学校教育で広く活用されている「パフォーマンス評価」。ビジネスに取り入れるとなると、「実際のところどうなのか」「どう運用すべきか」「何から着手すればいいのか」と迷うこともあるでしょう。

そこでこの記事では、自社にパフォーマンス評価を取り入れる場合のメリット・デメリット、パフォーマンス評価の評価項目の具体例などについて解説します。パフォーマンス評価を実際に運用する方法についても紹介しますので、これからパフォーマンス評価を取り入れたいと考えている人は、最後まで目を通して下さい。

パフォーマンス評価とは?

パフォーマンス評価とは、持っている知識やスキルを、実際の業務で使いこなせているかどうか評価する方法です。目標を達成できたか否かといった成果のみで評価するのではなく、達成までの行動に現れた能力について複数の側面から測ります。

パフォーマンス評価は、よくフィギュアスケートの評価方法に例えられます。フィギュアでは1つの演技について技術点や演技構成点など複数の評価基準から総合評価されることを考えると、イメージを掴みやすいでしょう。

また、短期的な結果を求める評価ではなく、長期的な社員の成長と発展を重視する評価方法です。そのため、「本質的な問い」と「永続的な理解」という概念を取り入れることが大切だといわれています。
本質的な問いとは、なぜそのパフォーマンスが必要なのか、その理由や目的を問うものです。永続的な理解とは、詳細を忘れてしまっても永続的に身に着けておきたい重要な理解のことです。

例えば法律事務所の場合、「クライアントの法的問題を解決する」が本質的な問いで、そのために弁護士資格やその他の交渉力などを活かしたパフォーマンスが必要といえるでしょう。この場合、求められる永続的な理解とは、そうした資格やスキルを活用できる状態にあることを指します。

 

パフォーマンス評価の目的

企業がパフォーマンス評価を取り入れる目的としては、次の5つが挙げられます。

  • 社員の成長促進
  • 納得感ある給与・報酬の決定
  • キャリアアップ
  • 目標管理と事業成長
  • 従業員エンゲージメントの向上

詳しい内容は次の通りです。

社員の成長促進

パフォーマンス評価の主な目的は、社員の成長促進といえるでしょう。
課題を達成したかという全体の達成度だけでなく、達成までの仕事ぶりも、細かい評価項目によって評価されます。

例えば、ある営業部員について、売り上げ目標の達成・未達成だけで評価するのでなく、それまでの商談の進め方、交渉力、仕事のスピードなどの項目で評価するといった風にです。これにより、社員の仕事ぶりや能力が可視化されます。
可視化された評価に基づき、評価者である上司は、部下である社員に、客観的かつ具体的に強みや改善点を伝えられるでしょう。社員にとっても、評価を上げるポイントが具体的に分かるため、改善へと行動しやすいといえます。

納得感ある給与・報酬の決定

パフォーマンス評価は、納得感のある給与や報酬を決定するためにも有効です。
先ほども触れた通り、パフォーマンス評価では、全体の成果はもちろん、成果に至るまでの行動や取り組みも細分化された評価基準で評価できます。

目標達成までに時間がかかる業務でも、仕事ぶりや頑張りが可視化されて評価されるため、その評価に基づく報酬の決定は、社員にとって納得感があるといえるでしょう。
このように給与・報酬決定に納得感を持たせるために、パフォーマンス評価を取り入れる企業も少なくありません。

キャリアアップ

パフォーマンス評価は、社員のキャリアアップを促す機会としても活用されます。
さまざまなスキルの熟練度が可視化されるため、それをもとに、上司と部下とで今後のスキルアップやキャリアアップについて具体的に話し合えます。

話し合った長期的なキャリア目標を評価項目に盛り込むこともでき、社員のキャリアアップを促進することが可能です。ひいてはチームや会社の業績アップにもつなげられるでしょう。

目標管理と事業成長

パフォーマンス評価は目標管理や事業成長のためにも、活用されます。
教育現場でのパフォーマンス評価と同様に、初めにパフォーマンスの目標・課題を設定し、その後、いくつかの評価基準から多面的に達成度を評価します。

一つの目標・課題達成に対し、複数の側面から達成度や進捗を把握できるため、パフォーマンス評価は目標管理に有効です。また、この目標管理において目標達成度や進捗が芳しくないと判明した場合には、必要な支援や調整を行い、事業の成長を促すことも可能です。

従業員エンゲージメントの向上

パフォーマンス評価は、従業員エンゲージメントの向上のためにも有効です。
結果や数値だけでなく仕事ぶりも多面的評価されるため、業務に熱意を持ちやすく、モチベーションアップにつなげやすいといえるでしょう。

