新卒採用を実施する多くの企業では、内定式を実施します。内定式はただのイベントではなく、内定者の入社意欲アップや入社への迷いを解消するなど、重要な役割があります。そのため企業担当者様は、内定式の開催目的を正しく理解した上で、適切な内容を実施することが大切です。

当記事では、内定式の実施目的を始め、当日の流れ・準備内容・入社式との違いなどを解説します。内定式を成功させたい企業様は、ぜひ参考にして下さい。

内定式の基礎知識

新卒採用において、多くの企業では内定式を実施します。内定式の実施自体は、必須ではありません。しかし、実施することで多くのメリットがあるため、内定式を行う企業は多いでしょう。

ここでは、内定式の基礎知識について解説します。入社式との違いも紹介するので、併せてチェックしてみましょう。

内定式とは

内定式とは、事前に内々定を通知した候補者に対し、正式な内定を通知するための式典です。内定前に実施されるケースが多い「内々定」の段階では、まだ雇用契約は成立していません。内定式で内定を通知することで、雇用契約が成立します。

また、内定式には内定者の不安を払拭したり、入社意欲を高めたりする効果があります。内定式では、企業の社長・役員も出席し、内定者と直接的に顔を合わせることから、念入りに準備を行う必要があるでしょう。

入社式との違い

内定式の類似イベントに、入社式があります。入社式とは、入社を歓迎する記念式典のことです。新卒社員であれば、学生気分を払拭し社会人への自覚を促す効果があります。中途社員の場合にも、自社の社員としての自覚を促せるでしょう。

内定式と入社式は役割が異なります。内定式の役割が内定を通知することに対し、入社式の役割は入社に対する式典です。内定が決まると雇用関係が成立するものの、正式な社員とみなされるのは入社日からです。

 

内定式の実施目的

内定式を実施する際には、単なるイベントと思わず、目的意識をもって実施することをおすすめします。なぜなら、内定式の内容によっては内定者のモチベーションを下げてしまう可能性があるからです。悪影響を及ぼすのであれば、元も子もありません。内定式を成功させるには、以下のような目的をもって準備をすすめると良いでしょう。

内定者の意欲を高める

初めて社会人になる学生は、企業への入社に対して期待を膨らませています。一方で、「本当にこの会社で良いのか?」「うまくやっていけるかな」と、不安になるケースも多いです。

そこで、内定式を「内定フォローの一環」として実施すると、いわゆる内定ブルーの解消につながります。内定式の内容に企業への理解を深め、不安が取り除けるような要素を盛り込めば「この企業で頑張っていこう」と前向きな気持ちになるでしょう。

企業の特徴・色などの理解を深める

企業の特徴・色などの理解を深めると、入社後の心構えができ、自社に早く馴染んでもらえるようになります。どういった仕事をどのような心構えで取り組めば良いかなど、具体的にイメージしてもらうことで、内定者の安心感にもつながります。社長や人事担当者からの説明はもとより、新入社員の教育に直接関わる社員による説明もおすすめです。

入社前に企業の特徴・色を浸透させれば、早い段階から自社に適した人材として育成できるでしょう。

内定者の配属先決定の参考とする

内定式は、内定者の配属先を決める場としても、絶好の機会だといえます。内定式で「企業担当者と内定者が直接コミュニケーションを取る機会」や「内定者同士でコミュニケーションを取る機会」を設ければ、各自の個性が見えてくるでしょう。

内定式でのコミュニケーション状況を参考にし、配属先決定の目安とする企業は多いです。内定式の場で、内定者に直接「どういった仕事がしたい?」などと聞いてみることもおすすめです。

交流することで親しくなる

内定者に対し積極的にコミュニケーションを取れば、双方の距離を縮められます。内定者と親しくなれば「早くこの会社で働きたい」と思ってもらえるでしょう。内定者の声に耳を傾けることで、内定者が抱える現状の不安や疑問にも答えられます。交流を通じて内定者の配属先を決める材料にもできるでしょう。

また、内定者同士も交流できるような場を設けると、同期同士で絆を強められますし不安を和らげる要素にもなります。

 

内定式の内容

内定式の内容にルールはなく、企業によってはユニークな内容を実施するケースもあるでしょう。とはいえ、内定式における一般的な内容を知っておくことは大切です。基本の流れを理解した上で、自社に合ったプラスアルファの内容を用意しましょう。

