「なぜ採用がうまくいかないのだろう」
「どうすれば課題を解消できるのだろう」
このような「採用課題」に頭を抱えている経営者や人事責任者の人も多いのではないでしょうか。「採用課題」は企業によって多様で、解決策も課題に応じてさまざまです。今回は、多くの企業が悩んでいる「採用課題」と「解決方法」を紹介します。
本記事を読むことで、採用課題の解決のヒントが得られるので、ぜひ最後まで読んで自社の課題解決の参考にして下さい。
採用課題とは
採用課題とは「なかなか応募が集まらない」など「採用が成功しない要因」を思い浮かべがちですが「採用効率を下げる要因」も課題に含まれます。具体的には「採用してもすぐに辞めてしまう」ことも、再び採用しなければならないため非効率となり、採用課題のひとつです。
また、経済情勢や業界の変化、中途採用市況の変化なども、採用課題に影響を与えます。このような採用課題を見つけることは、課題に対処する良い機会です。課題を解決することで、優秀な人材を獲得しやすくなり、再募集や従業員の離職に伴うコストを削減できるメリットがあります。
主な問題点をチェック|採用課題の例一覧をご紹介
一口に採用課題と言っても、企業により抱えている問題点はさまざまです。ここでは、代表的な採用課題の一例を以下の3つのフェーズに分けて紹介します。
- 母集団形成・応募
- 選考
- 入社後の定着
自社に当てはまっている課題がないか確認してみて下さい。
母集団形成・応募
母集団形成・応募のフェーズで多いのは次の2つです。
- 応募者が少ない
- 自社が求める人材を見つけられない
求人しても応募者数が集まらない場合は、「母集団の形成」に課題があります。応募が集まらなければその先に進めないため、まずは応募者数を集めることが優先です。また、自社が求める人材とは異なる応募者ばかりが集まるケースもあります。このような場合は、間違ったターゲットを想定していることも少なくありません。
応募数が集まることは良いことです。しかし、スキル不足の人材や自社が求めているのとは異なる人材からの応募が集まっても、工数が増えて採用担当者の負担が重くなりリソース不足になってしまいます。
選考
選考のフェーズで多いのは次の2つです。
- 面接段階での辞退が多い
- 内定辞退者が多い
求人への応募は集まるものの、面接辞退が頻繁に発生してしまうケースは多くあります。原因の多くは選考の遅れです。書類選考や面接までの期間が長くなれば、その間に他社で内定が決まり面接辞退されやすくなります。
また、他社から内定が出た場合、自社の内定を辞退されることも少なくありません。内定辞退を防ぐには、スピーディな応募者対応や内定者フォローを徹底し、定期的にコミュニケーションを取りながら不安や疑問を解消することが効果的です。
入社後の定着
入社後の定着フェーズで多いのは次の2つです。
- 早期離職者が多い
- 期待したほどの活躍をしてくれない
入社後すぐに辞めてしまう場合は、入社前とのギャップが発生している可能性があります。
入社前にイメージしていた企業風土や業務内容と、入社後に感じた雰囲気や仕事内容に大きなギャップがあると、ミスマッチを感じて早期離職が起こりやすくなるのです。
このようなケースの場合、自社の魅力を過大に伝えてしまっていることがあります。良い面だけを強調するのではなく、弱みも含めてありのままの自社の姿を伝えることが重要です。
また、ミスマッチは、配属先を決定する際にも起こり得ます。価値観や志向性が自社と合わない場合には、本来の実力を発揮できず期待した成果が得られないことも少なくありません。
対策|主な採用課題の解決策を分かりやすく解説
採用の進め方や考え方が間違っていることで、課題になっているケースも少なくありません。適切な対処が課題解決の第一歩となります。ここでは、課題解決の一例を見ていきましょう。
応募者が少ない場合
応募が集まらないのは、自社の求人広告が競合他社に比べて見られていないことや、求めているターゲットに訴求できていないことが原因です。例えば「タイトルやキャッチコピーが作り込まれていない」「上位表示されない掲載プラン」の利用は求職者の目に触れにくくなります。
求人広告の成果を高めるには、上位表示プランの利用やプロに原稿作成を依頼して多くの人に見てもらうことを意識しましょう。ダイレクトリクルーティングを利用してスカウトする場合でも、同じ文面にせず、一人ひとりカスタマイズして、メール送信することで応募率が高まります。
