適切な選考基準を設けると、採用活動の質やスピードが向上します。選考基準があることで、主観を排除した公正な採用や、ミスマッチ防止を実現できるでしょう。とはいえ、「どのように選考基準を定めれば良いか?」と悩む人も多く見受けられます。

そこで当記事では、選考基準の意味・設定方法・項目例はもとより、面接やインターンでの採用に活用するコツを解説します。選考基準の賢い設定方法を知り、採用活動の質を向上させたい人は、ぜひ参考にして下さい。

採用活動に役立つ「選考基準」の意味・言い換え例

選考基準の意味とは、採用する人物を明確に決定すべく用意した判断基準です。選考基準は、採用基準や評価基準と呼ばれることもあります。採用基準は、募集ポジションに必要な能力に応じ、スキル・経験・性格などから決めます。前もって選考基準を用意すれば、面接官も「どういった人物を採用すべきか」が理解できるため、選考活動をスムーズに展開できるでしょう。

企業によっては、選考基準を開示するケースも見受けられます。選考基準をオープンにすると、選考基準に一致する(または近い)人からの応募が集まりやすく、より効果的な採用を実施できるでしょう。

選考基準の項目例

選考基準で設ける項目は、企業によって異なるものの、一般的には以下3つに関する項目が設定されます。

  • 保有スキル
  • 人物像
  • 会社との相性

保有スキルでは、一定の業務レベルを予想すべく、「営業経験5年以上」「実用英語技能検定2級資格」など、具体的な経験や資格を項目として用意します。人物像では、個人の本質や性格を見極めるべく、周囲とのコミュニケーション方法や仕事に対する姿勢などを項目として設定すると良いでしょう。

会社との相性では、候補者の「価値観」「会社に対して重視する要素」などを項目として設定することで、双方の親和性を判断できます。

重要な理由|選考基準を設定するメリット

採用活動における「選考基準の重要性」を理解し、実際の採用で選考基準を設定する企業も多く見受けられます。採用活動で選考基準を設定する主なメリットは、以下の通りです。

公平な評価・選考ができる

選考基準が存在しないと、候補者の採用・不採用を決断する際に、面接官が独自の判断で決めなければなりません。面接官個人の判断に委ねられると、好き嫌いや固定観念などに左右されがちであり、ただしく選考できない可能性が高まるでしょう。

選考基準という統一指標が存在すれば、面接官によって採用基準がバラバラといった自体を防止できるため、誰が面接を実施しても同様の結果を導きやすくなります。統一性のある採用は、公平感や透明性をアップさせるのはもちろんのこと、採用した社員のレベル格差も抑制できるでしょう。

ミスマッチを避け、求める人材を採用しやすくなる

選考基準を設けない採用活動は、面接官によって判断にばらつきがあるため、採用ミスマッチが生じやすく早期離職や生産性低下につながります。スキル不足な人材を採用し、業務そのものがまわらないケースや、必要以上に優秀な「オーバースペック人材」を採用してしまう事例もあるでしょう。ロースキル人材・オーバースペック人材と共に、会社に対してミスマッチを感じる点は共通です。

選考基準を設けると、採用したい社員像が「明確な状態」で採用活動を展開できるため、採用のミスマッチ防止につながり、求める人材を採用しやすくなるでしょう。

面接・書類選考など、採用活動の効率を高められる

面接・書類選考のいずれにおいても、選考基準という「判定のものさし」が存在することで、最短かつ効率的な採用活動が実現します。また採用に課題を感じた際にも、選考基準が存在すれば、改善策も見つけやすくなります。

例えば、そもそもの応募が少ない場合、募集要項に記載した選考基準が高いのかもしれません。市場調査をし「記載した選考基準には、もう少し高い給与が必要」と判明すれば、採用基準を下げるか給与額をアップさせるといった対策ができるでしょう。選考基準があれば、採用活動におけるPDCAも回しやすくなります。

選考基準の設定方法を分かりやすく解説

ただしく選考基準を設定すると、「公平な評価・選考の実現」「ミスマッチの防止」「選考活動の効率性アップ」などのメリットが期待できます。適切な選考基準の設定方法は、以下の通りです。

中途採用・就活生などのターゲットをふまえて転職・新卒市場を調査する

各ターゲット(例:中途採用や就活生)の選考基準を設定する際には、求めるレベルや要素は異なると考えられる点から、それぞれ市場調査を行うことが大切です。

例えば中途採用者には、即戦力として活躍できる点を重視するため、選考基準として「経験・スキル」や「応募の理由」が重視されます。対する新卒採用では、スキルよりも伸びしろが大切なことから、積極性や協調性が重視されます。

