採用や人事評価の際に、コンピテンシーを評価に用いる企業は少なくありません。コンピテンシーとは、高い成果を挙げている社員の行動特性のことです。
新たにコンピテンシーの導入を考えている企業や内容の改善をしたい企業においては、実際にどのようなコンピテンシー項目があるのか参考にしたいと思うこともあるでしょう。そこで、以下ではさまざまなコンピテンシーの項目を一覧で紹介します。コンピテンシーの導入手順や注意点も紹介しますので、ぜひ目を通してみて下さい。
コンピテンシーとは
コンピテンシーとは冒頭でも触れた通り、職務において優れた業績や成果を出している社員の行動特性のことです。高いパフォーマンスを出す社員が、なぜ高い成果を出せるのか、その行動の特性を分析し、言語化したものです。
コンピテンシーは、行動そのものでなく、その行動を起こした考え方や性格、価値観、能力などをいいます。
また、コンピテンシーは知識やスキル、技能とも異なります。知識やスキル、技能は後天的に取得できる力ですが、コンピテンシーはその力・技能を蓄え発揮するもととなる思考や適性、能力のことです。
コンピテンシーを他の社員にも取り入れると、社員の行動の質を高められ、生産性を上げられると考えられています。
コンピテンシーの項目一覧
コンピテンシーとしてはさまざまな項目が考えられます。以下では、コンピテンシーを7つの要素群に分け、それぞれの要素にグループ分けしたコンピテンシー項目について解説します。
①コミュニケーション能力 | ・傾聴力・読解力・記述力・提案力・顧客対応力・交渉力 |
②問題解決力 | ・課題発見力・課題分析力・論理的思考力・計画実行力・検証力 |
③知識獲得力 | ・情報収集力・学習・応用力・専門知識の習得力・情報の活用 |
④組織的行動能力 | ・役割認識力・リーダーシップ力・バランス力・主体性・協働 |
⑤創造力 | ・発想力・推論力・感動する力・探求心・倫理感 |
⑥自己実現力 | ・目標設定力・スケジュール管理力・自己管理力・ストレスコントロール・達成思考 |
⑦多様性創発力 | ・自確する力・融合する力・協創する力 |
①コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、お客様や同僚などさまざまな仕事の関係者と良好な関係を築き、業務をスムーズに進めるために必要な素養です。
コミュニケーション能力に分類されるコンピテンシーとしては下記のようなものがあります。
- 傾聴力:人の話を正しく聞くことができる
- 読解力:記述された内容を正しく理解できる
- 記述力:伝えたいことを正確に記述できる
- 提案力:自分の意見を分かりやすく効果的に伝えられる
- 顧客対応力:お客様のニーズを読み取り適切に対応し良好な関係を維持できる
- 交渉力:社外の人に対し組織を代表して協力や理解を取り付けられる
②問題解決力
問題解決力は、ビジネスにおいて何らかの課題やトラブルが発生した時に対処できる力です。業務をスムーズに進めるためにも重要な素養といえます。
問題解決力に分類されるコンピテンシーには次のようなものがあります。
- 課題発見力:目標を把握し達成の妨げとなっている課題を見つけ出せる
- 課題分析力:課題の原因を探り、的確な原因を特定できる
- 論理的思考力:複雑な物事を整理して、矛盾・飛躍のない筋道を立てられる
- 計画実行力:目標や目的を持って計画を立て、確実に実行に移せる
- 検証力:結果を正しいか評価し、誤りがあれば正しく直す
③知識獲得力
知識獲得力とは、常に広く深く必要な情報を集め、知識やノウハウを習得し、活用できる力です。仕事の質を上げたり、効率的に仕事を進めたりするのに役立つ素養といえます。
知識獲得力に分類されるコンピテンシーは次のようなものがあります。
- 情報収集力:必要な情報や良質な情報を素早く手に入れられる
- 学習力:新たな知識やスキルを習得し課題解決や業務に活用できる
- 応用力:既にある知識やスキルを使って別の事柄に対応できる
- 専門知識の習得力:専門性が高く取得難易度も高い知識を取得し活用できる
- 情報の活用:得た知識やスキルを業務に活かし、周囲に価値を提供している
④組織的行動能力
組織的行動能力は、組織・チームのメンバーとして、組織・チームの目標達成のために行動できる能力のことです。組織で高いパフォーマンスを発揮するためにも必要な素養といえます。
組織的行動能力に分類されるコンピテンシーには次のようなものがあります。
- 役割認識力:組織内での自分の役割を理解し目的達成のために行動できる
- リーダーシップ力:チームで成果が出せるようにメンバーを統率できる
- バランス力:物事を多面的、客観的に捉えて適切な判断や行動がとれる
- 主体性:自分の意思や判断で行動できる
- 協働:共通の目標の達成のためにチームで信頼関係を保ちながら行動できる
⑤創造力
創造力とは、今までなかったアイデアや価値を生み出せる能力のことです。生産性を高めたり、新しい価値やサービスを生み出したりするのに必要な素養といえます。
創造力に分類されるコンピテンシーには次のようなものがあります。
