新卒採用は、中小企業やベンチャー企業にとって大きな転機となる可能性を秘めています。しかし、新卒採用を実行する決断には、慎重な検討が必要です。

当記事では、新卒採用の「メリット・デメリット」「中途採用との比較」について、企業側の視点から解説します。自社に最適な採用戦略を見つけたいと考える場合には、ぜひ参考にして下さい。

新卒採用のメリット

新卒採用には、企業にとって多くのメリットがあります。コスト面での利点から、組織の活性化まで、さまざまな観点から新卒採用のメリットを探ってみましょう。主要な4つのメリットは、以下の通りです。

採用コストを抑えられる

新卒者は一般的に給与水準が低く設定されているため、初期の人件費を抑えやすくなります。また一括採用により、複数の人材を効率的に採用できる点も、1人当たりの採用コストも抑えることにつながるでしょう。

新卒者は長期的な視点で育成できるため、将来的な人材投資としても効果的です。加えて「大学」や「就職サイト」を通じた採用活動が一般的であり、中途採用に比べて、求人広告費などの経費も抑えられる傾向にあります。

企業文化の継承が見込める

新卒者は社会人経験がないため、企業文化を受け入れやすい傾向にあります。既存の価値観や習慣に縛られることなく、自社の企業文化を素直に吸収しやすいでしょう。また若い世代ならではの柔軟性と適応力により、企業文化を理解し体現することが期待できます。結果として、企業の理念や価値観の継承につながります。

さらに、新卒者は長期的なキャリアを一つの企業で築く可能性が高く、時間をかけて企業文化を浸透させられるでしょう。

幹部候補を採用できる

新卒採用は、将来の幹部候補を獲得する絶好の機会です。長期的な視点で育成することで、自社の理念や業務を深く理解した幹部を育てられます。企業特有の知識やスキルを一から学ぶため、企業に最適化された幹部として成長する可能性が高くなります。

新卒者を幹部候補にするコツは、早い段階から「責任ある仕事」を任せ、リーダーシップを発揮する機会を与えることです。計画的なキャリアパスを提示し、モチベーションを維持しながら成長を促すことも重要です。

組織の年齢構成を変えられる

新卒採用を実施し、さまざまな年齢層が存在する状態にすれば、多様な視点や経験が組織にもたらされ、イノベーションが生まれやすくなります。若手社員の新しい視点や技術が、「組織の変革」や「業務プロセスの改善」につながることも期待できます。

若手社員の存在により組織全体が活性化すれば、人材の急激な減少も防げる可能性があるでしょう。新卒採用を継続的に行うことで、人材の世代交代もスムーズに進められます。

新卒採用のデメリット

新卒採用には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。デメリットも理解することで、より適切な採用戦略を立てられるでしょう。新卒採用に伴う主なデメリットは、以下の通りです。

戦力になるまでのコストがかかる

新卒者は社会人としての経験が乏しいことから、戦力として活躍できるまでに、一定の時間とコストがかかることも事実です。具体的には、「ビジネスマナー」「業界知識」「専門スキル」などを習得するための研修が必要となり、習得にかかる費用は決して小さくはありません。また、OJT(On-the-Job Training)を通じて実践的なスキルを身につける過程では、先輩社員の時間も割かれることから、間接的なコストも発生するでしょう。

面接など採用活動に時間がかかりやすい

新卒採用の採用活動では、「複数回における選考の実施」や「企業説明会・勉強会の開催」など、多くの時間と労力を要する傾向にあります。また、学生の就職活動時期に合わせて活動を行う必要があるため、企業側の負担は大きくなりがちです。

さらに、内定から入社までに半年程度の期間が空くケースも多く、その間の内定者フォローも欠かせないでしょう。面接などの採用活動は、人事部門だけでなく、現場の管理職の時間も奪うことがあります。

景気に左右されやすい

新卒採用市場は、景気の影響を受けやすい特徴があります。好景気の際には、大手企業を中心に採用競争が激しくなり、中小企業やベンチャー企業にとって優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。

対する不景気の際には、先行きが不透明なため、採用の予算や枠を確保できない可能性もあるでしょう。新卒採用では、経済状況によって採用戦略を柔軟に変更する必要があり、長期的な人材計画が立てにくいという課題が見受けられます。

内定辞退や早期離職の可能性がある

新卒採用では、常に内定辞退や早期離職の可能性があるといっても、過言ではありません。丁寧にフォローを実施しても、「学生の価値観が変化」や「他社からのオファー」により内定を辞退されるケースも存在します。