市場調査では、競合他社の選考基準や、募集ポジションの有効求人倍率を確認すると良いでしょう。高倍率なポジションは競争率が高いため、自社の選考基準が高ければ改善が必要です。

厚生労働省の採用関連情報を把握しておく

厚生労働省の採用関連情報を把握すると、選考基準の設定に役立ちます。例えば、以下のようなページです。

厚生労働省_採用・選考時のルール

厚生労働省_公正な採用選考の基本

上記の資料には、公正な採用を実現すべく「適切な採用の考え方」や「採用のNG行動」などが記載されています。適性とは無関係な要素を選考基準に設けてしまうと、適切な採用が実現しないばかりか、事実が公になれば就職差別をする会社だとレッテルを貼られてしまうでしょう。そのため、選考基準づくりでは、国の決まりや推奨事項が記載されている「厚生労働省の採用関連情報」の把握も必要です。

能力・スキル・経験を明確化する

人間性や価値観がフィットしても、実務ができない人を採用すれば、チームや企業にとって負担になる可能性が高いでしょう。

そのため、選考基準として、募集ポジションで求める能力・スキル・経験を設定する必要があります。項目を明確化する際には、募集ポジションで採用したい「理想の人物像」を精査すると良いでしょう。例えば、ベンチャー企業の営業職・新卒採用において「半年ほどの研修ですぐに活躍できる人物」が理想だとします。その場合、「柔軟性」「バイタリティー」「なんらかのリーダー経験」などに関する選考基準を設けると良いでしょう。

企業理念・価値観などの定量的な項目も設定する

先述の能力・スキル・経験などの選考基準は、「簿記2級保持」「営業経験3年以上」などと数値やデータで表現できる定量的な内容です。選考基準では、数値などで表しにくい定性的な項目も設定します。

~定性的な項目(例)~

  • 価値観
  • 理想的な働き方
  • 仕事への姿勢

企業理念や価値観などの定性的な項目も設定することで、採用ミスマッチを防止でき、従業員の生産性やモチベーションを高められるでしょう。また採用ミスマッチの防止によって、採用に費やす時間・費用の削減が実現し、担当者の負担を軽減させることも期待できます。

人事だけで設定せず、現場・経営陣など自社内のニーズを把握する

選考基準を設定する際には、人事だけで決定せず、現場や経営陣などのニーズも把握することが大切です。実際に業務をまわすのは現場であり、会社の最終的な方針を決めるのは経営陣だからです。現場や経営陣の声を無視して選考基準を設定すると、募集ポジションに即した人材採用につながらず、ミスマッチが生じる傾向にあります。

「現場で欲する人物像」と「会社として必要な人物像」を精査し、両意見の重なる部分が、募集ポジションで必要な人物だといえます。出てきた理想の人物像に対し、定性的な部分と定量的な部分が網羅できる選考基準を用意しましょう。

重視する項目の優先順位を決める

用意した選考基準について、全ての条件を満たす人材を見つけることは難しいため、選考基準を絞るべく、重視する項目の優先順位を決めます。優先順位を決める際には「必須条件」「歓迎条件」「不要条件」の3つに分類すると良いでしょう。

必須条件に分類する内容は、条件が満たされる人物を採用しないと「業務に支障が出るレベルの内容」です。歓迎条件は、あれば直可という内容であるものの、条件を満たす人物がいれば積極的に採用したい内容だといえます。

不要条件は読んで字のごとく、今回の選考基準には載せなくて良い要素です。

選考基準の設定後の見直しポイント

選考基準の設定後に、「思うように採用ができない」といった悩みが出るケースも見受けられます。設定後の選考基準を見直す際のポイントとして、3つのケースごとに内容を紹介します。

うまく母集団を形成できない場合

うまく母集団形成ができないと、採用の土台となる「応募者の総数」そのものが少なくなり、採用確率を下げることにつながるでしょう。思うように採用活動が進まなければ、その分において採用コストも発生します。

応募数が多過ぎる場合にも、選考に時間がかかるため、適切な人数の母集団形成ができるよう募集基準を調整します。うまく母集団を形成するには、高くも低くもない「ちょうど良い選考基準」を設けることが大切です。または、選考基準に見合うような給与額を設定する必要もあるでしょう。

