企業にとって優秀な人材育成は重要な課題であり、組織の成長には不可欠です。しかし、効果的な人材育成や採用にお悩みの企業も多いのではないでしょうか。
採用において優秀な人材を確保できれば効率的な育成が可能です。そのためには、応募者がどのようなキャリアビジョンを描いているかを見分けることが重要となります。
本記事ではキャリアビジョンを描く意味と、面接で優秀な人材を判断する方法を解説するので、ぜひ参考にして下さい。
キャリアビジョンの意味とは
キャリアビジョンとは「自分が理想とする将来像」です。主に仕事に関しての将来像を指しますが、仕事に限らず人生や生き方など将来的にこうなりたいと思い描く姿のことを意味することもあります。あくまで将来の理想であるため、実現できるかを気にする必要はありません。
近年は採用面接で応募者のキャリアビジョンを聞くことで、企業と同じ方向性かどうかを確認するケースも増加傾向です。キャリアビジョンをもつことで仕事のやりがいやプライベートが充実するなどのメリットがあるため、明確に描いておく必要があります。
キャリアビジョンと似た用語の違い
キャリアビジョンと似た言葉に「キャリアプラン」と「キャリアデザイン」があります。キャリアビジョンは仕事とプライベートの両方を含んだ意味で使われることもありますが、「キャリアプラン」と「キャリアデザイン」は仕事上の目標や計画を意味します。
仕事においては「キャリアパス」という用語も使われます。それぞれ詳しくみていきましょう。
キャリアプランとの違い
キャリアプランとは、キャリアビジョンを実現するための具体的な行動計画のことです。たとえば、5年後にマネージャー職になりたいという目標(キャリアビジョン)を立てたとします。目標を立てれば「実現するために今後どう行動していくか」といった具体的な計画ができるでしょう。これがキャリアプランです。
わかりやすく言うと「キャリアプランの最終目標=キャリアビジョン」となります。自分の将来像によっては、ひとつの企業にとどまらず副業や転職も視野に入れたキャリアプランが必要となるケースもあるでしょう。
キャリアデザインとの違い
「キャリアデザイン」とは、目標(キャリアプラン)を立てるまでの過程のことを指します。仕事を通じて自分が将来どうなりたいのか、どのような目標を実現したいのかを考えることです。キャリアビジョンは具体的な目標のことで、キャリアプランと混同しがちです。
キャリアビジョン(目標)を実現するためのキャリアプラン(計画)を設計する(考える)ことをキャリアデザインと言います。
キャリアパスとの違い
「キャリアビジョン」や「キャリアプラン」と関連した用語に「キャリアパス」があります。キャリアパスとは、目指すポジションに達するために必要なスキルや経験のことです。
つまり、社内で課長職につきたいのであれば、それに必要なスキルや経験がキャリアパスとなります。
キャリアパスは社内に限定しているのに対し、キャリアプランやキャリアデザインは自分のキャリア全体に対する考え方という点で異なります。
就活・転職の面接・社内面談でキャリアビジョンを考える人材が重視される理由
企業において従業員がキャリアビジョンを考えることは重要です。そのため、企業は採用においてもキャリアビジョンを描いている人材を求めています。また、採用後も研修を実施するなど重視する企業があります。なぜこれほどまでに重視されているのでしょうか。理由を解説します。
適切に人材を配置するため
キャリアビジョンを考えられる人材は、明確な将来の展望があります。自らの目標に向かって働くことがモチベーションとなるため、より意欲的になり組織全体の成長につながる可能性が高まるでしょう。そのためには、本人のキャリアビジョンに沿った適切な人員配置が重要です。
希望するキャリアに沿った人材配置の実施でミスマッチがなくなり、生産性の向上にもつながります。このように、キャリアビジョンをもった人材は、適切な人員配置によって組織の成功に向けて前向きに貢献することが期待できます。
社員により良い研修・仕事環境を用意するため
近年は働き方改革の推進により、さまざまな働き方が可能となったことでキャリアビジョンも選択肢が増えています。企業側は社員が将来どのような方向に進みたいかを知ることで、目標に向けたスキルや知識向上の研修プログラムや仕事環境を構築できます。
これにより、モチベーションが向上し、より前向きに仕事に取り組んでもらえる可能性があがるでしょう。社員のキャリアビジョンを理解することは、企業と社員の双方にとってメリットがあると言えます。
