あらゆる企業にとって損失となるケースが多い従業員の離職。人口減少や人手不足が叫ばれる昨今において、重要度が高まっている指標が離職率です。

離職率が重要だと認識しながらも把握しきれていなかったり、離職率が高いことに悩んでいたりする担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、離職率の計算方法や全国的なデータに加え、離職率を高めてしまう要因と改善のポイントなどをまとめて解説します。

離職率とは?

離職率とは、企業に在籍している従業員のうち、一定期間において離職した人の割合を表す指標です。

どの期間を切り取るかは明確に決まっておらず、期初から期末にかけての1年間、または入社1年後や3年後など、算出する目的に合わせて設定されるのが一般的です。

外部から見る離職率は、その企業の魅力や働きやすさを測るひとつの指標にもなっており、離職率が低ければ働きやすく魅力的な会社・職場であると判断される傾向にあります。

離職率の計算方法と具体例

前提として、離職率は法的に定義されている概念ではありません。そのため、計算方法も正式には定められていませんが、「離職者数÷ある時点の従業員数×100(%)」で算出されるのが一般的です。

期初から期末までの1年間を例にシミュレーションしてみましょう。期初に200名在籍していた企業で、期末までに10名が離職したと仮定した場合、離職率は以下のように表されます。

10名÷200名×100(%)=5%

次に、従業員の一部を抽出して算出したい場合です。期初に10名の新卒を採用し、期末までに3名が離職したと仮定した場合、新卒社員だけを計算対象とし、離職率は以下のように計算できます。

3名÷10名×100(%)=30%

厚生労働省による離職率の公表データ

参考データとして、厚生労働省が公表した令和4年度の離職率を紹介します。調査対象は15,120事業所、平均有効回答率は57.8%であり、対象期間は同年1月1日から12月末日までの1年間です。

全体では51,198名のうち7,656名が離職しており、離職率は15.0%。このうち、属性別の離職率は以下のような結果となっています。

  • 男性:13.3%
  • 女性:16.9%
  • 一般労働者:11.9%
  • パートタイマー:23.1%

新卒の平均離職率

続いて、新卒社員に絞った平均離職率を見ていきましょう。ここでは新卒社員を以下の2つに区分して、厚生労働省が過去に公表したデータを紹介します。

  • 新卒採用3年以内の平均離職率
  • 新卒3年後離職率と10年後離職率の違い

新卒採用3年以内の平均離職率

厚生労働省が2020年に公表したデータによると、2019年における新卒3年以内の全体の平均離職率は約30%でした。このうち、属性別の割合は以下の通りです。

  • 大学卒:32.8%
  • 短大卒:43.0%
  • 高校卒:39.5%
  • 中学校卒:59.8%

ここでは2019年のデータを参照していますが、90年代後半から現在に至るまでの約20年間において大きな変動は見られません。離職率は概ね30%前後で推移しており、若年層であるほど離職率が高くなる傾向も通例となっています。

最も離職率が高くなった期間は就職氷河期と呼ばれた1999年〜2005年であり、この時期でも約35%と急激な変動は見られませんでした。

直近10年間の離職率の遷移

ここでもう一度厚生労働省が公表した令和4年度の離職率を紹介します。

2012年から現在までの直近10年間における全体の離職率は13.9%〜15.6%の間で推移しています。目立った動きがあったのは新型コロナウィルスが流行した2020〜2021年ですが、この時期は入職率・離職率ともに減少しています。

データからもわかるように、社会情勢の変化や大きなイベントの影響を受けて離職率が増減するケースもありますが、頻度は決して多いとはいえません。労働人口の減少にともなう人材獲得競争が激化する昨今においては、平常時の企業のあり方、従業員との関係性、採用活動の精度などを見直して離職率を改善させることが重要です。

新入社員の離職率を高める8つの要因

新卒社員の離職率を高めてしまう具体的な要因を8つ紹介します。

  1. 入社時の期待と実際の職場の不一致
  2. 賃金や待遇に対する不満
  3. 高い目標・ノルマの過度なプレッシャー
  4. 信頼できる上司や先輩の不在
  5. 会社の文化とのミスマッチ
  6. 対人関係の問題や不安
  7. 業務上の魅力ややりがい不足
  8. キャリアの将来展望が不明瞭

