社内研修は、外部に委託せず、自社独自のプログラムを企画・実施する手法です。社内研修に興味を持つものの、進め方やテーマ選定に頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。

この記事では、効果的なテーマ設定の方法、目標設定から効果測定・分析までのステップ、具体的なアイデア例など、社内研修を成功させるための情報を網羅的に解説します。自社のニーズに応じた研修プログラムをつくり、組織の成長と社員のスキル向上につなげましょう。

社内研修とは

社内研修とは、企業が自社の社員に対して行う教育プログラムです。組織の課題やニーズに応じた、自社オリジナルのプログラムを組めることが特徴で、現場で使えるスキルの取得やミッション・ビジョン・バリューの浸透に役立ちます。

社内研修は、社内のリソースを活用して行うことが一般的で、費用の節約としても有効です。例えば、社外研修と比べると講師料や交通費、宿泊費が削減されます。また、部門間の交流を促進する機会ともなり得ます。

社員教育との違い

社員教育は、社員の長期的なキャリア発展と能力開発を目的としています。職業倫理、リーダーシップ、チームワークなど、部門間での役割を超えた広範囲なスキルの開発が一般的に含まれます。

一方で、社内研修は、短期間で明確な結果を得ることに焦点を置いており、特定のテーマや課題に対応するために設計されることが多いです。社員教育が社員の 総合的な成長をサポートする一方で、社内研修は特定の業務関連スキルや知識の強化に焦点を当てています。

 

社内研修の目的と重要性

社内研修の目的は、社員の教育と人材育成の一環として、テーマを決めて具体的な知識やスキルを習得することです。社員が自社の業務や文化を深く理解し、必要な専門性を身につけることで、業務効率を向上させ、結果的に企業の全体的なパフォーマンスと競争力を高めます。

社内研修は、単なるスキル向上の手段を超え、企業の戦略的な目的を達成するための重要な投資と考えられています。変化が激しく予測困難な現代ビジネス環境において、社員が柔軟に対応し、継続的に学び、成長していく上で必要不可欠です。

社員一人ひとりの成長が企業全体の生産性向上につながり、結果的に企業のミッション達成に寄与するでしょう。

 

社内研修のテーマ設定の方法・種類

社内研修のテーマを設定する際に必要なアプローチ方法は以下の2種類です。

  • 経営目標・組織目標から考える
  • 現状の課題から考える

一方のみの視点で考えれば良いわけではありません。どちらのアプローチも重要であり、効果的な研修プログラムを設計するためには、両方のアプローチを組み合わせて考えることが鍵となります。

経営目標・組織目標から考える

まず1つ目に、「経営目標・組織目標から考える」というアプローチ方法です。この手法では、経営目標や組織目標の達成に向けて、今後注力すべき内容やそのために必要な知識・スキルを明確に設定し、ゴールから逆算して研修プログラムを構築します。

目標設定では、SMARTの原則(Specific「具体的」、Measurable「測定可能」、Achievable「達成可能」、Related「関連性」、Time-bound「時間的制約」)を活用し、明確で実現可能な目標を立てることが重要です。

現状の課題から考える

2つ目に、「現状の課題から考える」というアプローチ方法です。この手法は、企業が現在直面している問題や課題に基づき、必要な知識やスキルを特定して考える、順算的なアプローチです。

効果的な社内研修を実施するためには、目指すべき姿を明確にした上で、現状とのギャップを把握することが重要です。ただし、立場や役割によって、それぞれの課題やニーズが異なります。管理職、一般社員など多様な視点から直接ヒアリングすることで、現状を正しく理解できるでしょう。

このような現状分析に基づくアプローチは、迅速な改善が求められる状況で特に効果的です。​​​​​​

 

社内研修プログラムの3つのプロセス

社内研修プログラムを進めるには、3つの重要なプロセスを理解する必要があります。以下のプロセスを踏むことで、目標達成と課題解決に向けた社内研修プログラムを円滑に進められます。

  1. ボトルネックの理解
  2. 具体的な改善イメージの共有
  3. 研修内容の言語化・定着

1.ボトルネックの理解

まず最初に、目標の達成・課題の解決に向けて、ボトルネックを理解しましょう。ボトルネックは、知識やスキル、マインドセットの不足によって引き起こされることが多いため、自分自身で足りないものを認識してもらうことが重要です。

ボトルネックとは、業務プロセス全体の効率性やパフォーマンスを阻害する要因のことで、ビジネスのさまざまな領域で発生します。自身やチームが直面している課題に対して、原因となる要素を正確に理解することが、改善プロセスにつながります。

