自社に合う人材を獲得できず、従来の採用手法とは異なるスクラム採用を検討している人事担当者もいるのではないでしょうか。スクラム採用とは、現場で働く社員も採用活動に関わる手法のことです。スクラム採用は、人材採用が厳しくなっている現代で注目されている採用手法です。

本記事ではスクラム採用のメリットに加え、デメリットや導入事例も紹介します。ぜひ、最後までご覧下さい。

スクラム採用とは

スクラム採用を検討するためには、その基本的な意味と意義をしっかり理解することが重要です。ここでは、スクラム採用の意味や、よく比べられるリファラル採用との違いについて解説します。

スクラム採用の意味

スクラム採用とは人事担当者だけではなく現場社員も採用に関わり、全社一丸となってより良い採用活動をすることを意味します。スクラムという言葉は、ラグビーが語源であり、スクラム採用は株式会社HERPが提唱した考え方です。

応募者を集めるだけに留まらず、選考や内定者フォローにも現場社員が関与することが、スクラム採用の特徴と言えます。全社が一体となって人材採用を目指し、自社の採用力を高めることがスクラム採用の目的です。

スクラム採用とリファラル採用の違い

リファラル採用とは、社員の知り合いや友人を人事担当者に紹介する採用手法のことです。社員から紹介された人は、人事担当者が選考や内定者フォローなどを行います。

一方、スクラム採用では友人・知人を紹介するだけに留まりません。紹介した社員自らが選考や内定者フォローまで関与することが、スクラム採用の特徴です。

また、紹介する社員の意識もリファラル採用とスクラム採用では異なります。リファラル採用では、人材採用の協力者となり受け身の姿勢と言えるでしょう。しかしスクラム採用では、紹介する社員も選考に関わるため、自発的に取り組むことが期待できます。

スクラム採用を実施するメリット

ここでは、マッチングが向上したり人事担当者の負担が減ったりするなどのメリットについて解説します。スクラム採用を導入する材料としてご覧下さい。

求人時のマッチングが向上する

現場社員が一緒に働く人を意識しながら採用に関わるため、人事担当者が気付かないスキルやニーズを、明確化しやすくなります。また、現場社員が仕事内容を具体的に説明するため、自社に合う人材が採用しやすくなることが、スクラム採用のメリットです。人事担当者が仕事内容を説明しても、その業務が未経験なら応募者がイメージできるような説明ができず、ミスマッチとなったり選考を辞退したりする場合があるでしょう。

会社説明会や座談会などで、現場社員から仕事内容や業務の流れなどを詳しく聞くことができれば、応募者は選考に進むか判断しやすくなります。自社にマッチする人材の採用につながり、早期退職を減らすことが期待できます。

人事担当者の負担が減る

現場社員も採用活動を行うため人事担当者の負担が減ることが、スクラム採用のメリットです。最近は求人サイトへの掲載やSNSでの発信、就職セミナーの開催など採用手法が多様化しており、人事担当者だけでは負担が大きいでしょう。

また人事担当者は採用だけでなく、人事評価や労務管理も行っているケースがあります。会社説明会や書類審査、面接などを現場社員が担ってくれれば、人事担当者は採用活動の舵取りに集中できるでしょう。人事担当者の負担が軽減でき、スムーズな採用活動が期待できます。

現場社員のエンゲージメントが向上する

採用に関わることで自社についてより深く理解し、現場社員のエンゲージメントが高まることが、スクラム採用のメリットです。エンゲージメントとは、帰属意識や愛社精神を指します。

会社説明会や面接などで応募者に自社をアピールするには、自社のことをより理解することが重要です。自社の良さを改めて発見する機会となり、エンゲージメントが高まるでしょう。エンゲージメントが高い現場社員は本当に良いと心から感じたことを語るため、応募者の入社意欲を高めるのに役に立ちます。

人材育成力が向上する

採用に関わることで現場社員の当事者意識が高まり人材育成力が向上することが、スクラム採用のメリットです。従来の採用方法では新しい社員が入ってきても、「育てよう」と考え行動するのは一部の社員だけかもしれません。

しかしスクラム採用では、自分が採用した人材が入ってくるため、責任感をもち、より積極的に関わるようになります。「早く馴染んでほしい」という思いを持つ現場社員は、積極的に仕事を教えるでしょう。

その結果、新入社員はいち早く仕事を覚え、仕事ができるようになります。また、選考から現場社員が関わるため、新入社員との信頼関係も築きやすくなります。

スクラム採用を実施するデメリット

ここでは、採用に関する意識統一が難しいことや個人情報管理のコストが増大するなどのデメリットについて解説します。自社にとって大きなデメリットとなり得ないか、確認しておきましょう。

現場社員の負担が増える

通常業務に加え採用活動も行うため、現場社員の負担が増えることが、スクラム採用のデメリットです。採用活動を行うことで、通常業務に支障が出ないように企業として対策を行うことが大切です。