自社が求める人材を見つけられない場合
募集は集まっても、自社が求める人材からの応募がない場合は、ターゲットに響かない内容になっていることが理由です。このような場合は「求人媒体」や「採用の手段」を変更すると解決することが多くあります。
例えば「若い人材が欲しいのにSNS採用を取り入れていない」「ハイクラスの人材が欲しいのにスカウトサイトを利用していない」などです。また「向いている人はどのような人か」を明記し、「たった一人のこの人物」を意識してターゲットを明確にするのも方法です。
面接辞退者が多い場合
面接の辞退者が多い場合は、「面接前」なのか「面接後」なのかで対策が異なります。面接前であれば「面接回数が多い」や「結果が出るまでの時間が長い」のが理由です。このような場合だと、他社で先に内定が出ると辞退されてしまう可能性が高まります。3回の面接を2回にして、応募者の負担を減らすと良いでしょう。
また、面接後の辞退者が多い場合は「優先度が低かった」ことが原因です。求人での魅力づけが不十分だと優先順位は低くなります。求人内容を工夫して、魅力的な内容にし、「絶対に入社したい」と思わせることが重要です。
内定辞退者が多い場合
内定辞退者が多い場合は、面接で入社意欲を高められていないことが原因です。求職者は複数社に応募しているケースがほとんどのため、自社を選んでもらえるような魅力づけをする必要があります。例えば、当社では「やりたいことが実現できる」とアピールしたり、現場社員を面接に同席させて応募者の疑問や不安を解消したりするなどの工夫が必要です。
また、内定後は「本当にこの会社で良かったのか」と心理的にも不安定になりやすい時期です。このようなタイミングで懇親会や会社見学などを開催し、不安を減らすフォローも効果があります。会社として「あなたの入社を楽しみにしている」と伝えることがポイントです。
早期離職者が多い場合
早期離職者が多く、定着率が悪い場合は「採用段階」もしくは「入社後」に問題があるケースがほとんどです。退職する従業員から「なぜ退職するのか」の本音を聞き出し、データを集めることでどこに原因があるのか見えてきます。
例えば「入社前のイメージと違う」ことが原因の場合、仕事の概要しか伝えていないなど、求人の情報量が不足しているケースが多いです。「一緒に働く社員がどんな人か」や「社内の雰囲気」「将来的な年収例」など求職者が知りたい情報は必ず伝えましょう。また、厳しい面も知ってもらうことで覚悟ある応募者が集まりやすくなり、ミスマッチの防止になります。
採用活動に人員を割けない場合
小規模の会社で「専任の人事担当がおらず、採用活動だけに時間をとれない」などの理由から、効率の良い採用活動ができない場合も多くあります。このようなケースでは採用計画の段階から「採用支援会社」に任せるのも、採用活動を進めるために有効です。
また、全てを任せるのは不安なので「面接は自社でやるので、応募者を集めてほしい」など、採用工程の一部のみを委託するのも良いでしょう。他の業務が忙しい場合は、こうした代行サービスを活用することで負担を大きく軽減できます。
人事・採用担当者必見|採用課題の調査方法・分析のポイント
採用課題が発生する背景には、採用戦略や採用手法などに問題がある「内的要因」と、市場トレンドや時代の流れによる「外的要因」の2つがあります。採用活動を成功させるためには、どこに課題があるのかを分析し、正しく把握することが重要です。
内的要因には以下の3つがあります。
- 採用プロセスの課題(母集団形成・選考・内定フォローなど)
- 組織上の課題(ノウハウがない・人員不足など)
- 入社後の課題(ミスマッチなど)
外的要因には以下の3つがあります。
- 社会環境の変化(人口減少、経済の動向など)
- 採用市場の変化(求人倍率など)
- 応募者者の変化(世代・年代による価値観、活動方法の動向など)
内的要因は自社内で解決できる場合がほとんどなので「要因と解決策をセットで考える」ことが重要となります。一方、外的要因は自社だけでは解消できない部分もあるため、解決策よりも「課題に対してどう対策していくか」を考えることが先決です。
採用課題に関する市場の変化・動向
