求人広告の掲載や人材紹介会社の利用など、いわゆる「待ちの採用」だけでは十分な成果が得られなくなってきた昨今の転職市場。これに対抗する「攻めの採用」としてヘッドハンティングが大きな注目を集めています。

自社でもヘッドハンティングを導入すべきか迷っていたり、導入はしたいが何から手を付けたら良いかわからず、なかなか一歩が踏み出せないという担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、ヘッドハンティングの概要やメリット・デメリット、具体的な導入手順や成功のコツを網羅的に解説します。

ヘッドハンティングとは

ヘッドハンティングとは、社外で活躍している優秀な人材を直接的に勧誘して自社に引き入れる採用手法を指します。

ヘッドハンティングは社内の従業員が行うほか、データベースなどを元にプロのヘッドハンターが行う場合もあり、経営幹部・管理職・トップセールスマンなど、希少性の高い人材を対象に行われるのが一般的です。

元々は外資系企業が得意としていた手法ですが、転職市場の変化にともない日本企業でも広く活用されるようになりました。

ヘッドハンティングが注目されている理由

ヘッドハンティングは、転職潜在層にもアプローチできるうえ、優秀な人材を選んで獲得できるなどのメリットがあり注目を集めています。

求人広告や人材紹介を「待ちの採用」とするならば、ヘッドハンティングは「攻めの採用」です。待ちの採用でアプローチできるのは転職顕在層だけであり、それだけでは満足に採用できないのが現状です。このような状況において、こちらから潜在層にもアプローチできる攻めの採用は非常に理に適っているといえます。

ヘッドハンティングと引き抜きの違い

ヘッドハンティングと引き抜きの違いは、スカウトする対象者と仲介の有無です。

ヘッドハンティングは、経営幹部をはじめとする上級役職者や希少価値の高い人材が対象であり、データベースなどを活用してヘッドハンティング会社やプロのヘッドハンターが行うのが一般的です。

一方、引き抜きは人材の階層に関係なく、プロを介さず自社の社員などが独自で対象者にアプローチします。

このような違いから、ヘッドハンティングと引き抜きとでは、スカウトできる人材の希少性や成功率が異なるといえるでしょう。

 

ヘッドハンティングの種類

近年は便利なITツールの登場でヘッドハンティングの幅が広がっており、代表的な手法として以下3つに大別されています。

  • ダイレクトリクルーティング
  • エグゼクティブサーチ
  • スカウト

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、求職者のデータベースまたはプラットフォームを保有している事業者と契約し、企業自ら自社の要件に合う人材を探して個別にアプローチする方法です。

対象者をスクリーニングする手間はかかりますが、データベースには膨大な人材の情報が蓄積されており、企業側は自分たちの目で見て採用要件を満たしていると判断できる人材にのみアプローチできるため、質の高い母集団を形成できる特徴があります。

エグゼクティブサーチ

エグゼクティブサーチとは「欧米型」とも呼ばれており、特に採用が難しい経営者・経営幹部・幹部候補・スペシャリストなどのエグゼクティブ層(ハイクラス層)をメインターゲットとした手法です。

そもそもエグゼクティブサーチの対象者は希少性が高く絶対数が少ないため、独自のデータベースや紹介ネットワークを構築して、転職意欲の有無に関係なく該当する人材をサーチするのが一般的です。

スカウト

スカウトは、求職者のデータベースから条件を満たした人を抽出し、スカウトメールなどを送るという点ではダイレクトリクルーティングと同様です。

ダイレクトリクルーティングとの違いは求職者のスクリーニングレベルであり、スカウトの場合は大まかな条件を満たす不特定多数の人材に対して、スカウトを一斉送信する点が異なります。

対象人材の希少性がそこまで高くない場合や、複数人を採用したい場合に、比較的安価に広くアプローチできる手法です。

 

ヘッドハンティングのメリット

ヘッドハンティングを行うメリットとしては、以下の3点があります。

  1. ハイクラスな人材と出会える
  2. アクションが結果に反映されやすい
  3. 総コストを抑えられる可能性がある

01.ハイクラスな人材と出会える

ヘッドハンティングでは、通常ではなかなか出会えないハイクラスな人材と出会える可能性が高いといえます。自社の基準を超えた人材を選択してアプローチできるうえ、転職潜在層にもリーチできるためです。