01.入社時の期待と実際の職場の不一致

入社時に抱いていた会社・職場に対する期待と、実際の職場の現状にギャップを感じる所謂「入社後ギャップ」は、新入社員に多い離職理由の1つです。

特に新卒は業務内容や会社生活に対するイメージを持ちにくく、会社説明会や面接を通して得た情報から、漠然としたイメージや良い面だけを見て入社に至ってしまうことが要因と考えられます。

一方で、採用前後に会社から提供している情報が少ないと、中途採用でも同様の現象が起こる場合があるため注意が必要です。

02.賃金や待遇に対する不満

賃金や待遇に対する不満は離職を決意させてしまう大きな理由の1つです。人によって賃金や待遇に不満を持つ基準は異なりますが、一般的な水準より低いことがわかった場合や、仕事内容と釣り合わないと感じた場合に不満を抱く人が多い傾向にあります。

従業員の給与は、売上・業務内容・既存社員との兼ね合いなど様々な要因が複雑に絡み合って設定されていますが、肌感覚で「割に合わない」と感じている従業員が多い場合は見直す必要があるでしょう。

03.高い目標・ノルマの過度なプレッシャー

高い目標・ノルマなどによる過度なプレッシャーも、離職率を高めてしまう要因です。このような環境は各々が自身の業務に追われて余裕がないため、孤独を感じやすい殺伐とした雰囲気になりがちだからです。

目標をクリアしても大きな恩恵がなく、未達の場合はフォローやサポートがないという状況は、何のために頑張っているのかを見失いやすく、次第に追い詰められてしまうでしょう。このような環境は、無自覚に心身のバランスを崩してしまう危険性も孕んでいます。

04.信頼できる上司や先輩の不在

信頼できる上司や先輩がいないことも離職の要因になり得ます。仕事上の悩みや課題の解決をサポートしてくれる存在は非常に重要であり、やりがいや働きやすさの醸成に直接的に影響するためです。

このような存在がいない場合、日常的に発生する問題を解決するまでのハードルが上がり、心理的にも孤独を感じやすくなってしまいます。困っているのに相談できる相手がいないとなれば、退職がよぎった際に思い留まるのは困難でしょう。

05.会社の文化とのミスマッチ

会社の文化や価値観が合わずに離職してしまう人も少なくありません。近年はこのようなカルチャーフィットを重視している人が増加しており、入社・離職の決定に大きな影響を与えています。

具体的には以下のような場面でミスマッチを感じる傾向にあります。

  • 経営陣の考え方や方針が肌に合わない
  • プライベートに対する考え方が合わない
  • 周囲の人と仕事に対する温度感や熱意が合わない
  • 組織変更・経営陣の入れ替わりによる文化の変化

06.対人関係の問題や不安

対人関係の問題や不安は、いつの時代も上位にランクインしている代表的な離職理由です。ハラスメントのように表面化している場合と、思うようにコミュニケーションが取れない、なんとなく馬が合わないといった潜在的なケースに大別されます。

賃金や待遇にまったく不満がなくても、対人関係のストレスが上回って離職を決意する人も少なくありません。改善の兆しが見えない場合、いずれ我慢の限界が訪れるでしょう。

07.業務上の魅力ややりがい不足

業務上の魅力ややりがいが感じられない期間が続き、最終的に離職を決意してしまうケースもあります。

何のために、誰のために働いているのか、自分の仕事がどのように役立っているかなどがわからないと、目の前の仕事は単なる作業となってしまい、モチベーションの低下を招きます。「自分でなければならない理由」を見つけられない、感じられない場合も同様です。

在籍期間が長くなればなるほど、業務の意義や意味が重要性を増していく傾向にあります。

08.キャリアの将来展望が不明瞭

キャリアの将来展望が不明瞭であることを理由に、別な環境に移ろうと離職してしまうケースも少なくありません。特に問題なのは、優秀な人材であるほどこの傾向が強いという点でしょう。

今後のキャリアや人生を考えている人にとっては、目先の待遇よりも長期的なメリットや展望が重要なため、成長の機会や可能性を感じられない場合、いち早く環境を変えようと考えるのは自然なことです。

