採用活動で内定を通知した後に内定辞退の連絡があり、どのように対応すれば良いか悩む採用担当者の方もいるのではないでしょうか。内定辞退を覆すのは容易ではありません。だからといって無視するなど、雑な対応はすべきではありません。

今後、仕事上で関わる可能性もあるため、誠実に対応する必要があります。

本記事では、応募者から内定辞退の連絡があった際のメールの返信方法や、電話での返答方法について例文を交えて解説しますので、ぜひ参考にして下さい。

いつまでに・どうやって?|内定辞退への企業対応マナー

内定辞退の連絡を受けた場合には必ず対応するのがマナーです。内定者は辞退の連絡をするにあたって「迷惑をかけて申し訳ない」という気持ちを持っています。したがって、企業側も丁寧な対応が必要です。

企業イメージを悪くしないためにも、感情的にならず最低限のマナーは守りましょう。以下の点に注意して下さい。

迅速に返事をする

内定辞退の連絡はメールで届くこともありますが、きちんと届いたことを伝えるためにもなるべく早く返事をしましょう。メールの場合は直接話さないため、返信がなければ「担当者を不愉快にしてしまったのではないか」と不安になっているケースも多くあります。

また、返信がないことでより不安になり、ストレスとなることもあるでしょう。内定辞退者の不安を和らげるためにも、メールを確認したらすぐに返信するのがマナーです。

後悔しないよう失礼な対応はしない

企業側としては内定を出したら入社してもらえると思っていることもあるため、内定辞退に納得できないかもしれません。しかし感情的になって失礼な対応をすると、対応の悪さがSNSで拡散され、会社の評価が下がる恐れがあるため注意が必要です。

また、将来的に仕事で関わる可能性もあり、再会した時に「あの時に失礼な対応をしてしまった」と後悔しないためにも丁寧に対応すべきです。採用担当者が学生を選ぶように、内定者も企業を選ぶ立場にあるということを理解した上で、感情的にならず内定辞退者に気遣った対応をしましょう。

 

企業側の例文・テンプレ|内定辞退者への伝え方

内定者へ連絡する際の伝え方は、メールと電話では異なります。また、中には内定辞退を考えなおしてほしいと強く感じることもあるでしょう。このような場合も伝え方を間違えると悪い印象を与えてしまう可能性があります。

以下に、内定辞退を「了承する場合」と「引き止める場合」の伝え方について、電話とメールに分けて例文を紹介するのでひな形として使って下さい。

電話での返答方法

電話で内定辞退の連絡があった場合は、基本はビジネスで取引を断られた時と同様の対応です。内定者も伝えにくいことを勇気を持って電話してきているので、相手を気遣った丁寧な対応をしましょう。

了承する場

内定者から電話で内定辞退の連絡があり、了承する場合は以下のように伝えると良いでしょう。

「承知いたしました。ご連絡頂きありがとうございます。ご自身にとって最良の選択をすることが何よりも大切ですので、気になさらないで下さい。この度は面接にご参加頂きありがとうございました。お預かりした応募書類は当社にて責任をもって破棄いたしますので、ご安心下さい。

また何かの折にご縁がありましたら、よろしくお願いいたします」

聞きにくい質問ではありますが、本人が理由を述べない場合は辞退の理由を聞いておきましょう。

引き止める場合

電話で内定辞退の連絡に対し、引き止めたい場合は以下のように伝えましょう。

「ご連絡頂きありがとうございます。よろしければ、辞退される理由を聞かせて頂けませんでしょうか。当社としてはぜひ一緒に仕事をして頂きたいと考えているので、お話を聞かせて頂ければと思っております」

できれば、後日あらためて時間をとって話すことをおすすめします。直接顔を合わせて話す方が説得しやすくなります。

ただし、一般的に引き止めは難しいことが多いので、再度の接触を断られた場合や本人の意思が固い場合は深追いせず承諾しましょう。

メールの返信方法

メール連絡への返信は電話とは異なり、文章だけで気持ちを伝えなければならないため、より相手の気持ちを汲み取ることが重要です。

なお、了承する場合も引き止める場合もそのまま返信せず、新規作成して丁寧な対応を心がけ送信時間にも配慮が必要です。以下に、メールへの返信文例を紹介します。

了承する場合

内定辞退を了承する場合は以下のような文面にしましょう。

件名:内定辞退承諾の件

◯◯様

お世話になっております。
◯◯株式会社の◯◯です。

この度は、弊社の採用試験にご応募頂きありがとうございました。

弊社としては大変残念ですが、内定辞退の件について承りました。また何かの折にご縁がございましたら、よろしくお願いいたします。
末筆ではございますが、◯◯様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。

