリットがある
一括採用に比べて、通年採用は学生側にも複数のデメリットが存在します。
たとえば、余裕を持って慎重に選考できるため、学生に求める基準が高くなったり、スピード重視のときには見えなかった部分までしっかり評価される可能性があります。
また、企業側が行う採用活動の足並みがばらつくため、各社の選考スケジュールを個別に確認しながら動く必要があります。一括採用の場合と比べて、より正確なスケジュール管理、マルチタスクをミスなくこなすことが求められるでしょう。
通年採用で成功できる企業
通年採用で成功できる企業には、以下3つの共通点があります。
- 学生を理解し多様な価値観を受け入れられる
- 明確な目標を立て管理できる
- 採用市場を理解できる
学生を理解し多様な価値観を受け入れられる
通年採用で成功している企業は、学生を理解することに努め、可能な限り多様な価値観を受け入れている傾向にあります。
期間や募集対象を限定しない通年採用では、留学や休学を経験している学生など、多様な背景や個性豊かな人材も必然的に採用候補に含まれます。そのような多様な人材がシナジーを生み、新たなアイデアやイノベーションにつながるケースも少なくありません。
自社が求める人物像にもよりますが、学生の指向性や多様な価値観を受け入れられる企業のほうが通年採用に成功しており、結果的に企業の成長や活性化にもつながっています。
明確な目標を立て管理できる
一括採用の場合と同様に、各段階で明確な目標を立て、それを管理しながら進めていくことが重要です。スケジュールに余裕があるとはいえ、一括採用も通年採用も本質的には変わらないためです。
立てた目標から逆算し、どのように広報を行って母集団を形成するか、採用活動の期間中に達成すべき面接実施率や内定承諾率など、マイルストーンを設定しましょう。活動が長期化するからこそ、その時々にすべきことを明確にしておき、メリハリをつけて採用活動を行うことが求められます。
採用市場を理解できる
通年採用を行うにあたり、より広い視野で採用市場を理解する必要があります。企業間の採用活動の時期や期間が分散することで、これまでとは異なる業界や属性の企業とバッティングする可能性が出てくるためです。
たとえば、これまでは同時期に採用活動を行っていた同業他社が競合だった場合でも、活動時期をずらしていた中小ベンチャー企業や、元々通年採用を行っていた外資系企業などが競合になるケースなどが考えられます。
採用活動を柔軟に工夫できる
通年採用に成功している企業は、採用活動を柔軟に工夫しています。
たとえば、採用難易度が高く母集団形成が困難な職種を募集する場合、募集期間と対象を広げる通年採用のほうが適しているといえます。また、入社時期や募集期間をある程度限定することで、採用コストや採用担当者の負担を軽減できるでしょう。
通年採用は数ある採用手法のひとつに過ぎません。一括採用か通年採用かの二択ではなく、より自社に合った最適な採用活動を行えるよう工夫することが重要です。
通年採用の特徴を理解して取り入れよう
採用難易度の高まりや市況の変化などから、改めて注目されるようになった通年採用。一括採用とはさまざまな点が異なります。
特に、新卒採用ではより幅広い学生と出会うチャンスがあり、自社に合う学生を慎重に見極める時間的余裕があるなど、さまざまなメリットがあります。一方で、一括採用よりもコストや担当者の負担が増加する傾向があるなど、デメリットがあることも理解しておく必要があります。
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