「採用面接を効果的に進めるために面接マニュアルが欲しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。面接マニュアルで採用方針などを共有できていないと、面接官によって判断基準が異なったり、NG発言をしてしまったりすることがあります。
この記事では面接マニュアルを作成するために必要な情報を紹介します。面接官の役割や面接の進め方、評価方法、面接での質問例などを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
面接マニュアルに組み込むべき内容
まずは、面接マニュアルに組み込むべき内容について解説します。組み込むべきポイントは下記6点です。
- 面接官に要求される役割と資質
- 面接の事前準備
- 面接の進行方法
- 面接における有効な質問例
- 面接の際の注意事項
- 面接官が控えるべきNG行動やNG質問
順に解説します。
面接官に要求される役割と資質
採用面接官に期待される役割と資質をまずマニュアルに記載します。ポイントは下記2点です。
- 自社の求める人材かどうか見極める
- 自社の魅力を候補者に伝える
面接官の役割の一つ目は、人材の見極めです。採用のミスマッチとならないように、候補者が自社に合う人物かどうか、しっかりと判断することが求められます。もう一つの役割は、自社の魅力を伝えて、候補者に「ぜひ入社したい」と思ってもらうことです。
なお、この役割と資質ついては次章で詳しく解説します。
面接の事前準備
面接の事前準備について、何を準備すべきかをマニュアルに明記しましょう。面接準備として必要なポイントは次の5つです。
- 求める人材を明確にする
- 応募書類をよく読む
- 質問する内容を考えておく
- 評価基準を確認する
- 面接官トレーニングを受ける
面接で求める人材を見極めるためにも、事前にどのような人材を求めているのか確認する必要があります。
また、応募書類にも目を通し、応募者の基本的な情報を把握しておくことも大切です。基本情報を知ることで深掘りした質問を準備することもできます。
なお、適切な評価をするために、面接前に評価基準の確認も必要です。また、面接官トレーニングを受けることで、面接に必要な質問力や傾聴力を短期間で磨くこともできます。
面接の進行方法
マニュアルには面接の進行方法を記載しましょう。流れを掴むことで、面接官もスムーズに行動できます。面接の進行についての詳細は後の章でも解説しますが、大まかな流れは下記の通りです。
- 自己紹介・アイスブレイク
- 候補者への質問
- 候補者からの逆質問
- クロージング
アイスブレイクはその場の緊張を和らげるために行う会話のことです。自己紹介のあとは応募書類を見ながら、面接官から候補者に質問を行います。一通り聞き終えたら、今度は候補者からの質問がないか確認します。最後に、今後のスケジュールや連絡事項などを候補者に伝えて、面接は終了です。
面接における有効な質問例
面接の際に有効な質問の例も面接マニュアルに記載しておくことが大切です。例を挙げておくことで効率的に質問を行えます。
なお、質問例の詳細も後の章で詳しく解説しますが、質問の例は下記の3つに大きく分類されます。
- スキルや経験を見極める質問
- 価値観や人柄・適性を見極める質問
- 入社意欲を見極める質問
面接の際の注意事項
マニュアルには、面接の際の注意事項を記載することも重要です。例えば下記のようなポイントについて注意しておくことがおすすめです。
- 服装
- 出迎え・送り出し
- 言葉遣い
- 自己紹介
- 連絡事項
面接官が応募者の服装を見ているのと同様に、応募者も面接官の服装を見ています。清潔感があり、企業カラーに合わせた服装がおすすめです。服装規定がある会社の場合はスーツや制服、服装が自由な会社はオフィスカジュアルを指定するとよいでしょう。
出迎え・送り出しについても、候補者をもてなす姿勢で行うことで好印象を持ってもらえます。言葉遣いについても高圧的な口調では嫌悪感を抱かれることも少なくないため注意が必要です。
面接官の自己紹介は、短く簡潔に行うのが望ましく、できるだけ面接の冒頭がよいでしょう。応募者より先に自己紹介することで、応募者も話しやすくなります。その他、連絡事項があれば漏れなく記載しておきましょう。
面接官が控えるべきNG行動やNG質問
面接官が控えるべきNG行動やNG質問はしっかりと記載しておきましょう。
