採用担当者の中には、内定者研修をどのように実施すれば良いか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。内定者教育は、入社後の新人教育をスムーズに進めることはもちろん、内定辞退を防止するためにも重要な施策です。

内定者研修は「研修を通して入社前に社会人としての意識を持ってもらうこと」がポイントとなります。本記事では、内定者教育の目的と具体的な研修方法を解説します。最後まで読むことで具体的な研修方法が分かるので、自社で研修を実施する時の参考にして下さい。

内定者教育の5つの目的

新卒の場合は転職者とは異なり、社会人経験がありません。そのため、社会人としての土台を築くことが大きな目的です。これから社会に出ることの不安を解消し、事前に企業理解を深めておくことで、スムーズに入社後の育成を進めやすくなります。

内定者教育の具体的な目的を5つ挙げますので、あらためて整理しておきましょう。

学生気分を払拭してモチベーションを高める

新卒者は企業で働いた経験がないため、ビジネスパーソンとしての自覚を十分に持てていないことがあります。学生気分が抜けないまま入社すると、帰属意識や働く意欲が低くOJTの負担が増えるケースも少なくありません。

これから活躍してもらうためには、学生から社会人へ意識を変え企業の一員として組織で働く自覚を持ってもらうことが重要です。帰属意識が高まれば働くモチベーションも高まります。そのためにも内定者研修は大きな意味を持ちます。

社会人として必要な基本スキルを身に付けてもらう

入社後、電話応対や取引先に入社の挨拶をする機会もあるでしょう。挨拶や身だしなみはもちろん、名刺の渡し方や電話応対などの基本的なビジネスマナーを身につけておかなければ、取引先に対して失礼になる場合もあります。

社会人としての基本スキルを事前に研修しておくことで、入社後スムーズに業務に取り組みやすくなるでしょう。

また、会社独自の連絡ツールや管理システムなどのOAスキル、ビジネス文書の書き方なども入社前に教育しておくとよりスムーズです。

事業・業務内容などの提供によって企業理解を深める

就職活動の企業研究で大まかな業務内容は把握していても、実際に自分が携わる業務内容や必要な知識までは理解していないことがほとんどです。担当業務への理解がないまま配属しても、戸惑うことも少なくありません。

自分が担当する仕事内容が把握できればイメージしやすくなり、事前の予習意欲にもつながります。事前の内定者研修で詳しい事業内容や業界知識などの企業理解を深め、自分がどのような業務に携わるのかを理解してもらうことで業務に順応しやすくなるでしょう。

新入社員同士の交流促進によって連帯感を強める

ビジネスを行う上ではチームワークが重要です。内定者はどのような同期がいるのかが分からない状態のため、内定者研修で事前に顔を合わせ、交流を深めることで連帯感が生まれやすくなります。内定者同士で交流を深めるメリットは横のつながりの形成です。

どのような人たちと一緒に仕事をするのか知った状態であれば、入社後早い段階で仲間意識が生まれ、チームワークや帰属意識を高める効果があります。「一緒に入社した同期」として良きライバル関係が生まれ、モチベーションも上がるでしょう。

フォローによって不安を軽減し、採用後の内定辞退者数を減らす

新卒者は内定後に「本当にこの会社でよかったのか」や「仕事についていけるだろうか」という不安を持っていることが多いです。不安が大きくなると他の内定先に行ってしまうなど、内定辞退につながることも少なくありません。

内定者研修によって、同期とのコミュニケーションや自分が携わる仕事の理解を深めることで働くイメージが持てると、このような不安が解消します。

また、内定者研修を行うことで、内定者に期待し、大切に育てたいという気持ちも伝わるでしょう。

 

内定者教育の種類

一般的な内定者研修は以下の3つの方法で実施します。

  • オフライン研修
  • オンライン研修
  • eラーニング

それぞれに特徴があり、どのようなことを習得してほしいかによって、使い分けると良いでしょう。それぞれのメリット・デメリットを解説します。

オフライン研修

内定者同士の親睦や連帯感が目的の場合や、企業の方針や方向性などの全体に向けた研修はオフライン研修(集合研修)の方が向いています。直接、講師に質問が可能で、他の人の質問を聞くことでより身につきやすいことがメリットです。

ただし、大人数を集めるため会場の確保や、遠方の学生への交通費の支払いなどコストがかかる点はデメリットです。また、学業に支障が出ないように、スケジュールに配慮しなければならない点にも注意しなければなりません。

