採用活動は、企業の未来を左右する重要な戦略の1つです。自社に合った人材を採用するためには、明確に策定された採用方針が必要不可欠です。しかし、どのように採用方針を決定すれば良いか、具体的な手順やポイントが分からずに悩んでいる人事担当者の人も多いのではないでしょうか。
この記事では、自社に最適な人材を確保するための採用方針の策定手順やポイントを、新卒採用と中途採用それぞれで解説します。採用方針策定に関する知識を深め、自社にとって理想的な人材を確保するための基盤を築きましょう。
採用方針とは
採用方針とは、自社に最適な人材を確保するために、必要な人員配置や採用の計画を立てることです。策定する事項は、人材を募集する部署や求めるスキル・経験、選考方法、採用スケジュール、採用手法などが挙げられます。
採用方針は事業発展の核でもあり、事業計画に合致した人材採用や配置を行う必要があります。採用方針にずれが生じると、ミスマッチを引き起こし、採用や教育に想定以上のリソースを割くことにもつながりかねません。採用方針は、綿密に計画を練ることが非常に重要です。
採用方針を策定する手順
採用方針の策定は、大きく分けて6つのステップで行います。以下に、採用方針策定を進めるための具体的な手順を解説します。
- 採用目標を明確にする
- 中長期的な視点で採用ニーズを考える
- 採用したい人材のターゲットを明確にする
- 選考方法を決める
- 採用スケジュールを立てる
- 採用手法や採用ツールを選定する
採用目標を明確にする
採用方針策定は、まず採用目標を明確にする所から始めます。現状の人員配置を精査し、どの部署でどれだけの採用が必要か、具体的に把握することがスタート地点です。
現在の従業員数、各部署の業務量、将来の事業計画や成長戦略を照らし合わせて分析を実施し、必要な人数や求めるスキルセットを特定した上で、適切な採用目標を設定しましょう。この段階では、事業の現状と将来予測を踏まえた人員計画が重要になります。
中長期的な視点で採用ニーズを考える
次に、中長期的な視点で採用ニーズを考えます。現在の状況だけでなく、中長期的な視点、将来の事業展開や目標に必要な人数やスキル、必要となる時期、予算を総合的に検討しましょう。技術進化や市場動向、競合状況など、さまざまな要因を踏まえた上での計画が必要になります。
適切なタイミングで必要となる人数や人材の質を予測し、それに基づいた採用計画を立てることで、企業は持続可能な成長と競争力の維持を目指せるでしょう。
採用したい人材のターゲットを明確にする
目標と将来の採用ニーズが固まったら、採用したい人材のターゲットを明確にしましょう。このステップでは、採用したい人材の経験や資格、望ましい人柄、価値観、年齢など、具体的な属性を定めます。
ターゲット像を具体的に定めることで、採用活動の各段階での判断基準が明確になり、企業のニーズに合致する人材を確実に見極められるようになるでしょう。採用プロセスが効率化されて、求める人材を効果的に獲得するための戦略的なアプローチが実現します。
選考方法を決める
選考方法の決定は、ターゲットとした人材を確実に採用するために欠かせないステップです。求職者の選出から採用決定に至るまでの各段階で必要な選考手法の種類と実施順序を慎重に計画しましょう。
選考方法には、書類選考、筆記試験、グループディスカッション、グループ面接、個別面接、最終面接など、さまざまな種類があるため、それぞれの選考手法をいつ、どのように組み合わせるかが重要です。また、各選考段階での合格基準を明確に設定する必要があります。
各選考ステップの目的と期待される成果を理解し、それぞれが求職者のどの能力や特性を測るために有効かを考慮に入れながら、最適な選考プロセスを構築しましょう。
採用スケジュールを立てる
採用スケジュールは、過去の採用活動のデータを基に計画すると効率的です。過去の採用実績から、書類選考や面接にかかる時間を考え、全体の具体的なスケジュールを立てていきましょう。
効果的な採用活動のためには、スピード感のあるスケジュールが推奨されます。求職者が長期間待たされることなく、次の選考に進めるように計画すると良いでしょう。
