人材育成を行わなければならないと感じているものの、何を重視し、どのような方法で進めていけば良いのか分からないといったこともあるでしょう。そこで、この記事では、実際に人材育成を進めていく上での重要なポイント、および具体的な人材育成の手法や制度について解説します。
人材育成に欠かせないポイントや人材育成を効率的に進めていく手段が分かるため、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。
人材育成で大切なこと
人材育成を進めていく上で重視した方が良いポイントとしては、次の7点が挙げられます。
- 人材育成の目標を明確にして期日を決める
- 企業理念に沿った目標にする
- 社員のモチベーションを引き出す
- 育成担当社員のスキルを磨く
- 長期的な取り組みを行う
- 最適な手法を選択する
- 人材育成の制度・体制を整える
人材育成を着実に進めるためにも、事前にこれらのポイントを把握しておきましょう。
人材育成の目標を明確にして期日を決める
人材育成に着手する前に、まずは、人材育成によって、社員や組織をどのような状態にしたいのか、目標を明らかにすることが大切です。
目標を明らかにすることで、社員は、どのように行動していけば良いか具体的に考えられるようになります。また、人材育成の研修やトレーニングといったものも、目標があることで目標に沿った的確なプログラムを提供できるでしょう。
さらに、目標を定める時は、期日も併せて決めることが大切です。期日がなければ、業務の忙しさにかまけて、人材育成が後回しになりかねません。着実に人材育成を行うためには、期日を定めて計画的に実行しましょう。
企業理念に沿った目標にする
人材育成は企業の成長を目的として行うため、人材育成の目標は、企業理念に沿った目標にすることが大切です。自社が理想とする人材像を、企業理念やビジョンに沿って、明らかにするようにしましょう。
自社の理想とする人物像と現状とを比較し、その差を縮めるように人材育成の目標を定めていくと良いでしょう。
適切な人材育成の目標を定めるためにも、経営者層と意見のすり合わせを行った上で、人材育成の目標を立てることが大切です。
社員のモチベーションを引き出す
人材育成を行う上では、社員のモチベーションを引き出しつつ行うことが重要です。
いくら人材育成プログラムを用意したとしても、社員側に成長したいというモチベーションがなければ、良い効果は得にくいといえます。一方、社員の「成長したい」というモチベーションを維持できれば、社員は積極的に人材育成の施策に応じてくれるため、良い効果が期待できるでしょう。
「達成できる目標を与える」「裁量権を与える」「積極的に褒める」「十分にコミュニケーションを取る」などといった社員のモチベーションを上げる施策を取ることが大切です。
育成担当社員のスキルを磨く
人材育成では、人材育成を担当する社員の育成スキルを磨くことも重要です。
人材育成では上司などの育成担当者が社員に教育などを行いますが、育成担当者の指導力が不足していると、社員の人材育成もうまく進まないといえるでしょう。
育成担当者には、コミュニケーション能力やティーチングスキル、ロジカルシンキングといったさまざまなスキルが必要とされます。人材育成を行う際には、人材育成担当者のこれらのスキルを磨くことも大切です。
長期的な取り組みを行う
人材育成については、長期的に取り組む必要があるといえます。
人材育成は、「一度目標を達成できれば終わり」という訳にはいきません。企業は時代の変化に合わせて、常に成長を続けなければなりません。そのため、人材育成も長期的な視野で長く取り組んでいく必要があるといえるでしょう。
人材育成では、期日を設けた目標達成に向けての短期的な取り組みを実施するだけでなく、組織の長期的な成長を視野に入れた取り組みを行うことが大切です。
最適な手法を選択する
人材育成においては、社員の職種や職位、スキルに応じた最適な手法を選択することが大切です。
例えば営業部門と開発部門などと職種が異なると、求められるスキルや成果も異なります。また、新人社員と主任とでは、求められる役割が異なるといえるでしょう。それぞれの職種や職位によって、人材育成の目標も異なってくるため、育成方法も異なるといえます。
効果的な人材育成を行うためには、個々人に合った最適な手法を選択することが重要です。
人材育成の制度・体制を整える
人材育成を確実に行うためには、人材育成の制度や体制を整え、企業全体で取り組むことも大切です。
人事評価制度や目標管理制度といった制度を整えることで、人材育成の目標や進捗の管理がしやすくなります。また、人材育成に役立つジョブローテーション制度、メンター制度などの体制を整えることで、企業全体で効率的に人材教育を進めることができます。
人材育成の制度や体制を会社全体で整えることで人材育成の文化が浸透し、長期的、安定的な人材育成にも役立つといえるでしょう。
