心理学研究法で用いられる調査方法の1つ「面接法」。候補者から効果的に情報を引き出し評価の質を高められるとして、さまざまな企業の採用面接で活用されています。

一方で、採用面接は候補者と対話するシンプルなものながらも奥が深く、今の方法が正しいのか不安に思っている担当者も少なくありません。

そこで本記事では、採用面接に役立つ「面接法」の概要や種類、メリット・デメリットを紹介しつつ、面接法を取り入れた採用面接のやり方や注意点を解説します。

面接法とは


面接法は心理学研究法の1つであり、採用面接の場でも広く活用されています。
ここでは面接法の定義や意味、メリット・デメリットなどを解説します。

面接法の定義と意味

面接法とは、会話を通じて相手を深く理解し、意識・態度・発達状況などを調査する心理学研究法を指します。

一般的な会話と明確に異なるのは、「相手のことをより深く知りたい」という意図を持っているかどうかという点です。

「調査的面接法」「臨床的面接法」「集団面接法」の3つに大別されており、対象者が持つ価値観や考え方、背景などの詳細を把握するうえで有効な手法であると考えられています。

面接法は採用にも活用されている

面接法はその性質から採用と非常に相性が良く、採用面接の場でも幅広く活用されています。

調査的面接法の1つである「構造化面接法」では、自社の採用要件を定義したうえで事前に用意した質問と評価基準をもとに面接を実施するため、面接官によって評価がぶれにくいという特徴があるためです。

面接法の概念や考え方、メリット・デメリットなどを理解しておくだけでも活かせる要素が多数あり、面接や評価の質を高められるでしょう。

面接法の長所・メリット

面接法の主な長所・メリットは以下の3点です。

  • 言語情報と非言語情報を同時に得られる
  • 疑問点などをその場で相互に確認できる
  • 面接の質・正確性・評価基準を高水準で標準化できる

相手が話す内容のほか、表情・声色・仕草などの非言語情報を同時に得られるのは面接法ならではのメリットであり、書類やアンケートからは得られない情報でもあります。

また、対面で言葉を交わすという性質上、お互いがその場で疑問点や印象などを確認し合えるのも面接法の優れた点です。

これらのメリットをベースに採用要件・質問内容・評価基準を設定しておくことで、面接官の主観やバイアスによるばらつきを防止し、高水準で標準化できるでしょう。

面接法の短所・デメリット

心理学研究における面接法の短所・デメリットは以下の通りです。

  • 誘導質問が行われる恐れがある
  • 書類やアンケートに比べると実施できる人数が少なくなる
  • 面接官の質や技量によるばらつきが懸念される

手間や時間がかかるのは致し方ないとしても、それぞれの面接官による属人化と、それにともなう面接内容・評価がぶれやすい点には十分注意が必要です。

面接官の主観や技量に左右されず全体の質を一定に保つためには、面接官マニュアルの作成・共有、面接官トレーニングの実施などが有効です。面接マニュアルについては、「【保存版】​面接マニュアル|採用面接の進行方法や質問例、NG行動も解説」の記事を参考にしてみてください。

また、集団面接を行う場合は面接官が評価しきれる適切な人数で実施するなどの工夫をすると良いでしょう。

 

面接法の3つの種類


面接法は以下3つの種類に大別されます。

  1. 調査的面接法
  2. 臨床的面接法
  3. 集団面接法

それぞれの特徴や冒頭で紹介した3つの構造との関わりなどを見ていきましょう。

調査的面接法

調査的面接法とは、対象となる相手をより深く知ることを目的に行われる最もオーソドックスな面接法で、さらに以下の3つに分類されます。

  • 構造化面接法:事前に設定した仮説にもとづいて質問項目を決めて検証する
  • 非構造化面接法:質問項目を決めず相手の反応から仮説を生成する
  • 半構造化面接法:仮説も質問項目も設定するが、流れに応じて自由な反応を引き出す

