人材獲得に欠かせない新卒採用ですが、労働人口の減少や求職者の価値観の変化によって採用難易度は年々高まっているといえます。

そのような市況のなか、新卒採用を始めたい、または実施しているものの、効果的な質問や評価方法が定まらず苦戦している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、新卒採用面接の目的や具体的な質問例、評価する際のポイントなどを解説します。効果的な面接を実施し、有望な人材を獲得したいと考えている方は是非参考にしてください。

企業の新卒採用面接の目的と面接官の役割

新卒採用面接の主な目的と面接官の役割は以下3点に集約されます。

  1. 就活生の能力・人柄を評価する
  2. 自社にマッチするか評価する
  3. 魅力付けをして応募者の志望度を高める

就活生の能力・人柄を評価する

新卒採用面接の大きな目的は、就活生の能力や人柄を評価・判定することにあります。

評価項目や基準は自社の採用ポジション・選考基準によって異なりますが、設定に迷う場合は経済産業省が公表している「人生100年時代の社会人基礎力について」を参考にしてみるのもひとつの方法です。

ここでは今後活躍し続ける社会人に必要な「3つの基礎能力」と「12の能力要素」を定義・推奨しています。

▼3つの基礎能力

・考え抜く力(シンキング)
・前に踏み出す力(アクション)
・チームで働く力(チームワーク)

自社にマッチするか評価する

新卒採用面接では、就活生の能力・人柄以外にも自社のカルチャーや風土にマッチするかどうかを評価する必要があります。

能力や人柄がどんなに優れていても、自社とミスマッチがあると早期退職の可能性が高まり、採用活動や教育にかけた時間・費用などのコストが水の泡となってしまうためです。加えて、欠員補充のために再度採用活動を行うとなれば、さらにコストが発生します。

あらかじめ自社のカルチャーや社風を客観的に分析し、どのような人がマッチするかを検討しておくことが重要です。

魅力付けをして応募者の志望度を高める

新卒採用面接は、こちらから一方的に評価するだけではなく、自社の魅力付けをして応募者の志望度を高める役割もあります。

就活生の選択肢は自社以外にも無数にあり、企業側も「選ばれる側」であることを理解しておく必要があります。近年では企業・就活口コミサイトやSNSで容易に情報が取得できるため、密閉空間での面接であっても簡単に実態がばれてしまいます。

面接官は会社を代表する顔であるとともに、学生側から評価される立場にあることも意識しておく必要があるでしょう。

 

新卒の面接で効果的な質問集

新卒採用面接では具体的にどのような質問をすると良いのでしょうか。ここからは以下4つの種類に分けて質問集を紹介します。

  1. 自己理解・行動特性に関する質問
  2. 仕事への考え方・価値観に関する質問
  3. 課題解決力・思考特性に関する質問
  4. 成長意欲・キャリアプランに関する質問

01 自己理解・行動特性に関する質問

自己理解・行動特性に関する質問とは、就活生が自分自身をどれだけ理解しているか、客観的に見てどのような行動特性を持っているのかを問う質問です。

自己理解能力が高ければ周囲の事柄を客観的に判断する力があり、行動特性を自覚していれば自分の弱みを補填し強みを活かそうとする成長能力が備わっていると考えられます。

1. 効果的な質問の例

  • ◯分程度で自己PRをお願いします。
  • あなたの長所と短所を教えてください。
  • 自覚している短所と、克服のために努力していることはありますか?
  • あなたは周囲からどのような人だと言われますか?
  • あなたのことを一言で表すなら?理由もあわせて教えてください。
  • あなたの強みを仕事でどう活かそうと考えていますか?
  • 相手と意見がぶつかった場合はどうしますか?
  • 挫折したことや乗り越えたときのエピソードを教えてください。
  • ストレスが溜まるとどのような行動・思考になる傾向がありますか?

2. 質問の回答評価のポイント

自己理解・行動特性は入社後の人間関係構築や仕事の質に直接的に影響します。

自己理解は表面的な事象や傾向だけでなく、そのような考えや行動につながる自分の考え方の癖やメカニズムをどの程度認識できているかが重要です。そのため、業務への応用力などを評価ポイントにすることが望ましいでしょう。

一方、質問に対する回答から自己理解に乏しいと判断される場合や、面接用に実態にそぐわない回答をしていると判断できる場合は低評価と判定すべきです。

02 事への考え方・価値観に関する質問

仕事に対してどんなイメージ・考え方・価値観を持っているのかを問う質問です。

就活生の志向が自社の方向性・考え方・価値観とどの程度マッチしているかを測るうえで重要な質問であると同時に、入社後のミスマッチや早期退職などを未然に防ぐことにもつながります。

