従業員の定着率が低く離職率が下がらず、人材採用に悩んでいる採用担当者は、多いのではないでしょうか。自社に合う人材を採用するためには、人事データを活用して採用基準をつくることが大切です。

そこで本記事では、人事データ分析を行うメリットについて解説します。人事データを分析する流れや活用できるツールも紹介します。ぜひ、最後までご覧下さい。

人事データ分析(データドリブン)の基礎知識

人事データ分析を行う前に、人事データの基礎知識を確認しておきましょう。

意味・英語表記

人事データとは、従業員の個人情報や勤怠、社内での評価などの情報のことです。人事データを分析することで、適切な人材配置や業務改善に活用できます。採用活動にも生かせるのが、人事データ分析のメリットです。

人事データ分析を英語ではPeople Analyticsと呼びます。またデータドリブンとは、データに基づいて意思決定を行うことです。データに基づいて人事評価や人員配置を行うことは、客観的な視点での意思決定となります。

そのため、上司によって評価が異なることが少なくなり、公平に従業員の評価を行えます。データ分析の活用によって、従業員の満足度が上がることが期待できるでしょう。

人事データの種類・具体例

人事データの種類の具体例は、以下の通りです。

  • 従業員の個人データ
  • 給与情報
  • 勤怠
  • 入社後の勤務歴や内容
  • 保有資格
  • 人事評価

従業員の個人データは、氏名や生年月日、学歴などです。年収や手当、インセンティブなどの給与情報や遅刻や早退がないかどうか、有休の取得状況の勤怠情報なども人事データとなります。

社歴や職務内容、保有資格、人事評価の内容など、詳細な個人情報が多分に含まれているので、必要な人だけで管理し、情報が漏れないようにすることが人事データを扱う際に重要です。

人事データ分析が重要な理由・メリット

人事データを分析すると、自社に合う人材が採用できたり適材適所の配置ができたりするなど、さまざまなメリットがあります。ここでは、人事データ分析が重要な理由について解説します。採用担当者は、ぜひ参考にして下さい。

採用活動の質・スピードの向上に役立つ

人事データ分析によって自社で活躍する人材の特徴が把握できるため、採用活動の質・スピードの向上に寄与します。自社で活躍する従業員のデータ分析を行い、活躍する従業員の特徴のデータを抽出します。

活躍する従業員と同じ特徴を持つ人物を採用すれば、人材の質の向上につながるでしょう。例えば、人事データ分析によって自社で活躍する人物には学生時代、クラブ活動に熱心に取り組んだ経験があったとします。書類選考や面接では、クラブ活動の取り組みを詳しく確認します。

採用基準をつくることで、履歴書を見るポイントができ、面接官による質問のバラツキが減るでしょう。自社の採用基準を中心に質問するため、面接での余分な時間が減り採用活動のスピードアップにもつながります。

適切な人材育成・配置などによって業務生産の効率を高められる

従業員のスキルが把握でき適材適所に配置できるようになるため、業務生産の効率が高められることが、人事データ分析を行うメリットです。例えば、論理的思考力に長けており表計算ソフトを使いこなせるといった情報を人事データから把握できたとします。論理的で表計算ソフトが使える人材を経理や生産管理のような数字を使う部署に配置することで、生産性を高められるでしょう。

また、上司からのフィードバック内容や自己啓発の実施状況などから従業員のキャリア志向も人事データによって把握できるため、それぞれの従業員の育成方法を行うことが可能です。

離職率を抑えられる

実際に離職した人や離職することが決まっている人物に離職理由をデータ化することで、離職率を改善できるようになります。例えば、業界未経験者は数年以内に離職するというデータがあれば、経験者のみを採用するか初期研修を充実させるなどの対応ができます。

また、月平均の残業時間が30時間を超える従業員が離職するというデータがあれば、業務効率を上げ残業時間を減らす対策を講ずる必要があるでしょう。実際に退職した人物からのデータを活用できるため、自社の離職率を下げる効果が期待できます。

評価制度を改善できる

人事データを分析すれば客観的な評価ができるようになるため、評価制度の改善につながります。上司によって評価する内容が異なったりあいまいだったりすると、公平な評価とならない場合があります。

上司の好き嫌いで評価されたり、「積極的に仕事をするように」とあいまいに指示されて悪い評価を受けると、従業員の不満につながるでしょう。

お客様への訪問数や提案数、成約数など、従業員が行動した内容を数値で評価を行うように改善すると、公平な評価となり得ます。データに基づいて従業員を評価することで、公平で客観的な評価となり、従業員のモチベーションアップが期待できるでしょう。

企業文化・組織風土を変革できる

人事データを分析することによって自社の現状が理解できるようになるため、企業文化・組織風土を変革することが可能です。例えば、自社の年齢層や性別のデータを確認して平均年齢が40代で、男性が多い組織だったとします。