採用活動に協力させつつ、通常業務も滞りなく行うように現場社員にやり繰りを任せないようにしましょう。現場社員にやり繰りを全て任せると、会社に不安を持ち、生産性が下がるかもしれません。

スクラム採用を行う場合、現場社員の負担が増えることを加味して、業務を効率化したり業務量を調整したりして通常業務のマネジメントを行うことが大切です。

採用に関する意識の統一・共有が難しい

現場社員が人事担当者と同じ知識を持っているとは限らないため、採用に関する知識の統一・共有が難しいことが、スクラム採用のデメリットです。現場社員は、採用活動に関する知識を持っていないことが多いでしょう。

また、採用活動に前向きではない現場社員もいることが想定されます。そのためスクラム採用を始める前に、現場社員が採用に取り組む意義や目的などを共有することが重要です。ただし、採用に関する知識やノウハウを習得するまでには、時間がかかる場合があります。

そのため、スクラム採用を行うには時間がある程度必要であると認識し、計画的に行うのが良いでしょう。

個人情報管理のコストが増える

現場社員も採用に関わることで個人情報を扱う人が増えるため、個人情報の管理コストが増えることが、スクラム採用のデメリットです。情報漏えいは、企業にとって大きなダメージを与えるため、情報管理を徹底することが重要です。そのためには、情報を管理するツールやセキュリティに費用をかける必要があるでしょう。

また、個人情報に関する取り扱いについて、正しい知識を持ってもらうために現場社員に研修を行うことも大切です。

スクラム採用が注目を集める背景

ここでは、採用手法が多様化していることや専門性の高い人材の需要が高まっていることなど、スクラム採用が注目されている背景について解説します。注目されている理由を確認して自社でもスクラム採用の導入が必要か、検討してみましょう。

採用方法が多様化している

人材採用が年々難しくなっており、人材を獲得する手段が増えていることが、スクラム採用が注目されている理由です。

求人サイトだけでも大手のサイトだけではなく、専門性に特化した求人サイトへの広告掲載が必要になるケースもあるでしょう。SNSを日々発信して応募者に直接アプローチして人材を獲得する方法もあります。

応募者は、さまざまな媒体に登録し自分に合う職種を探しています。企業も応募者に合わせて、より多くの応募者に自社のことを知ってもらえるようにさまざまな採用手法を取ることが大切です。

専門性の高い人材の需要が高まっている

専門性の高い人材を獲得できる可能性が高まるため、スクラム採用が注目されています。ITエンジニアやコンサルタントのような専門性の高い職種の人材については、近年競争が激しく獲得が難しくなっています。

専門性の高い職種を経験したことない人事担当者では、どのようなスキルがあれば自社の業務をスムーズにできるか判断することが難しいケースもあるでしょう。そのため、現在専門性の高い業務を行う社員が採用に加わり応募者のスキルを確認すると、自社に合う人材か見極めやすくなります。

ミスマッチを防げる

現場が求める人材と人事担当者が求める人材には違いがあるケースがあるため、現場社員が参加するスクラム採用が注目されています。少数の人事担当者だけでは、全ての部署の業務内容を把握できずに現場にマッチする人材を採用するのは難しい場合があるでしょう。

営業部門の選考に現場職員が関われば、実務に精通した視点から評価ができ、営業が得意な人材を採用できる確率が高まります。また経理部門の求人を出す場合、現場の社員が求人活動に参加することで、パソコンスキルやエクセルの関数に詳しいなど、より活躍が期待できる人材を見極めやすくなるでしょう。このように現場社員が応募者の必要なスキルを確認すれば、ミスマッチを防げる可能性が高まります。

スクラム採用を成功させる手順

ここでは、スクラム採用を成功させる手順について解説します。スクラム採用を行う手順は、以下の通りです。

  1. 社内で必要性を理解し協力してもらう
  2. 採用プロセスの環境を整える
  3. 現場社員に採用権限の移譲をする
  4. 目標と成果を共有する

手順を一つずつ詳しく紹介しますので、スクラム採用を始める際の参考にして下さい。

社内で必要性を理解し協力してもらう

現場社員の負担となるため、スクラム採用を行う意義を現場社員に理解してもらうことが、スクラム採用を成功させるポイントです。また、前向きに採用活動を行ってくれない現場社員がいることを想定して、経営層や部門長に働きかけることが大切です。

経営層や部門長から現場社員にスクラム採用を行う意義や必要性を説明してもらうと、前向きにスクラム採用に取り組む社員が多くなることが期待できます。

採用プロセスの環境を整える

現場社員の負担を増やし過ぎないために採用フローを整えることが、スクラム採用を成功に導くポイントです。書類選考や面接を行う際に見るべきポイントを記載した書類を作成したり現場社員の得意なことから始めてもらったりすると、続けてもらいやすいでしょう。

