変化の激しい時代において、自社の組織のあり方について頭を悩ませることも少なくないでしょう。どういった組織構造が自社に最適なのかを考えるために、この記事では、「組織構造とは何か」といったことや、組織構造の基本的なモデルについて解説します。

組織構造の5つの基本モデルについて特徴やメリット・デメリットを紹介するので、自社にとって最適な組織構造を設計するためにもぜひ参考にして下さい。

組織構造とは?

組織構造とは、組織の業務や責任、権限がどのように配置されているかといった仕組みを示すものです。組織構造は、よく企業の組織図として示され、それぞれの部門が担当する業務や職務の範囲、部門間の関係、指揮系統の流れなどが把握できます。

「組織は戦略に従う」というアメリカの経営学者アルフレッド・チャンドラーの言葉にある通り、組織構造は経営戦略を実行するための分業の仕組みと見なされています。

組織構造には後で紹介する通り、さまざまな種類のモデルがあります。企業の経営戦略、事業内容などに応じて最適な組織構造はさまざまです。自社にあった組織構造を形成していくことが大切だといえるでしょう。

組織形態との違い

組織構造とよく似た言葉に組織形態というものがあります。組織形態も、組織の部門編成・分業体制などの仕組みを指し、組織構造とほぼ同じ意味で用いられています。

「企業の組織形態」「企業の組織構造」という場合に、両者の違いは特にありません。同義といえます。

 

企業が組織構造を重視すべき理由

企業が組織構造を重視すべき理由は、組織構造次第で業務の効率化が図れ、生産性を高められるからです。

適切な指揮系統を持つ組織構造のもとでは、指揮や命令がスムーズで、業務も円滑に進められます。また、部門間の連携の取りやすい組織構造のもとでは、社員同士が協力しやすく高いパフォーマンスが期待できます。

組織のパフォーマンスを高めるためにも、組織構造においては、適切に仕事や役割を分業し、部門や人材を配置することが重要です。

 

組織構造を考える際に留意したいこと

組織構造を考える際に留意すべき点について解説します。

組織構造には次の3要素が不可欠と言われています。
・共通の目的があるか
・貢献意欲が促進されるか
・コミュニケーションが円滑になるか

これら3要素は、アメリカの経営学者チェスター・バーナード提唱した「組織の3要素」として知られ、どれか一つでも欠けると組織が健全に機能しなくなるとされています。それぞれの要素の詳しい内容は次の通りです。

共通の目的があるか

共通の目的があることが組織にとっては重要とされています。

組織は同じ目的を持つ人々によって形成される傾向があります。同じ目的がある方が結束力も高まり、組織全体で同じ方向性で働きかけることが可能です。

企業においても、経営ビジョンや企業理念といった組織の目的を明らかにし、社員とその目的を共有することで、共通目的に向けて一丸となって突き進めます。

組織全体が同じ目的意識でまとまって機能するためにも、「共通目的」は組織を構成する重要な要素といえるでしょう。

貢献意欲が促進されるか

貢献意欲が促進される仕組みであることも組織構造の重要なポイントです。

社員に「会社に貢献したい」「チームや仲間の役に立ちたい」という意欲を持たせられると、社員は積極的に行動するため、高いパフォーマンスが期待できます。また、貢献意欲の高まりは、その組織で働きたいという社員エンゲージメントも高めるでしょう。

反対に、社員にとって積極的に貢献したいという意欲を持てない組織構造であると、社員のモチベーションやパフォーマンスは下がるといえます。

社員の貢献意欲を高める組織構造にするためにも、貢献度に応じて高く評価されるような仕組みとすることが大切です。

コミュニケーションが円滑になるか

コミュニケーションが円滑にできるかどうかも、組織構造の重要な点です。

社員同士の情報共有や意思疎通をスムーズに行えることは、効率的に業務を進めるために必要です。コミュニケーションがスムーズでないと、業務が円滑に進まない他、組織としてのまとまりもなくなってしまいます。

