社員に活気がなく良い組織風土ができないか、悩んでいる人事担当者は、多いのではないでしょうか。組織風土を改革することは大切ですが、長年根付いたものなので変えるのは難しいため注意が必要です。

そこで本記事では、組織風土を改善するメリットについて解説します。既に改善に着手した企業だけではなく、今後取り組みたい担当者にもおすすめの内容となっています。ぜひ、最後までご覧下さい。

組織風土の意味

組織風土とは、事業部や部署に根ざした価値観や考え方を指す経営学の言葉です。風土は、その土地に根付いた独自のルールや価値観、地域ごとに異なる生活習慣などを指します。自然に発生し、時代の流れや外部の影響を受けにくいでしょう。

組織風土は、事業部や部署で自然に生まれ長い時間をかけてできたものなので、変更するのは難しいです。組織風土には、お客様ファーストや成果主義などが挙げられ、トヨタ自動車の組織風土は「教え教えられる風土」です。

健全な組織風土ができると、社員の帰属意識が高まります。また、組織風土は企業の経営計画や人事評価などを構成する要素ともなります。社員が働きやすい環境をつくるためには、健全な組織風土が重要です。

  

組織風土と似た用語との違い

組織風土を組織文化や社風などと混同する人は、多いのではないでしょうか。ここでは、組織風土とよく似た用語について解説します。違いを理解して、組織風土の改善を進めていきましょう。

組織文化との違い

組織文化とは事業部や部署内での価値観やルールのことで、経営陣が自社のビジョンや目的を達成させるために社員と共有するものです。組織文化は、企業のビジョンや時代、社員の価値観によって柔軟に変更できます。しかし、組織風土は事業部や部署に根付く普遍的な価値観や思想を指し、変更は難しいです。

企業文化との違い

企業文化とは企業の信念や信念に基づいて行う言動のことで、企業と社員が共有する価値観や行動規範を指します。経営陣が自社のビジョンを発信し、社員に示すことが可能です。企業文化は、時代や他社の影響を受け変化します。

企業文化は会社全体で、組織風土は事業部や部署を指し、規模の大きさが異なります。また、文化は経営陣が社員に示し時代によって変更できますが、風土は自然発生的に発生し変えるのが難しいことが、相違点です。

社風との違い

社風とは、社員個人が感じる社内の雰囲気のことです。例えば、活気があるや落ち着いているなど、社員個人が感じる自社の印象を示します。組織風土は事業部や部署などの団体が感じるものですが、社風はそれぞれの個人が持つ印象を示すことに違いがあります。

   

組織風土が悪い会社|変革しないとどうなる?

組織風土が悪いと業績に影響するため、放置せず変革することが重要です。例えば、トップダウンで決定する悪い組織風土があったとします。部下からの意見や提案を受け入れない組織風土では、課題を認識していても改善や提案をしないようになり、言われたことだけこなすようになるでしょう。

上司の指示に従わない社員は評価されないと分かると、不満を持つものが出ます。上司の言いなりになってしまい、やりがいを感じない社員は離職するかもしれません。

社員の行動やモチベーション、生産性、定着率などに組織風土は影響します。組織風土が悪い状態では業務改善が行われず社員のやる気が低いため、業績を上げるのは難しいでしょう。

   

改革は必要?組織風土を改善するメリット

自社の経営を安定させるには、組織風土の改善が必要です。ここでは、組織風土を改善するメリットについて解説します。根付いた組織風土を改善するのは大変ではありますが、大きなメリットがあります。組織風土を改善する重要性を理解しておきましょう。

企業理念・コンプライアンスなどを共有できる

組織風土を改善し企業理念やコンプライアンスを社員に示しておくと、同じ目標に向かって行動できます。コンプライアンスとは法令遵守を指し、就業規則や倫理観を守ることも含みます。企業理念やコンプライアンスが社員に共有されていれば、経営陣と事業部が目標を共有でき同じ方向を向いて仕事ができるでしょう。

主体的に社員が行動し協力し合える組織となり、経営陣が支持されやすくなります。企業理念やコンプライアンスを明文化したものが組織風土になるため、社員に共有でき、同じ目標に向かって行動できるようになります。

時代に応じて適切にマネジメントできる

時代に合った組織風土にすれば、適切なマネジメントができ、自社が生き残れる可能性が高まるでしょう。VUCA時代である現代では、時代に合った組織風土にすることが重要です。

VUCA時代とは、将来の予測が難しく複雑で物事を捉えにくい状態を指します。VUCAは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の4つの言葉の頭文字を取った造語です。

組織風土が時代に合わなければ、企業経営が難しくなり競合他社に負ける可能性があります。テレワークを導入して働きやすい環境を社員に提供し、外国籍の人や障害者も受け入れ多様性を尊重できる部署を目指し、組織風土を改善することが大切です。