意識せずにNG行動やNG質問をしてしまう人は少なくありません。マニュアルに記載しておくことで、気付きにもなります。
NG行動や質問についての具体例などの詳細は後述しますが、下記のような種類の質問や態度は基本的にNGです。
- 基本的人権を侵害しかねない質問
- 候補者に対する高圧的な態度
- その他候補者が不快に感じる態度や質問
面接官の役割と期待されること
先述しましたが、面接官が採用面接において適切な行動をとるためにも、面接官の役割と期待されることをマニュアルに記載し、共有しておくことが大切です。
面接官の役割と期待されることは下記2点といえます。
- 候補者に正しく合否をつける
- 候補者に企業の魅力を伝える
以下で詳しく解説します。
候補者に正しく合否をつける
面接官に求められることの一つ目は、候補者に正しく合否をつけることです。
面接官は、候補者が自社の求める人材かどうか、自社に合う人材かどうかについて、思い込みや偏見にとらわれることなく公正に判断することが求められます。
そのためにも、自社の求める人材像や評価基準について事前にしっかりと把握・共有し、人によって評価にバラツキが出ないようにしておく必要があるでしょう。
また、評価基準が把握できていても、評価材料となる情報を候補者から十分に引き出せないと評価ができません。そのため、面接官は情報を引き出すための質問力なども期待されます。
候補者に企業の魅力を伝える
候補者に企業の魅力を伝えることも面接官の役割です。
面接では候補者も、面接官を通して自分に合う企業かどうかを探っています。候補者に、この会社で働くのは嫌だと思われてしまうと、内定を辞退されることもあります。
そのため、面接官は、候補者が採用側の企業に求めるものを把握し、それに合わせた自社の魅力をアピールする必要があります。
候補者が「働きやすさ」を重視するようであれば、自社の働きやすさについての魅力を伝えるとよいでしょう。「仕事内容」を重視するようであれば、自社でどのように活躍できるかという点について伝えるといった工夫が必要です。
基本的な面接の進め方
先述しましたが、面接マニュアルに記載すべき基本的な面接の進め方は以下の通りです。
- 自己紹介・アイスブレイク
- 候補者への質問
- 候補者からの逆質問
- 連絡事項の伝達・クロージング
面接官が面接の進め方をあらかじめ把握できていると、時間配分も考えてスムーズに面接を進行できます。具体的な内容について以下で詳しく解説します。
01.自己紹介・アイスブレイク
採用面接は、自己紹介やアイスブレイクから始まります。
先述の通り、アイスブレイクとは、面接の本題に入る前に、採用とは関係ない会話をするなどして候補者の緊張を解き、話しやすい雰囲気を作ることです。
アイスブレイクでは、来社のお礼を伝えたり、天気や季節の話題をしたりして場を和ませます。どうやって面接会場まで来たのかなど答えやすい簡単な質問をすることもおすすめです。
また自己紹介は、面接官から行った方が候補者も話しやすくなるため、面接官から行うとよいでしょう。
02.候補者への質問
アイスブレイクで候補者と会話を交わした後、本題の候補者への質問に入ります。
候補者を公正に評価するためには、候補者から評価に必要な情報を引き出す必要があります。事前に用意された質問通りに尋ねるだけでは十分な情報が得られないこともあるでしょう。相手の回答についてさらに質問を重ねるなどして深掘りして聞くことが大切です。
質問方法としては、「英語は得意ですか?」というような「はい・いいえ」などの回答の選択肢の限られた方法では話が広げにくくなります。「どうやって英語を身に着けたのですか?」など、自由に回答できる質問方法の方が、相手から多くの情報を引き出せます。
03.候補者からの逆質問
面接官から候補者への質問が終われば、今度は、候補者から会社について何か聞きたいことがないか、質問を促します。
候補者の疑問や不安を解消することで、前向きに入社を検討してもらえます。自社についてよい印象を持ってもらうためにも、事前に逆質問の内容を想定して、よい回答ができるように準備しておくことがおすすめです。
特に人事制度や福利厚生などについては質問されやすいため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
04.連絡事項の伝達・クロージング
最後に、今後のスケジュールや連絡事項を伝達して、面接を受けてくれたことへのお礼を述べ、面接を終了させます。