採用したい人材の要件を絞るほど該当する候補者は減るものの、ピンポイントで必要なスキルを保有していたり、特定の実務を経験していたりする人材に出会えるのは、数ある採用手法のなかでもヘッドハンティングならではのメリットです。

02.アクションが結果に反映されやすい

企業側が起こしたアクションが結果に反映されやすく、行動量と結果が比例しやすいのもヘッドハンティングのメリットです。

10人に対してアプローチした場合と、100人に対してアプローチした場合とでは、返信数・応募数が異なるのは当然といえるでしょう。

ヘッドハンティングは企業側からアプローチする攻めの採用手法のため、行動量を増やしたら増やした分だけ求める結果が得られる可能性を高められます。

03.総コストを抑えられる可能性がある

ヘッドハンティングを活用する場合、一般的な求人サイトに広告費を支払うよりも、最終的な採用コストを抑えられる可能性があります。

求人サイトはかけた費用と結果が必ずしも比例するとは限らず、掲載期間中に採用を完了できなければ、再度費用を払って掲載期間を延長するしかありません。

これに対し、自社でヘッドハンティングができれば、ほとんど費用をかけずに優秀な人材を採用できる可能性もあるでしょう。ただし、費用が発生するヘッドハンティングサービスを利用する場合はこの限りではありません。

 

ヘッドハンティングのデメリット

ヘッドハンティングにはデメリットも存在します。利用する前に以下の2点は把握しておきましょう。

  1. 稼働コストが上がりやすい
  2. アプローチ方法を間違えると結果が出にくい

01.稼働コストが上がりやすい

ヘッドハンティングは稼働コストが上がりやすい点がデメリットです。メリットの項でも触れた通り、企業側の行動量と結果が比例するためです。

求める人物像を探す手間は、データベースを活用してもかなりの労力がかかり、人海戦術で探す場合はこの比ではありません。ターゲットが見つかった後も、本人と接触して移籍を促すには相応の時間と労力がかかります。

目に見える費用だけでなく、稼働コストのような間接コストも考慮して、全体コストを抑えられているかをモニタリングすることが大切です。

02.アプローチ方法を間違えると結果が出にくい

ヘッドハンティングは、アプローチ方法を間違えると望む結果が得られない可能性があります。

たとえば、自社の社員がヘッドハンティングを行う場合、相手がいる企業や状況によってはモラルを疑われる恐れがあります。また、新規事業の立ち上げメンバーが必要な場合は、水面下で採用活動を進める必要があるでしょう。

自社が必要とする人材の性質やヘッドハンティングを行う環境に合わせて、自社でアプローチするか、プロに依頼するかなどの方法を使い分ける必要があります。

 

ヘッドハンティングの具体的な方法

ヘッドハンティングを行う具体的な方法について、以下5つのステップに分けて解説します。

  1. 採用戦略・目標の整理
  2. 採用ポジション(職種・職位)の整理
  3. 適切なアプローチチャネルの検討
  4. サービス契約・アクション

01.採用戦略・目標の整理

ヘッドハンティングに限ったことではありませんが、まずは採用戦略や目標を整理する必要があります。

採用目標とは「いつまでに・どのような人材を・どの部署に・何人採用するか」を設定することであり、これらを整理することで具体的な戦略やタスクを組み立てやすくなります。

採用活動全体において、ヘッドハンティングはどのような位置付けになるのか、ほかの手法も併用するのかなどを検討するうえでも、まずは全体を見渡して骨子となる情報を整理しましょう。

02.採用ポジション(職種・職位)の整理

採用目標で設定した要件から、採用ポジションを整理しましょう。ヘッドハンティングと相性が良く、積極的に活用を検討すべき採用ポジションは以下のようなものです。

  • 市場に絶対数が少ない希少なスキル・経験を持っている人材
  • 経営層・幹部候補・特定分野のスペシャリスト
  • 採用人数が少なく限定的なポジション

すべてのポジション・採用活動においてヘッドハンティングが有効とはいえず、募集ポジションによって向き不向きが確実に存在します。

ヘッドハンティングのメリット・デメリット、性質などをよく理解したうえで、どのポジションの採用に活用すべきか、なぜヘッドハンティングである必要があるのかなどを明確にしましょう。

