人事部・人事担当者の業務のひとつである採用業務。企業の成長や目標の達成、事業の継続などには人材が欠かせないため、特に重要な業務といえます。
一方で、これから採用活動を行おうとしている場合や、採用活動の見直しを検討している場合は、採用業務の具体的な内容や進め方などを知りたいとお考えではないでしょうか。
本記事では、採用業務の内容や業務フロー、必要なスキルなどを解説します。あわせて、採用活動の通年の流れや起こりがちな課題もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
採用業務とは?
採用業務とは、必要な人材の定義や獲得目標の設定から実行までの一連の業務を指します。
実行の具体例として、採用戦略の立案や使用するツールの選定、発信内容の作成や選考のほか、内定者のフォローまで多岐にわたります。
近年は、長期化している少子高齢化や若手不足などの影響を受け、採用競争が激化しており、難易度も上がる一方です。このような状況下で採用活動を成功させるには、しっかりした計画の立案と手法の理解が不可欠といえます。
採用業務フロー・業務内容一覧
採用業務におけるフローと業務内容について、実際に実行する流れに沿って以下6つの段階にわけて解説します。
- 人員計画・採用計画を立てる
- 採用戦略を立てる
- 母集団形成をする
- 選考・評価する
- 内定・オファーを出す
- 承諾フォローをする
1. 人員計画・採用計画を立てる
まずは、現状を鑑みて人員計画・採用計画を立案しましょう。ここでいう「採用計画」とは以下のようなものを指します。
- いつまでに採用したいのか
- どんな人を採用したいのか
- 何人採用したいのか
- どのような雇用条件で採用するか
これらの内容によって、利用すべきツールやスケジュールなどが変わるため、計画を立ててから具体的な戦略やタスクを逆算する必要があります。
なお、求める人材の定義は経営層や採用担当だけで決めず、現場の声も取り入れることが大切です。
2. 採用戦略を立てる
人員計画・採用計画を立案したら、具体的な採用戦略を検討します。採用戦略とは、求める人材を獲得するために「どのように計画を進めるか」を設計することです。
なお、戦略の立案は以下のようなプロセスで進めるのがおすすめです。
- 1.市場・競合他社を調査・分析する
- 2.自社の強みや差別化できるポイントを洗い出す
- 3.求める人材のペルソナを設定する
- 4.求める人材にリーチできる募集方法を検討する
- 5.求める人材を正確に採用するための選考方法を検討する
3. 母集団形成をする
採用戦略が固まったら、実際に行動を開始して母集団形成をしていきます。
オーソドックスな方法は求人サイト・合同企業説明会などによる母集団形成です。一方、近年は採用手法が多様化しており、SNS・自社の採用サイト・スカウトサービスなどさまざまな方法を組み合わせる企業が増加しています。
採用難易度が高まっていることもあり、転職顕在層からの応募を待つだけでなく、転職潜在層も含めて企業側から積極的にアプローチすることが求められます。
4. 選考・評価する
続いて、形成した母集団に対して選考を行い、一人ひとり評価していきます。具体的な選考方法には以下のようなものがあります。
- 書類選考
- 筆記試験
- 実技試験
- 適性検査
- 面接
評価の精度を高めるためには、自社の求める人材像を明確にし、適切な選考方法を選択することが大切です。加えて、担当者によって評価がぶれないよう、評価方法や評価基準を揃える必要があります。
なお、選考は企業側が求職者を一方的に評価する場ではなく、求職者側も企業を吟味する場であることを念頭に置きましょう。
5. 採用通知・オファーを出す
選考の結果、採用基準を満たしていると判定された求職者に採用通知・オファーを出します。
新卒・中途にかぎらず、複数社の選考を受けているケースがほとんどであり、ほかの企業からもオファーが来ている可能性を考慮する必要があります。
合格連絡やオファーは、メールや電話などでスピーディーに行い、行き違いや認識違いを防止するために、書面で改めて通知するのが一般的です。
6. 内定・承諾フォローをする
オファーを出した候補者に対して、オファーを承諾・内定してもらうようフォローします。こちらがどんなに採用したいと思っていても、最終的にどの会社に入社するかを決めるのは候補者本人だからです。