今後のスケジュールを伝えるときは、面接の合否をいつまでにどういった方法で連絡するかということを明確に伝えます。この際、採用や不採用の結果がある程度わかっていても言葉や態度に出さないことが大切です。万が一、異なった結果になった場合にトラブルになりかねません。
お見送りをする際は、緊張が少し解けて候補者も面接官も素の人柄が出ます。最後まで手を抜かず丁寧に行うと、会社の印象をさらに上げられるでしょう。
面接における候補者の評価方法
面接における候補者の評価方法をマニュアル記載して共有しておくことは、面接官によって評価がバラつかないようにするためにも重要です。
評価方法を記載するには、あらかじめ、評価項目や評価基準を定めておく必要があります。ここでは、一般的な評価項目について紹介します。
なお、評価項目は主に次の3つの素養を判断するために設定されます。
- 求めるスキルや経験が備わっているか
- 価値観・人柄が会社に合っているか
- 入社意欲が高いか
上の3つの素養の順に評価項目を解説していきます。
求めるスキルや経験が備わっているか
自社で活躍できる社員を選ぶためにも、採用面接ではまず候補者が、自社の求めるスキルや経験を持っているかどうかを見極めることが大切です。
求めるスキルや経験があるかどうかを判断する際に、利用される評価項目は下記の通りです。
- コミュニケーション能力(理解力):質問の意図を理解し適切に応えられるか
- コミュニケーション能力(要約力):話す内容を簡潔にまとめられるか
- 論理的思考力:筋道立てて話ができるか
- 技術力:学習経験や実務経験があって即戦力になるか
- 成長性:学習意欲が強くスキルアップが望めるか
- 問題解決能力:問題の原因を見極め解決策を考えられるか
価値観・人柄が会社に合っているか
価値観や人柄が会社にあっているかどうかを見極めることは、採用のミスマッチを防ぐためにも重要です。見誤ると、せっかく入社してもすぐに退職してしまう可能性があります。
価値観や人柄が会社に合っているかどうかは、下記の項目で評価する例が多く見られます。
- 主体性:自ら考え行動する習慣があるか
- 協調性:チームプレーで目標達成できるか
- 向上心:自ら課題を設定し成果を上げたことがあるか
- ストレス耐性:不満やストレスに対する自分なりの対処法があるか
- 創造力:既存の発想にとらわれず新たな価値を生みだした経験があるか
入社意欲が高いか
採用面接では、候補者の入社意欲の高さを見極めることも重要です。入社意欲が低いとせっかく内定を出しても辞退される可能性が高いといえます。入社意欲の高さを測る評価項目としては以下のようなものがあります。
- 志望動機:志望動機に説得力はあるか
- 他社選考状況:同業種や同職種の選考を受けているか
- 企業理解度:企業の理念や事業内容を理解しているか
- 応募企業の一貫性:応募企業に一貫性があるか
- 方向性:やりたいことが自社の方向性と一致しているか
【そのまま使える】面接での質問例
前章で紹介した候補者の評価項目について、候補者から評価に必要な情報を聞き出すための質問例を紹介します。下記のカテゴリー順に挙げていきます。
- スキルや経験を見極める質問例
- 価値観や人柄・適性を見極める質問例
- 入社意欲を見極める質問例
スキルや経験を見極める質問例
スキルや経験を見極める質問例について紹介します。質問例は以下の通りです。
- これまでの経歴を教えてください
- 当社と同じような業務経験はありますか?
- 応募職種に関する専門知識やスキルはありますか?
- リーダーやマネジメント経験はありますか?
- 前職で担当していた業務について詳しく教えてください
- アルバイトや学校生活、前職などで困難な課題やプロジェクトに取り組んだ経験はありますか?どのように乗り越えましたか?
- 大きな失敗を乗り越えた経験はありますか?どのように乗り越えましたか?
- 一人で取り組む仕事とチームで取り組む仕事のどちらが得意ですか?
価値観や人柄・適性を見極める質問例
価値観や人柄・適性を見極める質問例については以下の通りです。
- 仕事をするうえで、大切にしたいことや心がけていることは何ですか?
- やりがいを感じる仕事は何ですか?
- どのようなことでモチベーションが上がりますか?
- チームで仕事をするときは、どのように協力していきますか?
- 仕事、プライベート問わず、継続的に取り組んでいることはありますか?
- 友人や先輩、上司からどのような人だといわれますか?
- 仕事、あるいは学校生活を送るうえでストレスを感じたことはありますか?
