企業カルチャーが浸透せず、どうすれば従業員がビジョンに向かった行動ができるようになるのか悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。企業カルチャーの醸成は組織の成功に直結し、従業員の満足度やパフォーマンスにも大きな影響を与えるため、適切な手法やアプローチが必要となります。

浸透させるためには、ミッションや価値を明確にし、組織全体に浸透させることがポイントです。本記事では、企業カルチャーを醸成するために必要な要素を解説していきます。最後まで読んで自社で浸透させるための参考にして下さい。

企業カルチャー(企業文化)の意味

企業カルチャーとは、企業の社員間で根付く文化のことで、企業と従業員の間で共有されている価値観や行動を指します。企業評価の対象となるケースも多く、経営理念や行動規範などをベースに意識的に作り上げている企業も少なくありません。

似たような言葉に以下のものがあります。

  • 組織文化
  • 企業風土
  • 社風
組織文化企業内の特定の部署やチームに限定した視点。例えば、営業部と企画部で価値観が異なるなど、企業文化が同じでも組織文化は企業内に複数存在する可能性がある。
企業風土企業で働く社員の人間関係をベースに生まれた文化で、世代を超えて継承されていく雰囲気のこと。外部の影響を受けにくく、変化が少ない。
社風社員個人が感じる「会社の雰囲気」のこと。企業カルチャーと企業風土が合わさることで社風が形成される。つまり、企業カルチャーは社風を作るための要素でもある。

企業カルチャーと上記3つの大きな違いは「意識的に作り上げたものかどうか」です。

企業カルチャーの醸成が重視される理由

企業カルチャーは自社独自の規範であり、事業に大きな影響を与える要素のひとつです。ここからは、企業にとってなぜ企業カルチャーの醸成が必要なのかを解説します。

行動・価値観の指針を共有できる

企業カルチャーは社員共通の指針として機能するため、意思決定の迅速化につながります。例えば、判断に悩む場面では企業カルチャーが指針となり、判断基準としての役割を果たすのです。

ビジネスでは判断が遅れることで致命的となるケースもあります。そのため、従業員が行動や価値観を共有していれば、迅速かつ的確な意思決定が可能です。また、マネジメントする場合も、企業カルチャーの指針に従えば迷うことはないでしょう。

このように、企業カルチャーが醸成されると、全従業員が共通した指針で行動できるようになります。

チームワークを強化できる

企業カルチャーがあれば、従業員が同じ目標に進めるため、一体感のある企業経営が可能です。例えば「社員数が増え、一体感がなくなってきた」や「各社員が同じ方向を向いていない」といった悩みを抱えている企業も少なくありません。

企業カルチャーが明確になっていれば、情報共有や相互協力が活発になり、チームワークの改善につながります。従業員が同じ価値観や判断基準を持つことで、コミュニケーションが取りやすくなり連帯感が生まれやすくなるのです。

このように、企業カルチャーが浸透すれば社内のチームワークを強化でき、同じ方向に向かって行動できるようになります。

各社員のパフォーマンス・意識が高まる

企業カルチャーが醸成されることで、従業員は「どう行動すれば良いか」や「どのような判断が適切か」を自発的に考えられるようになります。結果的に一人ひとりの意思決定が早くなり、パフォーマンスが向上するのです。

また、自主的に意思決定ができることで「やりがい」を感じ、モチベーションも高まります。例えば、企業カルチャーが「挑戦」なら、どんどん新しいアイデアを提案する従業員が増えるでしょう。このような従業員が増えるほど、企業全体の生産性は向上します。

企業カルチャーが浸透すれば「会社のために何ができるか」という意識が高まり、自発的な行動につながりやすくなるでしょう。

採用業務の効率化によって事業成長を実現しやすくなる

企業カルチャーは人材の採用・育成にも影響します。採用基準のひとつに「企業カルチャーに合った人材」が条件に加わることで、入社後のミスマッチが少なくなるでしょう。例えば、企業情報でアピールすることで、よりマッチした人材からの応募の可能性が高まります。

また、パフォーマンスやモチベーションの高い従業員は、退職しにくい傾向です。優秀な人材が定着すれば「競争優位性」を生み出しやすくなり、結果として事業成長にもつながります。退職者が減れば中途採用を行わなくても良いなど、採用業務の効率化にもなるでしょう。

企業カルチャーの形成に影響する重要要素をわかりやすく解説

企業カルチャーは会社によってさまざまですが、共通しているのは以下の「8つの要素」です。自社に定着させるためにも、必要なエッセンスを確認しておきましょう。

ビジョン

ビジョンとは「会社の理想や目標」を指します。「企業理念」とも呼ばれ企業カルチャーを形成する上で重要な要素のひとつです。「企業の存在意義」や「事業の目的」は、従業員の意思決定や行動に影響します。したがって、ビジョンが明確でなければ企業の方向性が分かりづらく、企業カルチャーの醸成ができません。