採用面接においては、あらかじめどの程度質問内容を用意・統一しておくかを定義することが重要です。

面接や評価の質を一定に保ちたい場合は「構造化面接法」が向いていますが、ある程度質問内容を決めておき、会話の流れで柔軟に内容を変化させる「半構造化面接法」が比較的多く用いられています。

臨床的面接法

臨床的面接法とは、主にカウンセリングや心理療法などで活用されている面接法で、対象となる相手の悩みや課題解決をサポートすることを目的としています。

あらかじめ質問項目は設けず、相手主導で悩みや課題などについて話してもらい、回答や解決策をフィードバックするのが特徴です。

採用面接では、候補者が就職・転職する際に抱く疑問や懸念事項を引き出したい場合や、それを解消・解決したいシーンなどで活用できます。たとえば、選考途中や内定後の場面において、入社意欲の向上や内定承諾を促すクロージングなどに応用できるでしょう。

集団面接法

集団面接法は「グループインタビュー」とも呼ばれ、新卒採用面接で広く活用されている面接法です。参加する候補者の人数は企業により異なりますが、概ね3〜8名程度で行われる傾向にあります。

集団面接法のメリットは、短時間で多くの候補者と面接できること、候補者同士を比較しやすいこと、個人面接に比べて誇張が少なくなり一人ひとりが話しやすくなることなどが挙げられます。

その一方で、一人ひとりにかけられる時間が少なくなること、グループ単位で評価が偏りやすいこと、積極的に発言できない人の評価がしづらいことなどがデメリットです。

集団面接法を採用する場合は、これらのメリット・デメリットを把握したうえで、適切な質問内容や環境づくりを行うことが重要です。

 

面接法に沿った採用面接方法と注意点


面接法を応用した採用面接のやり方と注意点は以下の7つの観点から解説します。

  1. 面接の目的と面接戦略の設定
  2. 面接対象者の情報収集
  3. 面接場所
  4. 服装・身だしなみ
  5. 自己紹介とアイスブレイク
  6. 面接の全体像の開示・実施
  7. 面接の振り返り

1.面接の目的と面接戦略の設定

まずは面接の目的と、その目的を達成するためにどのような内容で面接を行うかなどの戦略を設定しましょう。

目的が曖昧だと質問項目や評価基準も曖昧になってしまい、全体の質が下がったり、採用のミスマッチにつながったりする可能性があるため、十分注意が必要です。

評価項目はなにか、そのためにどのような質問をするか、判定基準はどうするかなどを可能な限り明確にして、面接官の間で共有しておく必要があります。

2.面接対象者の情報収集

続いて、面接を実施する前に対象者のあらゆる情報を収集しましょう。

採用面接における対象者の情報とは、履歴書や職務経歴書などの提出書類、適性テストの結果、前回の面接内容や評価結果などが該当します。対象者によってはエゴサーチやSNSから取得した情報が役立つ場合もあります。

収集した情報からある程度対象者の能力や人柄に対する仮説を立てておくと、面接で掘り下げたい箇所なども明確になり、スムーズな進行が可能になります。

3.面接場所

面接場所が適切な環境であるかどうかもチェックしましょう。

個人情報やパーソナルな話題が含まれるため、ガラス越しにほかの社員や通行人が見えたり、外部の声や物音が聞こえたりする環境は不適切です。そのため、できる限り静かでお互いが落ち着いて話せる個室を選びましょう。

Web会議システムなどを用いてオンラインで行う場合は、面接官の周辺環境に加えて、接続環境や機器の操作方法なども確認しておく必要があります。

4.服装・身だしなみ

採用面接では対面した際の第一印象が非常に重要なため、求職者から好感を持たれるような服装・身だしなみで臨むことも重要です。

求職者からすれば面接官は会社の顔であり、会社そのもののイメージを大きく左右する存在です。会社の代表であるという自覚を持ち、イメージを損なわない服装・身だしなみを心がけましょう。