また、内部での調整や選考人員のスケジューリング、必要な資料の用意など、採用活動を円滑に進めるための準備作業にも十分な時間を想定しておくことが重要です。各ステップの所要時間の適切な見積もりとスケジュールの柔軟性を確保することで、予期せぬ遅延にも対応できます。
採用手法や採用ツールを選定する
採用スケジュールの立案と合わせて、採用手法や採用ツールの選定も具体的に検討しましょう。自社採用サイト・SNSや求人広告(就職サイト・転職サイト)、人材紹介、イベント、リファラル採用(社員紹介制度)など、多様な採用媒体やツールがあります。
自社採用サイト・SNSは、企業文化や職場環境を直接的に伝えられ、求人広告やイベントは幅広い層にアプローチ可能です。また、人材紹介やリファラル採用は、特定のスキルを持つ人材など自社が求める人材に効率的に出会える可能性があります。
各ツールの特性を理解し、ターゲットとする人材の属性や求職者の行動傾向を踏まえて、適切な採用手法を選択することが重要です。
採用方針を策定する際のポイント
採用方針を策定する際は、押さえるべきポイントがあります。ここでは、以下のポイントについて解説します。
- 前年度の採用活動・採用実績を振り返る
- 自社の採用力を知る
- 競合企業の事例を知る
- 採用市場や求職者の動向を知る
- 次年度の採用計画に反映する
前年度の採用活動・採用実績を振り返る
前年度の採用活動と採用実績の振り返りは、次年度の採用方針を策定する上で非常に重要です。振り返りでは、目標とした人員が確保できたか、企業基準を満たす人材や企業文化にマッチする人材を採用できたかを評価します。
また、前年の採用プロセス全体を見直し、良かった点、悪かった点を洗い出すことが望ましいです。成功した施策と改善が必要な領域を明確にすることで、より成果を上げるための効率的な採用戦略につなげられるでしょう。
自社の採用力を知る
採用方針の策定において、自社の採用力の正確な把握は不可欠です。自社の採用力を知るためには、企業の魅力が効果的に発信できているか、採用ターゲットや手法が適切であるかを客観的に評価する必要があります。
評価には、求職者からのフィードバックや採用結果の分析が役立ちます。例えば、求職者が自社のどの魅力に惹かれて応募したのかを理解することで、企業が意図する採用ブランディングが効果的に機能しているかを判断できます。採用力を知ることは、求める人材を獲得するための鍵を握っています。
競合企業の事例を知る
競合企業の採用状況や戦略を把握することは、自社の採用方針を策定する上でも大いに役立ちます。採用方法や募集内容、提供する待遇などを知ることで、自社の採用活動が市場内でどのように位置づけられているのかを理解できます。
競合企業の事例をもとに、自社の魅力や募集要項などで差別化できるポイントを探しましょう。競合企業との比較を通じて、自社の強みを明確に打ち出し、ターゲットとする人材に効果的にリーチすることが重要です。
採用市場や求職者の動向を知る
効果的な採用方針を策定するには、採用市場のトレンドを理解し、求職者が何を重視しているかを把握することが不可欠です。景気の流れや有効求人倍率などの経済指標を利用し、現在のマーケット状況を正確に理解しましょう。
業界や職種によって異なる経済指標のデータを分析して、自社の採用方針や戦略を慎重に検討することが重要です。市場の変化に迅速に対応することができれば、適切なタイミングで優秀な人材を確保できるでしょう。
次年度の採用計画に反映する
採用方針に沿った年間の採用活動が終了した後、次年度の採用計画を見据えた振り返りを行うことをお勧めします。実施した各取り組みから得られた効果や課題を丁寧に洗い出し、分析した結果を次年度の採用計画に反映させましょう。また、年間計画の終了時だけではなく、日ごろから施策に対しての振り返りを行い情報を蓄積していると、よりスムーズに次年度の計画作成をすることができます。
毎年継続してPDCAを回すことで、より洗練された採用戦略を立案し、採用活動の質と効率の両面で改善を図ることが可能です。継続的な改善プロセスが、企業の採用活動を成功に導くでしょう。
自社に合う人材を採用するためのポイント
自社に最適な人材を採用するためには、明確な戦略が必要です。ここでは、効果的な採用を実現するため、採用方針策定時に重要なポイントを紹介します。
- 事業計画に沿った戦略にする
- 採用ブランディングを考える
