長引く売り手市場や働き方の多様化などにより、従来の採用手法では苦戦を強いられるようになってきた昨今の転職市場。

そのようななか、新たな手法としてリファラル採用の存在を知ったものの、何から始めれば良いかわからなかったり、思うように機能しなかったりと悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、リファラル採用の概要、メリット・デメリット、具体的な導入方法や活性化のポイントなどを網羅的に解説します。

リファラル採用とは?

リファラル(referral)とは紹介・推薦を意味する言葉で、社内外の信頼できる人たちから良い人材を紹介してもらう採用手法をリファラル採用と呼びます。

紹介者は自社の従業員や社外の取引先など多岐にわたり、従来の手法に比べて採用コストを大幅に削減できるのが特徴です。

自社のことや採用ポジションについてよく理解している人からの紹介であれば、マッチング率・定着率が高い採用を実現できる可能性があり、費用対効果の高い理想的な採用手法として知られています。

リファラル採用が普及した背景

リファラル採用が普及した背景には、以下の2つの理由が大きく影響していると考えられます。

  • 転職市場・労働市場の変化
  • 採用コスト増大への対応

転職市場・労働市場の変化

転職市場・労働市場が出口の見えない売り手市場になったことが理由の1つに挙げられます。

多くの企業が従来のように求人広告や転職エージェントに資金を投じても、思うように採用に至らなくなってきており、リファラル採用を含む別ルートからの採用手法を確立する必要性に迫られています。

採用コスト増大への対応

採用コスト増大への対応策としてリファラル採用に注目が集まるようになった側面もあります。

人材紹介への報酬や求人広告掲載費などが高額化していることに加えて、採用した人材が早期退職してしまうと改めて同等のコストをかけて採用活動をやり直さなければなりません。

採用コストを軽減しつつ人材の質を担保できる可能性のあるリファラル採用は、このような状況の打開策として非常に相性が良いといえます。

リファラル採用と縁故採用の違い

リファラル採用と縁故採用は似て非なるものです。

リファラル採用は既存社員や社外の人脈経由の紹介であり、通常の中途採用のように面接や入社試験を経て採用するため、実力が伴っている人材を採用するのが一般的です。

一方、縁故採用は役職者や役員などの血縁関係や知人関係を優遇・優先して採用するイメージです。そのため、縁故採用の場合は採用試験などを行わない場合もあり、実力が伴わなくても入社できてしまう側面があります。

 

リファラル採用導入のメリット

リファラル採用を導入する代表的なメリットを3つ解説します。

  1. マッチ度・質の高い人材の採用
  2. 採用コストの削減
  3. 従業員の離職の抑制

01.マッチ度・質の高い人材の採用

リファラル採用は、現場の理解度が高い人からの紹介であればあるほど、マッチ度・質の高い人材を採用できる可能性が高まります。

付き合いの長い取引先や自社で活躍している社員の紹介であれば、会社の雰囲気や必要なスキルとの適合性や相性などを考慮しやすいためです。

また、リファラル採用では入社前に紹介者から十分な説明を受けている場合が多く、入社後のギャップやミスマッチが起きにくく、早期退職の可能性が低いこともメリットといえます。

02.採用コストの削減

リファラル採用は求人サイトや転職エージェントを介さない採用手法のため、採用コストを大幅に削減できる点もメリットです。会社説明会・応募者対応・スクリーニング作業などの工数もほとんどかからないため、最小限の労力で済みます。

ただし、正しく運用しないと稼働コストがかさんでしまい、結果的に間接コストが増大してしまう場合があるため、運用方法には注意が必要です。

03.従業員の離職の抑制

リファラル採用に本格的に取り組む場合、従業員の離職の抑制につながる可能性があります。

リファラル採用はあくまで自然発生的な紹介のため、紹介に足る会社・環境にするために既存社員の働きやすさや取引先のイメージ・満足度を高める必要があるためです。

加えて、既存社員からの紹介である場合は、入社時点から社内に友人・知人がいるという安心感があるため、環境に馴染みやすく早期退職の可能性は低いといえるでしょう。

 

リファラル採用のデメリット

一見良いことばかりに思えるリファラル採用ですが、以下のようなデメリットも存在することを理解しておく必要があります。

  1. 採用開始から採用決定までの期間が長い
  2. 紹介人数や歩留まりが読みづらい
  3. 不採用時に紹介者と気まずくなる可能性がある

01.採用開始から採用決定までの期間が長い

リファラル採用は、開始から採用決定までに期間を要するのがデメリットです。人材が必要なタイミングですぐに紹介を受けられるとは限らず、良い人材がいたとしてもタイミングが合わないケースがほとんどだからです。