入社後も、「イメージと現実のギャップ」や「キャリアプランの変化」などにより、早期離職につながることもあります。内定辞退や早期離職の問題は、採用コストの無駄遣いだけでなく、組織のモチベーションにも悪影響を与える可能性があるでしょう。

中途採用のメリット

中途採用には、新卒採用とは異なる独自のメリットがあります。即戦力の確保や新しい知見の獲得など、企業にとって魅力的な要素が含まれています。中途採用を実施する主なメリットは、以下の通りです。

即戦力の人材を獲得できる

中途採用における最大のメリットは、即戦力となる人材を獲得できることです。他社での実務経験を有する中途採用者は、入社後すぐに自身のスキルや知識を活かして、業務に取り組めます。特に専門性の高い職種や、経験が重視される管理職の採用において、即戦力を採用する利点は大きいでしょう。また業界事情に精通していることで、「新規プロジェクトの立ち上げ」や「既存事業の改善」にも、即座に貢献できる可能性が高まります。

研修のコストを抑えられる

中途採用では、新卒採用と比較すると、研修コストを大幅に抑えられる可能性があります。なぜなら、採用される人材が、既に基本的なビジネススキルや専門知識を保持しているためです。また同業他社から転職した場合、業界特有の知識やスキルを有することから、「自社特有の業務プロセス」や「企業文化に関する研修」に集中できます。結果として、新人教育にかかる時間とコストを削減し、効率的な人材活用が可能となるでしょう。

新しいノウハウを獲得しやすい

中途採用は、企業に新しい視点やノウハウをもたらす機会になり得ます。同業他社や異業種から入社してきた社員は、これまでの経験や知識を活かし、既存の業務プロセスの改善や新しいアイデアの提案が期待できるでしょう。新たなノウハウの獲得によって、組織全体の生産性向上やイノベーションの創出につながる可能性があります。

異なる企業文化や働き方を経験した人材が加わることで、組織の多様性が高まり、柔軟な思考や問題解決能力の向上も期待できます。

中途採用のデメリット

中途採用には多くのメリットが存在する一方で、企業側が注意すべきデメリットも存在することが事実です。以下では、中途採用に伴う主な3つのデメリットについて解説します。

すぐに転職される可能性がある

中途採用の場合、新卒の早期離職とは異なる背景で、すぐに転職される可能性があります。中途採用者は「既に転職の経験がある」ため、職場環境や仕事内容が期待と異なる場合、容易に次の転職を決断することがあるからです。

特に、スキルや経験が市場で高く評価される人材ほど、より良い条件のオファーを受けやすく、転職のハードルが低くなります。中途採用を採用しても、すぐに転職されると、採用にかけたコストや時間が無駄になるでしょう。

会社の文化に合わない可能性がある

中途採用者が、自社の企業文化に馴染めないケースも少なくありません。長年培ってきた前職での習慣や価値観が根付いているため、新しい環境への適応に時間がかかることがあります。

前職と大きく異なる企業文化や業務スタイルの場合、摩擦が生じる可能性が高まります。ギャップが生じることで、チームワークの低下や業務効率の悪化につながることもあるでしょう。既存社員との間に軋轢が生まれ、職場の雰囲気が悪化する事例も見受けられます。

新卒採用を前向きに検討すべき企業の特徴

新卒採用は、全ての企業に適するわけではありません。しかし、特定の特徴や目標を持つ企業にとっては、非常に効果的な採用戦略となります。新卒採用を積極的に検討すべき企業の特徴は、以下の通りです。

企業文化を継承したい

企業文化の継承を重視する企業にとって、新卒採用は効果的な手段だといえます。新卒者は、社会人としての経験がないため、自社の企業文化を素直に受け入れやすい傾向にあるからです。既存の価値観や習慣に縛られることなく、企業の理念や価値観を深く理解し、体現することが期待できるでしょう。また長期的な視点で育成することで、企業文化の担い手として、成長していくことが期待できます。

既存の事業規模を拡大させたい

既存の事業規模を拡大させたい企業にとっても、新卒採用は魅力的な選択肢です。新卒者の採用によって、組織に新しい活力を注入し、成長の原動力を得られます。若い世代特有の柔軟な思考や新しいアイデアは、既存事業の改善や新規プロジェクトにも貢献するでしょう。

長期的な視点で人材を育成できるため、事業の継続的な拡大に必要な人材を確保できます。新卒採用を続けることで、組織における年齢構成のバランスを保ちながら、安定的な成長を実現できます。