なお、お預かりしていた書類に関しては、弊社にて責任をもって破棄いたしますのでご了承下さい。

ポイントはあまり長い文章になりすぎず、感謝の気持ちと要点を簡潔にまとめることです。

引き止める場合

メールで内定辞退を引き止める場合の例文はタイトルを「内定辞退再検討のお願い」として作成しましょう。

件名:内定辞退再検討のお願い

◯◯様

お世話になっております。
◯◯株式会社の◯◯です。

この度は、内定辞退のご連絡を頂きありがとうございました。
よろしければ、ご辞退の理由をお聞かせ頂ければ幸いです。
弊社としては、ぜひ◯◯様と共に働きたいと思っており、勤務条件などに関してご希望があれば、可能な限り調整したいと考えております。
ご検討頂ける余地がございましたら、再度面談の機会を頂ければと思いますので、ご都合の良い日程をいくつか頂けると幸いです。

ご来社頂くかオンラインやお電話でもかまいませんので、お話できる日程を教えて頂ければと思います。

お忙しいところ大変恐縮ではございますが、ご検討のほど、何卒よろしくお願いします。

内定辞退をメールで食い止める際は、「一緒に働きたいと思っている」という気持ちを書くことがポイントです。

 

内定辞退者に賢く対応するコツ

担当者は、常に会社の顔であるという自覚をもつことが重要です。内定辞退が発生した場合は、応募してもらったことへの感謝と丁寧な対応を心がけましょう。採用担当者の対応の悪さが自社のイメージダウンにならないためにも、以下の点を意識して下さい。

入社までが採用活動と考える

採用活動は入社までがひとつの区切りです。内定を出せば必ず入社してくれるわけではないことを理解しておきましょう。内定者も企業を選ぶ権利があるという認識を持たなければ、内定を辞退された時に冷静さを欠く原因となります。

内定辞退者が数名出ることは仕方ないことです。しかし、対策を講じることで辞退者を減らすことは可能です。入社までが採用活動と考え、入社までの間に内定者フォローをしっかり行うことで、少しでも辞退者を増やさない努力が必要となります。

手紙を送るなど応募者に寄り添った対応をする

相手が社会人経験のない学生であっても、基本的な対応はビジネスでの対応と同様と考えましょう。例えば、ビジネスでは取引先に失礼があった場合、お詫びした後に謝罪の手紙を送って誠意を見せるケースがあります。このような行為は好印象になり信頼関係を保つことにもつながります。

内定者も同様で、良い印象を与えると引き止めに応じてもらえる可能性もあるでしょう。

好印象を持ってもらうためには、自社を就職先の候補に選んでもらったことへの感謝の気持ちを伝え、応募者の立場で考えることが大切です。自分がどう対応されたらうれしいかを想像してみましょう。

率直な理由を尋ねる

内定を辞退したいと思うには必ず理由があります。できれば内定辞退の理由を聞きましょう。理由から反省点が見つかるケースもあり、今後の活動の参考にすることが可能です。

聞き方としては「今後の採用活動に生かすために、よろしければ辞退理由を教えて頂けませんか」とやんわりと聞きましょう。

ただし、理由は言いたくない人も多いので、しつこく問い詰めてはいけません。答えてもらえなかった場合は「失礼しました」と言って引き下がりましょう。

応募書類を破棄することを伝える

応募の際に提出してもらった書類には個人情報が記載されています。個人情報の取り扱いは慎重さが求められるため、応募書類やデータは削除することが基本です。安心してもらうため、応募書類は責任を持って破棄することを必ず伝えましょう。安心してもらうことで企業イメージの悪化も防げます。

紙の書類だけでなく、メールの添付ファイルやパソコンに保存されているデータも削除しましょう。メールボックスやパソコンから完全に削除するだけでなく、ゴミ箱やバックアップからも削除して下さい。

