採用活動において「タレントプール(人材プール)」という言葉を耳にすることも多いのではないでしょうか。よく聞くものの具体的にどのようなもので、どのようなメリットがあるのか分からない人も少なくないでしょう。

そこでこの記事では、タレントプールとは何か、また、注目される理由やどのようなメリットがあるのかについて紹介します。実際の運用方法や活用のポイントについても解説するため、最後までぜひ目を通してみて下さい。

タレントプール(人材プール)の意味

タレントプール(人材プール)とは、今後採用する可能性のある人材の情報を蓄積したデータベースのことです。

具体的には例えば、自社に関心を持っている人、自社の転職イベントに参加した人、内定を辞退した人など、短期および中長期的に採用候補となりそうな人材情報を取り溜めておくことをいいます。

多くの人材を蓄えておくことで、欠員や事業拡大で急に人員が必要になった際に、プールしておいた人材情報から候補者をピックアップし、スムーズにアプローチができます。タレントプールは効率的な採用をするための手段として注目されています。

タレントプールの対象者

タレントプールの対象者は、今後自社で採用する可能性がある人材全員といえます。明確な定義はないものの、短期および中長期的に採用の可能性がある人材をより多く含めた方が母集団形成にも良いといえるでしょう。

例えば、次のような対象者が考えられます。

  • 自社のセミナーや転職イベントの参加者
  • 自社の人材募集にエントリーをしたことのある学生
  • 内定辞退者
  • ポストがなくて採用に至らなかった応募者
  • 退職・離職した元社員
  • SNSでコンタクトがあった人

「データベース・リクルーティング」との関連性

「データベース・リクルーティング」とは、構築したタレントプールから優秀な人材を選んで継続的にコンタクトをとるなどしてアプローチをし、採用につなげることです。

採用企業から求職者に積極的にアプローチする「攻め」の採用手法といえるでしょう。

データベース・リクルーティングでは、転職サイトや人材紹介などを使う採用方法と異なり、採用ニーズが顕在化してから候補者にアプローチするまでの期間を短縮できます。転職サイトを利用する時のような求人広告の掲載依頼をし、募集をかけ、応募を待つといったプロセスを省けます。

    

タレントプールが注目されている理由

    

現在、タレントプールが注目されている理由には次の三つが挙げられます。

  1. 人材採用競争が激化しているため
  2. 転職顕在層・潜在層両方にアプローチするため
  3. 優秀なスペシャリスト人材を活用するため

詳しくは次の通りです。

1. 人材採用競争が激化しているため

タレントプールが注目される背景には、人材採用競争が激化していることが挙げられます。

現在、多くの企業が人材不足の問題を抱えています。例えば、エン・ジャパン株式会社の2022年の調査によると、「現在、貴社では人材が不足している部門はありますか?」との問いに「ある」と回答した企業は82%でした。約8割もの企業が人材不足の状況です。さらに、人材不足の理由に「中途採用で人員確保ができなかった」とする回答が43%もありました。人材獲得競争が激しいことが伺えます。

人材採用競争が激化しているため、求人に対する応募を待っていては、必要な人材を確保できない可能性が高いといえるでしょう。応募を待つのでなく、自社でタレントプールを構築し、アプローチする攻めの姿勢が必要といえます。

出典:エン・ジャパン株式会社「2022年人材不足の状況について」

2. 転職顕在層・潜在層両方にアプローチするため

転職顕在層・潜在層両方にアプローチするためにも、タレントプールが注目されています。

厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、一般労働者に対する転職者数の割合は7.2%です。実際の転職者と転職顕在層の割合は近いと考えられることから、転職顕在層の割合は全就労人口の1割程度といえるでしょう

人材獲得競争が激化していることもあり、就労人口の1割しかいない転職顕在層にアプローチをしているだけでは、人材確保は難しいといえるでしょう。そのため、まだ転職をしようと考えていない「転職潜在層」にもアプローチすることが重要とされています。