- 発想力:今までになかった新しいアイデアを生むことができる
- 推論力:未知の事柄や将来起きる事柄について筋道立てて推し測れる
- 感動する力:優れたアイデアや芸術などに感動し新たな取り組みの原動力にできる
- 探求心:旺盛な好奇心をもって物事の本質を見極めようとする
- 倫理感:自らの仕事が社会に及ぼす影響を意識し、法令順守のもとに行動できる
⑥自己実現力
自己実現力とは、自ら達成したい目標を実際に実現していく能力のことです。自分を成長させることができる力で、生産性の向上にも役立つ素養です。
自己実現力に分類されるコンピテンシーには次のようなものがあります。
- 目標設定力:自分を成長させるための適切な目標を設定できる
- スケジュール管理力:目標達成のための計画を立て、計画のスケジュールを意識して行動できる
- 自己管理力:目標達成のため、健康管理や時間管理、金銭管理など的確な行動ができる
- ストレスコントロール:ストレスにうまく対処し、悪影響を最小限に抑えることができる
- 達成思考:目標達成のために筋道立てて考え努力できる
⑦多様性創発力
多発性創発力とは、多様性のある組織環境において、互いに尊重し合い共に行動することで、相乗効果や新たな価値を生み出していける力のことです。
多様性を活かした組織づくりを行う企業が増えている中で、組織のパフォーマンスを上げることに役立つ特性といえます。
多様性創発力に分類されるコンピテンシーには次のようなものがあります。
- 自確力:自らの慣れ親しんだ文化・価値観などを理解した上で、自分が何を望むか、かつ、周りが自分に何を望んでいるのかを判断し行動する
- 融合力:異なる文化・価値観などの相互理解を得て適切に対応し、互いに学び続けている
- 協創力:多様性がある複数人の協同により、相乗効果を生み出すことで、新たな価値を得る
参考:中央大学「多様性創発力」
コンピテンシーの導入手順
実際に自社にコンピテンシーでの評価制度を導入しようという場合の評価シートの作成手順を解説します。具体的な手順は下記の通りです。
- 1.パフォーマンスが高い社員などへインタビュー
- 2.インタビュー結果からコンピテンシーの項目を設定する
- 3.2で設定した項目と会社の将来ビジョンなどとすり合わせる
- 4.コンピテンシーをレベル分けする
- 5.コンピテンシー評価シートを作成する
詳しくは次の通りです。
1.パフォーマンスが高い社員などへインタビュー
まず、社内で高いパフォーマンスを挙げている複数の社員にインタビューを行います。
高いパフォーマンスを挙げている社員を選び出し、よく観察し、時間をかけてヒアリングしていきます。成果に結びついた行動について、どのように考えてどのような行動をしたか掘り下げていきましょう。
この際に、行動そのものに着目するのでなく、なぜその行動をしたか、なぜその行動ができたかといった考え方や適性などを確認していくことが大切です。
ヒアリングをしたら、次のプロセスのために、確認した内容をリスト化しておきます。
2.インタビュー結果からコンピテンシーの項目を設定する
インタビュー結果から、社内のハイパフォーマーに共通している行動特性や成果に直結している行動特性を洗い出し、コンピテンシー項目として設定していきます。
先述のコンピテンシー一覧や、他社で使われているコンピテンシー項目などを参考にして具体的な項目として設定していくと良いでしょう。
この後のプロセスで、自社のビジョンや事業特性にあっているかどうかすり合わせることとなるため、自社に必要と思われる項目について積極的に設定しておくことがおすすめです。
3.2で設定した項目と会社の将来ビジョンなどとすり合わせる
設定したコンピテンシー項目について、会社のビジョンや経営戦略、事業特性と合っているかどうかすり合わせましょう。
会社のビジョンや戦略、特性と合わないものは誤った評価や誤った人材教育につながりかねないため除外します。反対に、会社のビジョンなどとすり合わせて、見落としていたものがあれば追加しましょう。
適切な評価を行うためにも、コンピテンシー項目は過不足のないよう丁寧に確認し、ブラッシュアップすることが大切です。
4.コンピテンシーをレベル分けする
コンピテンシー項目の厳選ができたら、それぞれのコンピテンシー項目にレベルを設定していきましょう。
評価や人材育成に利用するためにも、コンピテンシー項目を他の人事評価項目などと同じように、レベル1からレベル5までの5段階などに分けていきます。
コンピテンシー項目のレベル設定の例は下記の通りです。
「主体性」についてのレベル設定の例Level1:指示待ちが多く、言われたことを言われた時にやるLevel2:自ら動けるがマニュアルの範囲内で動くLevel3:自ら目的をもって、能動的に動けるLevel4:状況を改善させるため自ら工夫し責任をもって行動できるLevel5:独自性・責任感を持って、周囲にとって価値ある行動ができる |
上記のようにレベル分けをすることで、各社員がどの程度コンピテンシーを達成できているか評価することが可能となります。