紹介してもらった人材が優秀であればあるほど、現職で活躍中である可能性が高く、今すぐに転職したいというスタンスではない人も少なくありません。

また、紹介を受ける頻度が低くケースバイケースであるため、採用活動としてのPDCAを回しづらいという側面もあります。

02.紹介人数や歩留まりが読みづらい

採用活動には欠かせない「数字の予測」が立てづらいのもリファラル採用のデメリットです。

一般的な採用では、何人の採用目標に対して何人の母集団を形成し、各選考でどの程度の人数が通過するかという歩留まりを予測します。しかし、リファラル採用は自発的な紹介に頼るという性質上、紹介人数や選考に通過する人数などを予測するのは非常に困難です。

リファラル採用を導入する際は、従来の手法とは異なる感覚で取り組む必要があることを理解しておきましょう。

03.不採用時に紹介者と気まずくなる可能性がある

紹介してもらった人材が不採用になった場合、紹介者と会社の関係が気まずくなる可能性がある点もリファラル採用のデメリットです。

ほかの採用手法と大きく異なる点は、紹介者個人の人間関係や感情が介在していることです。そのため、紹介者の友人・知人を否定された感覚や、紹介したという行為そのものに対して裏切られたという感情になる人も少なくありません。

リファラル採用を行う際は、たとえ友人・知人であっても公正に審査・判断させてもらう旨を紹介者に理解しておいてもらうなどの工夫が必要です。

 

他の中途採用手法とのコスト比較

リファラル採用は信頼関係・人間関係がある人からの紹介に由来するため、採用コストはかからないか少額で済むケースが一般的です。

これに対して、一般的な求人サイトの広告掲載費は10万〜100万円程度が相場であり、上位表示・掲載期間の延長・スカウト機能などのオプションに応じて費用が加算されます。ただし、一度の掲載で複数人を採用できる場合もあるため、1人あたりの費用対効果は採用人数によって変動します。

一方、人材紹介(転職エージェント)は成功報酬ではあるものの、報酬は採用した人材の年収の30〜40%が相場であり、1人を採用するために100万円以上のコストがかかるのが一般的です。

 

リファラル採用の導入方法・手順

ここからはリファラル採用を導入する際の具体的な方法・手順を5つのステップに分けて解説します。

  1. 採用目標・目的の整理
  2. リファラル採用導入の目的整理
  3. 報酬制度やインセンティブの設計
  4. リファラル採用の周知と理解促進
  5. 適切な配慮とフォロー

01.採用目標・目的の整理

リファラル採用に限った話ではありませんが、採用活動を行うにあたって、まずは全体の採用目標・目的を整理しましょう。

採用目標とは「いつまでに・どのような人材を・どの部署に・何人採用するか」を設定することです。これらを整理することで具体的なアクションプランやタスクが明確になります。

採用する人材のスペックや人数などによって、有効な採用手法は異なります。たとえば、作業スタッフを10人採用したいという目標に対して、リファラル採用1本で進めるのはあまり良い方法とはいえないでしょう。

リファラル採用はどの部分に活用でき、全体から見てどのような位置付けにあるかなどを正しく整理・理解したうえで取り組むことが重要です。

02.リファラル採用導入の目的整理

リファラル採用を導入する場合は、目的を整理・明確化することが大切です。採用前後に社内で誤解や軋轢が発生しないよう、既存社員に一定の理解を得ておく必要があるためです。

最低でも以下の点はしっかり言語化しておき、説明できる準備をしておく必要があります。

  • なぜ採用活動をするのか
  • なぜ今やる必要があるのか
  • なぜ数ある採用手法のなかからリファラル採用を選択するのか
  • 採用・不採用の判定基準や入社後の評価方法

リファラル採用は自発的な紹介による採用手法のため、理解が得られていないとほとんど紹介が来なかったり、入社した人材が不当に優遇されているのではないかなどの誤解を招いたりする可能性があります。

誤解なく気持ちよく協力してもらうためにも、既存社員への理解は欠かせない工程です。

03.報酬制度やインセンティブの設計

各企業の考え方にもよりますが、リファラル採用には報酬制度やインセンティブを設定するのが有効と考えられます。無報酬よりも紹介に対するモチベーションが上がり、ひとつの動機づけとして機能するためです。