例えば、初対面の人と話すことが苦にならない現場社員に面接を担当してもらうと、自発的に採用活動に取り組みやすくなります。文章を書いたりデザインをしたりするのが得意な社員には、自社の採用サイトを担当してもらうのが良いでしょう。

また、選考状況や選考結果などを採用に関わる人が共有できる環境を整えることが、大切です。面接を担当した現場社員だけが採否を把握している状況では、人事担当者は困ることでしょう。そのため、採用に関する情報を一元管理できるツールを活用することが大切です。

現場社員に採用権限の移譲をする

人事担当者だけで採否を判断するとミスマッチを起こす場合があるため、現場社員に権限を移譲することが、スクラム採用を成功させるポイントです。また、現場の業務内容を把握しきれていない人事担当者では、応募者のスキルが自社に合うのか正しく判断できず、ミスマッチを起こす場合があるでしょう。

特にエンジニアやコンサルタントのような専門性が高く採用が難しい職種の場合、実務を経験する現場社員が採用に加わることが、ミスマッチの減少につながります。スクラム採用を導入して自社に合う人材を獲得したいのなら、現場社員に採用権限を移譲することが重要です。

目標と成果を共有する

現場社員が主体的に活動できるように、目標と成果を共有することが、スクラム採用を成功に導くポイントです。頑張って採用活動に取り組んでも、目標のどのくらいまで達成できたのかということを人事担当者だけが把握していたら、現場社員のモチベーションは高まらないでしょう。

今回採用する予定人数や現状の成果を現場社員とも共有しておくことで、前向きに現場社員が採用活動に取り組むようになることが期待できます。

スクラム採用の活用事例

スクラム採用に取り組んだら、人材が採用できるのか、気になる人事担当者は多いのではないでしょうか。ここでは、スクラム採用を活用して人材を採用できた事例を紹介します。

採用活動の共有とフィードバックを意識した事例

ITサービス関連企業がスクラム採用を導入し、採用活動の共有と現場社員へのフィードバックを意識して取り組み、成果につながった事例を紹介します。今回紹介するITサービス関連企業がスクラム採用に取り組んだ背景には、年々人材採用が厳しくなってきたことがあります。

スクラム採用を導入してからはチャットツールを使い、現場社員が行う予定と結果、気付きをそれぞれの社員が投稿し、共有することにしました。週末に人事担当者と現場社員でその週の行動結果を振り返り、次週への改善行動を決めます。

継続してスカウト採用に取り組んだ結果、採用候補者やカジュアル面談数が増加し、成果につながっています。

さまざまな意見を取り入れて新卒の人材確保に成功した事例

スクラム採用の導入後にさまざまな意見を取り入れた結果、新卒を獲得できた製造業関連企業の事例を紹介します。従来の採用手法では応募者が集まらず限界を感じた人事担当者がセミナーに参加し、企業訪問説明会を開催したことが、スクラム採用を始めたきっかけです。

企業に伺い説明会を開催したところ、若手社員は現場に注目していることが分かったのです。そのため、現場社員も採用活動に加わることにしました。その後、新卒を獲得するために全社でさまざまな意見を交わし、新卒に近い若手社員や配属予定の上長が説明会に参加することになります。

現場社員が新卒へ業務内容の説明を継続して行い、全員で採用に取り組んだ結果、継続的に新卒を獲得できるようになりました。

現場社員を巻き込むことに注力した事例

情報通信企業がスクラム採用を始めてから現場社員を巻き込むことに注力し、成果を出した事例を紹介します。今回紹介する情報通信企業では、良い部署をつくるには、人材採用が重要と考えています。

そのため、現場社員も採用活動に加わることにしました。採用活動に関わったことがない現場社員の負担にならないように、採用活動の全体像や応募経路などをデータにまとめて共有します。

チャットツールを使い、応募状況や選考評価を共有し、現場社員とのコミュニケーションを取るようにしました。また、入社が決まったら、上長から現場社員へ伝えることを重視しています。

上長から入社が決まったことが伝えられると、自分たちの成果であると、現場社員は感じるでしょう。他部署の現場社員への刺激となり、採用活動を意欲的に行い、良いチームづくりができるでしょう。

まとめ

スクラム採用とは、現場社員も採用活動に関わり全社で人材採用を行うことです。スクラム採用を行うと、自社にマッチした人材や専門性の高い職種の採用がしやすくなるメリットがあります。

しかし、求人サイトへの掲載やSNS運用などを行っている上、スクラム採用も行うには時間が足りないと感じる人事担当者は多いのではないでしょうか。効率的に採用活動を行うには、プロの力を借りてみましょう。

プロのノウハウが知りたい担当者は、kimeteの「採用に関するチェックリスト」を利用してみて下さい。「採用に関するチェックリスト」を活用すれば、明確な目標設定が可能で、現場との協力体制ができ、採用活動が効率化するでしょう。「採用に関するチェックリスト」をダウンロードして現場と協力し、自社に合う人材を獲得しましょう。