たとえば、社員との食事会や内定者同士の懇親会などを実施して、不安や疑問を解消する方法が挙げられます。既存社員向けの社内イベントや職場見学に招待するのも良いでしょう。
候補者からの承諾が得られたあとも、実際の入社まで丁寧にフォローしていく必要があります。
企業の採用人事に必要なスキルと知識
企業の採用人事に必要なスキルと、採用業務を遂行するために必要な知識を解説します。
採用業務に必要なスキル
採用業務に必要なスキルには、以下のようなものが挙げられます。
- コミュニケーションスキル
- プレゼンスキル
- ロジカルシンキング
- 情報収集スキル
応募から内定に至るまで、常にたくさんの候補者とやり取りする必要があるため、コミュニケーションスキルは必須です。
あわせて、求職者も複数の企業を見比べて吟味しているため、相手を尊重しつつ自社をより魅力的に見せるプレゼンスキルも求められます。
また、採用市場や求職者の価値観は常に変化し続けているため、そのような変化や業界・競合の動きも察知できる情報収集スキル、目的達成に向けて柔軟に対処・対応するためのロジカルシンキングも必要です。
採用業務の遂行に必要な知識
採用業務に必要な主な知識は以下の通りです。
- 自社に関する幅広い知識
- 業界知識
- 採用マーケティングの知識
- 法令に関する知識
求職者に正しい情報を提供しつつ魅力を訴求するためには、自社の製品・サービス・業務内容・社内制度など、自社に関する幅広い知識が必要です。加えて、求職者や社会の動向によって有効な採用手法が移り変わるため、その時々で柔軟に対応できる採用マーケティングの知識が求められます。
また、採用活動を行うにあたって、職業差別にあたる行為は法律で禁止されており、雇用した後もさまざまな法令を遵守する必要があります。
採用業務の1年の流れ・繁忙期・閑散期
採用業務は、新卒・中途でスケジュール感が異なります。
中途採用は欠員補充などで行われるケースが多く、採用市場も年間を通してそこまで大きな波はありません。一方で、新卒採用は活動時期がある程度決まっており、繁忙期と閑散期の差が激しいのが特徴です。
新卒採用は1年の流れを、中途採用は日常的な流れを解説します。
新卒採用の1年の流れ
企業によって活動時期や内容は異なりますが、一般的な中小企業における新卒採用の1年の流れは概ね以下の通りです。
- 6月〜9月:就職情報サイトオープン、夏インターンシップの開催
- 10月〜12月:オープンカンパニー・秋冬インターンシップの開催
- 1月〜2月:接点を持った学生のフォロー・採用活動開始に向けた準備
- 3月〜5月:採用広報解禁(繁忙期開始)
- 6月〜9月:選考・採用・内定者フォロー
- 10月〜2月:内定式・入社前研修
新卒採用には「情報解禁日」という採用ルールがあり、広報・選考・内定を開始できる日がそれぞれ決められています。過剰な人材獲得競争によって際限なく採用活動が前倒しされ、学生の学業に支障が及ぶのを防ぐためです。
情報解禁日は、国から企業に対する要請であり法律ではありませんが、基本的にはこの日に合わせて一斉にスタートできるよう準備を進めていくイメージです。
例えば、インターンシップやオープンキャンパスは、採用広報解禁日にエントリーしてくれる学生を確保するために行われます。
なお、2025卒から、インターンシップで取得した学生の情報を本選考に活用してよいルールに変更されました。そのため、早期から学生と接点を持つことの重要性が高まり、採用活動の早期化の傾向が強くなっています。
中途採用の流れ
中途採用に繁忙期はなく、欠員や新規事業の立ち上げなど、必要に応じてランダムに実施するのが一般的です。
採用スケジュールは募集背景や規模などによって異なりますが、1回の採用活動における期間は3か月程度であり、概ね以下のようなスケジュール感です。
- 〜1か月:求める人材を定義し、採用戦略を立案する
- 〜2か月:採用広報・選考を実施する
- 〜3か月:採用通知・内定者の決定・内定者フォロー
応募が集まりやすい時期はあるものの、思うように母集団形成ができなかった場合や、採用条件を満たす人材に出会えなかった場合などは、採用活動の期間を延長するケースもあります。
採用業務で発生している課題