一般的な内定式の内容は、以下の通りです。

会社側の挨拶

内定式では、ほぼ必ず会社側の挨拶が実施されます。社長挨拶では、企業理念・会社の目指す方向性などを話すケースが多いでしょう。経営陣や人事担当者の挨拶では「今回の採用背景」「新入社員に期待すること」などを伝える傾向にあります。

また、会社側の挨拶の前後で、内定者に内定証書を授与するケースも見受けられます。

内定者側の自己紹介

内定者側の自己紹介では、内定者に一人ずつ簡単な挨拶やプロフィールを話してもらいます。「自己紹介と今後の意気込みを1分ほどで話して下さい」などと、挨拶に費やす時間や内容を指定してあげると親切です。

内定者の人数が多い場合には、内定者の中から代表者を選出した上で、一人のみに挨拶を依頼することもあります。

質問への回答

内定者は、今後の社会生活に期待をもつ反面、さまざまな疑問や不安を抱えるケースも多いでしょう。そのため、疑問や不安を解消すべく、事前に内定者から集めた質問に対し回答することもおすすめです。内定式で疑問が解消すれば、安心して入社できます。

また、多くの内定者が抱えがちな質問を題材にし、先輩社員たちによるパネルディスカッションを展開するのも良いでしょう。先輩社員のリアルな声を聞くことで、より安心感が増します。

今後のスケジュール案内

内定式では、内定式の終了から入社までのスケジュールを伝えるケースも見受けられます。今後のスケジュールを案内することで、内定者への気遣いを示せるとともに、しっかりと予定を立てて運営される「フォロー体制の手厚い会社」だと思ってもらえるでしょう。

~内定式から入社までのスケジュール例~
・内定者研修
・懇談会
・配属先見学

企業によっては入社までの時間を有意義に過ごせるよう、e-ラーニング・職場見学の感想文提出など、課題を出すケースもあります。

内定者研修

多くの企業では、内定から入社式までの間に、内定者研修を実施します。内定者研修の目的は、職場への理解促進や、即戦力につながるようスキルアップを目指すことです。内容は、ビジネスマナー・仕事体験・内定者同士の顔合わせなど、多岐にわたります。

また、内定者研修時に社内や配属先の見学を行う企業も多いでしょう。各部署の先輩社員たちから仕事内容や職場の雰囲気・魅力などを説明してもらうと、職場への理解を深めることに役立ちます。

懇親会・食事会

内定者との懇親会・食事会を開催し、企業と内定者や内定者同士の親睦を深めるケースも多いでしょう。より結束を強めたいと考え、数回にわたり実施する企業も存在します。懇親会や食事会では、「自己紹介」「グループワーク」「座談会」などを行ないます。

昨今では、オフラインでの懇親会が増えたことも特徴です。数回において実施する際には、最初に食事会を伴うオンラインで開催し、その後はオフラインなど、状況に応じて使い分けましょう。

内定式の実施例

内定式では、「一方的な説明で退屈だった」や「内容が物足りなかった」という意見も見受けられます。内定式を実施する場合には、満足度の高い内容を実現できるよう、実施例を参考にしながら準備すると良いでしょう。

ここでは、内定式の実施例を、「入社意識の向上が目的」と「交流促進が目的」の2つのケースに分けて紹介します。

入社意識の向上が目的の場合

入社意識の向上が目的の場合には、内定者のモチベーションアップにつながる内容を盛り込むと良いでしょう。モチベーションを高めるには、「自社の社員になる自覚」が促進できる内容を意識します。

~【プログラム例】入社意識の向上が目的の場合~
・開会の挨拶
・内定通知書の授与
・社長挨拶
・内定者代表の挨拶
・閉会の挨拶

内定通知書を授与すると、自社の社員になる意識を促せます。開会の挨拶から始まり、双方の挨拶を経て閉会の挨拶で終わる「セレモニー的なプログラム」は、儀式の意味合いを強め、入社意識の向上にも役立つでしょう。

企業側・内定者の交流促進が目的の場合

企業側・内定者の交流促進が目的の場合には、お互いの接点を増やすことと、双方が理解し合える機会を設ける意識が必要です。

~【プログラム例】企業側・内定者の交流促進が目的の場合~
・開会の挨拶
・内定者の自己紹介
・社長挨拶
・先輩社員への質問
・今後のスケジュール共有
・懇親会

交流促進が目的の場合には、内定者の代表挨拶ではなく、各自に自己紹介をしてもらうと良いでしょう。その後の懇親会などで、話題の切り口にしやすくなり、コミュニケーション促進が期待できます。記念撮影や簡単なゲームの実施なども、企業と内定者の交流促進につながります。

