採用面接は、応募者のなかから自社が求める人材を見極め、評価をする重要な場です。一方で、面接の内容によっては採用ミスマッチを招いたり、自社の印象を悪くしてしまったりする可能性もあります。
採用面接を実施しているものの、今のやり方が正しいのか疑問に思っている担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、採用面接の目的や具体的な流れを解説しつつ、目的別に55個の質問例を紹介します。面接官の役割や注意点などもまとめているので、採用面接のやり方や評価方法などを見直したい方はぜひ参考にしてください。
採用面接の目的
採用面接の目的は以下の2点に集約されます。
- 応募者を評価して合否をつける
- 応募者に自社の魅力を伝える
売り手市場の近年においては、「自社の魅力を伝えること」の重要性が増しているのが実情です。
応募者を評価して合否をつける
採用面接の大きな目的の1つは、応募者を評価し合否を判定することにあります。
面接で主に確認したいことは、応募者の能力や人柄・人間性・自社とのマッチ度合いの3点です。どんなに素晴らしい能力があっても、自社が求める要件を満たしていても、人間性や自社とのマッチ度に問題があると早期退職に至ってしまう可能性が高いためです。
そのため、面接上手な応募者ではなく、長期間活躍する本物の人材を見極める必要があります。
応募者に自社の魅力を伝える
一方的に評価するだけではなく、応募者に自社の魅力を伝えて入社意欲を高めることも採用面接に欠かせない目的の1つです。
特に近年は、度重なる法改正や労働人口の継続的な減少などの影響を受けて売り手市場が続いているため、応募者も会社を選べる立場にあります。
採用したいと思える人材が、無数にある企業の中から最終的に自社を選んでくれるよう、自社の強みや独自性、働くメリットなどを伝える必要性が高まっているといえるでしょう。
採用面接の面接官の役割
採用面接を行う目的から、面接官に求められる役割は「自社に必要な人材の見極め」と「自社の顔として魅力を伝えるPR役」です。
具体的には、応募者と良好な関係を築いて本音を聞き出すこと、評価に必要な情報を引き出せるように質問すること、それぞれの応募者が魅力を感じるポイントを把握して訴求することなどが挙げられます。
応募者はさまざまな面接対策を講じて臨んでいるため、面接用のコメントではなく本音を引き出すコミュニケーションスキルが必要であり、自社の魅力を十分に伝えるプレゼンスキルも求められるでしょう。
一方で、面接官の発言は「会社の発言」と捉えられるため、自社のイメージを左右する広告塔としての一面があることも十分理解しておく必要があります。
採用面接の流れ
実際の採用面接の流れを、以下7つのステップで解説します。
- 面接前の準備
- 出迎え・自己紹介
- アイスブレイク・目的の共有
- 面接官からの質問
- 応募者からの逆質問
- 諸連絡・見送り
- 評価・申し送り
1.面接前の準備
面接に臨む前に、応募者の履歴書やエントリーシートなどに目を通し、質問内容を想定しておく必要があります。あわせて、募集されているポジションの求人情報や募集背景なども把握しておくと人材の見極めに役立つでしょう。
選考の途中である場合は、先に行った選考の評価や申し送りなどにも目を通しておく必要があります。
2.出迎え・自己紹介
面接開始直前に、応募者を丁寧に出迎えて、お互い簡単に自己紹介をしましょう。
応募者目線では採用担当者はその企業の顔であるため、第一印象が非常に重要です。採用担当者も「求職者から評価されている」という意識を持って対応する必要があります。
ビジネスパーソンとして適切な対応ができなければ、自社そのものの質を疑われる可能性もあるため注意が必要です。
3.アイスブレイク・目的の共有
続いて、アイスブレイクと面接の目的を共有しましょう。
緊張した状態では人柄が見えづらく、心を開いてくれたほうが本音で話してもらえる可能性が高まります。話しやすい雰囲気作りに努めることで自社のイメージアップも期待できます。