タレントプールは、転職顕在層だけでなく転職潜在層にもアプローチするための非常に有効な手段と見なされ、注目度が高まっています。

3. 優秀なスペシャリスト人材を活用するため

優秀なスペシャリスト人材を活用するためにも、タレントプールは注目されています。

優秀なスペシャリスト人材は、独立を希望する人も多く、転職市場に現れてこないケースもあります。企業への転職を希望しないそうした優秀なスペシャリスト人材は、採用という手段を用いるのでなく、業務委託という手段で活用する手もあります。

タレントプールで人材にアプローチをする方法であれば、採用・業務委託といった人材活用のどちらの手段にも対応できます。さまざまな人材活用方法に対応できるため、タレントプールはますます注目度を高めているといえるでしょう。

     

採用におけるタレントプール活用のメリット

   

採用におけるタレントプール活用のメリットには次のようなものがあります。

  1. 企業側は母集団形成にかかるコストを削減できる
  2. 応募者側は企業理解が深まりミスマッチが減る

具体的な内容は以下の通りです。

1. 企業側は母集団形成にかかるコストを削減できる

タレントプールを活用することで、企業側には母集団形成にかかるコストを削減できるというメリットがあります。

母集団とは採用候補者の集団のことです。通常の母集団形成には、求人サイトや人材紹介といったエージェントを活用することが多いといえるでしょう。そうした場合には、サイトへの求人広告の掲載料や紹介手数料といったコストが発生します。

一方、タレントプールで母集団を形成する場合は、求人サイトや人材紹介と異なり、直接候補者にアプローチできるため、求人広告の掲載料や紹介手数料といったものは不要です。そのため母集団形成のコストが大幅に削減できるという利点があります。

2. 応募者側は企業理解が深まりミスマッチが減る

タレントプールを活用することで、応募者側には企業理解が深まりミスマッチが減るというメリットがあります。

転職サイトや人材紹介のエージェントを利用する場合の、応募者と企業とが直接コンタクトを取れる機会は、面接時などに限られてしまいます。一方、タレントプールを活用する場合は、応募者と企業とがコンタクトを取る機会はいくらでも増やせます。

企業側がタレントプールを使って採用ターゲットとなる人材に直接かつ継続的にアプローチすることで、応募者の企業への理解は深まります。応募者側は、積極的に転職活動をしていなくとも、優良企業について深く知ることができ、じっくりと検討することができるため、入社後のミスマッチも減るといえます。

    

タレントプールを運用する方法

    

タレントプールを実際に運用するにはどうすればいいか、運用方法について解説します。手順は次の通りです。

  1. プールする人材要件を定義する
  2.  データベースを構築して人材をプールする
  3.  候補者とコミュニケーションを取る
  4. データベースを日々更新する

以下で、詳しい内容を解説します。

1. プールする人材要件を定義する

まずはどのような人材をプールしたいのか、人材要件を定義しましょう。人材要件とは採用したい人材に必要な要件のことです。例えば、次のような項目で定義づけていくとよいでしょう。

  • 必要なスキルや資格
  • 必要な経験やキャリア
  • 必要な特性(コミュニケーション能力・積極性・協調性・チャレンジ精神など)

また、人材要件の作り方には、下記の2通りがあります。

  • 未来の視点、経営方針や事業計画から逆算して必要な人材要件を定義する方法(演繹的アプローチ)
  • 既存社員で活躍している人材から人材要件を定義する方法(帰納的アプローチ)

片方のアプローチのみを活用するのでなく、両方を用いてバランスを取りながら人材要件を作成することがおすすめです。

2. データベースを構築して人材をプールする

データベースを構築して人材をプールしましょう。

データベースは自社内で独自に作成しても良いですし、「TalentCloud」や「MyTalent」などのタレントプールサービスを利用するのも良いでしょう。タレントプールサービスでは、あらゆるチャネルから採用候補者の情報を集めたり、情報をスコアリングしたりする便利な機能が備わっています。

