「なかなか、自社にマッチした人材が応募してこない」「良い人材だと思って採用しても、すぐに辞めてしまう」このような悩みをお持ちの採用担当者の人もいるのではないでしょうか。新人が離職する原因の多くは「想像していたイメージとのギャップ」にあります。
このようなギャップを防ぐためには「セルフスクリーニング」が有効です。セルフスクリーニングを導入すれば、ギャップを防ぎ採用業務の効率もアップします。本記事では、セルフクリーニングの効果と実施方法について解説するので、早期退職にお悩みの人はぜひ参考にして下さい。
セルフスクリーニングとは
セルフスクリーニングとは、企業が求人募集をする際に情報を細かく開示して、求職者が自ら「自分に合っているか」を判断しやすくする採用手法です。通常、採用活動では、企業の良い部分だけをアピールしがちなため、入社後に「こんなはずではなかった」と早期に退職してしまうケースが多くあります。
そこで、企業の課題や厳しい面も伝えることで、求職者が納得して応募できるようにしようという考え方が、セルフスクリーニングです。マイナス面も開示することで、採用時のミスマッチが防げます。
求職者は自分のキャリアパスや働く環境について、より具体的なイメージがしやすく、企業に対する信頼感や安心感が増すでしょう。結果的に入社後のモチベーションや定着率が向上するのです。
企業側にとっては、自社の理念や企業文化に共感した人材が応募してくるため、採用業務の効率が上がる点もメリットです。このように、セルフスクリーニングは企業、求職者の双方にとってメリットがあります。
セルフスクリーニング(RJP理論)の効果
RJP理論とは、「Realistic Job Preview」の略、「現実的な仕事情報の事前開示」という意味です。つまり、企業が求職者にリアルな情報を提供することを指します。セルフスクリーニングは、このRJP理論の効果のひとつです。その他にも、以下のような効果があります。
- ワクチン効果
- コミットメント効果
- 役割明確化効果
セルフスクリーニングは離職防止にも有効です。入社後のギャップを減少させることで、従業員の定着率が向上し、企業に貢献してくれます。また、求職者にとっても、自分に合った企業を見つけやすくなるため、入社後の充実感や満足度が高まるのが特徴です。
ここからは上記3つのセルフスクリーニングの効果を詳しく解説していきます。
ワクチン効果
ワクチン効果とは、企業側に都合の良い部分だけを開示するのではなく、応募者にとってマイナスになりかねない情報もあえてオープンにすることです。
求職者に会社のリアルをそのまま伝えることで、入社前の期待と現実のギャップを小さくする効果があります。つまり、悪い面も事前に伝えれば過度な期待を持たないため、入社後の失望感を防げるのです。
結果的に離職率が低下し、優秀な人材の確保と定着につながります。従来の採用活動では、この「ワクチン」で事前に免疫をつくっておくという考え方がありませんでした。そのため、現実とのギャップが生まれ、早期離職につながっていたのです。セルフスクリーニングを行うと、ワクチン効果により人材の流出を抑えられます。セルフスクリーニングには、このようなワクチン効果があります。
コミットメント効果
コミットメント効果とは、あえてネガティブな情報を知った上で入社してもらい「それでも貢献したい」と思わせる効果を狙うものです。現実的な情報を事前に伝えることで、企業への理解と愛着が深まり、入社後のコミットメントが高まる効果があります。求職者は、マイナス面も納得した上で入社を決めるため、意欲が高まるのです。企業にとっては、入社意欲の高い人材を確保できるメリットがあります。
また、企業理解が深まることで、求職者の帰属意識も高まるでしょう。帰属意識が高まればモチベーションが向上し、生産性の向上にもつながります。このように、セルフスクリーニングにはコミットメント効果があり、モチベーションの向上にもつながるのです。
役割明確化効果
求職者に求めているものを事前に伝えることで、自分の役割や責任が明確になります。どのような行動をすれば良いかや、求められている役割をイメージしやすくなり、求職者が期待通りの結果を出してくれる効果があります。
