採用活動の成否を分ける要素といっても過言ではない採用基準。

なかなか内定者が出なかったり、採用しても早期退職してしまったりと頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。このような問題には採用基準が大きく関わっている可能性があります。

本記事では採用基準の概要や具体的な項目例、基準の設定方法などを解説します。基準を設定する際の注意点や選考方法もまとめているので、ミスマッチのない適切な採用基準を設けたい方はぜひ参考にしてください。

採用基準とは?

採用基準とは、自社が求める最適な人材を採用するために、選考過程で採用可否を決める指標です。

適切な採用基準を設けることで面接官・評価者の主観によるブレを軽減し、候補者を公正に評価できるようになります。加えて、採用基準が明確であるほど採用時のミスマッチを減らせるため、内定辞退や早期退職の防止にもつながります。

スキル・資格・経歴のほか、自社の価値観やカルチャーにフィットするかといった内面についても基準を設けておくのが望ましいでしょう。

 

採用基準を設定する重要性

採用基準が曖昧な場合、面接官・評価者によって評価基準が異なってしまい、さまざまな問題が発生します。

たとえば、選考内容や基準に一貫性がない、選考通過率が悪く内定者が出ない、採用してもミスマッチがあり早期退職者が増加するなどのケースが挙げられます。このような問題が1つでも発生している場合は採用基準を見直すべきでしょう。

さらに、ターゲットが曖昧になることで適切な採用マーケティングを行えなくなるため、母集団形成に苦戦したり、形成できても質が低いといった問題が起こりがちです。

なお、採用マーケティングの概要や導入のメリット、具体的な進め方などはこちらの記事を参照ください。

 

採用基準を設定する目的

採用基準を設定する目的は、面接官・評価者の主観によるブレを軽減し、候補者をフラットな目線で公正に評価することにあります。

主観による評価の具体例として、候補者の良い点が1つでも見つかるとほかの点まで好意的に評価してしまう「ハロー効果」、面接官・評価者自身と似ている点を評価してしまう「類似性バイアス」、直前の候補者と比較してしまう「対比誤差」などが挙げられます。

事前に採用基準を設定して面接官・評価者に共有しておくことで、このような個人的主観を軽減し、客観的かつ一貫性のある評価を実現できるでしょう。

加えて、判断にかかる時間を短縮できることで候補者とのスピーディーなやり取りが可能になるメリットもあります。

 

採用基準の項目例

採用基準を設ける際の具体的な項目例は以下3つの領域です。

  1. 経験・スキル(スキルフィット)
  2. 価値観・性格(カルチャーフィット)
  3. 行動・思考特性(コンピテンシー)

経験・スキル(スキルフィット)

候補者が職務に必要な経験・スキルを保有しているかどうかは最も重視される点です。

職務に必要なスキルを保有していること、能力が適合していることを「スキルフィット」と呼び、ジョブ型採用では年齢・学歴・意欲よりも、スキルフィットしているかどうかを重視して候補者を評価・採用します。

経験・スキルの具体的な評価項目は以下のようなものが挙げられます。

  • 学歴
  • 語学力
  • 経験年数
  • システム・ツールの操作スキル
  • 具体的な資格
  • 専門知識の有無
  • 裏付けとなる実績
  • マネジメント経験

なお、経済産業省では「人生100年時代の社会人基礎力」で3つの能力と12の能力要素を定義しているため、判断に迷う場合は参考にしてみるのも良いでしょう。

価値観・性格(カルチャーフィット)

採用した人材が長く定着して活躍するためには、価値観・性格が自社にあっているかどうかも重要です。

各企業の独特の文化や風土にうまく適応することを「カルチャーフィット」と呼び、フィットしているほどコミュニケーションを取りやすく、生産性が向上する傾向にあります。

価値観・性格に関する評価項目は以下のようなものが挙げられます。

  • 何にやりがいを感じるか
  • 仕事において重要だと考えていることは何か
  • どのような働き方を望むか
  • 安定・変化どちらを好むか
  • 意思決定の基準
  • 関係性はウェット・ドライどちらを好むか

近年はカルチャーフィットを重視する求職者が増加しており、入社・転職を決断する大きな要因となっているため、今や採用基準に欠かせない要素といえるでしょう。

行動・思考特性(コンピテンシー)

