会社で求人を行った際、新たに雇用する従業員から採用証明書を求められるケースがあります。しかし、書き方がわからないという人事担当者の方もいるのではないでしょうか。採用証明書は、失業保険を受給中の求職者が全員対象となるわけではないため、記入した経験がないという担当者も少なくありません。

本記事では、採用証明書の書き方や手続きの流れを解説します。書き方がわからない方はぜひ参考にしてください。

ハローワークに提出する「採用証明書」とは

採用証明書とは、失業手当を受給中の求職者が再就職した際、求職者が再就職手当の申請をするために必要な書類のことです。求職者が再就職手当を受給するためには、企業から正式に採用されたことを証明してもらう必要があります。

再就職手当は、早期の再就職を促すための制度で、失業手当の残日数を一定以上残して再就職が決まった求職者に対して支給されるお祝い金と考えてよいでしょう。

この章では、採用証明書が必要な理由を説明します。なお、採用証明書は厚生労働省のホームページからダウンロード可能です。

 

失業手当の受給停止

失業手当は雇用保険に加入していた失業者に対し、失業期間の生活費を補填する目的で支給される手当のことです。生活費を補填することで就職活動に集中してもらい、できるだけ早い再就職を促進するための制度であるため、就職先が決まれば支給を停止しなければなりません。その代わり、再就職手当がもらえます。

提出すればすぐに支給が止まると思っている人もいますが、就職日の前日分までは支給されるので安心してください。もし、再就職が決まったにもかかわらず採用証明書を提出しなければ、失業手当の不正支給となるため必ず提出が必要です。

 

再就職手当の受給開始

再就職手当は、失業手当を受給している求職者が再就職した場合、失業手当の支給が停止される代わりにお祝い金としてもらえる手当のことです。再就職手当をもらうための主な条件は、以下をご覧ください。

  • 給付日数の3分の1以上が残っている
  • 再就職先が、失業保険を受給される前に辞めた会社や関連会社ではない
  • 再就職先で1年以上働く予定がある
  • 過去3年間に再就職手当をもらったことがない

早く再就職が決まるほど、もらえる額は多くなります。申請できる期間は再就職日から1ヶ月以内となっており、期間をすぎると申請できないため注意が必要です。

企業側|採用証明書手続きの流れ

ここで、企業側の採用証明書に関する手続きの流れを解説します。企業側が流れを把握していなかったため提出期限内に間に合わず、求職者が再就職手当を受給できなかったとならないためにも、しっかり確認しておきましょう。

 

採用証明書をダウンロードする

新入社員から採用証明書の記入依頼があったら、厚生労働省のホームページからダウンロードしましょう。採用証明書の様式は自治体によって異なる場合があるので、依頼された新入社員が提出するハローワークで使用されているものと同じかどうかの確認が必要です。ただ、失業保険の申請時にハローワークからもらう「受給資格者のしおり」に採用証明書が同封されているため、新入社員が持ってくるケースも多くあります。

企業側でダウンロードする場合は、先に必要項目を記入してから新入社員に渡すとスムーズです。

 

採用証明書の企業欄に必要事項を記入する

企業側が記入する項目は以下の通りです。

  • 雇入(予定)年月日
  • 従業員数
  • 職種
  • 雇入年月日前の貴社における就労の有無
  • 採用経路
  • 雇用形態
  • 雇用期間の定めの有無
  • 事業主証明欄

事業所記入欄の項目は、雇用契約書や労働条件通知書と一致していなければ受理してもらえないため、相違がないよう確認しながら記入しましょう。詳しい書き方と記入例は次の章で解説します。

 

ハローワークに採用証明書を提出するよう新入社員に依頼する

企業側で証明が必要な項目を記入したら新入社員に渡し、自分が記入する欄を記入した上でハローワークに提出するように伝えます。

注意しなければならないのは、再就職手当の申請は入社を機に引越した場合でも、失業手当をもらっていたハローワークに提出しなければならない点です。家族などの代理人や郵送でも申請が可能なので、該当する新入社員にはどちらかの方法で提出するように伝えましょう。

採用証明書の書き方・記入例

ここからは、採用証明の書き方を解説します。企業側が記入しなければならない項目をひとつずつ解説しますので、採用証明書をダウンロードして実際に書いてみましょう。

今回は、東京労働局のサイトに掲載されている採用証明書の様式をもとに解説します。前章でも解説したように、自治体ごとに若干異なる場合がありますが、項目や書き方は同じです。

 