2.具体的な改善イメージの共有

次に、具体的な改善イメージの共有です。ボトルネックとなっている問題点や課題が改善された際の成功イメージを視覚化し、伝えることが大切です。

効果的な社内研修では、受講者にとって「役に立つ」内容が提供されるべきです。社内研修によって、受講者にどのような影響をもたらすのか、どのようになって欲しいのかを明確にしましょう。

社内研修の目的や到達目標が曖昧であると、研修の効果が発揮されないため、できるだけ具体的に改善策とゴールイメージを設定する必要があります。

3.研修内容の言語化・定着

最後に、受講者が社内研修で学んだ内容を自分の言葉で言語化し、行動計画を立てましょう。社内研修で得た知識やスキルが日常の業務にどのように活用できるかを理解し、実践することによって、学んだ内容の定着を図ります。

例えば、新しいスキルをどの業務プロセスに組み込むか、または特定の課題に対してどのような改善策を実施するかなど、具体的なアクションプランを策定します。このように、研修で学んだことを実際の業務に落とし込むことで、社内研修の効果は最大化されるでしょう。

 

社内研修プログラム設定の進め方

社内研修プログラムの設定は、以下の4つのステップで進められます。4つのステップを適切に実施することで、組織の目標に沿った効果的な社内研修プログラムを実現できるでしょう。

  1. 課題と目標を設定する
  2. 三つのプロセスに分解する
  3. 評価・モニタリング体制を明確にする
  4. 研修に必要なリソースを手配する

1.課題と目標を設定する

社内研修プログラムを設定する最初のステップは、「課題と目標を設定する」ことです。まず、企業が現在直面している課題を分析し、何を解決したいのかを言語化します。課題を深く分析することで、研修の目的や内容が明確になります。

さらに、社内研修を通して達成したい具体的な目標を設定します。研修後にどのような理想的な姿になりたいかを考え、目標を決めると良いでしょう。社内研修が受講者の成長と企業の成果につながるよう、具体的かつ実現可能な目標を設定することが重要です。

2.三つのプロセスに分解する

課題と目標を設定したら、次に現状から理想まで、社内研修で変化する具体的なイメージを前章で紹介した以下3つのプロセスに分解しましょう。

  1. ボトルネックの理解:研修の目的達成や課題解決の妨げとなっている要因を特定し、理解する。
  2. 具体的な改善イメージの共有:ボトルネックが改善された場合の具体的な成功イメージや改善策を共有する。
  3. 研修内容の言語化・定着:社内研修で学んだ内容を自分の言葉で表現し、日常業務でのアクションに落とし込むことで知識の定着を図る。

3.評価・モニタリング体制を明確にする

社内研修プログラム設定の進め方の3つ目のステップは、効果測定です。研修を通して学んだことを日常業務に落とし込み、その成果を評価・モニタリングする体制を明確にしましょう。

研修の効果測定には、アンケートや理解度テスト、職場での行動観察、ROI分析といったさまざまな手法があります。次の章では、さらに詳しく社内研修の効果測定・分析を行う方法を紹介します。

4.研修に必要なリソースを手配する

社内研修プログラムの基準が設定できたら、最後のステップとして、研修に必要なリソースを手配しましょう。講師や研修の運営を担う社員の選定、研修場所の確保、資料の作成など、多くの準備が必要です。

社内研修は、外部に依頼せずに社内リソースを用いて行うため、研修の企画やプログラムの設計、会場の下見など、社内での工数や負担が増大することもあります。効率的に準備を行うためには、実施までの流れを事前にしっかりとつくり、必要に応じてブラッシュアップすることが重要です。

 

社内研修の効果を測定・分析する方法

社内研修の効果を測定・分析することで、研修の成果をより明確にし、継続的な改善へと繋げることができます。ここでは、以下の2つの具体的な方法を紹介します。

  • 研修成果を現場組織内での共有
  • 同一メンバーでの定期的な振り返り

研修成果を現場組織内での共有

社内研修の成果を現場組織内で共有することは、研修効果の最大化に不可欠です。研修で学んだ内容をどのように日常業務に活かすかを共有し、具体的な応用方法などをチーム内で話し合います。

また、研修内容を元に、日常業務で実践して得られた成果や改善点を分析し、組織全体で共有することもおすすめです。これにより、全社員のスキルアップと意識付けにつながり、業務の効率化と生産性向上に寄与するでしょう。

同一メンバーでの定期的な振り返り

社内研修の効果を評価する際、同じ研修に参加したメンバーで定期的な振り返りを行うことが有効です。振り返りは、3ヶ月後や半年後など、社内研修から一定の期間が経ったタイミングから実施します。