応募者にとっては、どうすれば貢献できるかを事前に把握できるため、入社までに心構えができるでしょう。
入社前に求められている役割を理解できているため、入社後は期待に応えようとするのです。さらに、期待通りの役割が果たせている実感を得られれば、モチベーションの向上につながります。
採用でセルフスクリーニングを行うメリット
採用活動時にセルフスクリーニングをする主なメリットは、以下の3つです。
- 社員の早期離職を防止できる
- 求職者の質が高くなりやすい
- 企業のイメージアップにつながる
採用活動におけるセルフスクリーニングは、優秀な人材を確保し定着させるための有効な手段です。採用活動に取り入れることで、企業側にどのようなメリットがあるかを見ていきましょう。
社員の早期離職を防止できる
セルフスクリーニングを行う一番のメリットは、早期離職の防止にあります。セルフスクリーニングでは、求職者自身が自分の適性を判断するのが特徴です。企業が事前に詳細な情報を開示し、求職者は自分で応募先の企業に向いているかどうかを判断します。
これにより「仕事の内容が想像と違う」「職場の雰囲気が合わない」など、入社前のイメージと異なりショックを受けるといった状況を減らせるのです。思い描いていた理想と入社後の現実との間にギャップが生じると、早期離職につながる可能性が高くなります。
また、過度な期待を抱かせてしまうことも、入社後のギャップにつながります。このようなギャップを最小限に抑えるためには、正確な情報提供が不可欠です。
求職者の質が高くなりやすい
セルフスクリーニングを採用の過程に取り入れることで求職者の質が高くなりやすいメリットがあります。企業が事前に業務内容や企業文化、求める人材像などを開示することで、求職者は自分が応募先の企業に向いているかどうかを判断しやすくなります。そのため、自分に合った企業への応募意欲が高まり、より志をもった質の高い求職者が応募してくる可能性が高くなるでしょう。一方で、自分に合わないと思えば応募はしません。
したがって、最初の段階で自己選択によって選別されるため、応募してくる求職者の多くは、企業が求める人材とのマッチ度が高いのです。
応募者の数は少なくなる可能性がありますが、その分、質の高い求職者が集まりやすくなります。求職者の質が高くなれば、選考の工数も減り効率化にもつながるでしょう。
企業のイメージアップにつながる
隠し立てせずに詳細まで情報を開示することで、企業の透明性が増し求職者からの信頼性も高まります。良いことばかりが書かれていると「企業に都合の良い情報しか提供していない」と受け取られかねません。
さらに、応募者から不信感を抱かれれば、応募自体が集まらない可能性もあるでしょう。
マイナス面や、あまり良くない点も包み隠さず伝えることで、正直に情報が開示されているとの印象を与えられます。セルフスクリーニングによって企業の誠実さが伝わり印象が良くなるのです。
組織の生産性が上がりやすい
セルフスクリーニングは、入社後の生産性を高める効果があります。入社前に過度な期待を膨らませていると、現実とのギャップが生じ、モチベーションも下がるでしょう。その結果、離職してしまうと残った従業員の負担も増え、士気の低下につながりかねません。しかし、デメリットを開示された上で、それでも自分が働きたいという選択をしていれば、業務に取り組みやすくなります。
マイナス面も把握した上で納得のゆく選択をしているため、入社後のモチベーション維持が期待できるのです。さらに、適した人材が入社することで、組織全体の協調性が向上し、職場の雰囲気も良くなるでしょう。結果として、組織全体の生産性が向上します。
セルフスクリーニングを効率良く行うコツ
セルフスクリーニングは、企業と応募者の双方にとってメリットの大きい手法です。うまく取り入れることで、定着率が向上するなどの効果が得られます。しかし、以下の点に注意して行わなければ効果を得られないことがあります。セルフスクリーニングを効率よく行うコツは以下の2点です。
- 良い情報・悪い情報を誠実に開示する
- 原則として選考の終盤では行わない