コミュニケーションを円滑にするためにも、チーム内や部門間のやり取りがしやすくなるような環境の整備やミーティングの機会を設けるなどの工夫が必要です。

 

基本的な組織構造モデル一覧

実際によく見られる基本的な組織構造モデルについて紹介します。代表的な組織構造モデルは次の5つです。
・機能別組織
・事業部制組織
・チーム型組織
・カンパニー型組織
・マトリックス型組織

以下で順に解説します。

機能別組織

機能別組織とは、仕事や役割を機能別に分けた組織のことです。例えば、「製造部」「営業部」「販売部」「人事部」というように、機能別の専門部署を設けて人を配置します。

専門部署内では、さらに職能別に人事配置がなされ、上位である方が権限の強いピラミッド型のヒエラルキー組織になる傾向です。

機能別組織は、部門ごとに専門分野に集中して仕事をするため生産性が高まります。日本でも古くからなじみのある組織構造といえるでしょう。

メリットは、業務の重複を避けられる点や、同じ専門性のある社員が集まるため、知識や情報を共有しやすく、専門性を高めやすいという点です。またトップダウンの経営がしやすいという利点があります。

一方のデメリットは、縦割り組織になり、部門間のコミュニケーションが取りにくい点です。また、経営層が意思決定をするため、経営層の負担が大きい、部門ごとに臨機応変に意思決定ができない、リーダーが育ちにくいといった欠点もあります。

事業部制組織

事業部制組織とは、提供しているサービス・商品といった事業ごとに、部門を分けた組織のことです。例えば、「食品事業部」「アパレル事業部」「海外事業部」というように複数の事業部門に分けます。さらに各事業部門の中に、それぞれの事業専門の「営業部」「製造部」「経理部」といった部署が配置されます。

事業部組織の特徴は、事業部門単位での意思決定が可能なため、業務プロセスの初めから終わりまで一部門内で完結できることです。事業部制組織は、複数の異なる事業を営む企業に向いている組織形態といえます。

事業部制組織のメリットは、事業部ごとに意思決定できるため、スピーディかつ効率的に業務を進められることです。事業部ごとに業務が完結するため、部門ごとにマネジメント力が必要となり、リーダーを育てやすい点も利点です。また合併や事業拡大などの組織再編があった場合でも、事業を継続しやすいといえます。

デメリットは、業務内容が他の部門と重複して全社的に見ると非効率となることがある点です。また、事業部ごとに意思決定するため、経営層の意思が反映されにくいこともあり、企業ビジョンとずれる可能性がある点も欠点といえます。

チーム型組織

チーム型組織とは、特定のプロジェクトを実行する際などに、短期的に必要な人員を招集してつくる組織のことです。各部署から異なる専門性やスキルを持つ人がプロジェクトの内容に応じてその都度集められ、業務を遂行し、プロジェクトが終わると解散します。

チーム型組織では、高い専門性を持つ人をその都度集めて業務を進められるため、高いパフォーマンスが期待できます。外資系企業などではよく見られる組織構造です。

チーム型組織のメリットは、プロジェクトごとに最適な人材を集められるため、高いパフォーマンスが期待でき、目的を達成しやすいことです。部門間を超えたコミュニケーションができるため、組織のサイロ化が防げて、業務の効率化を図れたり、イノベーションが生じやすくなったりします。

チーム型組織のデメリットは、元々配属されていた部署の業務と並行してチームに配属されるため、業務過多になり、通常業務に支障が出る可能性があることです。また、一時的な組織のため、プロジェクトが成功して一大事業として確立したくても、同じメンバーを維持したり、引き継ぎをしたりすることが難しい点です。

カンパニー型組織

カンパニー型組織とは、複数の事業を手掛ける企業において、事業部門ごとに独立採算制とし、社内分社化する組織のことです。

事業部型組織に似ているものの、違いは、カンパニー型組織では、事業部を一つの会社のように扱うため意思決定の裁量範囲が事業部型組織よりも大きいことです。そのため、よりスピーディ、柔軟に業務を遂行できます。