理由が嘘と感じても怖いと思われないよう問い詰めない

内定辞退の理由はできるだけ聞くことをおすすめしますが、理由が条件面や対応の悪さだった場合、本音は言いづらいでしょう。また、第1志望の企業から内定が出たことが理由の場合も、企業側に配慮して教えてくれない可能性もあります。

理由が嘘だとわかったとしても、それ以上踏み込むのはよくありません。「答えて頂きありがとうございます」と感謝の気持ちを述べるに留めましょう。

感情的になって問い詰めても、企業イメージの悪化につながるなど、状況が好転するとは期待できないからです。

 

新卒・中途採用共通|内定辞退者を減らす方法

内定辞退を減らすためには「この会社で働きたい」と思ってもらえることが重要です。給与や福利厚生などの表面的な部分だけでなく、企業の価値観や内定者に寄り添う姿勢なども重要なポイントとなります。

内定辞退者を減らす方法を3つ紹介するので、自社でもできているかどうか確認してみて下さい。

自社の魅力をアピールする

応募者にとって「どのような環境で、どのような活躍ができるか」は、就職先を選択する上で重要な要素となります。特に、労働環境や仕事内容は企業情報からは読み取れない情報のため、求人募集の内容に盛り込むことや、選考の過程で魅力をアピールすることが重要です。

魅力が伝われば応募者から選ばれやすくなり「ここで働きたい」と思ってもらえれば、内定辞退の防止にもなります。まずは、自社の魅力は何かを考えてみましょう。

面接などを通して弱みを正直に伝える

内定辞退や早期退職の原因として、ミスマッチがあります。面接では自社に良い印象を持ってもらいたいがために、悪い面は伝えたくないと考える担当者の方は少なくありません。しかし後でマイナス面を知り、その内容が応募者にとって優先度の高い項目だった場合、ミスマッチとなるでしょう。

そうなれば、内定辞退や早期退職につながる可能性が高くなります。あえて自社の弱みも正直に伝え、それ以上の強みや魅力があることをアピールするなど、マイナス面も正直に伝えることがポイントです。弱みも理解した上で内定を承諾してもらえばミスマッチも防げます。

内定者フォローの質を高める

内定後のフォローは内定辞退を防ぐためにはとても重要な役割を果たします。業務に必要なスキル面やメンタル面のケアにも配慮した、質の高いフォローを実施しましょう。

ポイントは応募者の悩みや不安な気持ちに寄り添い、信頼度を高めることです。例えば以下のようなものがあります。

  • 内定者研修
  • 社内見学会
  • 社員との懇親会
  • カジュアル面談
  • 年齢の近いメンターとの面談

このような内定者フォローも、他者との差別化にもつながる魅力のひとつです。

特に新卒採用の場合、社会人経験がないため不安は大きくなります。そのため入社までの間に、いかに不安を解消してあげられるかが重要なポイントです。

 

内定辞退者への対応に関するよくある質問

内定者フォローに関してよくある質問にお答えします。自社に該当していない場合も、今後質問のようなケースが発生した時の参考にして下さい。

転職エージェント経由で内定辞退の連絡が来た場合の返信方法は?

転職エージェントを利用した場合は、転職エージェントに返事をしましょう。引き止める場合も同様に転職エージェント経由となります。

内定承諾後(内定承諾書受領後)の内定辞退者に損害賠償を請求できる?

内定は労働契約が成立した状態ではありますが、内定承諾書の提出後に辞退しても法律違反になることは、基本的にありません。あまりにも悪質なケースなど、場合によっては損害賠償請求ができることもありますが、一般的に法的措置は難しいと思って下さい。

後にトラブルにならないためにも、内定通知書の送付から内定承諾書の提出までに一定期間を設けるなど、内定者が考慮できる時間を設定しましょう。

 

まとめ

内定辞退の連絡は、採用に時間と労力をかけた企業にとって残念な出来事です。しかし、感情的になって対応してしまうと企業の評価が下がることにもなりかねません。今回は入社しなかったとしても、将来的に取引先やお客様として接する可能性もあるため、内定辞退への対応は「企業の顔」として誠実な対応を心がけましょう。

また、内定辞退は企業側に問題があることも少なくありません。本記事を参考に内定者への対応を見直すことで内定辞退を減らせるので、ぜひ、見直してみて下さい。

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