また、あらかじめ面接のゴールを共有することで面接の時間をより有意義なものにできるでしょう。
4.面接官からの質問
話しやすい雰囲気が作れたら、本題となる面接官からの質問を行います。
淡々と質問を繰り返すだけではせっかくのアイスブレイクが徒労となってしまうため、雰囲気が固くならないよう会話をするようなイメージで質問していくことが望ましいでしょう。
準備してきた回答ではなく本音を引き出すために、意識的に良い雰囲気を維持することが大切です。
5.応募者からの逆質問
こちらからの質問が終わったら、応募者から面接官に対して逆質問を受け付ける時間を設けましょう。応募者の疑問や不安を早めに払拭することで選考・内定辞退の防止につながるためです。
本当に聞きたいことほど実際には聞きづらい傾向にあるため、逆質問の目的や意図を伝えるなどして、質問しやすい雰囲気を作るのがポイントです。
6.諸連絡・見送り
一通りやり取りが終わったら、諸連絡をして応募者を見送りましょう。
今後の情報がないと不安に思う応募者も少なくないため、合否連絡までの期間や連絡方法、今後の流れなどを伝えてあげると親切です。
見送る際は自社のお客様と同じように、玄関やエレベーターなど姿が見えなくなるまで丁寧に見送ることで誠意が伝わり、自社のイメージアップにもつながります。
7.評価・申し送り
最後に、面接の評価を付け、上長や採用担当者に申し送りをして面接は完了です。
時間経過とともに記憶や印象は薄れてしまい、評価の正確性を欠いてしまう恐れがあるため、面接直後に評価を行うのが理想です。
面接の目的はあくまで「評価・判定すること」にあるため、評価を確定させることを最優先とすべきでしょう。
採用面接の55の質問例とポイント
実際の面接で使える質問例を、以下7つの領域に分けて55種類紹介します。
- 自己紹介・アイスブレイクの質問例
- 志望動機の質問例
- 仕事観・意識の質問例
- 価値観・行動特性の質問例
- 課題解決能力・思考特性の質問例
- 成長意欲・キャリアプランの質問例
質問の仕方には、回答範囲を制限せず自由に回答してもらう「オープン・クエスチョン」と、回答範囲を限定して掘り下げる「クローズド・クエスチョン」があり、状況にあわせて使い分けるのがポイントです。
自己紹介・アイスブレイクの質問例
- ご足労ありがとうございます。弊社まで迷わず来られましたか?
- 暑い日が続いていますね。体調など崩されていませんか?
- ◯◯が趣味なのですね。興味を持ったきっかけは何だったのですか?
- サークルで◯◯をしているんですね。最近も活動に参加しているんですか?
- 1分程度で簡単に自己紹介をお願いできますか?
アイスブレイクは緊張や警戒心を解く目的で行うため、面接とは無関係な話題にしましょう。応募者との共通の話題で盛り上がるのも、短時間で距離が近づくためおすすめです。
志望動機の質問例
- 志望動機を教えていただけますか?
- 弊社の第一印象を教えていただけますか?
- ◯◯業界を希望されている理由は何ですか?
- 弊社について、今一番知りたいことは何ですか?
- 応募する会社を決める基準やポイントを教えてください。
- 弊社に望むこと、期待することがあれば教えてください。
- 今回募集しているポジションを志望されている理由を教えてください。
- 弊社を志望してくださったポイントを3つ挙げるとしたら、何ですか?
- 同業他社も多いなか、弊社を志望していただいた理由を教えていただけますか?
- 弊社以外に応募しているのはどのような会社様ですか?理由も含めて教えてください。
仕事観・意識の質問例
- 仕事をするうえで1番大切だと思うことは何ですか?
- 仕事をするうえでのモチベーションの源泉は何ですか?
- あなたが思う「良い会社」とはどのような会社ですか?
- 座右の銘や大切にしている言葉があれば教えてください。
- ◯◯のポジションであなたの役割は何だと考えていますか?
