慢性的な人手不足や売り手市場が続く昨今、採用担当者は新たな採用手法を確立する必要性に迫られています。

しかし、コア業務もある中で新たな手法を企画・実行・効果検証するのは非常に困難であり、本来の採用業務が逼迫していると感じている方も多いのではないでしょうか。そんな背景から注目が集まっているのが採用代行・採用アウトソーシングです。

本記事では、採用代行の概要やメリット・デメリット、実際に依頼できる業務や利用時の注意点などを網羅的に解説しているので、ぜひ参考にしてください。

採用代行・採用アウトソーシング(RPO)とは

採用代行・採用アウトソーシングとは、「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」とも呼ばれ、自社で行う採用業務の一部または全部を社外の専門会社にアウトソーシングする行為を指します。

近年、慢性的な人手不足や売り手市場が続いており、従来の採用手法では人材の獲得が難しくなってきたことで、新たな採用手法を模索・実施する必要性が生まれました。これにともない、新たな採用手法を企画・分析・効果測定するなど、採用担当者の業務量・業務負荷は増加の一途を辿っているのが実情です。

このような状況下で、採用担当者の負担を減らしつつ、最先端の採用手法を取り入れて採用競争力を高めたいと考える企業が増加したことで、採用代行の需要が高まっています。

 

採用代行のメリット


採用代行の主なメリットは以下の5つに集約されます。

  • 採用業務の質の担保と現状の課題解決
  • 採用活動の工数削減・半自動化
  • 採用担当者の業務負荷軽減
  • 求人媒体や転職エージェント最適化によるコスト削減
  • 入社後の教育にかかる手間の軽減

採用代行は採用のプロ集団であり、採用活動の要点や業務範囲さえ指定しておけば、細かな指示をしなくとも現状の課題を分析しながら、能動的に採用業務を進めてくれます。これにより、採用担当者は誰がやっても大きな差が出ない煩雑な業務から開放され、面接や評価などのコア業務に集中できるようになります。

また、求人媒体や各種採用サービスの使い方を見直したり、入社後の教育を代行してもらうことで不要なコストを削減できる場合もあります。

 

採用代行のデメリット

一方で、採用代行を利用するうえで以下のようなデメリットも存在します。

  • 使い方を誤ると社内に採用ノウハウが溜まらない
  • 採用担当者の採用スキルが向上しない
  • 伝達ミスや認識のズレが起こる可能性がある
  • 依存しすぎると採用ミスマッチや想定外のコストが発生する
  • 代行会社の規模によっては任せられない領域が発生する

採用代行に依存しすぎると社内の採用力が高まらず、採用代行無しには十分な採用活動が行えないという悪循環に陥ってしまいます。同時に、自社の希望と異なる人材を採用してしまったり、想定外の追加費用が発生したりといったトラブルにつながる可能性もあります。

便利だからと任せきりにするのではなく、自社の成長を促すサポートツールとして最適な活用方法を考えていくことが大切です。

 

採用代行の業務内容の例


採用代行が請け負ってくれる代表的な業務内容は以下の9つです。

  1. DM(ダイレクトメール)の送信
  2. 媒体と事業者の選定
  3. 面接日程の調整などメールや電話連絡の代行
  4. 採用計画およびイベントの立案
  5. ウェブサイトおよび求人広告の作成代行
  6. 採用担当者のトレーニング代行
  7. イベント運営代行
  8. 書類審査と面接代行
  9. 内定者のフォローアップと新入社員研修

01.DM(ダイレクトメール)の送信

ダイレクトリクルーティングが主流になりつつある近年、候補者へのDM送信は欠かせない業務のひとつといえます。

その一方で、DMを送信する候補者のスクリーニングや文面の作成には多大な労力を要するうえ、より効果を高めるには候補者の属性にあわせたカスタマイズなども必要です。

このような煩雑かつ専門性が求められる作業を代行してもらえば、自社では反応があった候補者とのやり取りに専念できるでしょう。

02.媒体と事業者の選定

自社にあった効果的な求人募集の媒体や事業者を選定する業務です。

媒体や事業者は大手なら効果も高いと思われがちですが、実際はそれぞれ得意とする業界・業種・利用しているユーザーの属性などが異なります。

適切な媒体・事業者を選定することで、余分なコストを削減しつつ、高い効果を実現できるでしょう。

03.面接日程の調整などメールや電話連絡の代行

応募者とのやり取りや面接日程の調整なども代行に適した業務です。

選考における連絡はタイミングが重要であり、遅くなるほど辞退率が上がる傾向にあるため注意が必要です。

電話連絡とメールを効果的に組み合わせることで、応募者の意欲を向上させたり、伝達ミスや行き違いを防止したりといった効果が期待できます。

04.採用計画およびイベントの立案

募集背景や採用要件をヒアリングし、効果的な採用計画やイベントの立案を行います。

どのような背景の企業が、どのような人材を採用したいかによって、行うべきイベントや選考方法は異なります。採用計画が採用活動の結果を決めるといっても過言ではないため、経験豊富でコンサルティングを得意としている代行会社に委託するのがおすすめです。