- 苦手な人がチームにいた場合、どのように関わりますか?
- 5年後や10年後はどうなっていたいですか?
入社意欲を見極める質問例
入社意欲を見極めるための質問例としては、以下のようなものがあります。
- 当社に応募した理由は何ですか?
- 当社で具体的にどのような仕事をしたいですか?
- 当社のどのような点に魅力を感じましたか?
- 会社選びで重視することは何ですか?
- 当社以外に選考を受けている企業はありますか?それはどのような会社ですか?
- 今受けている企業の中で、当社の志望度は何位ですか?
- 当社について知りたいことはありますか?
- 志望理由を教えてください
- 今後、どのようなキャリアを築きたいと考えていますか?
面接官が気をつけるべきNG質問・NG行動
面接では、面接官が気をつけるべきNG質問やNG行動があります。
NG質問としては、厚生労働省が、採用選考で基本的人権を侵害しかねない質問をすることは不適切としています。下記のような質問はNGのため注意しましょう。
- 「本籍・出生地」「家族」「生活環境・家庭環境など」など本人に責任のない事柄についての質問
- 「宗教」「支持政党」「人生観・生活信条など」「尊敬する人物」「思想」「購読新聞・雑誌・愛読書など」など思想信条に関わる質問
また、NG行動としては下記のような行動が挙げられます。
- 候補者に対する高圧的・威圧的な態度や質問
- 候補者が不快に感じる態度や質問
ストレス耐性を見極めるという名目のもとで、面接官が高圧的に質問する圧迫面接を行う企業も少なくありません。しかし、現在は、採用面接における高圧的・威圧的な質問をすることはハラスメント行為と見なされる可能性があります。
また、応募者を見下したり軽んじたりと、候補者が不快に感じる態度や質問もNGです。企業イメージが低下するほか、応募者の入社意欲をそぐことにつながります。
オンライン面接のポイントと注意点
昨今は、採用面接をオンラインで行うことも少なくありません。オンライン面接を行う場合のマニュアルには以下のようなポイントを、注意点として記載しておくことがおすすめです。
オンライン面接で、まず注意すべきことは、応募者の緊張を和らげるように配慮することです。オンライン面接は特に相手の表情や仕草、雰囲気がわかりづらいため、通常の面接以上に緊張しやすいといえます。通常の面接でアイスブレイクを実施するのと同様に、オンライン面接でもいきなり本題に入るのでなく緊張を解いてから本題に入るようにしましょう。
また、オンライン面接では、質問事項を事前に決めておくことが大切です。オンラインでは身振り手振りのコミュニケーションができないため、対面ほどやり取りがスムーズに進みません。その場で質問を思いつく余裕があまりないこともあるため、事前に質問を多めに準備しておくことがおすすめです。
さらに、オンライン面接に際しては、ビデオ会議システムへの早めの参加を心がけるようにしましょう。早めに参加すると、万が一ネットワークやアプリの不具合などで参加できない場合に、別のパソコンを使うといった代替手段での対応をとれます。
面接マニュアルを正しく運用に乗せる方法
面接マニュアルを正しく運用するためには、作成・配布して終わりにするのではなく、正しく実行されたかどうか、また改善点はないかどうかなどを確認して進めることが大切です。
面接を実施した後に、面接官にヒアリングやアンケートをとって、マニュアルを正しく実行したかどうかや、改善した方がいい点がないかどうかの確認をしましょう。
実際にマニュアルを活用して面接を実施すると、「こういう質問は自社には有効ではない」「こういう風に聞いた方が回答を得やすい」などの改善点が見えてきます。
改善点のフィードバックがあれば、それを取り入れ、自社に合ったマニュアルへとブラッシュアップしていきましょう。
【まとめ】要点を押さえた面接マニュアルを作成・運用しよう
面接マニュアルを作るといっても、自社にぴったりと合う面接マニュアルを作るのは簡単ではありません。作成にはノウハウや時間がかかります。
もし、自社に合った面接マニュアルの作成に悩んでいる場合は、新卒採用支援サービスkimeteに相談してみてはいかがでしょうか。
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以下の資料では新卒や内定者の定着率を維持するためにはどうしたらいいのかなどを解説しており、最後にはkimeteの無料サービスのご案内もございますので、ぜひご覧ください。