候補者の行動・思考特性も確認しておきたいポイントです。

ハイパフォーマーに共通する行動特性・思考特性をコンピテンシーといい、具体的な行動よりもその行動を起こすきっかけとなる性格や価値観などが重視されます。

項目を設定するためには、自社で高い成果を挙げているハイパフォーマーへのヒアリングや分析を行い、「コンピテンシーモデル」を作成する必要があります。コンピテンシーモデルから評価項目を設定し、項目ごとに段階を設定するのが一般的です。

コンピテンシーは職種や役割によって異なりますが、候補者がどの程度自社が求める要素を満たしているかを測る指標として活用できるでしょう。

 

採用基準を設定する際のポイント

採用基準を設定する際に押さえておきたいポイントは以下の3点です。

  1. 企業の経営方針に合った基準を考える
  2. 現場の声を聞く
  3. 採用したい人材のペルソナを設定する

企業の経営方針に合った基準を考える

採用基準は募集背景によって異なりますが、自社の現状や経営方針にあったものを設定する必要があります。

単に欠員が出たから募集するのではなく、採用を行う目的や意義などを鑑みて、必要な人材の要件を採用基準に落とし込むことが重要です。

ただし、経営方針や育成方針などを変更しようとしている場合、組織を変化させていこうとしている場合は、既存社員との相性やマッチ度を重視しても本来の目的が果たせない可能性があるため注意が必要です。

現場の声を聞く

採用基準を設定する際は、採用予定の部署やチームなどの現場の声も積極的に取り入れましょう。

どれだけ経営方針にあっていても、業務上不可欠なスキルや能力を持っていないと期待する成果を上げられないばかりか、ミスマッチによって早期退職してしまう可能性もあります。

加えて、既存社員と軋轢が生まれてしまうとチームワークが取れず、モチベーションや生産性の低下を招いてしまう可能性もあるため注意が必要です。

採用したい人材のペルソナを設定する

求める人材の要素がまとまったら、採用したい人材のペルソナを設定しましょう。

ペルソナとは、自社の商品やサービスを利用する典型的・平均的な架空の人物モデルを指すマーケティング用語であり、年齢・性別・居住地・家族構成・過去の経験・趣味・ライフスタイルなどを細かく設定し、理想の人物像を形作ります。

設定したペルソナを面接官・評価者に共有しておくことで、人材のイメージを統一でき採用の軸がブレにくくなるでしょう。

 

採用基準を設定する際の注意点

採用基準をどのように設定するかは各企業の自由ですが、社会通念の観点から就職差別にあたらないよう注意すべき点も存在します。ここでは厚生労働省が「採用選考時に配慮すべき事項」で定めている、2つの注意点を解説します。

本人に責任のない事項を設定しない

就職差別をせず公正な評価を行うためにも、本人に責任のない事項は採用基準に設定しないよう注意しましょう。

「本人に責任のない事項」とは適正・能力に関係のない事項を指し、厚生労働省では以下の項目を挙げています。

  • 本籍・出生地に関すること
  • 家族に関すること
  • 住宅状況に関すること
  • 生活環境・家庭環境に関すること

このような事項に基準を設けないことは元より、戸籍謄(抄)本や住民票の写しを提出させることも「本人に責任のない事項を把握しようとする行為」と見なされるため注意が必要です。

本来自由であるべき事項を設定しない

同様に、本来自由であるべき事項に対して採用基準を設けるのも就職差別に該当する可能性があるため注意が必要です。

こちらも厚生労働省から以下の項目が挙げられています。

  • 宗教に関すること
  • 支持政党に関することの把握
  • 人生観・生活信条などに関すること
  • 尊敬する人物に関すること
  • 思想に関すること
  • 労働組合(加入状況や活動歴など)
  • 学生運動などの社会運動に関すること
  • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

 

採用基準の設定方法

具体的な採用基準の設定方法を以下3つのステップで解説します。

  1. 採用したい人材・人物像を設定する
  2. 活躍するために必要な基準を明確にする
  3. 採用時に持っていてほしい項目・基準を設定する

採用したい人材・人物像を設定する

まずは採用したい人材・人物像を設定しましょう。

現在の経営状況や今後の経営方針への深い理解や情報が必要になるため、経営層や現場責任者などにヒアリングを行い、事業戦略・将来設計・現場で必要とされる要件を照らし合わせる必要があります。