社員のメンタル面に良い影響を及ぼす

組織風土を改善すると、自分のことを肯定的に捉えられ安心できるため、社員のメンタル面に良い影響が出ます。年功序列で上下関係が厳しい組織風土では、自分のことを周りがどのように評価するかが気になり、いつもビクビクした状態になり得るでしょう。

周りを気にしながら働くと、提案や改善を避けて上司の顔色をうかがいながら失敗しないように保守的になる場合があります。組織風土を改善し安心できる部署で働く社員は、伸び伸びと仕事ができるようになります。意見や提案などのコミュニケーションが活発になるでしょう。

生産性の向上によって経営状況を改善できる

組織風土を改善すれば、業務改善の提案を行い効率的に動き生産性が高まるため、経営状況が改善できるでしょう。良い組織風土では意見や発言が受け入れられるため、積極的に意見交換するようになります。

良い事業部にしたいという意欲があるため、社員同士のコミュニケーションが活発になるでしょう。業務改善の意見交換や自発的な教え合いが発生し、生産性向上につながります。

良い組織風土では、自社に愛着が湧き発展に貢献したい気持ちが高まり、モチベーションアップにつながります。

エンゲージメントが高まり良い人間関係を構築できる

組織風土を改善するメリットは、部署内の一体感を高め良い人間関係が構築できることです。良い組織風土では働きやすい環境となるため、エンゲージメントが高まります。

エンゲージメントは契約や約束を意味し、会社への愛着や思い入れを示す言葉です。エンゲージメントが高まると、居心地が良くなり部署内でのコミュニケーションが活発になり、信頼関係を築きながら仕事ができる環境となります。

組織内での一体感が生まれ長く働きたいと思える環境となりやすく、定着率が高まり離職が減るでしょう。組織風土の改善は、部署内の良好な人間関係の構築に役立ちます。

    

組織風土の構成要素

ここでは、組織風土の構成要素について解説します。組織風土の構成要素には、ハード面とソフト面があります。組織風土の構成要素を確認して、手が付けやすい場所から改善していきましょう。

ハード面

組織風土のハード面とは、明文化された制度やルール、視覚化できるもののことです。具体的には以下のようなものが、ハード面です。

  • 経営理念
  • クレド
  • ビジョン
  • 経営計画
  • 組織体制
  • 就業規則
  • 事業内容 など

クレドとはラテン語で志や信条を意味し、経営理念を実現させる行動指針を指します。ハード面は、経営層で議論して主体的に整理、変更が可能です。組織風土のハード面は、社員の考え方に影響を与える重要な要素です。

例えば、毎月の残業時間を30時間以内にすると就業規則で決定すると、生産性を向上させようと社員は動き、自分のプライベートも大切にしようと考えるでしょう。ハード面は、経営層が変更できるため改善しやすい要素です。

ソフト面

組織風土を構成するソフト面は視覚化できないもので、社員一人ひとりの心構えや価値観によって構成されています。目に見えないため、ハード面よりも膨大にあります。組織風土のソフト面には、以下のようなものがあります。

  • 社員のモチベーション
  • 社員のエンゲージメント
  • 部署内でのチームワーク
  • 社員同士の信頼関係 など

モチベーションやチームワークなど、組織風土のソフト面は部署内の価値観や社員同士の人間関係などの明文化されないものです。例えば、部署内で困っている人がいれば、気付いた人が積極的にサポートすることが、ソフト面です。

また、組織への愛着や思い入れであるエンゲージメントが高ければ、社員のメンタルに良い影響を与えます。ソフト面の醸成がなされていれば、積極的に報告・連絡・相談を行うようになるでしょう。

 

イノベーションのコツ|組織風土を変えるには?

ここでは、組織風土を変えるコツについて解説します。フレームワークを利用したりアンケート調査を活用したりすることは、組織風土を変えるために効果的です。組織風土を今すぐに変えたい担当者は、ぜひ参考にして下さい。

理想像を明確にする

組織風土で課題となっていることを明確にするために現状分析を行い、理想である目指す先を決めると組織風土が改革できる可能性が高まります。組織風土を変えるには、まず現状を十分に分析することが重要です。

組織内の社員にヒアリングし他部署の責任者に意見をもらい現状分析を行ったら、目指す理想像を描きましょう。部署内でだけ行うのではなく、経営陣の意見を聞いたり議論に参加してもらったりすると、経営理念やビジョンとブレがなく、組織風土を改善できるようになります。

フレームワーク「7S」を意識する

組織風土を変更するには、さまざまな視点から検討することで改善の手掛かりとなります。組織風土を変えるには、マッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した組織変革のためのフレームワーク「7S」を活用してみましょう。7Sの内容は、以下の通りです。