抽象的な概念について問うため、あえて回答が難しい質問をしてみるのも1つの方法です。

1. 効果的な質問の例

  • 仕事に取り組むうえで大切だと思うことは何ですか?
  • やりがいを感じるのはどのような時ですか?
  • 学生と社会人の違いは何だと思いますか?
  • 入社後の展望やキャリアプランがあれば教えてください。
  • 弊社の業務や部署のなかで気になっているものはありますか?
  • 何かを頑張る際、モチベーションの源泉は何ですか?
  • チームで苦労したエピソードがあれば教えてください。
  • 好きな言葉や座右の銘があれば教えてください。
  • 尊敬できる上司・先輩とはどのような人だと思いますか?
  • 就活の軸や応募する企業の基準は何ですか?

2. 質問の回答評価のポイント

この質問で評価すべきポイントは、自社の考え方や価値観とどの程度マッチしているかという点であるため、評価ポイントは企業によって異なります。

そのため、あらかじめ自社の考え方・価値観などを言語化しておき、どのような人物を評価するかを決めておくことが大切です。

また、考え方や価値観を問う質問では面接用に用意してきた回答なのか、本当にそう考えているのかを見極めるために、「なぜそう思うか」などの掘り下げ質問が有効です。

03 課題解決力・思考特性に関する質問

困難にぶち当たったときに課題を見つけて解決する能力や、出来事をどう捉え、どう気持ちを持ち直すかといった思考特性を問う質問も重要です。

このような質問からは、困難な状況に直面した際のストレス耐性の有無や、ポジティブ思考・ネガティブ思考といった仕事への取り組み方に関する情報が得られるでしょう。

1. 効果的な質問の例

  • これまでに一番大変だったと思う経験は何ですか?
  • 困難に直面した際、どのように乗り越えましたか?
  • 辛いことや悲しいことがあった場合、どのように気持ちを立て直しましたか?
  • あなたはどのような時にストレスを感じますか?
  • ストレスが溜まった時はどのように発散しますか?
  • 大きなトラブルに見舞われた場合、まずは何を考えますか?
  • 想定外の問題が発生した場合、まず何をしますか?
  • 大きなミスをした経験はありますか?どのように対処しましたか?
  • 明らかに相手方に非があると感じる場合、どのように対応しますか?

2. 質問の回答評価のポイント

ストレスを感じるポイントや耐性は人それぞれで主観によるところが大きいため、客観的な判断材料となるエピソードを交えた回答をしてもらうことが大切です。エピソードを語ってもらうことでストレス要素や耐性の強弱、その人の思考特性が立体的に見えてくるでしょう。

問題・課題への向き合い方や考え方、ストレス耐性の強弱・傾向を確認しておくことで入社後の適切な配置に活かせるうえ、早期退職の防止にもつながります。

04 成長意欲・キャリアプランに関する質問

課題や目標に対する取り組み方に影響する成長意欲や、入社後のキャリアプランを問う質問も重要です。

成長意欲の高い人は入社後の成長も早い傾向があり、キャリアプランを描けている人は向かうべき目標に向かって継続的に努力しやすく、早期退職の可能性も低いと判断できるためです。

1. 効果的な質問の例

  • これまでの人生で継続的に頑張ってきたことがあれば教えてください。
  • 継続的に勉強しているものや分野があれば教えてください。
  • 目標を達成したときのエピソードを教えてください。
  • 目標達成に向けてどのような取り組みをしますか?
  • 今後のキャリアプランがあれば教えてください。
  • 弊社で特に興味がある業務はありますか?
  • 5年後、10年後はどのようになっていたいと考えていますか?
  • 社会人になったらやり遂げたいことはありますか?
  • 今後チャレンジしたいと思っていることはありますか?

2. 質問の回答評価のポイント

日頃から目標を持っているか、努力の仕方や程度を聞き出すことで、その人の成長意欲が見えてきます。当時のエピソードや感情の変化を深掘りすることで、その人の性格や思考特性も把握できるでしょう。

新しいことを恐れずチャレンジし、1つのことに長期間努力してきた人は、努力家、粘り強い、達成意欲が高いと評価できます。

また、描いているキャリアプランが自社で実現可能なものであれば、より高いモチベーションで業務に取り組んでくれるでしょう。

 

新卒の面接で避けるべき質問内容

新卒採用面接では、企業側が公正な採用面接を行ううえで避けるべき質問があることも理解しておく必要があります。

令和5年に厚生労働省が公表した「公正な採用選考をめざして」によると、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の能力・適正に基づいた基準で評価すること」を軸として、就職差別につながる恐れのある14項目を挙げています。