長期的に活躍する人材を見分けられるため
キャリアビジョンを持った人材は、個人の成長や組織への貢献を追求する傾向があります。そのため、求職者が求めるキャリアパスを用意できれば、積極的に新しいスキルを習得し成果を上げることが期待できるでしょう。結果的に長く前向きに働いて活躍してもらえる可能性が高まります。
人材不足に悩む企業が多い中、優秀な人材が長くとどまってくれれば企業にとってもメリットです。このように、キャリアビジョンを持った人材は、長期的に活躍してくれるかどうかの指標にもなります。
母集団の形成につなげられるため
社員が描くキャリアビジョンを実現できるキャリアパスの提供や適切な人材配置など、従業員重視の運営をすると企業が成長しやすくなります。
理由として、キャリアビジョンをもつ人材が多い組織は、良好な労働環境やスキルアップの機会があるなどの評判が広まることも少なくありません。これは、優秀な人材を引き寄せることになるのです。このように、社員の満足度が高まれば良い口コミが広まり、母集団の形成につながります。
見分け方の具体例|キャリアビジョンを描く人材の考え方・答え方の例文
応募者がキャリアビジョンを描ける人材かどうかは、応募文や面接での答え方で判断が可能です。職種別に具体的な例を解説するので見極めの参考にして下さい。
営業
営業職を希望している応募者で、キャリアビジョンを描いている人の回答例
私は営業として経験を積み成果を上げ、組織に貢献していきたいと考えています。
初めの3年間は取引先との信頼関係を築くことと、提案や交渉スキルの向上が目標です。
中長期的には、リーダーシップのポジションに進み、チームの指導やメンバーの育成に携わり、組織全体の成長を支える存在となりたいと思います。
営業部門のトップとして戦略的なビジョンを描き、組織を牽引していくことが最終目標です。
事務
事務職を希望している応募者で、キャリアビジョンを描いている人の回答例
まずは基本業務を的確にミスなくこなし、信頼を得たいと考えています。これまでの経験から、円滑な業務進行や問題の解決にはチームワークが欠かせません。積極的に情報共有し、部署内でリーダーシップをとり、チームで協力して問題や課題の解決をおこなっていくのが中長期の目標です。
最終的には事務職のエキスパートとして専門性を高め、組織の長として目標に貢献したいと思います。
ITエンジニア・SE
ITエンジニア・SE職を希望している応募者で、キャリアビジョンを描いている人の回答例
私は常に新しい技術に興味を持ち、その技術を用いて問題を解決することが何よりも楽しいと感じています。常に新しいことを学ぶのが好きで、御社の最新技術を使ってお客様の役に立つ、画期的なシステム開発に携われることが楽しみです。
将来的には私が持っている技術力を駆使して課題に取り組み、大きなプロジェクトを成功させ貢献したいと思っています。
マーケティング
マーケティング職を希望している応募者で、キャリアビジョンを描いている人の回答例
私は5年以内にマネージャーになりたいと思っています。そのためにマーケターとしてのスキルと実績を高め、会社の成長に貢献するのが初年度の目標です。前職では持ち前のプレゼン力で前年の売り上げ目標を達成させた経験があります。御社でも私が担当する部門の売り上げを前年度比150%達成することが5年以内の目標です。
将来的には御社が計画している新規事業展開や、グローバル展開に重要な役割を果たしたいと考えています。
経理
経理職職を希望している応募者で、キャリアビジョンを描いている人の回答例
御社での基本的な経理業務の内容と流れを把握し、必要なスキルを身につけ効率よく業務を遂行できるようになることが当面の目標です。将来的には、経理の責任者としての立場で財務戦略の策定や財務分析による問題解決策の提案などを行い、会社の発展に貢献したいと思っています。
日々の確実かつ迅速な業務だけでなく、財務戦略の実行においても積極的に提案させて頂き、会社にとって不可欠な人材となることが目標です。
管理職
管理職に応募する人で、キャリアビジョンを描いている人の回答例
これまでの経験やリーダーシップスキルを活かし、チームを統率することが目標です。まずは現状の組織課題を理解し、戦略的なビジョンを立て実現に向けて動きます。中期的には企業全体にポジティブな影響を与えるリーダーとなり、組織の成長に寄与することが目標です。
5年後には、経営に近いポジションで組織をさらに発展させ、業績の向上に貢献できるリーダーになりたいと思っています。
