近年、企業の成長に不可欠な「採用力」が注目されています。しかし、単に人材を採用するだけでは不十分です。真の採用力とは、適切な人材を見出し、採用し、そして長期的に定着させる能力を指します。

当記事では、採用力の本質と、採用力を高めるための具体的な方策について解説します。人材獲得の競争が激化する中、「採用力の研磨」は企業の持続的な成長に欠かせません。採用力について理解を深めたい場合には、ぜひ参考にして下さい。

採用力とは

採用力とは、企業が必要とする人材を効果的に見つけ出し、獲得に成功し、さらには長期的に定着させる総合的な能力を指します。自社の求める人材像(=ターゲット)にアプローチする有用な戦略を立て、適切な選考プロセスを経ながら採用を決定し、入社後も活躍できる環境を整えることまでを含みます。

採用力の高い企業は、人材市場の動向を的確に把握しており、自社の強みや魅力を効果的に伝えることが可能です。また、採用後の定着率も高い傾向にあります。つまり、採用力は単なる人材確保の手段ではなく、「企業の持続的な成長」と「競争力強化」につながる重要な経営戦略の一つだといえるでしょう。

採用力が高い企業にある特徴

採用力の高い企業には、優秀な人材を長期的に活かし、企業の成長につなげるという「共通する特徴」が存在します。具体的にいうと、「採用の目的や目標が明確」「自社の魅力を明示」「人材が定着」「採用手法が適切」「採用担当者間で基準を共有」の5点です。

これらの特徴を理解し、自社の採用プロセスに取り入れることで、採用力アップにつなげられるでしょう。採用力が高い企業に見受けられる特徴の詳細は、以下の通りです。

採用の目的や目標が明確

採用力の高い企業では、人材確保の意図や到達点が明瞭です。単に「人手が足りないから採用する」のではなく、具体的な経営戦略や事業計画に基づき、採用計画を立てています。数値目標にとどまらず、「求める人材像」や「期待する役割」も明確に定義しています。

~採用計画(例)~

  • 幹部候補育成のため、理系大学の新卒者を10人採用し、2年間の技術研修プログラムを実施する
  • 新規事業立ち上げに向けて、プロジェクトマネジメント経験者を2人採用する
  • 営業部門の強化のために、業界経験3年以上の営業職を5人採用する

採用の目的や目標が明確なことで、採用担当者は適切な候補者を見つけやすくなります。応募者側も、自分が企業に貢献できるかについて、判断しやすくなるでしょう。

明確な目的・目標の設定は、効率的かつ効果的な採用活動を実現させ、採用力の向上に寄与します。

自社の魅力を明示できている

採用力の高い企業は、自社の魅力を明確に示し、効果的に発信することが特徴です。給与や福利厚生といった表面的な条件だけでなく、「企業理念」「事業の社会的意義」「成長機会」「働き方の柔軟性」など、多面的な魅力を指します。

自社のホームページやSNS・求人サイトなどを通じて、リアルな声や日常の様子、プロジェクトの成功事例などを、積極的に発信するケースも見受けられます。また業界内におけるポジショニングを示し、他社にはない取り組みをアピールするなど、発信方法も明確です。

自社の魅力を明示することで、企業の価値観や文化に共感する人材を引きつけられるでしょう。結果として、より適性の高い人材の採用につながり、採用後の定着率向上も期待できます。

人材が定着し活躍している

採用力の高い企業では、人材が長期的に定着し、自身の能力を最大限に発揮しながら「企業の成長に貢献する」ことが特徴です。背景には、自社にフィットする人材の採用が挙げられます。適切な人材とは、企業の理念や文化に共感し、求められる役割に対して能力を発揮できる人のことです。

人材が定着し活用する企業では、「社員の成長を促進する研修制度」や「個々の適性に合わせたキャリアパスの提供」など、入社後の育成やキャリア支援にも注力する傾向にあります。また働きやすい環境づくりにも力を入れており、ワークライフバランスの実現や、オープンなコミュニケーション文化の醸成にも取り組んでいます。