  • 戦略(Strategy)
  • 組織構造(Structure)
  • システム(System)
  • 共通の価値観(Shared Value)
  • スキル(Skill)
  • 人材(Staff)
  • 組織風土(Style)

戦略・組織構造・システムは、組織風土のハード面です。経営戦略や部署の改変、社内制度などは、経営陣や部門長が決断すれば改変できます。しかし、共通の価値観から組織風土までのソフト面を急に変更するのは難しいです。

ハード面だけを変更してもソフト面は急には変えられないため、ハード面とソフト面をバランス良く時間をかけて変更していくために7Sを活用するのが良いでしょう。

他社の成功事例を参考にする

他社の成功事例からの学びを自社に生かすことができれば、組織風土を変えることは可能です。競合や異業種の成功事例と自社を比較検討し、課題を明確にすることが大切です。また、自社の他部門で参考になる成功事例があれば、参考にしましょう。

ただし、他社の成功事例を真似るだけではうまくいかない可能性があります。成功した他社は、長い時間をかけて組織風土の改革を成功させています。なぜ、その企業が改革できたのか、本質を捉えなければ組織風土を変えるのは難しいでしょう。成功事例を参考に組織風土を変えるには、他社から学ぶ姿勢が大切です。

組織風土に関するサーベイ(アンケート調査)を参考にする

組織風土を変えるには、サーベイが役立ちます。サーベイから自社の傾向を理解でき、自社を客観的に捉えられ改善につなげられるでしょう。例えばリクルートが行った組織風土と業績の相関性の調査では、チャレンジャー風土やオフィサー風土、コーディネーター風土などと組織風土を分類し、企業によって注力すべき点が異なることが分かりました。

チャレンジャー風土の企業では、トップの意思決定スピードが業績を向上させますが、コーディネーター風土にはそのような意思決定は有効ではない可能性が高いです。またオフィサー風土には、評価の納得性が重要となりますが、個々の希望を汲んだ人事異動は業績向上にはつながらない、ということがリクルートの調査で分かりました。

サーベイを活用すれば、客観的な視点で自社の組織を見ることができ、的確に課題の特定ができます。サーベイから自社の傾向を理解することで、効果的に組織風土の改善ができるでしょう。

 

組織風土を改革する際の注意点

ここでは、組織風土を改革する際の注意点について解説します。根付いた悪い組織風土を改革することは大切ですが、状況が悪化する場合があるため、慎重に行うことが重要です。組織風土を改革する前に確認しておきましょう。

組織風土の醸成には時間がかかると認識しておく

組織に根付いた風土を急に変えるのは難しいため、時間がかかると認識しておくことが大切です。長年に渡りこれまでの組織風土で仕事をしてきた人の中には組織風土の改革に反対するものが出るでしょう。

また、組織風土には目には見えないソフト面もあるため、今の組織風土を洗い出すにも時間が必要です。組織風土を改革するには、経営層が実施できるハード面を優先して行いましょう。ソフト面は社員の理解を得ながら、少しずつ時間をかけて行うことが大切です。

会社内で不和が生じないよう注意する

年功序列から成果主義へ変更するような大きな変革を行うと、反対する声が上がる場合があるため注意が必要です。仕事のやり方を変更する場合、変化を行う過程で組織が機能しなくなり、お客様や取引先から苦情が出ることもあります。

お客様や取引先からの苦情に対応する期間が長くなれば、社員の不満がたまり組織内の人間関係が悪化する可能性があります。社内通知や説明会などを事前に行い、現場の社員に理解してもらうことが、組織風土を改革するには重要です。改革を行っている際に仕事がやりにくいようなことがあれば、相談できる担当を設けることもおすすめです。

悪い組織風土が根付くと経営状況が悪化する

組織風土を改革しても中身が伴わないものなら、悪い風土が根付き経営状態が悪くなる場合があるため注意が必要です。例えば、男性社員にも育児休暇の取得を促したとしても、周りの人の仕事が増えるだけでは、取得しにくいでしょう。

業務効率を上げ、部門長が率先して育児休暇を取るなど、取りやすい環境も一緒につくることが重要です。形だけつくっても、適切に運用できなければ、悪い組織風土となる場合があります。悪い風土が根付けば、売り上げや利益に影響するため、経営状況を悪化させかねないため、注意しましょう。

 

まとめ

組織風土とは、事業部などに自然発生的に根付いた社員の価値観や考え方のことです。組織風土は社員の生産性と結び付き、売り上げや利益に影響するため、良い組織風土を根付かせることが大切です。良い組織風土を根付かせるには、社員と対話し理解することが重要です。

しかし、面談する時間が十分に取れないと悩む担当者は、多いのではないでしょうか。短い時間で社員を知り効率的な面談を行うには、ノウハウの活用が大切です。

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