歩留まり率が低い場合

条件が厳し過ぎる選考基準を用意すると、基準自体を満たす人が少なくなるため、歩留まり率の低下につながります。歩留まり率が低い場合には、除外できる選考基準は削除し、残した項目も許容範囲内で下げると良いでしょう。書類選考や面接において、自社の数値が以下よりも低い場合には、選考基準の見直しが必要だといえます。

~通過率の平均~

  • 書類選考…30%前後
  • 一次面接…30%前後
  • 二次面接…20%~50%

歩留まり率を高められれば、マッチする人材を確保することにつながり、採用の可能性も高められるでしょう。

早期離職者が多い場合

選考基準が不適切だとミスマッチな採用が生じやすく、採用された従業員は「このようなハズじゃなかった」と思うことから、早期離職につながる傾向にあります。応募者は基本的な業務内容や給与を理解しているため、ミスマッチの要因は、企業風土やカルチャーなどの定性的な要素が大きいでしょう。

そのため、選考基準に定性的な内容を盛り込み、ミスマッチを防ぐ努力が必要です。例えば、多くの離職者が「これほど、個人への裁量権が多いとは思わなかった」と思っていた場合には、選考基準に「自ら考え行動できる」などの項目を盛り込むと良いでしょう。

見極め方|選考基準をふまえて自社に合う人材を判断するコツ

適切な選考基準を定めた上で候補者が集まったら、実際に選考を行います。その際、自社に合った人材を見極めるためのコツが存在します。意識すべき主なポイントは、以下の通りです。

履歴書などの応募資料から判断するポイント

まずは履歴書や職務経歴書・エントリーシートなどをチェックし、一次面接に進める人材を選びます。この段階では、採用する人を選ぶというよりは「条件に満たない人を外す」意識が適するでしょう。人柄や企業とのフィット感などを含め、詳しく判断する場は適性検査や面接だからです。

また、履歴書と職務経歴書・エントリーシートでは、チェックポイントが異なります。履歴書では、実務経験・資格や免許など、選考基準で必要な基準を満たすかをチェックします。職務経歴書やエントリーシートでは、文章能力やビジネスマナーなどの基礎的な部分を確認しましょう。

適性検査時の判断ポイント

適性検査では、求めるスキルの他に「応募資料では判断できなかった定性面」も判断します。募集ポジションに必要な特性をもち、自社カルチャーに合う人物を採用することで、良好かつ発展性のある関係を築けるでしょう。

また新卒採用と中途採用では、適性検査で注目すべきポイントが異なります。新卒採用の場合には、基本的に社会人経験がないため、性格検査での特性や将来的な伸びしろなどを重視することが大切です。中途採用では、即戦力として必要なスキルを見極めます。加えて、企業との相性や将来性もチェックしましょう。

面接時の判断ポイント

面接時には、全ての面接官に対し、同一の選考基準を共有します。一緒の面接に出席するメンバー間にとどまらず、一次面接や二次面接などを実施する「複数の面接官」にも、同じ内容を共有することが大切です。

面接に関係する全メンバーが統一の認識をもつことで、採用したい人物像が一貫するため、公正かつ的確な採用が実現します。

特に候補者の雰囲気や印象は、面接官の主観や価値観に左右されやすい部分です。外見やインスピレーション的な部分も、「表情が明るい」「衣服にしわがない」などと、選考基準に入れると良いでしょう。

インターン時の判断ポイント

インターンを判断する際には、活躍する既存従業員のパターンを分析し、共通点を選考基準に設けることも大切です。インターンを経て正式に採用したケースを想定した場合に、「自社とマッチする資質があるか」について、あらかじめ見極める必要があるからです。

またインターン生は一般的に社会人経験が乏しく、現段階では求めるスキルを持ち合わせていない可能性も大いにあるでしょう。そのため、現時点でスキルをもつかを判断するのではなく、本人の特性や将来的な伸びしろに重きを置くことも大切です。

まとめ

選考基準を用意すると、公正な採用やミスマッチ防止につながるため、採用活動の質やスピードを高められます。また適切な選考基準を定めるには、ポイントを押さえた設定だけでなく、設定後の定期的な見直しも必要です。新卒採用に強みをもつ採用サービス「kimete」では、人が集まる採用活動を行う方法や、適切な採用の実現に向けたノウハウを持ち合わせています。採用基準の設定方法はもちろんのこと、選考で活用する「チェックリストの作成」や「採用担当者に対する心構え」など、多岐にわたるトータル的なサポートが可能です。

適切な選考基準を用意し、賢く採用活動を進めたい担当者様は、kimeteの以下資料をぜひチェックしてみて下さい。