社会の変化が著しい昨今において、企業の存続に関わるといっても過言ではない人材確保。必要な人材を採用するだけでなく、離職せずに定着させることも重要です。
しかし、求人を出してもなかなか応募が集まらなかったり、ようやく採用した人材が早期退職してしまったりと、人材確保に苦戦している企業が多いのも事実です。
本記事では、採用・定着の観点から人材確保の具体的な方法を解説しています。人材確保が難しい背景にも触れているため、ぜひ参考にしてください。
人材確保とは
人材確保とは、自社に必要な人材を採用することに加えて、離職しないよう定着させることも含まれます。仮に採用が成功していても、その人材が離職してしまっては「人材を確保できている」とはいえないためです。
本当の意味で人材確保を実現するためには、採用した人材を適材適所に配置し、十分な教育・育成を行い、納得感のある評価を行うなど、働きやすい環境づくりまで視野に入れた取り組みが求められます。
人材確保の方法【採用のアイデア・施策】
人材確保は「採用」と「定着」の2つの面で施策を行う必要があります。人材確保における「採用」を成功させるためには、以下6つのポイントを押さえておきましょう。
- 求人の掲載媒体・募集方法を見直す
- 候補者の対象を見直す
- 労働条件や福利厚生を見直す
- 魅力的な労働条件をアピールする
- 面接内容を見直す
- 内定者のフォローを行う
求人の掲載媒体・募集方法を見直す
より良い人材確保を実現するためには、求人を掲載しているWeb広告や自社サイトなどの媒体を見直してみましょう。採用ターゲットの属性や採用市場のトレンドなどによって、効果的な媒体・募集方法・戦略などが異なるためです。
近年はいわゆる求人サイトの他にも、Web広告・SNS・求人検索エンジン・スカウトサービスなど、募集方法の選択肢が広がっており、求職者の情報収集手段も多様化しています。紙媒体や求人サイトなど、従来の媒体・募集方法の効果が下がっていると感じる場合は、新たな媒体や募集方法を検討してみるのがおすすめです。
候補者の対象を見直す
人材確保を効率よく行うためには、候補者の対象を見直してみることも大切です。候補者に求める条件が細かすぎたり、多すぎたりすることで良い人材を取りこぼしている可能性があるためです。
保有している資格・経験年数・学歴など、それぞれが本当に必須条件なのかを見直して見て、必須ではない条件を外すだけでも候補者の対象が広がります。
特に昨今は、少子高齢化にともなう労働人口の減少や若手不足から、企業間の人材獲得競争は激化の一途をたどっています。候補者の対象を見直し、範囲を広げることも積極的に検討すべきでしょう。
労働条件や福利厚生を見直す
労働条件や福利厚生を見直すことも、人材確保の成功に繋がります。労働条件や福利厚生が良いということが企業価値を高め、求職者からの印象も良くなるためです。
近年は働き方が著しく多様化しており、自身のライフスタイルに合わせた働き方ができるかどうかを重視する求職者が増加しています。具体的には、時短勤務・テレワーク・ダブルワークの許可などが挙げられます。
また、育児休暇・介護休暇・家賃補助・従業員割引のような法定外福利厚生を整備することで他社との差別化を図りつつ、従業員の働きやすさをサポートする企業が増えています。
魅力的な労働条件をアピールする
自社の労働条件を魅力的にアピールすることも重要です。労働条件・福利厚生を見直し充実していても、人材確保においては求職者に認知されなければ意味がないためです。
例えば「福利厚生が充実している」や「多様な働き方を実現できる」といったように、求職者目線で訴求することが大切です。採用ターゲットに合わせて「◯◯制度で子育てと両立しやすい」などとアピールポイントを絞るとさらに効果的でしょう。
求職者はさまざまな企業の労働条件を比較して、より良い条件の会社で働きたいと考えているため、他社と比較したうえでの魅力をアピールすることが大切です。
面接内容を見直す
面接内容の見直しも人材確保に有効です。
自社が面接で求職者を評価するように、求職者側も面接を通してその企業を評価しています。そのため、面接の場でも求職者に魅力的な会社だと感じてもらえるようなコミュニケーションを取ることが理想といえます。