- 採用したい人材のペルソナをつくる
事業計画に沿った戦略にする
採用活動の最終的な目標は、事業の継続的な成長と発展に寄与することです。そのため、採用戦略には人事部門だけでなく、経営層の視点も取り入れることが重要です。経営者や役員からの意見をヒアリングし、事業の将来像や成長戦略に合致した採用計画を立てる必要があります。
事業目標の達成に欠かせない、自社に合った求める人材像を明確に定義し、必要な人数や資質、スキルを正確に把握することが求められます。事業計画と密接に連携した採用戦略の策定は、ただ人材を確保するだけに留まらず、企業の核となる価値を創出し、発展し続けるための基盤となるでしょう。
採用ブランディングを考える
採用ブランディングとは、採用活動を通じて自社の魅力を最大限にアピールし、企業イメージをブランド化する戦略です。採用ブランディングの目的は、優秀な人材を惹きつけるだけでなく、企業の価値観や文化に共感し、長期的に貢献してくれる人材を見つけ出すことにあります。
採用ブランディングに成功すると、応募者の質やオファー受諾率の向上、採用コストの削減など、多くのメリットがあります。また、企業が提供する価値と求職者の価値観が一致することで、新入社員の早期の組織への適応や定着率のアップにも寄与します。
採用ブランディングを実施する際には、ターゲットとする人材に響く自社の強みや独自性を絞り込み、メッセージを丁寧に練り上げることが大切です。
採用したい人材のペルソナをつくる
採用したい人材の具体的なイメージを深化させるためには、ペルソナの作成が効果的です。ペルソナとは、理想の候補者像を具体化した架空の人物のことで、年齢や性別、学歴、職歴、ライフスタイル、家族構成、年収、趣味、価値観などを細かくつくりあげます。
ターゲットは年齢や学歴など、一定の条件によって大まかに分類した人材像を指しますが、ペルソナでは設定した人物の日常生活の情景が浮かんでくるぐらいまで深堀りして、つくりあげていくことが特徴です。
ペルソナを設定することで、採用に携わる担当者間で、求める人材に対する共通の理解を深めることが可能となります。採用戦略の精度を高め、効果的に理想の人材の獲得を目指す上で、極めて有効な手法です。
新卒採用の場合
では、新卒採用の場合はいかがでしょうか。ここでは、新卒採用を中心に、中途採用との違いを踏まえた採用方針策定に関するポイントを解説します。
- 新卒採用のスケジュール
- 新卒採用の方針策定のポイント
新卒採用のスケジュール
新卒採用のスケジュールは、中途採用と異なり、事前に決定されています。政府の主導で以下のように就活ルールが設定されており、企業はルールに沿って採用活動を行います。
- 広報活動の解禁日:3月1日(大学3年生)
- 選考活動の解禁日:6月1日(大学4年生)
- 内定出しの解禁日:10月1日(大学4年生)
企業は、それぞれのプロセスに合わせて準備を進め、戦略的な採用活動を展開することが重要です。学生の就職活動の流れに合わせた採用計画を立てることで、効率的に優秀な新卒人材を確保できるようになるでしょう。
新卒採用の方針策定のポイント
新卒採用の方針策定は、基本的には中途採用と同様の手順ですが、インターンシップの実施など早期準備の重要性が異なります。
まず、企業の現状分析と将来のビジョンを踏まえて、必要な人材像を明確にします。次に、求める人材を引き寄せるための採用メッセージを策定し、どのような方法でアプローチするかを決定します。
特に新卒採用では、インターンシップを通じて学生に早期から接触し、組織文化や仕事内容を体験してもらうことが重要です。早期接触は、学生の興味を引き、優秀な人材の獲得につながります。実際の採用活動に移る前に、選考プロセスや評価基準も明確にしましょう。
自社に合う人材を採用するには適切な手順で採用方針を策定することが重要
企業が成長するためには、事業計画に沿った戦略的な採用方針の策定が不可欠です。この記事では、自社に最適な人材を確保するための採用方針の策定手順を解説しました。採用活動の振り返りや競合企業の調査、採用ブランディングなど、採用活動を成功に導くための具体的なポイントも紹介しています。
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