5.コンピテンシー評価シートを作成する
コンピテンシー項目とそのレベル設定ができたら、コンピテンシー評価シートにまとめましょう。
コンピテンシー評価シートに、コンピテンシー項目とそのそれぞれの評価レベルについての説明を記載します。評価者が評価しやすいように、コンピテンシー項目の各レベルの説明は、分かりやすく記載することが大切です。
こうして作成された評価シートは、採用面接や人事評価、キャリア開発などに活用できます。
コンピテンシーを活用する場面
コンピテンシーを実際に活用できる場面としては、次のような場面が挙げられます。
- 採用
- 人事評価
- キャリア開発
詳しくは次の通りです。
採用
コンピテンシーは、採用面接における評価項目として活用できます。
応募者の行動特性が、自社のコンピテンシー評価基準と照らし合わせて高く評価される場合には、入社後高いパフォーマンスを発揮してもらえる可能性が高いといえます。
採用でコンピテンシーを活用する場合には、あらかじめコンピテンシー評価シートを準備しておくことと、応募者の行動特性が確認できるような質問を用意しておくことが大切です。
例えば、学生時代にどのような成果を出し、その成果を出すためにどのような行動をしたか、またどうしてそのような行動をしたのか考え方や価値観を深掘りすることが大切です。
人事評価
コンピテンシーは人事評価でも活用できます。
コンピテンシーによる評価基準は、社内で実際に成果を出している人の行動特性をもとにした評価基準のため、現実に即した評価基準といえます。
そのため、より自社の事業や業務の特性に即した評価が可能となるでしょう。社員にとっても現実に即した分かりやすく目指しやすい基準であるため、モチベーションの向上にも役立つといえます。
キャリア開発
コンピテンシーはキャリア開発にも役立ちます。
コンピテンシーを設定することで、自社で成果を出すために強化すべき行動特性が明らかになります。
この行動特性を社内に周知し、強化するために、個々人の目標設定を行ったり、研修プログラムを設けたりすると良いでしょう。
社員のキャリア開発にコンピテンシー評価を取り入れ、達成できている要素や足りない要素などのフィードバックを行い、改善していくといったことが考えられます。
コンピテンシーを導入する際の注意点
コンピテンシーを導入する際には注意すべき点もあります。
具体的には次のような点です。
- 定期的にアップデートする
- コンピテンシーモデルについて社員に十分浸透させる
- ハイパフォーマーと同じ行動をすれば結果が出るとは限らない
詳しくは次の通りです。
定期的にアップデートする
コンピテンシーは定期的にアップデートする必要があります。
なぜなら、時間が経てば、ビジネス環境も変化し、会社の状況も変わってくるからです。
会社の状況や市場に変化があれば、成果を出すための行動やその行動特性も変わります。時代や環境の変化に合わせてアップデートをしないと、コンピテンシーへの取り組みが無駄になりかねません。
外資系コンサルティング会社コーン・フェリーの調査でも、高業績企業の70%は2~3年に1度コンピテンシーを更新しているといわれています。効果を維持するためにも、定期的に見直すようにしましょう。
コンピテンシーモデルについて社員に十分浸透させる
コンピテンシーを導入する際には、コンピテンシーモデルについて社員に十分浸透させることも大切です。
コンピテンシーモデルとは、コンピテンシーを実務に落とし込んだお手本となる行動モデルのことです。ハイパフォーマンスの社員の特性から導き出されたモデル像といえます。
この行動モデルについて、いきなりお手本、理想像だと突きつけられても、社員にとっては納得ができないといえるでしょう。
そのため、コンピテンシーモデルが、ハイパフォーマンスの社員の特性から導き出されたものであること、生産性を高めるための見本、評価基準にできることを説明し、理解を得ることが大切です。
社員に十分にコンピテンシーモデルの重要性を理解してもらい、認識が浸透して初めて、人事評価やキャリア開発に活かせるといえます。
ハイパフォーマーと同じ行動をすれば結果が出るとは限らない
ハイパフォーマーの社員と同じ行動を取ったからといって結果が出るとは限らない点にも注意が必要です。
同じ行動をとれるかどうかは、社員によって向き不向きがある上、環境が変化していたり状況が異なったりする場合には、同じ行動を取っても同じ成果を得られるとは限りません。
そのため、コンピテンシーの導入では、行動自体に注目するのではなく「なぜその場面でその行動を取ったのか?」という行動原理、考え方に注目することが大切です。
社員に対しても、行動そのものでなく行動原理、考え方について注目してもらうように働きかけましょう。
まとめ
コンピテンシーの項目一覧について紹介しました。職務において高いパフォーマンスを発揮している社員の行動特性のことです。
コンピテンシーを人事評価や採用、キャリア開発に活用することで、生産性の向上が図れます。
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