次の項目からは、上記2つの「セルフスクリーニングを効率良く活用するコツ」を、順に解説していきます。
良い情報・悪い情報を誠実に開示する
セルフスクリーニングのポイントは、悪い情報も開示する点です。企業の魅力や強みだけでなく、現状の課題や懸念点も積極的に開示しましょう。ただし、採用担当者だけの判断では先入観にとらわれ、応募者の視点や関心が反映されない情報開示になる恐れがあります。
応募者に即した情報を開示するためには、アンケートなどで社員の意見を聞くと良いでしょう。例えば、ここ数年の退職理由や、会社に改善してほしいことなどが効果的です。つまり、実態を正直に伝えるのは重要ですが、求職者が求めている情報でなければ意味がありません。
また、間違った情報の開示や、誤解を招かないようにすることも重要です。情報が正しく伝わらなければ信頼性が損なわれ、今後の企業経営に影響が生じる可能性があります。
セルフスクリーニングは、応募者に寄り添った情報を誠実かつ、誤解を招かないように開示しましょう。
原則として選考の終盤では行わない
セルフスクリーニングは、実施するタイミングも重要となります。選考の終盤ではなく、序盤で行うのがポイントです。選考の初期段階で行うことで、応募者はより具体的にイメージしやすくなります。また、企業側も自社にマッチした応募者の中から選考するため、採用にかける時間と手間の削減が可能です。
ある程度選考が進んでからセルフスクリーニングすると、応募者がギャップを感じることも少なくありません。選考が進んだ段階でギャップを感じると、内定辞退や途中で選考を辞退される可能性もあるでしょう。このように企業にとっても不安材料となるのです。ただし、知名度の低い企業が初めからマイナス情報ばかりを掲載すると、応募者の関心を引くことが難しくなります。
そのため、セルフスクリーニングで効果を得るためには、どのタイミングで実施するかを事前に決めておくことが重要です。
セルフスクリーニングを行う例
セルフスクリーニングの方法はいくつかありますが、効果が出やすい方法は以下の2つです。
- インターンシップで会社の環境を確かめてもらう
- 自社サイトに社員インタビューを掲載する
それぞれ解説します。
インターンシップで会社の環境を確かめてもらう
セルフスクリーニングの目的は、事前にマイナス面も開示して「自分に合うか」を確認してもらうことにあります。ひとつの方法として、インターンシップの活用が有効です。インターンシップは実際に業務を体験することで、企業の雰囲気や仕事内容、社風などを理解できます。入社後に行う仕事や職場環境を肌で感じられるので、セルフスクリーニングに最も適した手法だと言えるでしょう。
そのため、応募者が企業との相性を判断しやすくなり、ミスマッチを防ぐ効果があるのです。また、インターンシップを通じてコミュニケーションが取れるため、企業には応募者の適性や意欲を把握できるメリットがあります。
自社サイトに社員インタビューを掲載する
自社の採用サイトに、社員のインタビュー記事を掲載するのも有効な手段です。社員の生の声が伝われば、現場を見なくても企業の現状を把握しやすいメリットがあります。
辛かったエピソードや仕事のやりがいなど、応募者が知りたい情報を盛り込んだ内容にするのがポイントです。できれば、文字と写真だけよりも動画インタビューをおすすめします。
できるだけ親近感が湧きやすいように、入社1年〜2年程度の若手社員へのインタビューが効果的です。雰囲気などは文字や写真よりも動画の方が伝わるため、より親近感が湧き入社意欲が高まるでしょう。
まとめ
セルフスクリーニングは、採用の初期段階でネガティブな情報も開示し、応募者自身が適性を判断できるようにする手法です。企業への理解が深まった状態で入社するため、現実とのギャップを最小限に抑えられ、採用後の早期離職を防止できます。
また、マッチ度の高い人材が応募するため、優秀な人材確保や採用コストの削減も可能です。このように、セルフスクリーニングは採用の質を高め、早期離職の防止と定着率の向上が期待できます。本記事を参考に、セルフスクリーニングを実施してみて下さい。
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