採用したい人材・人物像の設定は、人事部や採用担当者だけで行わないこと、現場の声だけを反映させず経営層や配属予定部署の管理職とも意見をすり合わせることが重要です。

活躍するために必要な基準を明確にする

人材・人物像を設定したら、現場で活躍するために必要な具体的な基準を明確にしましょう。

コンピテンシーなどを活用して、「何が」「どの程度できれば良いのか」を具体的な行動に落とし込んで項目化し、各項目に程度を表すレベルを設定していくことが重要です。

この基準が明確であれば面接官・評価者の主観によるブレを抑制できるうえ、自社に適した人材かどうかをフラットに見極められるでしょう。

採用時に持っていてほしい項目・基準を設定する

活躍するために必要な基準を明確にしたら、このうち採用時に必ず持っていてほしい項目・基準を抜粋しましょう。あわせて、これらの項目・基準を選考過程でどのように判定するかも決めておく必要があります。

ここで抜粋する項目は先天的なものを優先し、入社後の研修・OJT・実務などを通して後天的に身につけられる可能性が高いスキルとは分けておくことが大切です。

後から身に付けられる可能性が高いものは採用基準から外すことを検討しても良いでしょう。

 

新卒採用と中途採用における採用基準の違い

新卒採用の多くは総合職採用のため、ポータブルスキル(社会人基礎力)やカルチャーフィットを重視する傾向にあります。

経団連(日本経済団体連合会)の調査によると、選考にあたって特に重視した点は「コミュニケーション力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」など、内面的な要素が上位を占める結果になりました。

一方、中途採用は即戦力を期待するケースが多く、過去の経験やスキルフィットを重視する傾向にあります。

独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査によると、中途採用を実施する理由は「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」が半数以上の約54%を占めています。

ただし、中途採用は既存の環境で活躍できるかどうかを判断する意味でも、カルチャーフィットにも注目する必要があるでしょう。

 

採用基準に基づいて選考する方法

書類選考・適性試験・面接において、設定した採用基準に基づいて選考する方法を解説します。

書類選考

書類選考は採用基準が明確であるほど効率よく合否の判定を行えます。

候補者の表現力・プレゼンテーション能力を見たい場合は、書類のフォーマットを定めず自由に記入してもらう方法が良いでしょう。ただし、自由度が高いぶん主観によるバイアスがかかりやすい点には注意が必要です。

このようなバイアスを防止してなるべくフラットに評価したい場合は、あえてフォーマットを指定するのもひとつの方法です。

適性試験

適性試験は、候補者の適性を客観的に判定する有効な手段のひとつです。その人のパーソナリティや職務適性を書類や面接の情報から正確に判定するのは困難なためです。

一方で、採用基準・評価基準が曖昧であったり誤っていたりすると、せっかくの適性試験も期待するような効果を得られません。

自社独自のコンピテンシー評価ができるように、多少初期コストがかさんでも既存社員のハイパフォーマーにも受験してもらい、評価の基準となる情報を集めたほうが良いでしょう。

面接

面接では主観によるバイアスの1つである「ハロー効果」に特に注意しましょう。

ハロー効果は候補者の目立った特性や自分との共通点に引っ張られてしまい、そのほかの点に対する判定を歪ませて全体的に高く評価してしまいがちです。どんなに意識的に気をつけたとしても、人の無意識に働きかける効果のため、完全に無くすのは困難でしょう。

このようなバイアスによって評価や合否がブレないよう、可能な限り具体性のある採用評価基準を設け、基準に沿って判定することが重要です。

 

正しい採用基準を設定して効率的な採用を実現しよう

自社が求める人材を適切に見極めて採用するためには、明確な採用基準が必要不可欠です。

採用基準が明確であるほど、面接官・評価者の主観や心理的バイアスによる評価のブレを防止し、フラットな基準で候補者を評価できるでしょう。

評価基準は新卒・中途によって異なりますが、スキルフィット・カルチャーフィット・コンピテンシーとの合致率をバランス良く判定することが重要です。

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