データベースの構築に際しては、その後の使いやすさに配慮して構築することが大切です。

構築されたデータベースの使い勝手の良しあしが、タレントプール運用の難易度を左右します。活用しやすいように使い勝手に配慮してデータベースを構築しましょう。

3. 候補者とコミュニケーションを取る

データベースを構築したら、定期的に候補者とコミュニケーションを取るようにしましょう。

候補者の多くは転職潜在層のため、長期的・継続的にアプローチする必要があるといえます。アプローチのポイントは、質の高い情報を、定期的に発信することといえるでしょう。あまり興味を持たれない内容のメールを何度も送り続けると、着信拒否やメール配信拒否をされることもあるため注意しましょう。

採用を進めたい時にすぐに連絡が取れるようなアクティブな状態に候補者を維持することが大切です。最後に連絡を取った日付などを管理することがおすすめです。

4. データベースを日々更新する

データベースは日々更新するようにしましょう。データが古くなってしまうと、タレントプールが機能しなくなってしまいます。

欲しい人材にすぐにアプローチできるよう、常に新しい情報に更新したり、情報を整理したりして、データベースを適切な状態に維持するようにしましょう。データベースが大きくなり過ぎると管理が難しくなる場合もあります。定期的に必要な人材に絞り込むなどの整理も必要です。

    

タレントプールを活用するポイント

    

タレントプールをうまく活用するためのポイントを紹介します。ポイントは次の3つです。

  1. 候補者をアクティブな状態で維持する
  2. 転職意思に応じたコミュニケーションを分析する
  3. データベースを最新化する仕組みを作る

詳しくは次の通りです。

1. 候補者をアクティブな状態で維持する

タレントプールを機能させるためには、候補者をアクティブな状態でプールすることが重要です。

採用のニーズが生じて連絡をした時に、連絡がつかない、反応がないといった使えない状態であっては意味がありません。そのため、必要な時に応じてもらえるようなアクティブな状態に候補者を維持する必要があります。

定期的に興味を引くお知らせをしたり、興味を引くお知らせやイベントを開催したりして、自社への関心を引きながら、アクティブな状態に保つようにしましょう。

2. 転職意思に応じたコミュニケーションを分析する

タレントプールをうまく活用するには、候補者の転職意思を分析・把握して、その状態に応じたコミュニケーションをすることが大切です。

例えば、メールの開封率、メールへの返信率、セミナーへの参加状況、採用サイトへのアクセス頻度などを分析し、候補者の転職意思の強さを把握するようにしましょう。転職意思が強いと判断される場合は、積極的なアプローチがおすすめです。

なお、転職意思を候補者に直接聞いてしまうと、「転職の意思がない」といわれた場合に、その後の採用につなげにくくなります。転職意思に関わらず連絡を取れる状態を作るためにも、行動やリアクションから転職意思を推し量るのが良いでしょう。

3. データベースを最新化する仕組みを作る

データベースを最新化する仕組みを作ることも、タレントプール活用の重要なポイントといえるでしょう。

データベースは採用戦略を考える基礎となるため、最新であることが大切です。情報のアップデートができていないと、正確な候補者の情報に基づいた採用戦略が練れません。適切な人材を見逃さないためにも、随時更新できる仕組みの構築が必要です。

例えば、定期的な更新時間を設定する、毎日報告するなどのルーティンワークを作るなど、情報を無理なく最新に維持できる習慣・仕組みを作るようにしましょう。

    

タレントプールを活用して優秀な人材採用につなげよう

タレントプールとは、自社で採用する可能性のある人材の情報を蓄積したデータベースのことです。タレントプールを活用することで転職顕在層だけでなく転職潜在層にアプローチでき、効果的に人材採用を進めることができます。

タレントプールを具体的にどのように導入して、活用していけばいいかお悩みの場合には、新卒採用支援サービスkimeteにご相談下さい。

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