03.適切なアプローチチャネルの検討

採用ポジションを整理したら、より具体的なペルソナを設定し、適切なアプローチチャネルを検討しましょう。ターゲットの職種・業界・年齢層などによって有効なチャネルが大きく異なるためです。

あわせて、設定したペルソナに響くフレーズや価値観なども分析しておく必要があります。どのようにアプローチし、どのような流れで選考を進めるか、移籍に至るまでどのように自社の魅力を伝え、志望度を醸成していくかなどを工夫しながら全体像を設計していきましょう。

04.サービス契約・アクション

ここまでの設計ができたら、必要に応じてヘッドハンティングサービスとの契約を行い、実際にアクションを起こしていくフェーズに入ります。

自社が求める人材の性質・属性に合わせて、ダイレクトリクルーティングやエグゼクティブサーチなどから適切なサービスを選択しましょう。なかには業界や職種に特化したサービスを提供している会社もあるため、外部サービスを利用する際はサービス内容や価格差なども含めて念入りにリサーチすることをおすすめします。

 

ヘッドハンティングを成功させるためのコツ

ヘッドハンティングを成功させるためのコツは、以下の3点です。

  • 紹介会社を使うかを正しく判断する
  • 社長や優秀な人材を積極的に巻き込む
  • 肩書だけで採用せず適性を見る

紹介会社を使うかを正しく判断する

紹介会社を使うべきかどうかは自社の状況や採用したい人材の属性などによって異なるため、一概にどちらが良いとは言い切れないのが実情です。

紹介会社を利用することで作業工数や稼働コストを削減できる場合もありますが、積極的に転職を検討していない潜在層にはアプローチしづらいといった側面もあります。また、自社に独自の強いコネクションやノウハウがある場合は、自社で完結したほうがトータルコストを抑えられるケースもあるでしょう。

社長や優秀な人材を積極的に巻き込む

ヘッドハンティングでは、社長や活躍している優秀な人材を積極的に巻き込むのが成功のコツです。なぜなら、移籍を検討・決意してもらうためには早い段階で自社の魅力的な人物、影響力の強い人物に引き合わせるのが効果的だからです。

ヘッドハンティングされる側も、人事担当者から口説かれるのと、会社の最高責任者である社長から直々に口説かれるのでは印象が大きく異なるのは想像に難くないでしょう。

肩書だけで採用せず適性を見る

ヘッドハンティングでは、その人の肩書や経歴だけで多くを判断せず、冷静に適正を見ることが非常に重要です。

ヘッドハンティング市場では、輝かしい経歴・経験を持った人材に出会うことも珍しくありません。しかし、自社に移籍して活躍できるか、過去の実績を再現できるかは別問題であり、切り分けて判断する必要があります。

現在のポジションや肩書で早合点をすると、思わぬ採用ミスマッチにつながる場合があるため、注意が必要です。

 

ヘッドハンティングの注意点・違法性

ヘッドハンティングは、方法を誤ると大きなトラブルにつながったり、違法性を問われたりする可能性もあるため、十分注意が必要です。

まず原則として、ヘッドハンティングそのものに違法性はありません。ヘッドハンティングされた労働者には職業選択の自由が認められており、仲介会社も「転職支援の一環」とみなされるためです。

ただし、在職中の従業員がほかの同僚を勧誘したり、引き連れて移籍しようとした場合などは背信行為に該当する可能性があります。

また、移籍にともない機密情報を漏洩させた場合や、ヘッドハンティングによる損害の規模が大きくなった場合は違法性を問われる可能性があります。

 

ヘッドハンティングのポイントはニーズ明確化と適性判断

通常ではなかなか出会えないハイクラスな人材に出会い、アプローチできる可能性のあるヘッドハンティング。企業側の行動量が直接的に結果に結びつきやすいことから、攻めの採用手法として幅広く活用されています。

一方で、費用をかけ、紹介会社を使えば必ず求める結果が得られるかというと、決してそうとは言い切れないため、サービスを利用するかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

また、ヘッドハンティングは「この人材は優秀に違いない」というバイアスがかかりやすく、選考中もハロー効果に陥りやすいという落とし穴があるため、人材を正確に見極めるために適性検査を用いる企業も少なくありません。

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ヘッドハンティングの候補者が本当に自社に適した人材か、移籍後に活躍できる人材かを見極める意味でも、可視化されたデータを用いて正確性を担保できると安心です。

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