採用課題は「新卒か中途か」あるいは「企業規模」によっても異なります。この章では、採用種別と企業規模別に「近年の市場がどうなっているか」をご紹介します。
採用種別
新卒・中途に限らず2023年以降は、これまでの選考活動のように、会場に足を運んでもらうスタイルからオンラインで選考する形に変える企業も増えました。既に6割近くの企業が最終面接までオンラインで実施しており、大企業では8割以上となっています。(参考:HR総研「2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告」)
特に若い求職者ほど費用面や時間面でのメリットを感じ、積極的にオンライン面接を受けている傾向です。参考:「エン・ジャパン(en Japan)」
新卒採用
新卒採用においては、近年「ナビサイト離れ」が進んでいます。コロナ禍でオンラインでの個別対応が進んだこともあり、個別企業のホームページや説明会を重視する傾向です。従来のように、ナビサイトを利用するだけでは優秀な人材が獲得しにくい状況となっています。「いかに自社サイトを充実させるか」も大きな要素です。
参考:キャリタス就活「2022 年卒 採用ホームページに関する調査」
逆に企業側も採用手法として、ダイレクトリクルーティングなどの「個別採用に注力する企業」が増えており、母集団の量よりも質を重視する傾向があります。旧来の「マス型採用」から「個別採用」へのシフトが起こりつつあると言えるでしょう。
参考:HR総研「2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告」
中途採用
中途採用は、コロナ禍で有効求人倍率が大きく下がり、それ以降、少しずつ改善したものの、令和4年12月から再び少しずつ下がってきています。
有効求人倍率は、求職者1人に対して何人分の求人があるかを示す数値のことで、1を下回れば求職者同士で仕事を取り合う形になるため「就職が難しい」と言えるでしょう。
有効求人倍率が低い場合、企業側に有利な「売り手市場」となり、企業は求職者を選べる状況です。しかし、ITエンジニアなどは、企業のDX化促進もあり、依然として人材の確保が難しい状況が続いています。IT人材の供給不足は今後も続くとみられているため、エンジニア採用を検討している企業にとっては厳しい状況です。
参考:
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年2月分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について」
企業規模別
中小企業か大企業かによっても、採用の動向と抱える課題は異なります。それぞれの近年の採用トレンドを解説します。
中小企業
業界を問わず人手不足が深刻なのが中小企業の特徴です。特に、新卒においては大手企業を好む傾向があり、中小企業には人材が集まりにくくなっています。
中小企業が抱えている課題で最も多いのは以下の3つです。
- 応募が少ない
- 内定辞退が多い
- 採用コストがかけられない
採用の予算が少ない企業に有効な採用手法として、従業員からの紹介による「リファラル採用」があります。近年では、一般的には求人広告や人材紹介よりも採用単価を抑えやすい「ダイレクトリクルーティング」も増えてきました。
「多くの求人媒体に掲載して応募を待つだけの募集」ではなく、自社が欲しいと思う人材にターゲットを絞ってスカウトする採用手法です。これより、ミスマッチを少なくし、質の高い人材を低コストで採用できます。
大手企業・大企業
近年、大手企業の採用手法として、人材紹介会社を利用する傾向があります。株式会社PR Tableによると、現在利用している採用手法の上位3位は以下の通りです。
1位:人材紹介会社(72.6%)
2位:ナビサイト(62%)
3位:ダイレクトリクルーティング・スカウトサービス(53.8%)
この背景には、採用担当者の人材不足が大きく関係しています。別のアンケート調査では、採用施策に満足していないと答えた割合は47.6%と、約半数が採用に満足していないのです。採用施策を十分に実行できていない理由として最も回答が多かったのが「必要なスキルを持つ専門人材が不足しているから」(63%)です。次に多いのが「どのような採用手法が効果的かわからないから」(48.1%)となっています。