オンライン研修

オンライン研修はZoomなどを使うため遠方の学生も参加しやすく、企業にとっても会場費や交通費の負担がないというメリットがあります。

全員にリアルタイムで実施できるので、集合研修と同じように、その場で質疑応答が可能です。授業の都合上、参加できなかった学生や再確認するために録画で見たいという学生にも対応できます。

ただし、オフラインに比べ緊張感が薄れ、内定者同士のコミュニケーションは取りづらいため、講義を聞くというスタイルになってしまいがちな点はデメリットと言えるでしょう。

eラーニング

eラーニングは、入社までにこれだけはマスターしておくべき課題を与えるなど、知識の習得が中心の研修に向いています。パソコンやスマホで受講できるため、場所や時間を問わないのがメリットです。

しかし、インプットが中心となり質問もしづらいため、理解が深まらないことや人によって習熟度に差が出る可能性が高くなります。

同期との交流もできないため、グループワークや交流会なども取り入れると良いでしょう。

 

事例|おすすめの内定者教育実施内容


実際に内定者研修を実施するにあたって、どのような内容にすれば良いか分からないという担当者の方もいるのではないでしょうか。内定者教育は、何を目的にするかで研修内容も変わってきます。

次に、目的に応じたおすすめの内定者教育の実施内容を5つ見ていきましょう。

懇親会・グループワーク

チームワークや協調性を身につけさせたい場合は、グループワークがおすすめです。内定者を何人かのグループに分けて、チームごとに課題を与えることで内定者同士のコミュニケーションが活発になり、チームワークも生まれます。

グループワークはWeb会議ツールを使えばオンラインでも実施可能なので、一堂に集まらなくても良い点はメリットでしょう。オフラインで実施する場合は、終了後に懇親会を開催し、交流を深めることで同期同士の連帯感が深まります。

ビジネスマナー研修

まずは、社会人としての基本である「名刺の渡し方」や「言葉づかい」などを身につけさせたいと考える企業は多いでしょう。そのような場合はビジネスマナー研修がおすすめです。

社会人として、これからビジネスシーンで活躍してもらうために必要不可欠なスキルであり、身につけることで社会人としての自覚や自信につながります。また、メールや報告書などのビジネス文書マナーも社内と社外では異なるため、研修内容に盛り込みましょう。

コミュニケーションスキル研修

企業においては、社内はもちろん社外の人と一緒に業務を行うこともあり、コミュニケーションスキルは重要です。しかし、コミュニケーションが苦手という学生も少なくありません。

最低限、業務に必要な「報告・連絡・相談」を行い「相手の話を聞く力」や「分かりやすく話す力」は身につける必要があります。これらを身につけてもらうには、コミュニケーションスキル研修がおすすめです。

実際に内定者同士で気になる点を指摘しあうのも良いでしょう。

OA・IT研修

ExcelやWord、PowerPointなど、ビジネスソフトの基本的な使いかたをマスターしている学生は多くいます。しかし、業務でよく使用する機能や社内独自のツールなどは、新たに操作を覚えてもらわなければなりません。

操作ができなければ仕事にならないケースもあるため、事前に行っておくべき研修のひとつです。OA操作や・IT研修を事前に行うことで、入社後すぐに操作ができれば作業効率が上がります。

内定者インターン(内定者アルバイト)

内定者研修にインターンを実施することは、企業と内定者の双方にとってメリットがあります。インターンは企業文化や実際の業務に触れ実務経験を積めるため、内定者が職場に適応しやすくなるのが特徴です。これにより、入社後の適応期間が短縮できます。

内定者は実際の仕事を経験することで、仕事への興味ややりがいを感じ入社後の意欲的な働きが期待できるでしょう。また、企業にとっても適性を確認でき、ミスマッチを防ぐことにもつながります。

 

内定者教育を成功させるコツ

企業にとっては、新入社員に早い段階で戦力となってもらわなければなりません。そのため、内定者教育はコツを押さえた実施が重要です。次に、内定者教育を成功させる5つのコツを解説しますので、実施計画の参考にして下さい。

内定者教育の目的を明確にする

内定者教育は目的によって内容が異なります。まずは、新入社員に対して「入社の段階でどうなっていてほしいのか」を考えましょう。

例えば「最低限のビジネスマナーを身につけて入社してほしい」など、考え方は企業によりさまざまです。目標を明確にすることでより効果的な研修内容を選択する必要があります。

現場の意見を参考に内定者教育の実施内容を決める

内定者教育の目標を決める上で、現場の意見も重要です。現場の意見が反映されていないと内定者教育で学んだことが活かされず、時間の無駄になってしまいます。現場の意見を取り入れることで、内定者教育の内容がより効果的になるばかりか、ミスマッチによる早期離職も防げるでしょう。