05.ウェブサイトおよび求人広告の作成代行

母集団形成をするために、自社のウェブサイトや求人広告の原稿作成を行います。

求人原稿は目を引く作りにする必要がありますが、掲載内容によって母集団がうまく集まらなかったり、集まっても自社が求める層とズレてしまったりするため、難易度が高く繊細さが求められる作業といえます。

このような作業を代行することで、工数・コストの両面を削減できる可能性があるでしょう。

06.採用担当者のトレーニング代行

適切な人材を効果的に採用できるように、選考に関わる採用担当者のトレーニングを行います。

採用担当者によって質問の仕方や評価方法が異なると、合格者や内定者の質がぶれてしまい、結果的にミスマッチな採用にもつながってしまいます。また、売り手市場においては採用担当者が自社の広告塔となって、自社の魅力を伝える役割も担う必要があります。

07.イベント運営代行

会社説明会をはじめとするイベント運営も代行できる業務のひとつです。

自社と代行会社の間で事前に打ち合わせを行い、どのようなプログラムで何を伝えるのかなどを設計します。代行会社によっては、必要に応じてイベントで使用するプレゼン資料の作成・案内告知・当日の運営補助なども依頼できる場合があります。

08.書類審査と面接代行

応募者が多い場合は、書類審査だけでも多大な時間と労力が発生します。また、面接官が足りなく対応しきれない場合や、面接官のスキルが乏しく選考に不安が残る場合もあるでしょう。

このような場合に、代行会社に採用基準を共有して代行することで、効果的かつスピーディーな選考が可能になります。採用担当者のトレーニングと併用することで、自社の採用力を高めることもできるでしょう。

09.内定者のフォローアップと新入社員研修

内定者の辞退を防ぐフォローアップや、新入社員研修も代行できる場合があります。

優秀な人材ほど複数の内定を獲得する傾向にあるため、最終的に自社を選んでもらえるよう効果的なフォローアップを行う必要があります。他社と僅差である場合は、内定者フォローが内定承諾に大きな影響を与えるケースも少なくありません。

 

採用代行の料金・価格相場

採用代行における業務ごとの価格相場は概ね以下の通りです。

  • 求人媒体管理・運用代行:5万円~70万円/月
  • DM・スカウト配信代行:3万円~/月
  • 応募者の対応代行:5万円~/月
  • 選考日程調整代行:5万円~/月
  • 面接官代行:30万円~

採用代行の料金は代行会社によって異なるため、上記はあくまで目安です。

たとえば、求人媒体の管理は媒体数や管理内容などによって異なります。DM・スカウトは一斉送信かターゲットを絞るかで料金が変動する場合や、配信数に応じて1通あたりいくらと設定されている場合もあります。

面接官の代行は、アサインする担当者のスキルや習熟度によって料金が異なり、初年度に着手金を請求されるのが一般的です。

 

採用代行の依頼時に考慮すべきポイント

採用代行を依頼する際に考慮すべきポイントは以下の5点です。

  1. 業務範囲の明確化
  2. 支援実績の確認
  3. 自社の方針・ポリシーとの適合性
  4. 見積もり内容の透明性
  5. 進行状況と情報共有の手法

01.業務範囲の明確化

採用代行を依頼する際は、業務範囲を明確にしておくことが大切です。

業務範囲が曖昧だと、自社のスタッフとうまく連携が取れなかったり、良かれと思ってやってくれたことで追加費用が発生してしまうケースもあるためです。また、自社が追加で依頼したいと思った業務に対応してもらえない場合もあるでしょう。