出生や家族に関することをはじめとする「本人に責任のない事項」、人生観や支持政党などの「本来自由であるべき事項」を把握しようとする行為は、就職差別にあたる可能性があるため避けるべきでしょう。

 

新卒採用面接の質問のポイント

新卒採用面接では、状況に応じて2つのタイプの質問を使い分けるのがポイントです。

話題を広げたい場合、相手からより多くの情報を引き出したい場合は、「◯◯についてどう思いますか?」といった回答範囲を制限せず自由に回答してもらう「オープン・クエスチョン」が有効です。

一方で、事実を明らかにしたい場合や、その話題を深掘りしたい場合は、「Yes・No」で回答してもらう「クローズド・クエスチョン」が有効です。

たとえば、志望度を問う場面では明確な回答を避ける人が多い傾向にあります。そういった場合は、「Yes・No」で答えられる質問を投げかけることで候補者の意向を確認しやすくなるでしょう。

ただし、いずれも多用すると相手に心理的な負担をかけてしまう可能性があるため注意が必要です。

 

新卒の面接の基本的な流れ

新卒採用面接の基本的な流れを以下7つのステップで解説するので、実施の参考にしてみてください。

  1. 面接前の準備
  2. 出迎え・自己紹介
  3. アイスブレイク・目的の共有
  4. 面接官からの質問
  5. 応募者からの逆質問
  6. 諸連絡・見送り
  7. 評価・申し送り

1.面接前の準備

面接に臨む前に、応募者の履歴書やエントリーシートなどの記載事項に目を通し、質問内容を想定しておきましょう。応募書類は情報量が多く、上から順に質問・確認していくとそれだけでかなりの時間を要してしまうためです。

二次面接などの場合は、適性検査の結果や前の面接官の申し送りなどにも目を通しておく必要があります。

2.出迎え・自己紹介

面接を行う候補者を丁寧に出迎え、お互い簡単な自己紹介をします。

応募者からすると採用担当者は自社との唯一の接点であり、話したことはそのまま会社の言葉として伝わることを肝に銘じておく必要があります。

対応に至らない点があると選考を辞退されてしまったり、SNSなどで悪評を拡散されたりする可能性もあるため注意しましょう。

3.アイスブレイク・目的の共有

自己紹介が終わったら、応募者の緊張を解くためにアイスブレイクを入れましょう。

緊張した状態では十分なパフォーマンスを発揮できなかったり、本音を聞き出せなかったりするためです。また、和やかな雰囲気作りを心がけることで自社のイメージアップにもつながります。

あわせて、その面接のゴールや目的を共有することでスムーズに面接を進行できるでしょう。

4.面接官からの質問

事前情報や提出された書類などにもとづき、面接官から質問を行います。

一方的に質問し続けると相手の本音や人柄が見えにくくなってしまうため、あまり形式張らず双方向の会話のような流れで質問を重ねていくことが重要です。

気になる点があれば、クローズド・クエスチョンを用いて事実関係や真意を確認していきましょう。

5.応募者からの逆質問

応募者から面接官に対して質問を行う「逆質問」の時間も設けましょう。応募者に疑問や不安が残ってしまうと選考・内定辞退の可能性が高まるためです。

「こんなこと聞いて良いのだろうか」と懸念して積極的に質問できない応募者も多いため、疑問や不安を残さないよう遠慮なく質問してほしいと一言添えてあげると良いでしょう。

6.諸連絡・見送り

双方からの質問が終わったら、合否連絡の時期や方法、今後の流れなどを伝えましょう。先行きが不透明だと応募者の不安が膨らんでしまうためです。

また、見送りが終わる最後の瞬間まで応募者から見られているという意識を持って、お客様と同様の対応でエレベーターや玄関まで丁寧に送り出しましょう。

7.評価・申し送り

面接の結果を元に評価を付け、採用担当者や上長に申し送りをして完了です。

なお、評価は面接直後に行うのが理想です。時間経過とともに面接の内容や印象が薄れてしまい、評価の正確性が低下してしまう恐れがあるためです。

面接の目的はあくまで「評価・判定すること」であり1回の選考ですべてを評価するのは困難なため、最優先で評価を確定させましょう。

 

新卒の面接の質問は目的を持って組み立てよう

新卒の採用面接は応募者の能力・人柄・自社とのマッチ度を測る場であるとともに、自社に対する応募者の印象やイメージを醸成する場でもあります。

採用基準から逆算し、必要な情報を十分に引き出せるようさまざまな角度から質問を組み立て、オープン・クエスチョン、クローズド・クエスチョンを使い分けて実施しましょう。

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