人材育成で大切なこと【階層別】
人材育成と一口にいっても、新入社員、中堅社員、管理職といった階層ごとに求められる役割が異なるため、人材育成の目標や育成方法も異なるといえます。
そこで以下では、階層別の人材育成における重要なポイントについて解説します。
- 新入社員|組織の全体像を理解する
- 中堅社員|企業の中核を担う
- 管理職|組織をマネジメントする
詳しくは次の通りです。
新入社員|組織の全体像を理解する
新入社員に対する人材育成では、下記のように、組織の全体像やビジョン、基本的なビジネスマナーといった業務上の基礎となる事柄を把握できるようにすることがポイントです。
- 自社の経営理念やビジョン
- 自社の沿革や事業内容
- 自社の組織構造
- 自社のビジネスモデル
- 業界知識
- 基本的なビジネスマナー
新入社員が、自社の組織や業務、業界についての理解を深め、自社の社員としての心構えやビジネスマナーを身に着けられるように配慮して、人材育成を行いましょう。
中堅社員|企業の中核を担う
中堅社員に対する人材育成では、企業の中核を担う上で必要となる資質を磨いてもらうことがポイントです。例えば下記のような意識や能力を伸ばすことが重要といえるでしょう。
- 組織の中核を担っているという意識
- 後輩への指導力
- リーダーシップ
- マネジメントスキル
- 上司を支えるフォロワーシップ
中堅社員については、上司を補佐し後輩を育成する能力や素質、企業の中核として業務を遂行する意識や能力を高めていけるように配慮しましょう。
管理職|組織をマネジメントする
管理職に対する人材育成においては、企業の経営理念や経営方針の実現に向けて社員をマネジメントしていける能力を開発することが重要です。具体的には下記の点について知識やスキルを磨けるように進めると良いでしょう。
- 自社の経営戦略や経営方針の理解
- 業界動向の理解
- 競合他社の理解
- 経営に関する数値の理解
- 経営戦略の習得
- 高度な組織論の習得
- マネジメント能力の向上
また、近年のハラスメント意識の高まりを受けて、ハラスメント防止の教育も行なうことが大切です。
育成担当社員に必要なスキル
人材育成では、育成を担当する社員に必要なスキルを磨いてもらうことも重要です。育成担当者に必要なスキルには、例えば下記のようなものがあります。
- 観察力
- ティーチングスキル・コーチングスキル
- ロジカルシンキング・クリティカルシンキング
以下では、スキルの詳細を紹介します。
観察力
育成担当者には、観察力が必要です。なぜなら、人材育成は相手の性格や状況をよく理解して行うことが大切だからです。相手の価値観や状況を把握せずに一方的に指導を行っても、受け入れられないことも少なくありません。
通常のコミュニケーションで相手の意見を聞くことも大切ですが、相手が不平や不満を抱えていても、言葉で伝えてくれるとは限りません。そのため、相手が伝えたことを理解しているか、何か悩んでいることはないかなど、相手の様子から推し図る力が必要です。
ティーチングスキル・コーチングスキル
育成担当者にはコミュニケーション力が大切です。コミュニケーション力の中でも、ティーチングスキルとコーチングスキルが特に必要といえるでしょう。
ティーチングスキルとは、業務知識や経験が豊富な人が、知識や経験の浅い人に、業務のやり方や知識を教えるスキルのことです。分かりやすく知識や情報を伝える力といえます。
コーチングスキルは、育成対象の相手に自発的に考えてもらったり行動を起こしてもらったりして、問題解決や目標達成を図るスキルのことです。相手に目標に向かって主体的に動いてもらい、それに寄り添って目標達成までサポートする力といえるでしょう。
ロジカルシンキング・クリティカルシンキング
人材育成ではさまざまな問題が生じるため、育成担当者にはロジカルシンキングやクリティカルシンキングのスキルも必要です。
ロジカルシンキングとは、起きた問題に対して、筋道立てて結論や解決方法を見極めていく力のことです。人材育成で想定外の問題が起きた場合などに、どうすれば目標達成に至れるか根拠立てて考えて指導することができます。
クリティカルシンキングとは、考えや方法が正しいかどうか検証して本質を掴むことのできる力のことです。人材育成を任された場合に、やり方などが本当に適切かどうか、より効果的な方法があるのではないかなど、検証しつつ本質を見極めて行動することができます。
人材育成の手法
人材育成を行う方法にはさまざまな方法があります。例えば、下記の4つが代表的な方法といえます。
- OJT(Off the Job Training)
- OFF-JT(Off the Job Training)
- SD(Self Development)
- eラーニング
それぞれの育成手法の内容を把握し、自社に合ったものを選ぶようにしましょう。