若い世代や女性が少ないことが課題であると、理解できます。男性中心の職場では男性目線での提案が多くなるなど、十分に営業利益を伸ばせない可能性が高まるでしょう。

女性や若い人を採用し、さまざまなお客様のニーズを掴み商品・サービスを提供することは、自社の発展になる可能性があります。人事データ分析を行うことで、経験則や勘ではなく数値に基づいた判断を行う組織に変革できるでしょう。

人事情報の管理・活用によって素早く戦略・施策の立案に役立つ

従業員の年齢や勤続歴などの人事情報を活用することで、従業員の採用戦略・施策を立案するための意思決定をスピードアップさせることが可能です。例えば、年齢や勤続年数から自社で活躍する人材の傾向を把握できます。

離職率の高い年代を特定し、その原因を分析することも可能です。人事データによって活躍する人の特徴を掴んでいれば、新しいプロジェクトを立ち上げる際にリーダー候補として検討できます。

また、離職する人の特徴のデータが分かれば、事前に対策が打てるでしょう。自社の従業員の特徴をデータで把握しておけば、客観的な視点から人事戦略や施策を実施できます。

人事データを分析する際の流れ

人事データを活用する流れは、以下の通りです。

  1. 目的を明確化する
  2. 人事情報を集める
  3. 収集したデータを可視化する
  4. 施策を実行する

人事データ分析を行い、自社の課題解決につなげましょう。

目的を明確化する

人事データを何に活用するかが明確でなければ、その後の行動を決めることが難しいため、人事データを活用する目的を明確にすることが重要です。目的を明確にするには、自社の課題を把握することが大切です。

課題を見つけるには、自社の年齢構成や男女比、残業時間などの人事データを確認します。例えば、従業員の生産性が高くないことが自社の課題だとしましょう。残業時間が多い部署があれば、生産性が高くないことが把握できます。

自社の課題を把握し人事データを使って解決したい目的を決めることが、人事データ分析の第一歩です。

従業員の個人情報・保有資格・業務データなどの重要項目を収集する

自社の課題を解決するという目的を達成させるために、人事データを収集します。人事データを集める際には、自社の課題を解決できると思われるデータを集めましょう。人事データは、社内のデータベースから取得します。

課題を解決するための情報が自社になければ、従業員にアンケートを行って情報を集めましょう。情報を収集する際には最新の情報を集めることが重要です。

古い情報でデータ分析を行ってしまうと、誤った結果を導き出してしまう可能性があるため注意しましょう。また、人事データは個人情報であるため、漏えいしないように対策を行うことも大切です。

収集した人事データを分析して課題を可視化・ダッシュボード化する

正確な分析ができ意思決定のスピードが早くなるため、自社の課題を可視化・ダッシュボード化することが、人事データ分析を行う際に重要です。ダッシュボードとは情報を集め分析するツールのことで、表やグラフで分かりやすく一覧にして示せます。

人事データを可視化すると、一目で自社の年齢構成や男女比、給与水準などを把握することが可能です。例えば、自社の平均年齢が40歳であるとします。年齢構成比が40代が40%で、20代が10%であったとすると、若手が少ないことが分かります。

若手の離職率を低下させる取り組みや若い人の採用を増やす対策が必要ということが理解できるでしょう。人事データを可視化すれば、表やグラフで課題が見つけやすくなるため、素早く対策の取り組みが実行できます。

施策を立てて実行する

人事データの分析結果に基づいて課題を解決するための施策を実行します。例えば、自社の課題が若手の定着率であれば、フレックスタイム制やテレワークの導入、残業時間を減らすための業務効率化などの解決策となり得ることを行いましょう。

ただし、施策を実行する際には、従業員が求めている内容であることが重要です。従業員が求めていないことを改善しても、不満が増す可能性があります。また、施策を実行するには部門長や経営陣の協力が欠かせません。

事前に部門長や経営陣に施策内容を共有し、承認をもらい計画的に実行すると、スムーズに実行できるでしょう。

人事データを賢く活用方法・重要ポイント

人事データを分析することで自社の課題解決につながりますが、やみくもに人事データを分析するだけでは効果的な活用とは言えないでしょう。ここでは、人事データを賢く活用するポイントについて解説します。自社の課題を解決したい担当者は、ぜひ参考にして下さい。

データベース構築時に定量的なデータを収集する

客観的な判断ができるため、定量的な情報を収集することが、人事データを活用するには重要です。定量的とは数値で示すことで、具体的には勤務歴や給与水準、有休取得率などのことを指します。

出退勤を情報システムで管理したり、点数評価でのアンケートを実施したりして定量的な人事データを集めます。また、定量的な情報は数値で示すため、比較も可能です。例えば、昨年と今年の残業時間を比較すると、改善しているか悪化しているのかが分かります。