また、面接官の言動ひとつで自社のイメージが大きく左右されることも理解しておく必要があります。特に、現場責任者や経営陣など、採用担当者以外が面接官を務める場合は、面接官としての心得や求職者の扱い方などを一致させておくと良いでしょう。
内定者のフォローを行う
内定者フォローをしっかり行うことも、人材確保の成否に影響します。求職者は複数の企業の選考に参加しているケースが多く、こちらから採用の意思表示をしても辞退されてしまう可能性があるためです。
最終的に入社までたどり着くためには、内定者に寄り添ったフォローが必要不可欠です。例えば、放置せずこまめにコミュニケーションを取り、疑問や不安があれば解消できるようサポートすることなどが挙げられます。
最終的な目的は採用と定着にあるため、それまでは気を抜かず相手に寄り添ったフォローを心がけましょう。
人材確保の方法【定着のための取り組み事例】
続いて、人材確保における「定着」を実現させるためには、以下5つの取り組みが有効です。
- 新入社員を受け入れる体制をつくる
- 育成制度を整える
- 適切に評価する制度を整える
- コミュニケーションを活発にする
- 柔軟な働き方ができる制度を整える
特に、大企業に比べて中小企業はこれらの体制が不十分な傾向にあります。自社の状況やリソースと照らし合わせつつ、ぜひ見直しの参考にしてください。
新入社員を受け入れる体制をつくる
早期退職を防止し人材を定着させるためには、新入社員を受け入れる体制づくりを行う必要があります。「自分たちは歓迎されている」と感じてもらうことで、最初の帰属意識が芽生える可能性があるためです。
例えば、上司や先輩、同僚とコミュニケーションを取れる機会を設けたり、同期同士の関係構築ができるイベントを実施したりなどが考えられます。縦の繋がり、横の繋がりを作ることで相談相手や居場所ができ、新入社員の不安を払拭できるでしょう。
また、社内施設や備品の場所や使い方など、既存社員にとって当たり前になっていることを、新入社員目線で丁寧に教えることも大切です。
育成制度を整える
人材の成長を促せるよう、適切なタイミングで実施できる育成制度を整えることも人材の定着に繋がります。
配属後に適切な教育がされないと、「放置されている」「必要とされていない」と感じ、モチベーションが低下してしまう人も少なくありません。一方で、入社後に必要な知識やスキルを習得し、滞りなく業務を遂行できれば、自身の成長や仕事に対するやりがいを感じられます。
人材育成にはさまざまな方法がありますが、段階に応じた研修制度を構築したり、資格取得を支援したりと、OJTに依存しすぎないことが大切です。
適切に評価する制度を整える
適切な評価を行えるよう、人事評価制度を整備することも大切です。適切な評価が行われ、努力や成果が昇進や昇給に反映されることが従業員のモチベーションを高め、人材の定着に繋がるためです。
適切な評価をするうえで重要なのが、明確な評価基準です。何をどのくらいやれば、どう評価されるかが見えていれば、実際の評価に対する納得感が得られ、次期に向けた目標を持ちやすくなります。
制度が曖昧だった場合、評価者によって評価内容がぶれたり、自分に対する評価の根拠がわからなかったりするため、従業員からの不満が出やすくなるため注意が必要です。
コミュニケーションを活発にする
人材が定着するためには、社内のコミュニケーションを活発にし、良い人間関係を築き、それを維持することが重要です。人間関係は従業員の大きな悩みになりがちで、常に転職理由の上位になっている要素のためです。
従業員の属性や風土などによって施策内容は異なりますが、定着率の高い企業には以下のような共通点があります。
- 風通しが良く、立場を問わず意見を出しやすい雰囲気である
- レポートラインが明確で、情報が正しく伝わる体制が整っている
- 経営陣・マネジメント層の価値観や方針、発言内容に一貫性がある
職場全体がこのような空気感であれば、人間関係に悩む従業員は少なく、一人ひとりが伸び伸びと業務に取り組める環境といえるでしょう。
柔軟な働き方ができる制度を整える
柔軟な働き方ができる制度を整えることも、人材確保に有効です。従業員のライフスタイル・ライフステージの変化などに柔軟に対応できれば、やむを得なく離職するケースを減らせるでしょう。
例えば、時短勤務やテレワークを導入することで、子育てや介護、家族の看病などと仕事を両立できる可能性が生まれます。
