採用活動において、優秀な人材を見逃していないか不安を感じたことはありませんか。採用を行う際に、学歴や年齢、性別といった表面的な情報に頼ると無意識のうちに偏見が生じ、本当の実力を持つ候補者を見落としてしまう可能性があります。こうした課題を解決する手法として、近年注目を集めているのが「ブラインド採用」です。本記事では、ブラインド採用のメリットや具体的な進め方、導入時の注意点を詳しく解説します。

ブラインド採用とは?

ブラインド採用は、選考過程において名前や性別、年齢、学歴といった個人情報を取り除き、能力のみで応募者を評価・採用する取り組みです。この方法では、履歴書や職務経歴書から個人を特定できる情報を削除し、純粋に能力や適性、経験を基準に選考を行います。

従来の採用方法では、面接官の無意識の偏見が働き、特定の属性を持つ人材が優遇されることもありました。一方、ブラインド採用は、能力やポテンシャルを評価するため、公平な人材の選考を可能にします。このように、個性を尊重しながらも最適な人材を選べるのが特徴です。

ブラインド採用が注目される背景

ブラインド採用が多くの企業で注目を集めている背景には、いくつかの社会的要因が存在します。以下では、ブラインド採用が注目される主な3つの背景について詳しく見ていきましょう。

慢性的な人手不足

慢性的な人手不足は、企業の採用活動に大きな影響を与えています。従来の採用方法だけでは、必要な人材を確保することが困難になってきました。この状況下で、企業は採用方法の多角化が求められています。

その採用方法のひとつがブラインド採用です。この方法では、個人情報を排除することで、より多くの候補者の中から選考できるようになります。例えば、年齢や学歴にとらわれない採用が実現し、これまで見過ごされていた優秀な人材を発掘する機会が増えるのです。

採用技術やツールの向上

採用技術やツールの進化も、ブラインド採用の普及を後押ししている一因です。例えば、AIを活用した適性診断や、オンラインでの匿名テストなど、個人情報なしでも能力を正確に評価できる手法が開発されています。一例として、AIを用いて応募者の文章力や論理的思考力を客観的に評価できるようになりました。また、VR技術を使って実際の業務環境を再現し、適性を判断するなども可能です。

これらの技術やツールの向上により、より正確で公平な選考ができるようになりました。その結果、ブラインド採用の必要性と信頼性が高まり、多くの企業が注目するようになったのです。

ダイバーシティの推進

ブラインド採用が注目される背景には、ダイバーシティの推進という社会的な流れも大きく関わっています。日本では、少子高齢化による国内の労働力の減少もあり、さまざまな国籍や年齢の人材を採用する企業は増加傾向です。その採用手段としてブラインド採用が注目されています。

また、ブラインド採用を実施すれば、ダイバーシティを推進する企業として社会的責任を果たしていることをアピールできます。結果的に企業イメージの向上につながり、優秀な人材の獲得に有利に働く可能性があるでしょう。

海外で進むブラインド採用

ブラインド採用は、多様な人材を公平に評価できるとして海外でも注目を集めています。特に欧米を中心に多くの企業が取り入れ、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用する動きが広がっています。以下では、アメリカと韓国におけるブラインド採用の現状について詳しく見ていきましょう。

アメリカ

アメリカでは、顔写真や性別、年齢などの個人情報を履歴書に記載しないことが一般的になっています。

実際に結果も検証されており、IBMの子会社がブラインド採用を実施した結果、従来の方式で採用した社員よりも業績の上位を占める割合が多いことが分かったのです。また、Google社でも学歴主義から学歴不問へ変更しており、多様性を重視する採用に切り替えています。

韓国

韓国ではブラインド採用の導入が法律で義務化されており、他国と比べてより積極的な取り組みが行われています。韓国では、学歴や出身地による差別が社会問題になっていました。そのため、2017年に公共機関の採用でブラインド採用が義務化され、その後2019年には30人以上の民間企業でも義務化されています。違反した場合には罰則があるなど、国を挙げてブラインド採用を推進しています。

企業がブラインド採用を用いるメリット

ブラインド採用は、企業にとって多くのメリットをもたらします。以下に、ブラインド採用がもたらす主要なメリットについて詳しく見ていきましょう。主なメリットは3つです。

学歴などに左右されずに優秀な人材を獲得できる

ブラインド採用では、学歴や過去の職歴に重きを置かず、応募者の能力や適性を最も重要視します。そのため、学歴が高くなくても優れた人材を見極め、採用できる点が最大のメリットです。ブラインド採用は、特に技術職やクリエイティブ職で効果を発揮しやすく、従来の採用基準では評価されにくかった人材が採用されるチャンスを得られるようになります。

また、学歴や経歴よりも実際の能力を重視することで、応募者のモチベーションも向上するでしょう。自分の能力に自信を持つ人材が積極的に応募するようになり、結果として優秀な人材が集まることも期待できます。

ダイバーシティの促進で新たな風を吹き込める

ブラインド採用は、組織のダイバーシティを促進する有力な手段です。多様な背景を持つ人材を獲得することで、組織に新たな視点やアイデアをもたらします。例えば、異なる業界経験や海外での勤務経験がある人材など、これまでの採用基準では対象外となっていた人材を採用することで、組織に新たな風を吹き込めるでしょう。

また、多様な人材が集まることで、社内のコミュニケーション向上はもちろん、斬新な提案が生まれるなども期待できます。このように、異なる視点や経験を持つ人材を採用することで、創造性が高まり新しい発想が生まれやすい環境になるのです。

採用基準が明確になる

ブラインド採用の導入により、採用基準が明確化され、採用の公平性が担保できる点が大きなメリットです。従来の採用方法では、学歴や経歴に基づいた主観的な判断が入りがちでしたが、ブラインド採用では能力やスキルに焦点を当てた評価が行われます。したがって、一貫した基準に基づいた採用が可能になり、透明性が担保されるのです。