採用業務でよく発生している課題は以下の2つです。
- 採用手法の多様化に伴う業務量増加
- 人材獲得競争の激化による採用難易度の上昇
1. 採用手法の多様化に伴う業務量増加
近年、採用手法の多様化に伴う業務量の増加が課題になっています。従来の求人広告だけでは十分な母集団が形成できなくなっており、さまざまな方法を併用する必要があるためです。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 自社専用の採用サイト
- 企業公式のSNS
- 従業員や取引先などからの紹介(リファラル採用)
- 退職者の再雇用(アルムナイ採用)
集まった求職者を選定する作業よりも、マーケティング要素が強くなったことで採用手法が増え、採用担当者の業務負担が増加する傾向にあります。
2. 人材獲得競争の激化による採用難易度の上昇
近年は人材獲得競争が激化しており、採用難易度が上がり続けているのも課題です。長引く人口減少と少子高齢化により、「売り手市場」が続いているためです。
新卒・中途ともに少ないパイを取り合う構図になっているため、採用活動を成功させるためにはしっかり道筋を立てて戦略的に動く必要があります。
一方で、採用活動に苦戦している企業が多く、その課題を解決すべくさまざまな採用手法・採用ツールも生まれています。新しい手法も積極的に学び、自社に合ったものを選定して取り入れていくことが採用成功への近道といえるでしょう。
採用業務を効率化する方法
増加する採用業務量の効率化を図れる以下3つの方法を紹介します。
- ATS(採用管理システム)の導入
- RPO(採用アウトソーシング)での業務委託
- 人材紹介サービスの活用
1. ATS(採用管理システム)の導入
ATSは「Applicant Tracking System」の略称で、採用管理システムとも呼ばれています。
採用業務の効率化に特化したシステムであり、以下のような煩雑な業務を1つのシステムで詳細に一元管理できるのが特徴です。
- 求職者情報・履歴書などの管理
- 面接日程の調整
- 選考結果・評価の入力
- 求職者への選考結果通知
- 内定者フォロー
- 各種データ集計
新卒と中途では業務フローが異なるため、いずれかに特化したATSを選択するのが一般的です。新卒用は「i-web」「MOCHICA」「HR PRIME」、中途用は「ジョブスイートキャリア」「HRMOS採用」「HERP Hire」などが人気です。
2. RPO(採用アウトソーシング)での業務委託
RPOは「Recruitment Process Outsourcing」の略称で、採用アウトソーシングまたは採用代行とも呼ばれています。
RPOは専門会社によって提供されている場合が多く、アウトソーシングできる業務は会社によって異なります。具体的には、応募者連絡などの単純作業を委託できるものから、採用戦略の立案から伴走してくれるコンサルティング要素の強いサービスまで多岐にわたります。
代表的なRPO会社は以下が挙げられます。
- マンパワーグループ株式会社
- パーソルキャリア株式会社
- 株式会社ネオキャリア
3. 人材紹介サービスの活用
人材紹介サービスを利用するのもひとつの方法です。
希望する人材の条件を伝えておくことで、条件にマッチした人材のみをピンポイントで紹介してくれるうえ、面接日時の設定なども代行してくれます。母集団形成や応募者との連絡など、手間のかかる作業を代行してくれるため、業務効率化にもつながります。
費用はかかるものの、採用が決定した場合に発生する成果報酬のみであり、それまでの作業が無料であることも魅力です。
代表的な人材紹介サービスは以下が挙げられます。
- リクルートエージェント
- マイナビエージェント
- doda
採用業務のポイントを押さえて効率的な採用を実現しよう
企業の運営・成長・目標達成、あらゆる場面で重要な役割を担う採用業務。業務フローや必要なスキルを把握・理解したうえで取り組むことが重要です。
新卒・中途で年間の動きや繁忙期などは異なりますが、総じて採用難易度は高まっているといえます。母集団形成の手段が多様化していることから、採用担当者の業務量が肥大化しており、業務効率化が課題になっています。
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