給与支払報告書の提出は、人事・労務担当者にとって、年末調整に続く毎年の一大イベントです。実は、給与支払報告書の提出が不要となる従業員がいることをご存知でしょうか?

この記事では、給与支払報告書の概要、手続きの詳細に加え、どのような場合に給与支払報告書の提出が不要となるのか、また提出を怠った場合にどうなるのかなど、よくある質問をまとめました。適切に給与支払報告書を管理するための方法を学んでいきましょう。

給与支払報告書とは

給与支払報告書は、事業主が従業員に支払った前年1月から12月までの給与の情報を市区町村に報告するための書類です。給与支払報告書の情報は、当年6月から翌年5月までの住民税額の決定に使用されます。また、個人別明細書と総括表の2つの資料で構成されています。

ここでは、給与支払報告書に関連する具体的な内容を解説します。

  • 個人別明細書
  • 総括表
  • 源泉徴収票との違い
  • 給与支払報告書の提出方法と期限

個人別明細書

給与支払報告書の「個人別明細書」とは、事業主が従業員に支払った前年1月から12月までの給与の詳細情報を記載した書類です。内容としては、源泉徴収票とほとんど同様のもので、従業員1人につき1枚作成が必要です。

個人別明細書に記載すべき主な項目は以下の通りです。

  • 従業員の個人情報:氏名、住所、生年月日、個人番号(マイナンバー)など
  • 給与・賞与の支払額:年間を通じて従業員に支払った給与・賞与の総額
  • 扶養家族の情報:税扶養対象の配偶者・親族の有無、障害者控除対象者の人数、
            扶養対象者の氏名および個人番号、配偶者控除の額
  • 保険料控除額:社会保険料や生命保険料、地震保険料などの控除額
  • 住宅ローン控除情報:住宅ローンの控除額、購入した住宅の区分・年末残高
  • 源泉徴収税額:「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」などを基に
           年末調整で計算された最終的な「源泉徴収税額」
  • 摘要欄:中途入社者の前職での給与・税情報、普通徴収切替対象者の切替理由
  • 支払者欄:事業主の法人番号、事業所所在地、企業名

個人別明細書は、住民税額の決定に関わる非常に重要な書類です。記載内容に誤りがないよう、細心の注意を払いましょう。また、書類の様式は法改正によって変更になる可能性があります。総務省や市区町村のWebサイトより、毎年最新フォーマットのダウンロードが必要です。

総括表

給与支払報告書の「総括表」とは、事業主が従業員に支払った前年1月から12月までの給与の集計結果を記載する書類です。個人別明細書の情報を基に作成されたもので、市区町村につき1枚提出が必要です。

総括表に記載すべき主な項目は以下の通りです。

  • 指定番号:市区町村から通知される企業ごとに割り振られた指定の番号
  • 給与の支払者情報:事業主の法人番号、事業所所在地、企業名、代表の氏名
             人事・労務担当者の氏名、連絡先、事業種目
  • 関与税理士情報:税理士の氏名、事務所名、連絡先
            ※税理士事務所に年末調整を委託している場合は記入
  • 従業員の総数:前年給与を支払った全従業員の総数
  • 報告人員:対象の市区町村に個人別明細書を提出する従業員数、
         特別徴収と普通徴収それぞれの従業員数の内訳
  • 納入書の送付:納入書の要否(住民税を納める際に使用するかどうか)

総括表は、事業主が市区町村に対して給与支払の全体像を正確に伝えるために必要な書類です。市区町村が住民税額を算出するための事務処理を円滑に行えるよう、事業主は、総括表を期限内に適切に提出することが求められます。

源泉徴収票との違い

源泉徴収票と給与支払報告書は、いずれも給与に関する重要な書類ですが、目的や提出先、一部の内容が異なります。

【提出の目的】
・源泉徴収票-所得税の計算に使用するため
・給与支払報告書-住民税と国民健康保険料の計算に使用するため
       (国民健康保険料は企業で社会保険に加入していない従業員のみ)

【提出先】
・源泉徴収票-事業所管轄の税務署(電子申告の場合は「e-Tax」)
・給与支払報告書-従業員が居住する市区町村(電子申告の場合は「eLtax」)