- あなたが仕事でやりがいを感じるのはどのような時ですか?
- チームで仕事をするうえで1番大切だと思うことは何ですか?
- 弊社の業務や部署のなかで特に興味があるものはありますか?
- 上司や先輩社員に求めることは何ですか?3つ挙げてください。
- 現在考えている入社後のキャリアプランや将来的な展望を教えてください。
価値観・行動特性の質問例
- あなたが好感を持てると思う会社の特徴を教えてください。
- 自分に合うと思う会社はどのような会社ですか?
- 過去の実績について、成果を上げられた決め手となった行動は何でしたか?
- (過去の仕事)について、あなたが課題・問題と認識したことは何でしたか?
- 目標を達成するうえで重要なことはなんですか?優先順位も教えてください。
- (過去の仕事)に取り組むうえで、最初にしたことは何でしたか?
- (過去の仕事)について、特に努力・工夫したことは何でしたか?
- 過去の失敗経験と、そこから学んだことや変えたことがあれば教えてください。
- どうしても期日に間に合わない場合、どのように対処しますか?
- 新しいことにチャレンジした時の状況と、具体的な行動を教えてください。
課題解決能力・思考特性の質問例
- 過去の仕事で一番大変だったと思うことは何ですか?
- 過去に解決できた課題について、解決に至るまでのプロセスを教えてください。
- 大きな壁にぶち当たった際、どのように乗り越えましたか?
- 大きなトラブルが発生した場合、最初に考えることは何ですか?
- 想定外の問題が発生した場合、最初にすることは何ですか?
- 大きなミスをした経験があれば、どのように対処したかも含めて教えてください。
- 相手方に非があることが明らかな場合、あなたはどのように対応しますか?
- 激しく気持ちが落ち込んだときはどのように立て直しましたか?
- 仕事でストレスを感じるのはどのような時ですか?
- ストレスが溜まった時の解消方法を教えてください。
成長意欲・キャリアプランの質問例
- 長期的・継続的に注力してきたことがあれば教えてください。
- 継続的に学習しているものや分野があれば教えてください。
- 自分の力不足を感じた瞬間はありますか?
- 目標を達成した経験について、エピソードを交えて教えてください。
- 目標を達成した経験について、取り組んだ内容を具体的に教えてください。
- 今後のキャリアプランや実現したいことがあれば教えてください。
- 弊社で特に興味がある業務はありますか?
- 5年後、10年後に実現したいビジョンはありますか?
- もし弊社に入社していただいた場合、やり遂げたいことはありますか?
- 弊社に入社していただいた場合、チャレンジしたいことはありますか?
採用面接では逆質問にもしっかり準備する
逆質問には多くのメリットがあるため、積極的に取り入れるのがおすすめです。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 質問内容から応募者の志望度やコミュニケーション能力を測りやすい
- 応募者の疑問や懸念を解消することで、選考途中の辞退を抑制できる
- 注目しているポイントがわかり、以後の選考を進めやすくなる
- 最終面接では入社意欲の向上、内定辞退の防止につながる
一方で、企業側も逆質問に対してしっかり準備しておくことが重要です。回答次第で自社を魅力づけすることにもつながるためです。
逆質問に対する準備は、想定質問と回答を用意するのが一般的ですが、実際に受けた逆質問を蓄積してマニュアル化するのも良いでしょう。
採用面接で人材を見極めるポイント
採用面接において、より正確に人材を見極めるポイントは以下の3つです。
- 採用要件を明確に定義する
- 本音を話せる環境・雰囲気を作る
- 見極められる水準まで回答を深掘りする
採用要件を明確に定義する
面接を実施する前に、採用要件を明確に定義しましょう。採用要件が曖昧だと面接官によって質問内容や評価基準がぶれてしまうためです。
募集ポジションの背景から、どんなスキル・価値観を持っている人材が良いか、自社にうまく馴染めるのはどのような人柄・思考特性の人材かを明確にし、その要素から逆算して判定できる質問を設定すると良いでしょう。