OJT(Off the Job Training)
OJT(Off the Job Training)とは、先輩社員と一緒に実際の仕事を行いながら学ぶ人材育成方法です。上司や先輩社員が育成担当者となって指導します。
OJTには。実務に携わりながら学べるメリットがあります。また、業務を行う中で成果が見えるため、褒めたり正したりといったフィードバックが行いやすい点も利点です。デメリットは、多忙な部署の場合は、業務説明などの指導に留まり、十分な指導やフィードバックができない可能性がある点です。
OFF-JT(Off the Job Training)
OFF-JT(Off the Job Training)とは、業務とは別に研修を設けるなどして業務外で学ぶ人材育成手法です。専門知識を持つ社外の講師などが育成担当者となって指導します。
OFF-JTのメリットは1人の育成担当者で多くの社員の指導ができる点です。業務外で落ち着いてしっかり学べる点も利点といえます。デメリットは、講師依頼や会場確保などの費用がかかることです。
SD(Self Development)
SD(Self Development)とは、自己啓発のことで、社員が自ら学ぶことを支援する人材育成手法です。社員が自主的に技術を取得するための資格取得支援や書籍購入の補助などを行います。
SDのメリットは、社員が自分で時間や学び方を選んでスキルアップを進められることです。デメリットは社員のやる気次第で結果が左右されることといえます。
eラーニング
eラーニングとは、インターネットを活用して学ぶ人材育成手法です。インターネットが使えるパソコンやスマートフォンなどがあれば、時間や場所を問わず研修・学習プログラムが受講できます。
eラーニングのメリットは会場確保や社員のスケジュール確保といった手間がかからない点です。デメリットは、社員の受講のモチベーションの維持が難しいことや、社員の学習の進捗や理解度を把握しにくいことといえるでしょう。
人材育成のための制度
人材育成のための制度に、どのようなものがあるのか紹介します。代表的な制度は次の4つです。
- 人事評価制度
- 目標管理制度
- ジョブローテーション制度
- メンター制度
詳しくは次の通りです。
人事評価制度
人事評価制度とは、社員の業績やスキルや勤務態度を評価して昇格や昇給に反映させる制度です。人事評価制度のもとでは、年に1〜2回の評価面談を行い、その際に社員の現状の成果やスキルなどを把握できます。
そうした評価の際に、人材育成の効果がどの程度出ているか、また、今後、どういった点を補強していくべきかといった判断ができるというメリットがあります。一方で、人事評価制度の導入に手間と時間がかかるといったデメリットもあります。
目標管理制度
目標管理制度とは、社員一人ひとりが目標を設定し、管理職である上司がその進捗や達成度を確認する制度です。社員の個人目標は、組織の目標に沿ったものを設定します。
目標管理制度のもとで、社員が自己の目標を達成することで、組織の目標も達成することができます。目標管理制度は、人材育成の目的である社員の成長と企業の成長の双方が期待できる仕組みである点がメリットといえるでしょう。一方、社員が達成しやすい目標を立ててしまい、大きな成長が見込めないこともある点がデメリットといえます。
ジョブローテーション制度
ジョブローテーション制度とは、さまざまな経験を積むために、定期的に部署や職種などの配置換えを行う制度です。
部署や職種が変わることで、社員は幅広いスキルや応用力を身に着けることができます。また、ジョブローテーションで人が異動することで、部署間・職種間の交流が活発になるといったメリットもあります。一方、異動当初は仕事に慣れないためパフォーマンスが下がってしまうことや、専門性が身に着きにくいといった点がデメリットです。
メンター制度
メンター制度とは、育成対象の社員に対して特定の先輩社員が担当となって指導をしたり相談に乗ったりと幅広いサポートを行う制度です。
メンター制度には、社員一人ひとりに合わせたサポートがしやすい他、先輩社員の指導力を磨くことができるというメリットがあります。一方で、先輩社員の負担が大きくなることがある他、相性が悪いとサポートがうまく機能しないといったデメリットもあります。
まとめ
人材育成で重要な点として、人材育成の目標を明確にすること、企業理念に沿った目標を設定すること、育成担当者のスキルを磨くこと、長期的に取り組むことなどを紹介しました。
人材育成を効果的に行うためにも、最適な手法を選択し、人材育成の制度・体制を整えることなどが重要といえるでしょう。
人材育成の手法や制度・体制については、具体例も紹介しましたが、実際の施策にお悩みの場合には、新卒採用支援サービスkimeteにお気軽にご相談下さい。
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