採用の手法が自社に合っている

採用力の高い企業は、一般的な採用手法をただ踏襲するのではなく、自社の特性や求める人材像に合わせて最適な方法を選ぶことが特徴です。

例えば、新卒採用に力を入れる企業では、インターンシップや学生向けのイベントを積極的に実施し、早期から優秀な学生との接点を持つことに注力するでしょう。一方、即戦力となる中途採用を重視する企業では、業界特化型の転職サイトや人材紹介会社を効果的に活用する傾向にあります。

他にも、オンライン面接やAIによる書類選考など、最新テクノロジーを取り入れ、効果的な採用プロセスを実現する企業も見受けられます。既存社員のネットワークを活用し、企業文化にフィットする人材の採用につなげる企業もあるでしょう。

面接官など採用担当者間で基準を共有できている

採用力の高い企業では、面接官や採用担当者間で、「評価基準」や「求める人材像」を明確に共有しています。必要な基準を共有することで、一貫性のある評価と選考が可能となり、適切な人材採用につなげることが特徴です。

例えば、採用基準や評価ポイントを文書化し、全ての関係者に共有しています。その際に、「コミュニケーション能力」「問題解決力」「チームワーク」といった評価項目ごとに、具体的な評価基準を設定します。

また、定期的な研修や情報共有の場を設け、採用担当者間の認識相違を図ることも特徴です。面接後のフィードバックセッションなどを通じて、評価のすり合わせや改善点の議論を行う企業もあるでしょう。

採用力が低い企業の特徴

採用力が低くなりがちな企業には、優秀な人材の獲得を困難にし、企業の成長を妨げる要因となる特徴が見受けられます。これらの特徴は、組織の魅力や採用プロセスの効率性に影響を与え、結果として人材確保の障壁となります。採用力が低い企業に見受けられる特徴を理解し、自社の採用プロセスを客観的に分析・評価することで、「自社の採用力アップ」に役立てられるでしょう。

採用力の低い企業に見られる主な3つの特徴は、以下の通りです。

応募者に要求する能力レベルが高い

即戦力や完璧な人材を求めるあまり、実際の業務に、必要以上の経験や資格を要求する企業も見受けられます。

~応募者に要求する能力レベルが高い(例)~

  • 新卒採用で、高度な専門知識や実務経験を求める
  • 中途採用で、現職よりも数段上のスキルや実績を要求する

他にも、複数の専門分野にまたがる高度なスキルを持つ「スーパーマン」的な人材を求める事例も存在します。

過度に高い要求は、適格な候補者のプールを著しく狭めるでしょう。結果として、採用活動が長期化し、必要な人材を確保できない事態に陥りやすくなります。たとえ高スキルの人材を採用できても、人材の期待に応えられる仕事や環境を提供できなければ、早期離職につながるでしょう。

現場と人事が連携できていない

採用力の低い企業では、人事部門が現場の実情を理解せずに採用活動を行うなど、現場と人事が連携できていないケースも多く存在します。「必要なスキルや経験」「業務の具体的な内容」について、正確な情報を持たないまま、求人票作成や面接を進めることもあるでしょう。

すると、現場のニーズや課題が人事部門に伝わらないため、採用の優先順位・人数・タイミングなどが現場の実態とずれやすくなります。採用者の配置や育成計画についても、現場と人事の間で十分な協議がなされないまま、進められる事例もあります。

現場と人事との連携不足は、採用のミスマッチを引き起こすだけでなく、採用後の社員の不満や早期離職にもつながりかねません。

人材が定着していない

離職率の高さは、企業の成長に影響を与える深刻な課題です。人材が定着しない理由として、以下のような背景が挙げられます。

  • 報酬面:市場水準に見合わない給与・不適切な報酬制度など
  • 人間関係:コミュニケーション不足・ハラスメントなど
  • キャリア発展の機会:スキルアップや昇進の機会が限られる
  • ミスマッチ:採用時の説明と実際の業務内容の乖離
  • ワークライフバランス:長時間労働や休暇取得の難しさ