【対象範囲】
・源泉徴収票-年収や職位など、一定の条件を満たす者のみ
・給与支払報告書-次章で紹介する特例を除く、全従業員

【記載内容】
両書類の記載内容はほとんど同じですが、給与支払報告書には住民税の納付方法(特別徴収または普通徴収)を記載する欄があります。

給与支払報告書の提出方法と期限

給与支払報告書の作成と提出は以下の手順で進められます。

  1. 総括表の受け取り:毎年12月中には、従業員が在住する各市区町村から総括表が送付されます。前年の給与支払報告書の提出内容を踏まえ、既に企業名などが印字された状態で送られてくることが多いです。
  2. 年末調整の実施:給与支払報告書は、年末調整が完了していなければ作成できません。12月もしくは1月の給与で年末調整を行う必要があります。
  3. 個人別明細書と総括表の作成:年末調整の情報を元に、個人別明細書と総括表を作成し、各市区町村ごとに仕分けを行います。給与計算システムを使用している場合は、自動で個人別明細書と総括表をダウンロードできるメニューもあります。
  4. 市区町村への提出:提出期限は、毎年1月31日です。31日が土日祝日の場合は翌平日に繰り越されます。提出方法は、以下の3パターンです。
    ・書面による提出(郵送または窓口への直接提出)
    ・光ディスクによる提出(郵送または窓口への直接提出)
    ・電子申告(eLTAX)

給与支払報告書は、従業員の住民税額を正しく計算するための大切な書類です。国民健康保険料の算出にも使用されます。適切に管理、作成を行い、期限内に市区町村へ提出しましょう。

 

給与支払報告書が提出不要となる対象者・金額

給与支払報告書の提出は、一部のケースで免除される特例があります。ここでは、提出が不要となる特例について解説します。

  • 30万円以下の特例とは
  • 提出不要になる特例の対象者と対象外の違い
    ・年間支払い30万円以下の在籍者の例:提出必要
    ・年間支払い30万円以上の退職者の例:提出必要
    ・年間支払い30万円以下の退職者の例:提出不要(自治体による)

30万円以下の特例とは

30万円以下の特例とは、給与支払報告書の提出が不要となる例外的な対応です。給与支払報告書は、原則全従業員の提出が必要ですが、「年間支払額30万円以下の退職者」に限り、提出免除の特例が適用されます。

大阪市のWebサイトでは、給与支払報告書の提出対象者について、以下のように説明が記されています。

  • 毎年1月1日現在の在職者のうち、同日現在に大阪市にお住まいの方【特別徴収の対象】
  • 前年中の退職者※のうち、退職日現在に大阪市にお住まいの方【普通徴収の対象】

※前年中の退職者についても、退職日現在にお住まいの住所所在地の市町村に給与支払報告書を提出頂く必要があります(地方税法第317条の6)。 ただし、退職者のうち、退職した年の給与支払額が30万円以下である場合は提出を省略できます。

出典:大阪市『給与支払報告書の提出について-大阪市への給与支払報告書の提出対象者』

この特例は、給与支払額が比較的少ない退職者に関する、事業主の報告事務の負担を軽減する目的があります。

提出不要になる特例の対象者と対象外の違い

事業主には、大前提として、全従業員の給与支払報告書の作成・提出義務があります。30万円以下の特例といっても、全ての従業員が提出不要になるわけではありません。具体的には、特例の対象・対象外になるケースは、以下のように分かれます。

  • 年間支払い30万円以下の在籍者の例:提出必要
  • 年間支払い30万円以上の退職者の例:提出必要
  • 年間支払い30万円以下の退職者の例:提出不要(自治体による)

年間支払い30万円以下の在籍者の例:提出必要

年間支払い30万円以下の在籍者の場合、給与支払報告書の提出が必要です。これは、現時点で在籍している従業員に関して、事業主が給与を正確に報告する責任があるためです。

アルバイトやパートなど、勤務日数が少ない従業員の中には年間支払いが30万円以下となる者も発生し得ますが、年間支払額の多寡に関わらず、全ての在籍従業員において、給与支払報告書を提出することが義務付けられています。30万円以下の特例という表現から誤解が生じやすいため、注意しましょう。