キャリアビジョンをふまえて優秀な人材を見極めるコツ
面接で「将来的にこうなりたい」と語る応募者は多くいますが、優秀な人材はキャリアビジョンの作り方に共通点があります。ここでは優秀な人材を見極めるために着目すべきポイントを紹介します。
3年後・5年後・10年後と期間別の立て方でキャリアビジョンを作っている
優秀な人材は、将来的にどうなりたいかを具体的に期間を決めてキャリアビジョンを作成していることが多い傾向です。
たとえば「10年後にこうなるために、5年後・3年後はこうなっておく必要がある」など、最終目的までの過程においても段階的にキャリアビジョンを作っています。
このような人は、目標達成のために計画立てて行動する優秀な人材である可能性が高いです。
面接では期間別にキャリアビジョンを描いているかに着目しましょう。
自社の事業をふまえたキャリアビジョンの作り方をしている
キャリアビジョンを描けていても、自社で実現したいビジョンを立てているかどうかも大きなポイントです。応募先の企業をしっかり調べていない応募者の多くは、どの企業でも実現可能なビジョンになっていることがあります。
「自社でどうなりたいか」という具体的な内容が明確でないと、求職者が自社のことをしっかりと調べていないということが見分けやすいでしょう。
優秀な人材は自社の事業をふまえたキャリアビジョンを持っているのが特徴です。
キャリアビジョンを描けていない新卒生・転職者は珍しくないことを把握しておく
新卒の場合は優秀と思える人物であってもキャリアビジョンが明確になっていないケースが珍しくありません。社会人として企業で働くことが初めてのため、具体的なキャリアビジョンを描きにくく、漠然とした目標になっていることがほとんどです。
このようなケースでは、熱意やポテンシャルなども考慮して判断する必要があります。
転職者の中にもキャリアビジョンを描けていない人はいるので、可能性を感じた場合は同様にその他の要素も合わせて総合的にみることがポイントです。
社員がキャリアプランを描くためにできる会社側のサポート
社員が描くキャリアプランを会社が把握することで、適切に人員配置を行い仕事のモチベーションアップにつなげることが可能です。そのためには従業員にキャリアプランを描いてもらわなければなりません。最後に、従業員がキャリアプランを描くために会社がサポートできることを解説します。
キャリアビジョン研修を実施する
従業員のキャリアビジョンのサポートは、キャリア研修が効果的です。
キャリア研修とは「将来の姿や目標を明確化し計画を立てるための研修」で、具体的には以下のような目的があります。
- キャリアを自分自身で描ける主体的な人材の育成
- 仕事だけでなく自分の人生そのものを考える
- 目標を明確にし仕事の意味付けによる定着率の向上
自己理解が深まるとともに、目標が明確になることでどう行動すれば良いかがわかり、実際の行動につながります。結果的にモチベーションが高まり、組織全体のパフォーマンス向上につながるというメリットになるでしょう。
なお、キャリアの課題は年代や役割ごとに異なるため、研修を行う際は年代や管理職と一般職に分けて実施するとより効果的です。
キャリア面談をする
キャリア面談とは、中長期的な目線で社員のキャリア形成を話し合うことです。社員が持っている課題や悩み、価値観などを共有しモチベーションを向上させることで社員の成長を促すことを目的としています。
キャリア面談の実施には以下のようなメリットが期待できるでしょう。
- 社員の自律が促され、社内に活力が生まれる
- 生産性が向上し、業績アップにつながる
- モチベーションが向上し離職者が少なくなる
事前に「改善案」や「将来どうなりたいか」などのアンケートを用意しておけば、面談がスムーズです。
面談は忙しい時間を避け、個室で実施しましょう。アンケートでヒアリングした結果をもとに、着地点を決めた上でアドバイスを行うと社員の面談後の気付きにも繋がります。
まとめ
「自分は将来こうなりたい」というキャリアビジョンを描くことは、仕事のモチベーションを向上させ、定着率も高くなります。キャリアビジョンを持っている人材が多ければ、行動を起こしやすくなり、結果的に生産性の向上につながるでしょう。キャリアビジョンを持った人材の採用や、既存社員への積極的なサポートによってキャリアビジョンを描ける人材を育成することが企業成長のカギです。
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