上述の状況は、採用活動の必要性を常に生み出し、採用・育成のコストを増大させます。離職率の高さが企業の評判を落とし、人材の応募を妨げるという悪循環も危惧されます。

採用力を向上・強化するための取り組み

採用力の向上には、企業の持続的な成長と競争力強化が欠かせません。とはいえ、採用力の向上は一朝一夕に実現できるものではなく、継続的な努力と戦略的なアプローチが必要だといえます。

ここでは、採用力を向上・強化するための5つの主要な取り組みについて解説します。複数の取り組みを「自社の状況に合わせて実践」することで、採用力の大幅な向上が期待できるでしょう。

採用の戦略を見直す

採用の戦略を見直すと、「企業の現状確認」や「効果的な人材獲得方法の再構築」につながるため、採用力向上や強化が期待できます。採用市場の動向を注視し、自社の需要と照らし合わせながら戦略を見直しましょう。

まずは、現在の事業状況や将来の成長計画を考慮し、必要なスキルセットを特定した上で、ターゲットを明確化します。同時に、人材の育成計画も立てることも大切です。

ターゲットに対し、効果的にリーチする方法も検討します。例えば、若手人材の獲得を目指すのであれば、SNSを活用した情報発信やインターンシッププログラムの充実が効果的な可能性もあります。経験豊富な中堅人材を求めるのであれば、業界特化型の転職サイトや人材紹介会社との連携が有効でしょう。

自社の強みや独自性を明確にし、採用活動に反映させることも重要です。企業理念・成長機会・ワークライフバランスなど、自社の魅力を効果的に伝えることで、適性の高い人材を引きつけられます。

採用手法を見直す

適切な採用手法の活用は、「効率的な人材獲得」と「組織との適合性向上」から、採用力強化につながります。ターゲット人材に合わせて見直すことで、ミスマッチも防げるでしょう。

新卒採用では、長期的な人材育成の観点から、ポテンシャルを重視する方法が効果的です。インターンシップや産学連携プログラムの実施により、優秀な学生と接点を持てるでしょう。新卒採用に特化した外部サービスの活用で、採用から内定後の研修まで、一貫したサポートを受ける選択肢もあります。中途採用では、即戦力としての評価が重要であり、課題解決型の面接やスキルテストなどが有効です。

内定者をフォローする

採用力の向上には、内定者のフォローも重要な要素です。内定から入社までの期間に適切なフォローを行うことで、内定辞退を防ぎ、入社後のスムーズな適応を促せます。

まず内定者に対して、入社後の具体的な役割や期待を、明確に伝えることが大切です。内定者は自身の将来を想像しやすくなり、モチベーションの維持につながるでしょう。

「内定者同士の交流会」や「先輩社員とのメンタリングプログラム」など、定期的なコミュニケーションを通じて、内定者の不安や疑問に対応することも重要です。入社前研修や課題の提供など、入社後のスムーズな業務開始を支援する取り組みも有効です。入社への期待感を高めると同時に、必要なスキルや知識の事前習得にもつながるでしょう。

職場環境を改善する

優秀な人材を引きつけ、長期的に定着させるには、働きやすい環境の整備が重要です。

まず報酬面での競争力を確保し、「市場水準に見合った給与体系」や「成果に応じた報酬制度」の導入を検討します。転勤や休日などの労働条件をチェックし、早期離職を防ぐ取り組みも必要です。

他にも、リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方の選択肢を提供することで、多様な人材の確保につながります。

キャリア開発支援も重要であり、社内外における研修機会の提供や、明確なキャリアパスの提示などによって、社員の成長意欲を高められるでしょう。ダイバーシティ&インクルージョンの推進や、ハラスメント防止の取り組みなど、誰もが安心して働ける環境づくりも重要です。

まとめ

採用力の高い企業は、明確な採用目標を持ち、自社に最適な採用手法を選択しています。また採用力の向上には、採用戦略の見直し・採用手法の選択・内定者フォロー・職場環境の改善など、多面的なアプローチが必要です。多角的な取り組みを通じて、必要な人材を獲得することで、長期的な成長が期待できます。

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