つまり、採用に詳しい人材がおらず、効果的な採用手段を適切に判断できないため、人材紹介会社に依頼しているケースが多いのです。この結果からも、大手企業も効果的な採用手法を求めていると言えます。
参考:株式会社PR Table【大企業の採用広報における課題調査】経営・人事責任者の8割以上が「求職者へのアプローチ」に限界を実感
成功のコツ|採用課題を解決して優秀な人材を採用するためのポイント
採用を成功させるためには、自社の採用戦略に沿って「ポイントを絞った活動を行うこと」が重要です。最後に、優秀な人材を採用するために抑えておくべき5つの点について解説します。
ターゲットを明確にする(若手採用・エンジニア募集など)
採用ターゲットが明確になっていないと、ミスマッチが生じ「早期退職」や「内定辞退」につながります。「どのような人材を採用するか」を明確にし、面接に関わる人同士で共有することで、求める人材を採用しやすくなり、採用効率も上がるのです。ターゲットの設定は、以下を基準にすると良いでしょう。
- スキルレベル
- 経験値
- 考え方や性格
「どのようなターゲットにするか」は現場の意見を聞きながら決めないと、ミスマッチになる可能性があります。ただし、あまり選考のハードルを上げ過ぎると集まりにくくなるため、注意が必要です。
資料・会社紹介などで自社の魅力をアピールする
求人サイトなどはフォーマットが決まっていることも多く、細かいアピールができないケースも少なくありません。このような場合、SNSや自社ホームページなどを利用して求めるターゲット層に刺さるアピールを行うと効果的です。
自社サイトは文字数やレイアウトの制限がないため、他社にはない魅力を詳細に伝えることや、従業員へのインタビュー動画などさまざまなアピールに使えます。ただし、発信内容は求めるターゲットを意識しなければ欲しい人材が集まらない可能性があるので、必ず意識するようにして下さい。
求人広告・採用代行などの他社サービスを活用する
求人は一社にこだわらず、複数を併用しましょう。窓口を増やすことで応募が集まりやすくなります。特に、採用代行などのサービスの利用は、自社の採用プロセスの改善点がわかり、ノウハウも蓄積される点は大きなメリットです。
専門業者に依頼することで、採用担当者の負担の軽減になり、採用についてのアドバイスを受けられるため、結果的に採用成果を高められます。自社だけでは採用課題の解決が難しい場合や、採用の専門家からのアドバイスを受けたい場合には、採用代行サービスの利用をおすすめします。
採用プロセスを見直す
ターゲットも明確にして効果的な募集を行っているはずなのに、採用がうまくいかない場合は「採用プロセス」に問題があるケースも少なくありません。採用プロセスとは、採用活動全体の流れのことを指します。新卒と中途採用ではプロセスが異なりますが、一般的な採用プロセスは以下の通りです。
- 採用計画の策定
- 人材募集
- 企業説明会やセミナー開催
- 選考・面接
- 内定
- フォローアップ
例えば、求人募集への応募者数や応募者のうち面接に進んだ人数など、プロセスごとに数値化してみると良いでしょう。見える化することで、採用プロセスのどの段階に課題があるのかを把握しやすくなります。
社内ルールを明確化してフォロー体制の充実化を図る
面接はいろんな人が関わるケースが多くあります。ルールが明確になっていないと判断基準が曖昧になり、選考の公平性が保てません。例えば、Aさんは採用基準を満たしていると判断したが、Bさんは満たしていないと判断したなどが起こり得るのです。
また、社内ルールを明確化することで、社員全員の業務意識が向上します。全員が同じルールで業務を行うことで、チームとして一体感をもって業務に集中できるでしょう。教育担当者が不在の時でも、誰かが新人をフォローできる体制が作りやすくなります。
まとめ
企業の採用課題は「母集団形成」「選考」「入社後の定着」の3つであるケースが多いです。一般的に、原因は採用手法やターゲット層の誤りなどの「内的要因」にあることが多く、採用プロセスなどを見直せば解決します。一方、採用市場や社会情勢などの「外的要因」が影響している場合は「課題に対してどう対策するか」を考えることが重要です。
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