 

内定式の準備内容

内定式の内容は、内定者のモチベーションを左右するといっても過言ではありません。内定式には「内定者が抱える悩みの払拭」や「企業への理解を深める」といった重要な役割があります。そのため、内定式の準備をすすめる際には、ポイントを押さえることが大切です。ここでは、内定式の準備で押さえるべき「7つの内容」を紹介します。

開催日時を決める

まずは、開催日時を決めます。開催日時に決まりはないものの、10月が多い傾向にあり、10月1日に実施するケースも見受けられます。

10月開催が多い理由は、経団連が「新卒採用の内定は10月以降に実施する」と定めているからです。事前に内々定を出しておき、10月に入ったら早々に内定式を実施するケースが多いといえます。

オンライン開催について検討する

オンライン開催の内定式には、感染症対策や、遠方にいる内定者の出席率アップといったメリットがあります。全国に支社があり、各地に社員を配属するような会社は、オンライン開催が適する場合もあるでしょう。

一方オンライン開催には、交流しにくいことや、通信環境の不具合がある可能性などのデメリットもあります。オンライン開催では、事前アンケートや全員参加型ゲームの実施など、交流できる要素を取り入れましょう。通信環境の不具合に備え、事前テストも必要です。

流れを決める

内定式のトータル時間を決めたら、内定式自体の流れを決めます。時間をオーバーすると、「計画性のない会社」や「無駄な残業が多そう」などとマイナスイメージにつながる可能性があるため、スムーズな段取りを意識します。

流れを決める際には、飽きの来ないメリハリある内容を用意した上で、内定者の緊張をほぐせるような司会者・挨拶担当者を選びましょう。適切なプログラム内容と人選によって、内定者のモチベーションアップをはかります。

交通費の支給・服装などの詳細を決める

内定式での交通費の支給は、会社判断ではあるものの、一般的には支給する傾向にあります。なぜなら、内定式を「内定者を招待する歓迎行事」と考える企業が多いからです。交通費を支給する際には、内定式の案内時に、交通費が支給される旨を記載しましょう。

また内定式の服装は、基本的にスーツです。とくに服装を伝えなければ、大半の参加者がスーツを着用するでしょう。スーツ以外の服装を指定する際には、内定式の案内状に、当日の服装を記載します。

社内関係者に連絡する

内定式の開催日時および場所が決まったら、社内関係者へ早急に連絡しましょう。時々、内定者には連絡をしていたのに、社内関係者への連絡が漏れていたケースも見受けられます。直前に連絡をすると、都合がつかず、挨拶やサポートを依頼できない可能性があります。

また早めに連絡し、欠席の確認ができれば、代わりの人にもスムーズに依頼できるでしょう。そのため、関係者への連絡は、遅くとも「内定式の1ヶ月前」には済ませることが大切です。

内定者に出席・欠席を確認する

内定者に対し、内定式の開催内容を手紙やメールで伝えた上で、出席・欠席の確認を取りましょう。内定者のスケジュール調整を考慮し、遅くとも1ヶ月前には案内を送ることが大切です。

  • (例)10月1日に内定式を開催…8月末までに案内を送付

また1ヶ月前であれば、遠方の参加者も移動手段を安心して準備できます。出席・欠席の返事は、会場内の調整なども加味し、遅くとも開催日の2週間前にはもらえるように案内します。

内定証書を作る

内定証書とは、内定を証明する証書であり、内定式で企業から手渡すことが多いでしょう。内定証書を受け取ると、入社を実感しやすくなります。

~内定証書に記載する基本的な内容~
・内定者の氏名
・採用が決まった日
・入社日
・採用試験に合格した趣旨の内容
・企業の情報

内定証書は、しっかりとした賞状用の紙を使うケースが多く、A4サイズ・横書きが主流です。賞状用のサイズや様式には決まりがないとされています。

 

まとめ

内定式は、内定を正式に伝えるイベントであり、内定者の意欲向上や企業への理解度アップに役立ちます。内定式を成功させるには、入念な準備が必要です。準備不足な状態で開催すれば、内定者のモチベーション悪化などにつながります。

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