新入社員に関する項目

採用証明には、該当する新入社員の情報を記入しなければなりません。特に氏名、住所、電話番号は間違って会社の住所などを記載しないように注意が必要です。記入の際は、履歴書を見ながら相違がないよう確認することをおすすめします。

記入方法は以下の通りです。

引用元:厚生労働省

支給番号

支給番号は雇用保険受給資格者証に記載があります。雇用保険受給資格者証は失業手当をもらうときにハローワークから発行される書類で、会社に提出するものではないため、企業側では番号の確認ができません。

そのため、新入社員に雇用保険の受給資格者証を見て、自分で記入してもらう必要があります。もし、雇用保険受給資格者証を紛失して番号がわからない場合には、失業保険をもらっていたハローワークに問い合わせるよう伝えるとよいでしょう。

氏名・生年月日など

氏名・生年月日・住所・電話の項目は、該当する新入社員の情報を記入しなければなりません。間違って会社の情報を記入するケースもあるので注意が必要です。

履歴書を見ながら記入するとミスを防げます。しかし、履歴書は個人情報であるため、社内で閲覧できる人が限られているケースも少なくありません。

したがって、間違い防止や企業側の手間を省くためにも、本人に記入してもらった上で会社に記入を依頼してもらうとよいでしょう。ハローワークでも本人が記入することを推奨しています。

 

雇い入れなどに関する項目

次に会社側で記入する欄について見ていきましょう。企業側では該当する新入社員の採用日や職種・雇用形態について証明する必要があります。雇用契約書や労働条件通知書と相違がないよう、確認しながら記入するとよいでしょう。

引用元:厚生労働省

雇入年月日

雇入年月日は雇用開始の日です。初出勤日や雇用契約を結んだ日と勘違いしやすい項目なので注意しましょう。

なお、雇用開始日には研修期間も含まれます。たとえば、4月1日付けで採用し、研修期間終了後の5月1日から正式採用となる場合でも雇い入れ日は4月1日です。また、4月1日が休日や祝日に当たる場合や、4月1日に欠勤した場合でも雇い入れ日は4月1日となります。

まとめると次の通りです。

  • 採用日(雇い入れ日)が休日や祝日の場合:4月1日
  • 採用日に初出勤だったが欠勤し、3日後の4日から出勤した場合:4月1日
  • 研修のためアルバイトとして採用し、5月1日から正式採用する場合:4月1日

あくまでも採用日なので、初出勤日や雇用契約を結んだ日などを記入しないようにしてください。

従業員数

従業員数は、雇入れ日時点での企業全体の人数を記入します。人数には採用した新入社員が所属する事業所だけでなく、支店なども含んだ企業全体の人数を記載しなければなりません。

なお、従業員とは正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトを意味します。働き方や呼び方が違っても、雇用契約を結んで働いている人は全て従業員となるので覚えておきましょう。

つまり、ここでは正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトも含めた人数の記入が必要です。

職種

職種は採用した新入社員が実際に業務に携わる職種を記入します。社内での名称ではなく「営業」や「経理事務」など、業務内容がわかるように記入しなければなりません。他の業務を兼任する場合は、メインとなる職種を記入すれば構いません。

あまり深く考える必要はありませんが、どうしてもわかりづらいという場合は厚生労働省の「厚生労働省編職業分類」を参考にするとよいでしょう。

雇入年月日前の貴社における就労の有無

採用した新入社員が以前働いていたことがあるかどうかを確認する欄です。

雇入れ前にアルバイトなどで働いていたことがあれば「ア」の有に◯をし、働いていた期間を記入します。働いていたことがなければ「イ」の無に◯をしましょう。アルバイトなどで働いていたことがあるからと言って不利になることはありません。

採用経路

採用した方法を記入する欄です。

ハローワークからの紹介を通じて採用した場合は「ア」に◯を、転職エージェントや人材紹介会社を通じて採用した場合は「イ」に◯をしましょう。「イ」を選んだ場合は、紹介を受けた会社名・所在地・電話番号・担当者名の記入が必要です。

上記以外の方法で採用した場合は「ウ」または「エ」となります。近年、採用手段としてよく使われている自社ホームページやSNS採用は「ウ」に◯を付けましょう。

以下の媒体は「ウ」に該当します。

  • 新聞広告
  • 求人広告(求人誌含む)
  • 求人サイト
  • 店頭の求人募集貼り紙
  • マッチングサイト

雇用形態

採用した新入社員をどのように雇用するか確認する項目です。

常用・臨時・パート・派遣・その他の中から、該当するものを選択します。アルバイトは「臨時」に該当しますが、1年以上の長期にわたり日常的に勤務することを前提として採用した場合、常用に該当するので注意が必要です。「その他」欄もありますが、判断に迷ったらハローワークに相談しましょう。