年間支払い30万円以上の退職者の例:提出必要

年間支払い30万円以上の退職者の場合、給与支払報告書の提出が必要です。これは、給与支払報告書が従業員の住民税額計算に用いられるため、一定以上の年間支払いがある者に関しては正確な情報提供が求められるからです。

提出先は、退職時に在住していた市区町村です。退職後に本人が転居している可能性もありますが、一般的には退職後の転居までは事業主が把握できるものではないため、退職時に従業員が居住していた住所地に給与支払報告書を送付すれば問題ありません。

年間支払い30万円以下の退職者の例:提出不要(自治体による)

年間支払い30万円以下の退職者の場合、給与支払報告書の提出は例外的に不要となります。この特例は、給与支払報告書の作成が困難なケースを考慮して設けられたものです。

短期間での退職者や、必要書類が揃う前に連絡が取れなくなった従業員の対応などが原因で、事業主の事務処理が滞ってしまわないよう、他の従業員の給与支払報告書提出をスムーズにする目的があります。

ただし、この免除はあくまで特例であり、市区町村によっては提出が必要な場合もあるため、事前の確認が重要です​。

 

給与支払報告書に関するよくある質問

では、最後に給与支払報告書に関するよくある質問への回答を紹介します。

  • 給与支払報告書を提出しないとどうなる?
  • 特別徴収と普通徴収の違いはなに?
  • 給与支払報告書はどこに送る必要がある?

給与支払報告書を提出しないとどうなる?

給与支払報告書の提出義務違反に関しては、「地方税法 第317条の7 給与支払報告書等の提出義務違反に関する罪」に規定されています。給与支払報告書を提出しなかった場合、事業主は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられてしまいます。

また、給与支払報告書が提出されていないと、従業員の課税証明書や住民税決定通知書の収入金額が反映されず、税金の計算が正しく行われません。また、社会保険の扶養に入る際の「非課税証明書」の取得が難しくなり、認可保育園の利用料や児童手当の計算、国民健康保険料の計算が正確に行われないなど、さまざまな影響があります。

給与支払報告書は、法定期限内に忘れず提出を行いましょう。

特別徴収と普通徴収の違いはなに?

住民税の納付方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。給与支払報告書の総括表には、特別徴収と普通徴収それぞれの従業員数の内訳を記載する欄がありますが、この違いは何でしょうか。

特別徴収は、従業員の住民税を毎月の給与から天引きして、事業主が代わりに納付する方法です。従業員は毎月均等に税負担を分散でき、徴収率も高いです。一方、普通徴収は、本人が市区町村からの納付書によって自ら住民税を納付する方法です。普通徴収は年4回で、1回あたりの納税額が大きくなります。

企業に雇用される従業員の場合、住民税は原則、特別徴収で納付することが地方税法第321条の4により義務付けられています。普通徴収は、休職者や給与が少なく天引きができない者など、一定の条件に該当する場合のみ、給与支払報告書に記載することで認められます。

給与支払報告書はどこに送る必要がある?

給与支払報告書の提出先は、従業員が在住している市区町村です。提出期限は、毎年1月31日で、31日が土日祝日の場合は翌平日に繰り越されます。給与支払報告書は、年間の給与情報を事業主が報告することで、従業員の住民税額を決定する重要な書類です。提出期限は厳守しましょう。

提出方法は、書面・光ディスク・電子申告の3パターンです。書面・光ディスクによる提出の場合は郵送もしくは窓口への直接提出が必要となります。大量の給与支払報告書がある場合は、電子申告(eLTAX)がおすすめです。eLTAXは、オンライン上で24時間利用でき、市区町村の窓口に行く時間とコストを節約するための有効な手段です。

 

給与支払報告書提出が必要な範囲を理解して、会社が漏れなく提出しよう

給与支払報告書は、従業員の住民税額を決定するための事業主の重要な責務です。人事・労務担当者にとって煩雑な実務ではありますが、正確な処理が必要です。提出不要となる特例を含め、給与支払報告書の手続きを明確に理解し、適切な対応を取りましょう。

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