また、スキルが可視化されることで、社員は上司からのフィードバックを受け入れやすくなり、目標達成やキャリアアップについてのコミュニケーションもスムーズになります。上司とのコミュニケーションが強化されることで、組織と社員との連携も強化できるでしょう。

 

パフォーマンス評価のメリット

パフォーマンス評価を導入するメリットには、次の5点が挙げられます。

  • 目標の明確化と成果管理がしやすい
  • フィードバック・コミュニケーション機会を創出できる
  • パフォーマンス向上につなげやすい
  • 従業員エンゲージメントの向上を図りやすい
  • 報酬とキャリアの公平性・透明性が担保される

パフォーマンス評価では、まず目標を設定し、次に目標達成に必要とされるスキル・行動に関する評価項目をいくつか設け、各項目について評価期間中の達成度を評価します。そのため、目標の明確化と成果管理がしやすい点がメリットです。

また、評価基準や尺度を明らかにすることで、評価に基づいた報酬・キャリアの公平性や透明性が担保される利点もあります。
さらに、数値的な成果だけでなく、仕事ぶりも可視化・明確化されることで、管理職も部下にフィードバックを行いやすく、コミュニケーションを取りやすくなるといえます。

社員も評価に基づき具体的な改善点が分かり、パフォーマンスを向上しやすくなるといえるでしょう。また、結果だけでなく多面的な評価が受けられるため、従業員エンゲージメントも高まる傾向です。

 

パフォーマンス評価のデメリット

パフォーマンス評価のデメリットとしては、次の5点が挙げられます。

  • 評価基準の作成に手間や時間がかかる
  • 評価者のバイアスの影響を受けることもある
  • 適切なフィードバックができないこともある
  • 社員の積極性・主体性を奪うこともある
  • チームワークやコラボレーションが評価できない

パフォーマンス評価では、目標の設定はもちろん、複数の評価の測定項目を設定したり、それぞれに尺度を設けたりしなければなりません。そうした評価基準の作成に手間や時間がかかるデメリットがあります。

また、評価項目や尺度を設定しても、評価時に、評価者の思い込みや個人的意見などのバイアスの影響を受けることも少なくありません。さらに、フィードバックが年に1回であるなど回数が少ない場合などには、適切なフィードバックができないこともあります。
さらに、社員が評価項目だけをがんばったり、目標達成しやすいように目標を低めに設定したりするなど、社員の積極性や主体性を奪う可能性も否定できません。

また、パフォーマンス評価では、個人の行動や成果を評価する方法のため、チームワークやコラボレーションを評価しにくいという欠点もあります。

 

パフォーマンス評価の測定項目の例

パフォーマンス評価の測定項目の例について紹介します。例えば下記のような測定項目が挙げられます。

  • 仕事の成果
  • 業務遂行スキル・能力
  • 仕事の効率性・生産性
  • 組織への貢献度

詳しくは次の通りです。

仕事の成果

パフォーマンス評価では、仕事の成果をそのまま測定項目の一つとして使えます。

仕事の成果を測定項目とする場合には、評価期間中の目標に対し、どれくらい達成できたかを評価します。例えば、営業・販売職であれば、目標とする売り上げ額や契約クライアント数などの営業成果で、達成レベルを測ります。

業務遂行スキル・能力

業務遂行スキルや能力も、重要な測定項目といえるでしょう。

目標達成に向けて必要な業務遂行スキルや能力には、例えば、「商品知識・専門知識」や「分析力」、「マネジメント力」などといったものがあります。目標に合った業務遂行スキル・能力項目を設定し、評価期間中の達成度で評価します。

仕事の効率性・生産性

仕事の効率性・生産性もパフォーマンス評価の測定項目としてよく活用されます。

無駄を減らし仕事の効率性・生産性をあげることは、利益拡大につながる重要なパフォーマンスです。例えば、業務上の無駄な工程を減らした、平均より短い時間で業務を遂行しているといった点などで、効率性・生産性の高さを評価します。

組織への貢献度

組織への貢献度も、パフォーマンス評価の測定項目として利用されます。

組織への貢献は、すぐに業績に直結するわけではないものの、長期的にみれば組織の発展や業績向上に役立ちます。例えば、積極的にチームや後輩のフォローを行っている、チームとの情報共有をまめに行っているなどといった点で評価を行います。

 

ルーブリック表を使ったパフォーマンス評価の運用方法

パフォーマンス評価を行う際には、ルーブリック表といった評価シートを利用します。

ルーブリック表とは、パフォーマンスの評価基準をマトリックス形式で表したものです。マトリックスの縦軸にパフォーマンスの測定項目を、横軸に評価尺度(レベル1、レベル2など)を並べます。項目と尺度がクロスするマスには、該当の項目で求められる行動内容を文章で記入します。