採用活動の主体はあくまでも自社のため、事前に自社の課題やアウトソーシングしたい業務を明確にしておき、効果的に活用できるよう計画的に依頼する必要があります。

02.支援実績の確認

採用代行会社を選定する際に重要なのは、過去の支援実績です。

採用する業界や職種によって有効な手法が異なるため、万が一自社にあったノウハウを持っていなかった場合、期待する成果が得られない可能性があります。

支援実績はノウハウの有無や、利用した企業の満足度を測る指標にもなるため、品質基準を判断するひとつの材料として確認しておくことをおすすめします。

そのうえで、自社が属する業界・業種の支援実績が豊富な会社であればより安心でしょう。

03.自社の方針・ポリシーとの適合性

採用代行会社を選定する際は、自社の方針やポリシーとどの程度適合しているかも重要です。

両者の方針やポリシーがズレていると、進行中にコミュニケーションロスが増えたり、設計した採用ファネルがうまく機能しなかったりといったトラブルの原因になります。

採用代行は自社のコンサルタントやパートナーとしての側面も持ち合わせているため、採用に対する考え方などを聞き出しつつ、自社との相性を見極める必要があるでしょう。

04.見積もり内容の透明性

見積もり内容の透明性もしっかりチェックしておきましょう。

採用代行会社によって料金体系が異なるうえ、不明瞭な点があると後から追加請求される可能性があるためです。特に定額プランを設定している場合は、必ず最大数量をチェックして、それを超える場合の追加料金についても確認しておく必要があります。

想定外のコストが発生すると費用対効果も下がってしまうため、契約前にすべての料金体系をクリアにしておくことをおすすめします。

05.進行状況と情報共有の手法

代行している業務の進行状況や情報共有がどのように行われるのかもチェックしておきたいポイントです。

任せきりで結果を待つだけというスタンスでは、蓋を開けてみたら求める結果が出ていなかったというケースもあるためです。

電話・メール・ChatWork・Slackなど、採用担当者が連絡を取りやすい方法であることに加えて、必要に応じて打ち合わせを行ったり、定例ミーティングを設定したりなど、定期的に進捗報告される仕組みを作ると良いでしょう。

 

採用代行会社の種類まとめ


採用代行会社にはそれぞれ得意分野があり、主に以下の3つに大別されます。

  1. 企画〜実行までトータルサポートを提供する企業
  2. 採用企画・採用戦略コンサルティングの企業
  3. 「実行」に特化した採用代行企業

このような種類があることを理解したうえで、自社が必要とする要素にあわせて適切な代行会社を選びましょう。

01.企画〜実行までトータルサポートを提供する企業

企画〜実行までトータルサポートを提供する企業は、採用業務のみならず採用企画の段階からさまざまなサービスを効果的に掛け合わせて提案してくれるのが特徴です。

はじめて本格的な採用活動を行う場合や、既存の採用スキームを全体的に見直したい場合などにおすすめです。

中でも特に実績が豊富な代行会社は以下の通りです。

  • 株式会社ネオキャリア:累計10,000社以上の導入実績
  • 株式会社ディスコ:1973年創業の老舗
  • 株式会社キャリアマート:15年の歴史と年間500社以上の導入実績

02.採用企画・採用戦略コンサルティングの企業

採用企画・採用戦略コンサルティングを得意とする企業は、人材系サービスから派生したものが多く、過去の支援実績や自社内で蓄積されたノウハウなどをもとに業務改善や設計を行っているのが特徴です。

弊社、株式会社武蔵野はこの領域に属しており、30年続けてきた新卒採用のノウハウを結集して、採用に関するさまざまな課題やお悩みを解決するコンサルティングサービスを提供しています。

そのほか、特に実績が豊富な代行会社は以下の通りです。

  • 株式会社パソナ:人材サービス企業として1976年創業の老舗
  • マンパワーグループ:総合人材サービス企業として50年の歴史
  • 株式会社アデコ:人材派遣をメインとする外資系の人材総合会社

03.「実行」に特化した採用代行企業

「実行」に特化した採用代行企業は、パートナー企業などと連携してスカウト配信や連絡代行などの実務の実行に特化しているのが特徴です。

代行したい業務が採用活動の一部である場合や、アウトソーシングしたい業務内容が明確な場合に適したサービスといえるでしょう。

この領域で特に実績が豊富な代行会社は以下の通りです。

  • 株式会社アールナイン:キャリアコンサルタント・人事経験者など1,000名以上のプロが在籍
  • 株式会社ツナグ・ソリューションズ:パート・アルバイト採用代行で業界トップクラスの支援実績

 

採用代行の正しい使い方を検討しよう

採用業務の質を担保しつつ、採用活動の工数・採用担当者の業務負荷・コストなどの削減が期待できる採用代行サービス。

より効果的に活用するためには、業務範囲を明確にしつつ、支援実績や自社との相性を見極めて代行会社を選定することが大切です。また、代行会社に任せきりにせずに「自社が主導となり、密に連携しながら業務の一部を担ってもらう」というスタンスが成功の鍵となるでしょう。

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