とはいえ、面接官の服装に正解・不正解はないため、清潔感などを考慮できていれば自社のカラーにあった服装で問題ありません。

5.自己紹介とアイスブレイク

面接の冒頭ではお互いに簡単な自己紹介をするとともに、アイスブレイクを行いましょう。人により差はあれど、緊張した状態では求職者の人柄やパフォーマンスが見えにくく、正しい評価ができない恐れがあるためです。

対象者の興味のある話題で場を和ませるのが理想であり、提出書類などから面接官との共通点を見つけ、それについて会話をするのも非常に効果的です。

面接官は対象者を評価するだけでなく、自社をアピールして魅力づけする役割もあります。必要以上に謙る必要はありませんが、自社のお客様の対応をするイメージで丁寧に接すると良いでしょう。

6.面接の全体像の開示・実施

自己紹介とアイスブレイクが終わったら、これから行う面接の全体像を開示しましょう。全体像を明かすことで対象者の不安が軽減され、会話を引き出しやすくなるためです。

面接開始時も含め、一般的な面接の流れは以下の通りです。

  1. 面接前の準備
  2. 出迎え・自己紹介
  3. アイスブレイク・目的の共有
  4. 面接官からの質問
  5. 応募者からの逆質問
  6. 諸連絡・見送り

企業側から一方的に質問をして終わるのではなく、対象者の疑問や不安を都度解消するために、臨床的面接法を用いて逆質問を実施しましょう。

より詳しい採用面接の内容ややり方を知りたい場合は、「採用面接の極意|面接官の質問例や見極めのコツを徹底解説」の記事をご覧ください。

7.面接の振り返り

面接が終了したら、実施した内容や収集した情報を振り返りましょう。

今回の面接で引き出しきれなかったポイントや懸念点なども残しておくと、次の面接官の参考になるうえ、内容を引き継いで次の面接に活かせます。

なお、面接の振り返りは面接終了直後に行うのが理想です。振り返りをせずに次の面接に臨んだり、時間が空いてから振り返ったりすると、記憶が薄れてしまい具体性や正確性に欠けた評価になりかねないためです。

 

面接法について学べる本


面接法について学びたい場合は、以下3冊の書籍がおすすめです。

  1. 面接法
  2. 調査的面接の技法
  3. 心理学研究法補訂版

面接法

面接法は、心理学などの専門知識がない人でも専門的な内容が理解できる、非常に読みやすい良書です。

全体で126ページとコンパクトでありながら、面接法の意義・修練方法・各精神療法家の理論との付き合い方などが網羅的に記されています。

面接官にとって必要なこと、参考になることが多く収録されている一方で、人との接し方や基本姿勢などを見直すきっかけになり得る内容といえるでしょう。

調査的面接の技法

調査的面接についてより詳しく知りたい場合は、「調査的面接の技法」がおすすめです。

タイトルの通り「調査的面接」にフォーカスした内容であり、調査の設計方法・各種面接の特徴・面接における作法・報告書の書き方に至るまで体系的に学べる良書です。

難解な理論ではなく、実用性に富んだ内容であり、比較的平易な表現で書かれているため、面接・心理学初心者も安心して手に取ってもらいたい1冊です。

心理学研究法補訂版

心理学研究の基礎や重要性を学びたい場合、さまざまな研究方法のメリット・デメリットを比較しながら学びたい場合は、「心理学研究法補訂版」がおすすめです。

複数の面接法やそのノウハウについて学べる良書ですが、これまでに紹介した2冊に比べると若干専門書寄りのため、基礎知識がある人や面接経験があり改めて学び直したい場合に向いている本といえます。

 

面接法を採用面接に活用しよう

採用面接の質向上に役立つとして広く活用されている面接法。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解しておくだけでも、採用面接に応用できる要素がたくさんあります。

面接法に沿った内容で質を高めることとあわせて、面接場所や面接官の服装・身だしなみなど、候補者のパフォーマンスを十分に発揮できる環境づくりや接し方も重要です。

面接法を取り入れつつ質の高い面接・評価を実現したいとお考えの場合は、新卒採用支援サービスkimeteの活用もご検討ください。

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