カンパニー型組織のメリットは、スピーディな意思決定ができる点や、事業における責任の所在が明確化される点、事業ごとに経営者としてのノウハウが蓄積できる点です。また、事業部型組織と同様に、合併や事業拡大などの組織再編があった場合でも、事業を継続しやすい点も利点です。

カンパニー型組織のデメリットは、事業部門ごとに経理や人事といった会社に必要な機能を持たせるため、機能が重複する点です。重複する分、経営資源を余分に費やしたり、コストがかかってしまったりします。

マトリックス型組織

マトリックス型組織とは、機能別組織と事業部別組織を組み合わせた組織のことです。例えばまず、食品事業部門、アパレル事業部門などと事業ごとに部門を設定します。さらに、機能別に設定された人事部・経理部などといった部署が、各事業部門の業務を横断的に担当します。

マトリックス型組織では、1人の社員が複数の部門・事業部の業務に携わることでき、柔軟に業務に取り組めます。

マトリックス型組織のメリットは、機能別組織と事業部別組織のメリットを活かせることです。具体的には、専門性に特化してパフォーマンスを高めると共に、事業部門ならではの意思決定の早さを活かすこともできます。

また、1人が複数の部門の仕事に関わるため、社内のコミュニケーションが活性化する点や、部門間の情報共有や連携がしやすい点もメリットです。

デメリットは、複数の部門に所属することによって、指示系統が複数となって混乱しやすいことや、業務の優先度を判断しにくいことなどです。

 

組織構造ごとの違い比較表

組織構造ごとの違いを比較表にまとめると次の通りです。組織モデルを比較する場合に活用して下さい。

概要メリットデメリット
機能別組織仕事や役割を機能別に分けた組織業務の重複を避けられる専門性を高めやすトップダウンの経営がしやすい縦割り組織になり、部門間のコミュニケーションが取りにくい意思決定をする経営層の負担が大きい部門ごとに臨機応変に意思決定ができないリーダーが育ちにくい
事業部制組織事業ごとに部門を分けた組織事業部ごとにスピーディかつ効率的に業務を進められる部門ごとにマネジメント力が必要となり、リーダーを育てやすい合併や事業拡大などの組織再編があっても、事業を継続しやすい
他の部門と業務が重複して全社的に見て非効率となることがある事業部ごとに意思決定するため、企業ビジョンとずれる可能性がある
チーム型組織プロジェクト実行に際し、短期的に必要な人員を集めてつくる組織専門性のある人材を集められるため、高いパフォーマンスが期待できる部門間を超えたコミュニケーションができ、業務の効率化やイノベーションが起きやすい業務過多になり、通常業務に支障が出る可能性がある一時的な組織のため、継続する場合の人材確保・引き継ぎが難しい
カンパニー型組織事業部門ごとに独立採算制とし、社内分社化する組織スピーディな意思決定ができる事業における責任の所在が明確化される事業ごとに経営者としてのノウハウもできる組織再編の場合でも、事業を継続しやすい経理や人事といった機能重複し、経営資源やコストを余分に費やすことがある
マトリックス型組織機能別組織と事業部別組織を組み合わせた組織機能別組織と事業部別組織のメリットを活かせる1人が複数の部門の仕事に関わるため、社内のコミュニケーションが活性化する部門間の情報共有や連携がしやすい指示系統が複数となって社員が混乱しやすい複数部門の仕事を同時に行うため、業務の優先度を判断しにくい
 

会社の経営方針に合わせて最適な組織構造を設計しよう

組織構造は経営戦略を実行するための分業の仕組みといえます。業務を円滑に進め、社員に高いパフォーマンスを発揮してもらうためにも、自社の経営方針や事業内容に合った最適な組織構造にすることが大切です。

会社の組織構造には、機能別組織、事業部制組織、チーム型組織、カンパニー型組織、マトリックス型組織といった形態があります。特徴やメリット・デメリットを踏まえて自社に合った組織構造の設計をすることがおすすめです。

理想の組織構造の実現には、最適な仕組みを設定すると共に、最適な人材を配置することも大切です。

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