このルーブリック表を使ったパフォーマンス評価の運用方法について、以下で解説します。

1.目的・課題の設定

パフォーマンス評価を導入するには、まず、パフォーマンス評価を行う目的や課題を設定します。

例えば、「報酬・給与の基準設定」「社員のパフォーマンス向上」といった組織の課題や目的を明確化するといったことが考えられるでしょう。設定した目的・課題によって、パフォーマンスの目標となる業務内容や設定する測定項目も決まっていきます。

2.評価項目・指標の整理

パフォーマンス評価の運用目的に応じて、パフォーマンスの目標設定、つまり、業務の目標設定を行います。次に、目標達成に求められるスキルや行動の要素を洗い出しましょう。

完全に達成した状態を評価する項目だけでなく、達成までの過程を評価する項目も含めてリストアップします。実際に社員が目標を達成する姿をイメージすると選定しやすくなるでしょう。

項目をリストアップしたら重複や過不足のないように項目・指標を整理します。

3.評価レベルの定義

次に評価レベルを定義します。一般的には、一つの評価項目に対して、3~5段階の評価のレベルが設定されます。

例えば、5段階の場合、下記のような評価レベルとなります。

  • レベル1:ほとんどできていない
  • レベル2:ややできていない
  • レベル3:できている(達成)
  • レベル4:優れてできている
  • レベル5:とても優れてできている

3段階の場合は、「できていない」「できている」「よくできている」と評価がシンプルになるものの、達成レベルを細かく評価できないデメリットがあります。一方、5段階の場合は、3段階のような評価のしやすさはないものの、達成レベルを細かく評価できます。

4.具体的な評価基準の設計

評価項目と評価レベルを決めた後は、それらを元に具体的な評価基準の設計をしましょう。

リストアップした評価項目から、特に社員に期待したいものや業務遂行に必要なものなどを重複のないように選びだします。選んだそれぞれの項目について、求められる水準(達成基準)、最低基準、最高基準などを具体的にイメージしてレベルの内容を決めていきます。

5.タイムラインの設定

評価基準の設計ができたら、タイムラインを設定します。

パフォーマンス評価を行う周期について、年に1度、半期に1度のように定めていきます。評価の周期を決めると共に、評価の時期や評価の段取りなどのスケジュールも決めましょう。

また、運用時のプロセスだけでなく、社員への評価制度の周知や評価者のトレーニングといった一連の導入プロセスのスケジュールについても固めることが大切です。

6.実行・マトリクス化

パフォーマンス評価の評価基準をマトリックス化して、実行に移します。

マトリックス化にはルーブリック表を利用します。マトリックスの縦軸に評価項目を、横軸に評価レベルを「レベル1」「レベル2」などと順に配置しましょう。マトリックスの各セルには、縦軸に記載した評価項目と横軸の評価レベルの組み合わせに対応する評価の基準となる内容を文章で具体的に記載します。

このルーブリック表を用いて評価を行います。

7.コメントによる補足

ルーブリック表を作成した後は、実際の評価時に評価者によってコメントを補足してもらえるように、評価シートにコメント欄を設けるなどの対応をしましょう。

ルーブリック表を作成したことにより、各評価基準の項目について、「レベル1」「レベル2」などの評価ができるようになりました。ただし、レベルを付けるだけでは、強みや弱み、改善すべきポイントといった具体的な状況が把握できません。正しい評価がなされているかも判断できません。そのためコメントによる補足が必要となります。

パフォーマンスを正しく評価できているかを確認するためにも、コメントを記載してもらうようにしましょう。

8.フィードバックと目的・目標設定の見直し

準備が整えば、実際に、パフォーマンス評価の運用に入ります。ルーブリック表や、評価基準などは、評価者などからのフィードバックを受けて、改善していくことが大切です。

運用し始めると、どうしても「評価基準が実態にそぐわない」「評価しにくい」といったことが生じます。そうした意見を集約して、適宜修正を行いましょう。

また、環境の変化などで目的や目標設定自体を見直さなければならないこともあります。そうした場合にも柔軟に改善を行ない、自社にとって最適なパフォーマンス評価制度をつくり上げていきましょう。

 

パフォーマンス評価を取り入れて組織成果を最大化しよう

パフォーマンス評価とは、持っている知識やスキルを、実際の業務で使いこなせているかどうか評価する方法です。
目標を達成できたか否かといった成果のみで評価するのではなく、達成までの行動に現れた能力について複数の側面から測り、社員の仕事ぶりや能力を可視化します。

パフォーマンス評価をすることで、社員の成長を促しパフォーマンスの向上につなげやすいとされています。パフォーマンス評価は組織の成果を最大化するためにも有効な評価方法といえるでしょう。組織の成果の最大化のためにも人材の活用が大切です。

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