雇用期間の定めの有無

雇用期間が決まっているのか、そうでないのか確認する欄です。

雇用期間の定めがある場合でも再就職手当は受給できますが「1年以上の雇用が見込まれること」が受給条件のひとつになっています。ただし、1年未満の有期契約でも、契約更新が前提で1年以上の雇用が見込まれる場合は支給対象です。再就職手当の受給に関わる項目ですので、有期契約者の場合は注意が必要です。

 

事業主証明欄

事業主証明欄は、記入内容どおりに採用したことを企業の代表者が証明するための欄です。そのため、以下の記入が必要となります。

  • 日付
  • 事業所所在地
  • 事業所名称
  • 代表者指名
  • 電話番号
  • 雇用保険適用事業所番号

手書きで記入する必要はありませんが「事業所印」と「代表者印」の押印が漏れていると受理されないため、注意が必要です。印鑑はハローワークに雇用保険適用事業所の登録をした際に届け出た印鑑を押印しましょう。

また、雇用保険適用事業所番号がわからない場合は以下の書類で確認できます。

  • 「雇用保険適用事業所設置届 事業主控」
  • 「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」

 

提出期限までに採用証明書の作成が間に合わない場合の対処法

採用証明書の提出期限は雇用開始日(入社日)の前日までとなっています。しかし、企業によっては、実際の出社確認が取れてから証明する決まりになっているケースも少なくありません。

このような場合、出社後しか証明書の発行ができないことを新入社員からハローワークに伝えてもらいましょう。ほとんどの場合、提出を待ってもらえます。

なお、郵送での提出もできるので、休みをとってハローワークへ持参してもらう必要はありません。

 

採用証明書に関するよくある質問

最後に採用証明書について疑問を抱かれがちな項目をまとめました。新入社員から質問されることもあるため、すぐに回答できるようにしっかり把握しておきましょう。採用証明に関して、提出者や流れについてわからないことがある人は、ぜひ参考にしてください。

 

ハローワークに採用証明書を提出するのは誰?

採用証明は、採用者(新入社員)が企業から採用されたことを証明してもらい、自分で提出するのが基本です。一般的に、企業側は本人からの依頼により、採用したことを証明する欄への記入と押印だけとなります。

しかし、企業側の証明が遅くなる場合もあるため、提出期限に間に合うように企業が直接ハローワークへ郵送することも可能です。

 

新入社員が採用証明書の手続きをする際の流れは?

採用証明の書類作成および、提出は本人が行います。提出までの流れは以下のようになっていますので、確認しておきましょう。企業担当者も流れを把握しておくことで、提出期限に間に合わないというトラブルを避けやすくなります。

  1. 再就職が決まったらハローワークへ報告
  2. 採用証明書(受給資格者のしおり内)を準備する
  3. 就職先に記入と押印を依頼し、返却してもらう
  4. 再就職日の前日までにハローワークへ採用証明書を提出する

なお、再就職手当を受給するためには、採用証明の他に「再就職手当支給申請書」と「雇用保険受給資格証」の提出が必要です。「再就職手当支給申請書」はハローワークへ採用証明を提出した際にもらえます。

再就職手当支給申請書は、雇用保険受給資格証と一緒に就職日の翌日から1ヶ月以内にハローワークへ提出しなければなりません。

 

派遣事業を営んでいる場合は誰が採用証明書を書く?

派遣として働いている人の雇用主は派遣会社となるので注意が必要です。派遣スタッフは派遣会社の従業員として派遣先に勤務するため、派遣先ではなく派遣元である派遣会社が採用証明を書かなければなりません。

もし、派遣先企業から記入を依頼された場合は、派遣元に記入をお願いするように伝えましょう。

 

まとめ

採用証明書は再就職手当の受給条件を満たした求職者が、再就職手当の受給申請をする際に必要な書類です。内定をもらったら、雇用開始日までに従業員が自分でハローワークへ提出するのが原則です。

記入依頼を受けた場合は、提出期限に間に合うよう余裕を持って記入し、新入社員へ返却しましょう。あくまでも企業側は依頼されて記入するのみですが、提出の流れも把握しておくと良いでしょう。

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