なお、報酬を設定している場合、1人採用が決定するごとに5〜20万円を設定している会社が多いようです。

また、紹介者が赤字にならないよう、紹介時の対象者との会食費用や、入社後のフォローのための会食費用を会社が一部負担したり、入社から一定期間が経過したら双方にお祝い金を支給するなど、ユニークな制度を採用している企業もあります。

ある程度の制限は必要ですが、積極的に協力してもらえるような報酬制度・インセンティブ制度を設計してみると良いでしょう。

04.リファラル採用の周知と理解促進

目標・目的・制度などの設定ができたら、社内に向けてリファラル採用を行う事実や方針を周知し、既存社員の理解を促進しましょう。

手順②で明確にした項目を従業員目線に落とし込み、ミスディレクションが起こらないよう配慮する必要があります。

たとえば、全社メールなどの業務通達のような周知だけでは熱意が伝わらず、従業員から積極的な協力を得るのは難しいといわざるを得ません。

紹介を募る範囲にあわせて、社内会議やミーティングによる説明会の実施、グループウェアや社内SNSでの告知、オフィスでのポスターの掲示など、幅広いPRを心がけましょう。進捗があった場合に途中経過を周知するのもひとつの方法です。

05.適切な配慮とフォロー

リファラル採用は紹介者と応募者双方への適切な配慮とフォローが重要です。

なかなか紹介が得られない場合は問題点をヒアリングし、紹介しやすい環境づくりに努める。紹介を得られた場合は、選考状況や応募者のコメントなどを支障のない範囲でフィードバックするといった具合です。

特に注意したいのは、紹介してくれた応募者が不採用になってしまった場合です。3者間の関係が悪くならないよう、納得感のある理由を双方に伝える必要があります。このフォローがうまくいかないと、紹介者が会社に対して不信感を抱いてしまったり、紹介者と応募者との関係性が気まずくなってしまったりするため、しこりが残らないよう十分配慮しましょう。

 

リファラル採用を活性化させるポイント

リファラル採用を活性化させるポイントは以下の3点です。

  1. 友人を紹介する障壁を低くする
  2. 協力者を丁寧にフォローする
  3. トラブル時の対応を予め周知する

01.友人を紹介する障壁を低くする

リファラル採用を活性化させるためには、友人を紹介する障壁を低くする必要があります。友人を自社に紹介することに抵抗がある人も少なくないためです。

はじめから形式張った面接をせず、カジュアル面談やキャリア相談などから始めるなど、気軽に紹介してもらえる工夫をしましょう。

02.協力者を丁寧にフォローする

リファラル採用では、積極的に協力してくれた人を丁寧にフォローすることが大切です。なぜなら、1人の協力的な社員が複数人を紹介してくれるケースが多いためです。

1人目の紹介で紹介者・応募者双方に丁寧にフォローし「紹介して良かった」と思ってもらえれば、2人目以降の紹介につながる可能性があります。

このような傾向があることを理解したうえで、応募者を紹介してくれる社員が現れたら丁寧にフォローするよう心がけましょう。

03.トラブル時の対応を予め周知する

リファラル採用は不採用時や報酬に関するトラブルが発生しやすため、予め対応を決めて周知しておくことをおすすめします。

たとえば以下のようなことを事前に周知しておくことで、トラブルに発展する可能性を軽減できるでしょう。

  • 紹介してもらっても、選考結果によっては不採用になる可能性がある
  • 不採用になった場合は、紹介者・応募者双方に理由をフィードバックする
  • 報酬獲得条件は運用しながら変更する可能性がある

 

リファラル採用の報酬は違法?注意すべき点

リファラル採用の報酬は、金額が高すぎたり、紹介料やインセンティブという名目で支払うと違法性を問われる可能性があるため注意が必要です。

本来、有料の職業紹介を業として行う場合は厚生労働大臣の許可が必要と規定されているためです。ただし、良識の範囲内(基本給以内程度)に収め、賃金・給与という形で支払うことは例外的に認められています。

リファラル採用に報酬を設定する場合は、額面と給付方法に注意しましょう。

 

リファラル採用成功のカギは従業員リテンション

リファラル採用は、人間関係・信頼関係のある人から有望な人材を紹介してもらう採用手法であり、低コストでマッチ度・質の高い人材を獲得できる可能性がある点がメリットです。

活性化のためにはリファラル採用を導入する目的や意義などを既存社員にしっかり理解してもらう工夫や、通常の中途採用よりもハードルを下げたり、協力者に対して手厚くフォローしたりなどの配慮が大切です。

一方で、良い人材を採用しやすいリファラル採用ですが、紹介だからといって判定基準が甘くなってしまうとミスマッチにつながってしまうため注意が必要です。

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