適切な配置を行い組織全体の業務効率を高めるためには、定量的なデータ収集を行うことが大切です。

人事データだけでなく労務などの関連データも分析する

人事と関連が深い労務データも分析することで、課題の解決につながります。人事は従業員個人に焦点を当てた情報で、具体的には氏名や学歴、給与などの従業員自身の情報です。

一方、労務は従業員の労働条件の情報を指し、具体的には出勤状況や残業時間、有休日数などのことです。人事情報に労務データが加わることで視点や情報が増えるため、課題解決につながる可能性が高くなります。

例えば、若手の定着率が低いことが課題だったとしましょう。人事データでは若手の構成比が分かり、労務データでは若手の残業時間が把握できます。人事と労務は密接に関わっており、どちらのデータも分析することでより良い解決策が立案できる可能性があります。

ハイパフォーマーの特徴を把握する

自社で活躍する人材の特徴が理解できるため、人事データでハイパフォーマーを把握することが重要です。ハイパフォーマーとは、生産性が高く成果を残す従業員のことです。

自社で活躍する従業員のスキルや人柄、経験などのデータを分析すれば、自社で活躍できる人材の傾向が分かります。例えば、成果を出すハイパフォーマーは学習意欲が高く最新の知識や技術を進んで学んでいるとしましょう。

従業員に自ら学ぶ重要性を説き、資格取得や書籍の購入に補助を出し、自ら学ぶ姿勢を促すことで、成果を残せる従業員が増えることが期待できます。人材採用にも活用できるため、ハイパフォーマーの特徴を把握することは、人事データを分析する上で重要です。

活用事例・書籍などを参考にする

自社と同じ課題を解決した他社の人事データの活用事例や書籍などがあれば、解決策を参考にできます。例えば、離職率が高いことが自社の課題だとします。退職理由をデータ化したことで、退職が目立つ部署や退職時の年齢に傾向があることが分かった事例があれば、自社でも同じ施策が実施できるでしょう。

活用事例を探すには、業界誌を閲覧したりセミナーに参加したりすれば、見つかることがあります。費用が発生しますが、コンサルティング会社に依頼して成功事例を調査してもらう方法もあります。

また、書籍を活用して人事データの活用について学ぶのも良いでしょう。人事データ活用について、ほとんど知識がないのであれば、人事データ活用に関する書籍を読んで人事データに取り組むこともおすすめです。

人事データの活用におすすめのツールを紹介

人事データを活用するために、どんなツールを使えば良いか分からない担当者は、多いのではないでしょうか。ここでは、人事データを活用するためにおすすめのツールを2つ紹介します。使いやすいツールを使って人事データを活用しましょう。

Microsoft Power BI(無料版あり)

Microsoft Power BIとは、Microsoft社が提供する分析ツールのことです。エクセルやCSV(テキストファイル)などを読み込むことで、グラフや表を作成できます。クラウドに保存しているデータの読み込みも可能です。

Microsoft Power BIはエクセルに入力するだけでデータを視覚化でき、自社の現状が一目で分かります。例えば、定着率が自社の課題だったとしましょう。勤続年数や性別、退職に至った理由などをエクセルに入力し、Microsoft Power BIに読み込ませると、グラフや表が出力され退職理由や勤続年数などが分かります。

Microsoft Power BIには無料版が提供されているため、導入コストは不要です。プログラミングのような専門知識がなくても使用できます。

エクセル

エクセルを使えば、人事データの整理が可能です。グラフにすることもかんたんで、データの可視化ができます。年齢や性別、役職などをエクセルに入力し、表やグラフにします。例えば、人事データをエクセルに入力すると、女性の役職者が男性に比べて少ないことや30代までに課長に昇進した人物は少ないなどが表やグラフから分かります。

女性に優秀な人がいないのか、20代や30代には部署を任せられるリーダーとなる人材がいないのかなど、課題が見えてきます。普段の業務で使用している企業が多いため、エクセルは使いやすいツールです。既に業務でエクセルを使用しているなら、導入コストは不要です。

まとめ

人事データとは、従業員の氏名や職歴、給与などの情報のことです。人事データを分析すると、採用活動の質の向上や離職率を下げるなどの効果があります。採用活動の質を上げたり離職率を下げたりするには、自社の採用基準や目標を設定することが大切です。

しかし、採用基準や目標をどのように設定すれば良いか分からない採用担当者もいるでしょう。正しく目標設定を行うには、プロのアドバイスを借りてみましょう。プロのノウハウが知りたい担当者は、kimeteの「採用に関するチェックリスト」を利用してみて下さい。

「採用に関するチェックリスト」を活用すれば、明確な目標設定が可能で、関係部署との協力体制も築けるでしょう。「採用に関するチェックリスト」をダウンロードして目標設定を明確にして、自社に合う人材を獲得しましょう。