研修で学んだ内容の活用状況、実践によって見えてきた課題、得られた成果について話し合います。定期的な振り返りを行うことで、研修の長期的な効果を測定し、継続的な学習と成長を促進できるでしょう。また、互いの経験を共有することで、新たなアイデアや改善策が生まれる可能性もあります。

 

【研修対象別】社内研修のネタ・アイデア例

実際に社内研修を行う際は、研修の目的に応じて内容を考えるのが良いでしょう。ここでは、研修の対象別に社内研修のネタ・アイデアを紹介します。

  • 基礎研修・新入社員オリエンテーション
  • 実務スキル向上研修
  • マネジメント研修
  • コンプライアンス研修
  • メンタルヘルス研修
  • キャリア形成・デザイン支援研修

基礎研修・新入社員オリエンテーション

基礎研修・新入社員オリエンテーションの研修内容のアイデア例は次の通りです。

  • 基礎研修:社会人基礎力やビジネススタンス、マインドセットを養う。
  • 参加型研修:ロールプレイングやグループワークを通じて、双方向コミュニケーションを促進​​。
  • 自然体験型研修:ウォーキングやボルダリングなど、実践的な活動を通じて学び深める​​。
  • ユニーク研修: 謎解きゲームや人狼ゲームなど、参加者の興味を引く楽しい研修​​。

実務スキル向上研修

実務スキル向上のための研修内容のアイデア例は次の通りです。

  • 課題分析研修:問題発見から解決まで、多様な思考や視点で原因を分析し、説得力のある解決策を導く力を身につける。
  • 生産性向上研修:PDCAサイクルの活用、業務分析、文書作成、ExcelやPowerPointスキルなどを通じて、メンバーの立場での生産性向上を目指す​​。
  • ビジネスマナー研修:汎用性のある社会人としての基礎やビジネスマナーを学ぶ​​。

マネジメント研修

マネジメント層向けの研修内容のアイデア例は次の通りです。

  • リーダーシップ研修:自覚、判断力、課題認識力、計画立案力など、リーダーシップに必要な9つの力を体系的に学ぶ。
  • 問題解決能力研修:論理的な問題解決、要因分析、チームワークを強化するワークショップ形式の研修​​。
  • 部下指導・部下育成研修:コーチングスキルやアンガーマネジメントなど、部下の能力を引き出し、個々の成長を促進するためのスキルを学ぶ。

コンプライアンス研修

コンプライアンス研修内容のアイデア例は次の通りです。

  • ハラスメント研修:ハラスメントの種類を理解し、予防と対策を学ぶ。
  • 情報セキュリティ研修:企業情報の管理や取り扱いに関する知識を学び、情報漏えいを防ぐための対策を取り入れる​​。
  • コンプライアンス研修:コンプライアンス違反が企業に及ぼす危険を理解し、適切な対応策を学ぶ。具体的なシミュレーションを通じて、違反や不正の管理を演習する​​。

メンタルヘルス研修

メンタルヘルス研修は、マネジャーとメンバーそれぞれに実施が必要です。研修内容のアイデア例は次の通りです。

【マネジャー層向け】

  • ラインケア:管理職が部下のメンタル不調を予防、早期発見する方法について学ぶ。日頃からのコミュニケーションを重視し、部下のメンタルに関する微妙な変化に気付く能力を養う。

【メンバー層向け】

  • セルフケア研修:自分自身のメンタルヘルス状態を理解し、ストレスへの対処方法を習得する。
  • レジリエンス研修:困難を乗り越えるためのレジリエンス(回復力)に関する知識を深める。

キャリア形成・デザイン支援研修

キャリア形成やキャリアデザインに使える研修内容のアイデア例は次の通りです。

  • キャリアデザイン研修:自己理解を深めることに重点を置き、個々の社員が今後の働き方や自身の目標を明確に定めるための研修。社員がキャリアに関する課題解決のきっかけを見つけ、自律的に行動するよう促す。
  • 年代別キャリア研修:30代ではキャリアや成果の棚卸し、40代ではマーケットや業界の動向理解、50代では「働く意味」の再定義など、年代に応じたキャリアデザインを行う。

 

社内研修の効果最大化のために人材開発計画を立てよう

社内研修は組織特有の課題に対応し、能力向上を目指す効果的な手法です。この記事では、社内研修の進め方や、実用的なテーマ例に焦点を当て、研修プログラムの設計のコツを紹介しました。

効果的な社内研修を実現するには、課題と目標の適切な設定が重要です。定期的な評価・モニタリングを実施することで、長期的な社内研修の成果を得ることができるでしょう。さらに組織全体の人材開発計画を成功させるためには、専門的な支援が不可欠です。

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