また、取引先やお客様など外部への周知を行うことで、共感を得ることや支持が得られやすくなるのがメリットです。例えば、社会貢献などをビジョンに加えると社外へのアピールにもなります。

このように、ビジョンがしっかりと定まっている企業は価値観をうまく形成でき、従業員の意思決定や行動を正しい方向に導きやすくなります。

ミッション

ミッションとは、企業が「事業を通じて成し遂げたいこと」で、企業活動を行う上で基礎となる考え方です。企業としての社会的な存在意義や存在価値にも大きく関わり、社内へのメッセージ性が高く、企業カルチャーを醸成する上で重要な役割を果たします。

企業が掲げるミッションに共感する従業員が多ければ、より一体感を感じやすく企業カルチャーが醸成されやすくなります。社内にミッションが浸透することで、自らの仕事の意義を理解し、モチベーションが高くなるのです。

ビジョンが明確になると、社員も指針に沿って行動しやすくなる特徴があります。つまり、ミッションは「会社のあり方そのもの」と言えるでしょう。

バリュー

バリューは「価値観」や「行動指針」のことを指し、具体的に「どのような考え方や方法で事業を行っていくのか」です。企業カルチャーにとって不可欠な要素のひとつで、ビジョンの実現やミッション達成のための行動や判断基準となります。

このバリューを従業員が認識していれば、全員が同じ判断や行動ができるため、パフォーマンスが上がり、仕事のクオリティも均一となるでしょう。バリューはビジョンを達成するための方針とも言えます。

バリューで重要なのは「多くの人に受け入れられること」です。例えば「お客様第一主義」などが挙げられるでしょう。

慣行

慣行は「日常的」かつ「継続的」におこなわれている行動や習慣のことです。たとえ社内に浸透しても、従業員に慣行として根付かなければ企業カルチャーは醸成されません。どんなに魅力的な目標を設定しても、日々の業務で実践されなければ意味がないため「いかに習慣化させるか」が重要です。

そのためには「どのような企業文化を作り上げていきたいか」を考えた上で、制度の見直しや環境を整備する必要があります。ビジョンや価値観を日々の業務に組み込み、浸透させましょう。習慣化すれば従業員が目標に向かって進めるようになります。

人材

企業カルチャーを醸成するのは、そこで働く人材です。そのため、人材は最も重要な要素と言えるでしょう。会社のビジョンや価値観に共感し、反映してくれる従業員がいることで、企業カルチャーはさらに強固になります。このような人材は定着率が高く、生産性の向上や企業の発展に貢献してくれやすい傾向です。

したがって、企業カルチャーを醸成して生産性の向上や経営を安定させるためには、自社の文化にフィットした人材を採用し、育成する環境も重要だと言えるでしょう。また、適材適所で個人の才能を十分に発揮できる環境を作ることも大切です。

会社の歴史・ストーリー

企業の歴史やストーリーは、社員の企業カルチャーへの共感や理解を深めます。例えば、創業時のエピソードや創業者の生い立ち、商品開発の背景などです。ビジョンや価値観にストーリー性があると、共感を得やすくなります。

会社の歴史や設立の背景に共感することで、従業員の心が動き企業カルチャーの醸成につながります。このような話が語り継がれていくことで、企業カルチャーは揺るぎないものになっていくのです。

また、企業の歴史やストーリーは、企業のビジョンや価値観を伝える手段としても機能します。そのため、従業員に誇りを与え、愛社精神も高まるでしょう。

会社拠点

場所も、企業カルチャーを醸成する要素のひとつです。例えば、会社の拠点が地方の場合と都心のオフィス街にある場合では、イメージが異なります。このように、企業の経営方針や価値観をもとに、オフィスの場所を決めるケースも少なくありません。つまり、場所や土地に込められた思いも企業カルチャーを作っていくのです。

また、職場環境は従業員の行動や働き方にも影響を与えるため、オフィスのデザインやレイアウトも「場所」に含めて良いでしょう。例としてオープンスペースを設けることで、従業員同士のコミュニケーションがとりやすい環境を作るなどがあげられます。

場所によってビジネスの展開が変わることや、従業員の価値観や行動に影響するため、会社の拠点や環境は十分考慮しましょう。

外部環境

外部環境は時代の流れや競合他社の動向です。企業カルチャーは、このような外部環境に影響を受けやすい特徴があります。市場環境や社会情勢は刻々と変化しているため、醸成して終わりではなく、状況に合わせて変化させていくことが重要です。

企業カルチャーは定期的に見直さなければ、時代の変化と流れに対応できなくなり、生き残れないでしょう。企業を取り巻く状況や、これまでのビジョンや価値観に変化が起きた時には、今後の企業の方向性と合わせて企業カルチャーを見直してみる良い機会です。