優秀な人材や若手人材の流出が目立つ場合は、この点を見直す必要があるでしょう。

離職率を改善する人材定着のポイント

離職率が高まる要因を踏まえて、離職率を改善し人材を定着させるためのポイントは以下の5つに集約されます。

  • 採用時の適性を正確に見極める
  • 組織内のコミュニケーションを強化する
  • 勤務条件や評価のシステムを再設計する
  • キャリアビジョンを明確にする
  • ストレス管理のための施策を導入する

採用時の適性を正確に見極める

離職率を改善するためには、採用時に適性を正確に見極めることも重要です。採用の時点でミスマッチがあると早期退職者が増加し、結果的に離職率も上昇するためです。

具体的には以下のような方法が考えられます。

  • 求める人材の要件・採用基準を明確にする
  • 面接官を教育してレベルを合わせる
  • 評価軸・評価方法を標準化する
  • 適性試験を導入する

採用のミスマッチは、要件定義・選考過程で発生しやすいため、上記の対策を取ることで改善できる可能性があります。

組織内のコミュニケーションを強化する

組織内のコミュニケーションを強化することも離職率の改善に効果的です。コミュニケーションが希薄で孤独を感じたり、相互理解が乏しいことで起こる摩擦がストレスになりやすいためです。

具体的には以下のような方法が考えられます。

  • フリーアドレス制の導入
  • イベントの企画
  • メンター制度の導入
  • 社内サークル・部活動の推進
  • 社内SNSなどのコミュニケーションツールの導入

社員同士のコミュニケーションが活性化すると、生産性やエンゲージメントなどの向上も期待できます。

勤務条件や評価のシステムを再設計する

勤務条件や評価システムを再設計することも検討しましょう。条件の向上は難しい課題かもしれませんが、離職者が増えてしまうと生産性や収益の向上どころではなくなってしまいます。

諸条件の向上は「従業員を大切にしている」というメッセージ性があり、離職率の低下はもとより、定着率・業績の向上も見込めるはずです。

具体的には以下のような施策が考えられます。

  • 交通費や燃料費などを一部負担する
  • 資格取得・スキル向上を後押しする
  • 仕事のパフォーマンスに見合った給与体系の構築

キャリアビジョンを明確にする

キャリアビジョンの明確化、キャリア構築のサポートも離職率の改善につながります。変化が激しく先行きが不透明な現代社会において、個人の価値や収入が向上する見込みがある会社で働きたいと考える人が増加傾向にあるためです。

たとえば、以下のような方法が実際に行われています。

  • 社内におけるスキルマップ・キャリアパスモデルの作成
  • 外部講師を招いた社内研修の実施
  • 資格取得費用の援助
  • キャリアアップと評価制度の連携

ストレス管理のための施策を導入する

従業員のストレス要因を把握・分析し、ストレスの軽減やメンタルヘルス向上のための施策を導入するのも非常に効果的です。「ワークライフバランス」や「健康経営」という単語が広まり、長く働き続けるための条件として注目している人が増えているためです。

具体的には以下のような点を検討すると良いでしょう。

  • 定期的な面談の実施
  • 残業・休日出勤を減らす工夫
  • メンタルヘルスサポートツールの導入
  • リモートワークなど多様な働き方の容認

離職を減らすために重要な「適材適所」

離職率を改善するうえでもう1つ重要なのが「適材適所」です。「自分に合っている」と感じる仕事のほうが苦労感が少なく、やりがいを感じるということは多くの人が経験していることでしょう。

適材適所において見落とされがちなのが、「働いている間に適正が変化することがある」という点です。業務を通して様々な経験をするなかで、新たなスキルや考え方が身に付き、できることが増えたり、さらなる適性を発見したりすることは決して珍しくありません。

この事実を踏まえて、採用時だけでなく就業中も定期的に一人ひとりの適正や現状を再チェックすること、常に配置転換を検討することが非常に重要です。適正に合った仕事は離職率の改善のみならず、生産性やパフォーマンスの向上も期待できます。

離職率を改善するための採用・育成設計をしよう

法的な定義や計算方法が定まっているわけではありませんが、様々なことを知る指標として社内外から常に注目されている離職率。改善するためには、階層・在籍期間などの属性別に既存従業員が抱いている不満や要因を理解することが重要です。

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