面接官・評価者によって差が出づらい内容にしたり、質問内容を統一したりといった工夫をすることも大切です。
本音を話せる環境・雰囲気を作る
実際の面接では、本音を話せる環境・雰囲気作りをすることが非常に重要です。本音とは異なる「合格するために対策された回答」で評価をしてしまうと、ミスマッチな採用になりかねないためです。
応募者の多くは本音を隠していること、面接対策をしたうえで面接に臨んでいることをよく理解しておく必要があります。そのうえで、腹を割って話してもらえる雰囲気や関係性を作る工夫をすることが重要です。
見極められる水準まで回答を深掘りする
面接の質問では、応募者を評価できる水準または見極められる水準まで回答を掘り下げるのがポイントです。表面的な情報や薄い回答内容では合否の判定が困難なためです。
たとえば素晴らしい実績があったとしても、もしかしたらチーム全体が優れていたかもしれません。重要なことは、入社後に再現できるかどうかです。
判断材料になり得る話題は、そのとき何を考え、どう行動したか、なぜそうしようと思ったのかなどを深掘りしていき、最初の回答の背景や詳細を明らかにしていきましょう。
採用面接で押さえたいチェックポイント
応募者からすると面接担当者は会社の顔であり、広告塔です。そのため、企業側も応募者から評価されていることを常に念頭に置く必要があります。
応募者から好感と信頼を得られるよう、面接担当者は以下の点をチェックしておきましょう。
- 開始時間を守っているか
- 服装や髪型などの身だしなみ清潔感はあるか
- 初対面時の挨拶、面接中の声色・表情・態度は良いか
- 応募者と真摯に向き合いコミュニケーションを取れているか
- 応募者が魅力的だと感じられるか
加えて、相手が緊張していると本来の自分を出し切れず悔しい思いをさせてしまううえ、評価する側も正しい評価が行えないため、緊張感を和らげる雰囲気作りも重要です。
採用面接の注意点
採用面接では、就職差別を避け公正な採用面接をするために、適正・能力に関係のない事項を把握しようとする質問・行為は避けるべきです。
令和5年に厚生労働省が公表した「公正な採用選考をめざして」によると、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の能力・適正に基づいた基準で評価すること」を目的として、就職差別につながる恐れのある14項目を挙げています。
具体的には、出生や家族に関することなどの「本人に責任のない事項」、思想・生活信条・宗教などの「本来自由であるべき事項」などです。
面接で質問をする場合だけでなく、筆記テストなどでこれらの事項を把握しようとする行為も、就職差別にあたる可能性があるため十分注意しましょう。
オンラインでの採用面接のポイント
近年はオンラインで採用面接を行うケースも増えてきました。基本的な内容はオフラインの面接と同様ですが、オンラインならではのポイントが存在します。
たとえば、ネットワーク環境が不安定になると映像や音声に遅延・乱れなどが生じてしまいます。画面共有などの操作に手間取るケースもあるでしょう。このようなトラブルを未然に防止するために、事前に接続テストやツールの使い方を予習しておくなどの準備が必要です。
また、対面に比べてどうしても鮮明さに欠けるため、なるべくカメラに目線を合わせたり、対面よりも少し大きめのリアクションをしたりといった工夫も必要でしょう。
自社に必要な人材の採用につながる採用面接を設計しよう
応募者を評価すると同時に、企業側も評価される場である採用面接。求める人材の要件を明確にして、判断材料となる情報を引き出せる面接を設計することが重要です。
面接官の対応や質疑応答の内容によって自社を魅力づけできたり、内定辞退率を軽減できたりもします。
プロのノウハウが知りたい担当者は、kimeteの「新卒採用成功のポイント」を利用してみて下さい。「新卒採用成功のポイント」を活用すれば、明確な目標設定が可能で、現場との協力体制ができ、採用活動が効率化するでしょう。「新卒採用成功のポイント」をダウンロードして現場と協力し、自社に合う人材を獲得しましょう。