若手を成長させたい

若手社員の成長を重視する企業にとって、新卒採用は理想的な手段だといえます。新卒者を採用し、時間をかけてじっくり育成することで、自社のニーズにマッチした人材を輩出できます。若手を成長させる風土を用意すれば、組織全体の活性化やイノベーション促進も期待できるでしょう。若手の成長を通じて、中堅社員や管理職のマネジメントスキルも向上し、組織全体の底上げにつながる可能性もあります。

中途採用に力を入れるべき企業の特徴

中途採用は、特定の企業ニーズや状況などにおいて、効果的な採用戦略となります。中途採用に力を入れるべき企業の主な特徴は、以下の通りです。

即戦力を求めている

即戦力を求める企業にとって、中途採用は適しています。中途採用者は、既に他社での実務経験があることから、入社後すぐに自身のスキルや知識を活かして業務に取り組めるからです。「専門性の高い職種」や「経験が重視される管理職」などでは、中途人材を採用する利点は大きいでしょう。業界事情に精通していれば、新規プロジェクトの立ち上げや既存事業の改善にも、即座に貢献できる可能性が高くなります。

新規事業を立ち上げたい

新規事業の立ち上げには、特定の専門知識や経験、さらには業界とのつながりが不可欠です。中途採用を通じて、豊富な経験や人脈を持つ人材を獲得することで、事業の立ち上げをスムーズに進められます。

また異なる企業や業界での経験を持つ人材は、新しい視点や革新的なアイデアをもたらす可能性が高く、新規事業成功の鍵となるでしょう。中途採用者のネットワークを活用することで、新規事業に必要なパートナーシップの構築にも、有利に働く可能性があります。

育成コストを抑えたい

育成コストを抑えたい企業、赤字で早期の黒字化を目指す企業には、中途採用が適しています。新卒者には、基本的なスキルの習得から始める必要があり、戦力化までに時間とコストがかかるでしょう。

中途採用者は基本的なスキルを有するため、最小限の研修で業務に従事できます。研修にかかるコストだけでなく、育成に関わる社員の時間的コストも削減が可能です。また即戦力として活躍できるため、早期に投資回収を見込むことができ、経営の安定化にもつながります。

新卒採用を成功させるコツ

新卒採用を成功させるには、戦略的なアプローチと綿密な準備が必要です。コツを押さえることで、効果的な新卒採用を実現し、企業の成長につなげられます。新卒採用を成功に導くためのコツは、以下の通りです。

採用の目的を決める

新卒採用を成功させる第一歩は、明確な採用目的の設定です。目的を決めないまま採用活動を進めると、ミスマッチが生じやすく、早期離職や人材の有効活用ができないといったデメリットが生じる可能性があります。

そもそも本当に新卒採用が必要なのか、という根本的な問いから始めることが重要です。例えば、「将来の幹部候補を育成したい」「新しい視点を組織に取り入れたい」など、具体的な目的を明確にすれば、適切な採用基準や選考方法を設定できます。

採用人数を明確に設定する

採用人数が定まらないと、「必要以上に採用し人件費の増大につながる」「必要な人材を確保できず業務に支障が出る」といった可能性が危惧されます。適切な採用人数を設定するには、現在の組織構成・将来の事業計画・退職予定者数について、総合的な判断が必要です。

また、部門ごとの採用枠を設定すれば、バランスの取れた採用活動を展開できます。明確な数値目標があることで、採用活動の進捗管理も容易になり、効率的な採用活動につながります。

自社の長所と短所の両方を伝える

新卒採用を成功させるには、自社の長所だけでなく、短所も伝えることが重要です。「セルフスクリーニング」と呼ばれる手法であり、入社後のギャップを防ぐ効果があります。長所だけを強調すると、入社後に現実とのギャップに直面し、早期離職につながる可能性があるでしょう。短所も正直に伝えれば、自社の特徴を深く理解した上で、入社を決める学生を獲得できます。

「業務量が多いが成長機会も多い」「給与は低いが、働きやすい環境がある」など、具体例を挙げて説明することが効果的です。

まとめ

新卒採用は、企業文化の継承や既存事業の拡大に適するものの、即戦力を求める場合には中途採用が適します。重要なのは、自社の特徴や目的を理解し、最適な選択および採用戦略を立てることです。

しかし、多くの企業にとって、効果的な採用活動を行うことは容易ではありません。採用に関する悩みを解決し、最適な人材獲得を目指すなら「kimete」のサービスがおすすめです。

kimeteは、採用戦略の立案から選考プロセスの効率化まで、企業の採用活動を総合的にサポートします。採用活動を適切に進めたい場合、まずはkimeteの資料をチェックしてみて下さい。