仕事や職場に対する不満とは大きく異なり、「希望する働き方ができない」という理由による退職者はできる限り減らしたいものです。どのような状況でも、従業員が無理なく働ける環境を作ることが、人材確保の実現に繋がるでしょう。
人材確保が難しい背景
近年、経済や社会の変化にともない、人材確保が難しい状況にあります。その主な背景は以下の4つです。
- 生産年齢人口の減少による人手不足
- 終身雇用制度の崩壊
- 働く意識や働き方の多様化
- 採用方法の多様化と競争激化
生産年齢人口の減少による人手不足
日本全体における少子高齢化や生産年齢人口の減少が人手不足を引き起こしており、結果的に人材確保の難易度が高まっていると考えられます。
内閣府による「令和4年版高齢社会白書」では、16〜64歳以下の人口は減少し続け、65歳以上の人口は増え続けていることが示されています。つまり、社会人として働ける労働人口が減少し続けているということです。
厚生労働省の「令和4年版労働経済の分析」でも、「おおむね全ての産業で人手不足感が強まる動きとなっている」という調査結果が報告されていることから、業界・業種に関わらず人材確保が難しくなっていることが伺えます。
終身雇用制度の崩壊
人材確保が難しくなっている背景として、人材の流動化も挙げられます。終身雇用制度の崩壊により、1つの企業に勤め続けるメリットが減少しているためです。
終身雇用や年功序列が期待できないなか、収入増やスキルアップ、キャリアアップなどを目的に転職する人が増えています。転職者の増加にともない、転職に対するハードルも下がってきており、人材の流動性に拍車がかかっているのが現状です。
実際に、2022年に厚生労働省が行った「令和4年版 労働経済の分析」によると、企業規模の大小に関わらず、従業員の半数以上が転職による入社であるという結果が報告されています。
働く意識や働き方の多様化
労働者の働く意識や働き方が多様化したことも、人材確保に影響しています。
これまでは「福利厚生の充実度」や「評価の正当性」などが重視されてきましたが、働き方改革をきっかけに「副業の可否」や「ワークライフバランスの実現」などを重視する人が増えています。同時に、「ライフスタイルに合わせた働き方ができない」という理由で退職する人も増加傾向にあります。
このような労働者のニーズを満たせない企業は企業価値が低下し、人材確保に苦戦する傾向にあるため、テレワークやフレックスタイム制を導入するなど、柔軟に対応することが求められています。
採用方法の多様化と競争激化
採用方法の多様化と、人材獲得競争の激化も人材確保を困難にしている一因です。
採用難易度の高まりにともない、採用を成功させようと次々に新たな採用手法が登場しています。例えば、SNSを活用したソーシャルリクルーティングや、企業側から任意の求職者にアプローチするダイレクトリクルーティングなどが挙げられます。
従来の求人広告や人材紹介だけでは十分な成果が得られず、複数の手法を組み合わせるケースも珍しくありません。従来の採用手法に頼りきりでは、あらゆる採用手法を駆使する企業との採用競争に勝てなくなってきているのが現状です。
人材確保が重要な理由
事業の継続や拡大、目標やビジョンの達成には人材が必要不可欠であることから、人材確保は極めて重要な経営課題といえます。
人材確保を成功させるためには、さまざまな変化やトレンドを把握し、柔軟に対応することが求められます。「求人広告で母集団を形成し、適合する人材を選抜する」という従来のやり方だけでは採用がままならず、従来の価値観・制度のままでは、多様性を求める従業員を留めておくことも難しくなってきているためです。
このような状況を乗り越えるためには、採用と定着の両面から適切な施策を講じて、採用の機会を最大化し、離職・退職を可能な限り軽減させる必要があります。
採用・定着の両面で人材確保の対策を行う
人材確保を実現するためには、必要な人材を採用することに加えて、その人材が定着するところまでを見据えて施策を講じる必要があります。
採用の成功率を高めるためには、募集方法・ターゲット人材の要件・採用活動の内容などを一つ一つ見直すことが大切です。また、売り手市場の昨今においては、入社が確定するまで気を抜かず、しっかりと内定者フォローを行うことも重要です。
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