事業環境の変化に応じて企業カルチャーも変えていきましょう。

企業カルチャーを変革・浸透によって経営を成功させるコツ

企業カルチャーの醸成は、組織の発展に不可欠です。前章で解説した8つの要素の他にも、形成するためのポイントがあります。成功のコツは以下の通りです。ぜひ実践してみて下さい。

自社の状況を把握する

企業カルチャーを浸透させるには、まずは現状を正確に把握することです。以下の項目を把握しましょう。

  • 自社の特徴
  • 自社の強み
  • 従業員の価値観
  • 従業員の行動様式
  • 現在の業務プロセス
  • コミュニケーションの方法

「自社の企業カルチャーがどの程度定着しているか」や「そもそも変更が必要なのか」を把握する必要があります。「従業員がどのような価値観に基づいて行動しているのか」など、従業員それぞれの考えを知ることが大切です。

把握の方法としては「全社員を対象としたアンケート」や「個別のヒアリング」が良いでしょう。現状把握は企業カルチャーが定着していない原因の特定や、今後の方向性を決める基礎となります。

ビジョン・ミッション・バリューを明確にする

どのような企業カルチャーを作りたいかを考え、目指したい姿を盛り込んだビジョンやミッションを明確にしましょう。従業員が共感できなければ根付きにくいため、社員の意見を取り入れる必要があります。

明確にした後は、従業員が理解しやすいように明文化やイラスト化などで「可視化」して周知しましょう。企業カルチャーは認知されなければ意味がないため、積極的に発信して従業員に周知させることが重要です。

「企業として実現したいこと」を共有し、そのビジョンを達成するための一員であることを自覚させることで、従業員は具体的に行動するようになります。

企業文化をふまえた人事評価制度を整える

企業カルチャーに沿って行動しても、評価されなければなかなか浸透しません。そのため、人事評価制度の見直しも重要です。自分の行動が評価に反映されれば、行動に変化が起こることが期待できます。その変化が徐々に企業カルチャーを醸成し、行動基準になるのです。

例えば「実績だけでなく過程も重視した評価システムに変更する」や「貢献した人に対して表彰制度を設ける」などが挙げられます。企業カルチャーに沿った評価基準や社内制度を見直すことで、従業員に対して企業文化の意識付けができます。

また、人材採用の基準を企業カルチャーに合わせることで、採用のミスマッチにもつながるでしょう。

企業カルチャーの醸成につながる組織体制・社内環境を構築する

企業カルチャーが根付かない原因として、組織体制や社内環境もあります。社内の雰囲気は従業員のモチベーションや行動に影響するため、環境を変えることも重要です。例えば、業務効率を重視する文化なら、個人ブースを設置するなどの方法があります。

また、意見を述べやすい組織体制にすることや、福利厚生を充実させることも効果的です。

従業員満足度が高くなると、企業ミッションの実現に向けて円滑に仕事をするようになるでしょう。このように、組織体制や社内環境を整備することは、企業文化の浸透につながります。

自社サービスの紹介などの研修実施によって企業理解を促進する

企業カルチャーを明確にしたり社内環境を見直したりするだけでは浸透しません。「どのような背景があるのか」や「具体的に何を意味しているのか」を理解してもらう必要があります。そのためには社員研修の実施が効果的です。

研修では企業カルチャーだけではなく、自社サービスなど企業自体の理解を深める必要があります。研修の実施は事業ミッションや業界の動向、企業戦略などを理解し「自分が具体的にどう動けば良いか」を考える機会にもなるでしょう。

社内研修などを通じて「企業カルチャーとは何か」について理解を推進することは、従業員の意識改革につながります。

他社の事例を参考にする

企業カルチャーを浸透させるためには、他社の事例を参考にするのも良いでしょう。

例えば「メルカリ」のミッションは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」です。

それを実現するための3つのバリューとして以下が掲げられています。

  • Go Bold(大胆にやろう)
  • All for One(全ては成功のために)
  • Be a Pro(プロフェッショナルであれ)

メルカリの従業員は、上記の基準に沿って意思決定をしています。評価や採用ファーマットにも使われおり「ミッション」と「3つのバリュー」がメルカリの企業カルチャーです。このように、他社の「企業カルチャー」や「浸透させるための取り組み」を参考にすると、自社のヒントになります。

まとめ

企業カルチャーは従業員の行動やモチベーションに大きく影響を与えるため、企業にとって大切な要素です。企業カルチャーを浸透させていくには、ビジョンやミッションを明確にし、社内環境の整備や評価制度を見直す必要があります。

また、研修を通じて意識づけすることや自社にマッチした人材を採用することも有効です。kimeteでは、効果的な採用プロセスの設計と、実施を支援するためのガイドを無料で提供しています。企業カルチャーの醸成方法や人材の確保にお役立て下さい。