内定者教育の内容が現場の意見を取り入れた現実的な内容になることで、内定者の能力向上にもつながり、配属現場への適応がスムーズになると期待できます。

近年の新入社員・若手人材の特徴を把握する

環境や時代背景によって新入社員の特徴も変化します。そのため、彼らの特徴を踏まえた教育内容にしなければ、時代錯誤になってしまう可能性もあるでしょう。例えば、近年では素直で真面目な性格の人が多く、失敗を恐れて新しいことへのチャレンジが苦手な傾向にあります。

また、目立つことを嫌い、率先した行動を避ける傾向です。社会人になるという自覚が薄く、上司などの目が光らない場所では気が緩んだ行動をとるケースも少なくありません。

一方的な企業側の思いだけではなく、内定者の特性を理解した教育をしなければ、仕事に対する意欲を失ってしまう可能性があります。内定者の特性に応じた内容にするためには、前年に入社した年齢の近い社員の意見を参考にすると良いでしょう。

内定者教育のスケジュールを作成する

内定者教育は長期スパンで考える必要があります。一度に詰め込まず、数回に分けて徐々に教育していくことがポイントです。例えば、次のようなざっくりとした全体のスケジュールを先に決めましょう。

  • 8月~10月:懇親会や座談会で同期のコミュニケーションと連帯感を強める
  • 11月〜1月:集合研修で社会人としての意識改革を行う
  • 2月〜3月:eラーニングで必要スキルを学んでもらい入社準備を行う

このように、どの時期に何を教育するかが内定者教育の効果を最大限に引き出し、スムーズに組織の一員として活躍してもらうためのコツです。

メール・SNSなどでフォローする

新卒者は多くの不安を抱えていることがあるため、内定者教育と並行してメンタル面のケアも重要です。

メールやSNSで気軽に相談できる環境を整備すると、内定者の不安解消につながります。ただし、あまり歳の離れた役職者には相談しにくいため、内定者に年齢が近い社員をメンターにしてフォローを担当させると良いでしょう。しっかりとしたフォローは内定者と企業の信頼関係の構築にもつながり、内定辞退も少なくなります。

 

内定者教育の費用・給料

内定者教育には費用が発生するケースがあります。どれくらいの費用を想定しておけば良いのか気になる方もいるのではないでしょうか。

最後に内定者教育を実施する上で、どのくらいの費用が必要になるのか確認しておきましょう。内定者教育の費用が気になる方は、ぜひチェックしておいて下さい。

交通費

1つ目は交通費です。採用担当者が研修会場へ行くまでの交通費や、地方で開催する場合の宿泊費などが発生します。また、内定者を会場に集める場合の交通費は企業が負担するのが一般的です。社内の会議室などで実施する場合は、社員の交通費負担はありませんが、内定者の交通費は発生します。

自宅から研修会場までの距離や交通手段にもよりますが、人数が多くなるほど負担は大きくなるので頻繁に集めるのは注意が必要です。

研修費

研修にかかる費用は全て研修費に該当します。例えば、以下のようなものです。

  • 研修会場を借りる費用
  • 参加者へお茶を準備した場合のお茶代
  • 配布資料を作成する際の紙代やコピー代
  • 講師を呼んで講義をしてもらう際の日当

上記の費用が発生することは頭に入れておかなければなりません。

賃金(給料)

「研修なのに賃金?」と思う方もいるかもしれません。内定者研修は任意参加であれば問題ありませんが、強制参加とする場合の研修時間は「労働時間」とみなされます。つまり、会社からの指示で参加したとなれば拘束時間分の賃金を支払う義務があるのです。

支払い時期は会社の規定に従って構いません。最低賃金は厚生労働省のサイトで確認できます。なお、強制はしていないものの、実質的に強制参加となるような場合は賃金の対象となるので注意が必要です。

 

まとめ

内定者教育は内定辞退を防ぐためや、早い段階で会社になじみ、戦力になってもらうためにも重要です。

内定者教育は企業の押し付けでなく、内定者の特性に合わせた内容で検討する必要があります。内定者に適した教育をすることで不安を払拭し、モチベーションが高まり内定辞退を防ぐためにも効果的です。

内定者が安心して社会人としてスタートできるよう、本記事を参考に実施時期や内定者の特性、配属予定の部署の意見などを考慮して、効果的な研修内容を考えてみて下さい。

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