また、基準が明確であれば、応募者も「公平な評価を受けている」と感じ、信頼感が高まることで、企業のブランドイメージ向上にもつながるでしょう。

ブラインド採用の手順

ブラインド採用を導入する際は、従来の採用方法とは異なる手順が必要です。ブラインド採用では、基準を明確にしながら、応募者の個人的な情報に影響されないよう工夫しなければなりません。そうすることで採用の公平性が担保されます。次に、具体的な進め方について見ていきましょう。

役割を決める

まず、ブラインド採用では役割分担が非常に重要です。具体的には、採用担当と書類担当を分ける必要があります。書類担当者は採用担当者の目に触れないよう、履歴書から完全に個人情報をブラインドしなければなりません。つまり、採用担当者には評価すべき情報のみを渡す流れにするのです。もちろん、書類担当者は面接に関わってはいけません。

これにより、選考の過程で学歴や性別、年齢などが影響しない選考ができます。こうした、最初の段階での役割分担が、ブラインド採用を成功させるポイントです。

オンラインテストやペーパーテストを実施する

次に、書類選考を終えた段階でオンラインテストやペーパーテストを実施します。ブラインド採用では、応募者の能力を公平に評価するために、このようなテストを実施するのが一般的です。例えば、理論的思考力や専門知識を測るテストを行い、合格基準に応じてふるいにかけます。

こうすることで、学歴や経歴に左右されず、実際の能力に基づいた選考が可能です。最近では、AIを活用した適性診断テストも導入されており、迅速かつ正確な結果が出るようになりました。

面接を実施する(顔出しなし、ボイスチェンジャーを使う)

面接段階では、応募者の個人情報を隠すための工夫が必要です。例えば、パーティションを使用したり、オンライン面接でカメラをオフにしたりして、顔出しなしで面接を実施すると良いでしょう。

さらに、声による偏見を排除するため、ボイスチェンジャーを使用する企業もあります。

このような工夫をすることで、応募者の外見や声にとらわれず、質問の回答やスキルにだけに基づいた評価により公平な選考が実現します。

面接結果を基に採用を決める

最後に、面接結果を基に採用を決定します。ブラインド採用では採用基準が明確化されているため、誰を選ぶかの判断がしやすくなります。最終的に応募者が顔を見せるタイミングは企業によってさまざまです。二次面接や最終面接で顔を出す場合もあれば、採用後に初めて顔を見せるケースもあります。

ブラインド採用で最も重要なのは、採用基準が明確さと応募者に対する公平性が徹底されていることです。これらをしっかりと守ることで、優秀な人材の採用が実現します。

ブラインド採用を取り入れている企業の事例

ブラインド採用は多くの企業で注目を集めており、導入する企業が増えています。採用することで、多様性の促進や優秀な人材の確保など、多くのメリットをもたらしています。以下では、ブラインド採用を積極的に取り入れている2つの企業の成功事例を見ていきましょう。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社では2020年春より、ブラインド採用を導入しています。具体的には、性別や顔写真やファーストネームを聞かない採用方法です。きっかけは、採用に携わる人のうち約4人に1人が「先入観が採用に大きく影響していると感じる」と分かったことです。

自社の採用ページにも、個人の検討とポテンシャルのみに焦点を当てていくため、全ての選考過程に関して性別欄・写真・ファーストネームの記載を除くと記載しています。

ブラインド採用を導入したことで、企業文化も個性を尊重するようになりました。

株式会社 Discover Deep Japan

株式会社Discover Deep Japanは、難民や移民のスキルを活用して地方創生に取り組む企業です。同社では「どんな境遇に生まれても、全ての人が「違い」に誇りを持てて、それを活かせる社会」をミッションとしています。

中核的価値として「多様性、包摂性、帰属」を掲げており、デジタルマーケティング・営業統括本部長としてドイツ出身の女性を採用しました。このように、株式会社Discover Deep Japanでは、公平な組織づくりを目指すためにブラインド採用を導入しています。

ブラインド採用の注意点

ブラインド採用には多くのメリットがありますが、導入にあたっては注意すべき点もあります。以下では、ブラインド採用を実施する際に企業が直面する可能性のある課題や懸念事項について詳しく見ていきましょう。これらの注意点を理解し、適切に対処することで、より効果的なブラインド採用が実現できます。

採用の負担が増加する

ブラインド採用の導入は、採用プロセスに新たな負担をもたらす可能性があります。特に、ブラインド採用になじみのない企業にとっては、準備や実施に多くの時間と労力を要するかもしれません。具体的には、個人情報を重視しない分、応募者の能力を正確に評価するための細やかな配慮が不可欠です。

例えば、履歴書から個人情報を削除する作業や、面接時に個人情報を明かさないための工夫など、従来の採用方法では不要だった手順が増えます。

また、採用担当者と書類担当を分ける必要があるため、人員の配置や役割分担にも注意を払わなければなりません。そのため、採用の工数が増加し、人事担当者の負担が大きくなる可能性もあるでしょう。

ノウハウがないと採用のミスマッチが起こることも

ブラインド採用は、ノウハウがなければ能力のある人材を適切に評価できず、採用のミスマッチが発生する可能性があります。評価基準の設定や面接スキルの習得に時間がかかり、応募者の能力や適性を見極めることが難しいケースが少なくありません。

特に、最後まで顔を合わせないまま採用を決定する場合、入社後に「期待した人材ではなかった」と感じることがあるでしょう。こうしたミスマッチを防ぐために、書類選考の段階ではブラインド方式を採用し、面接は従来通り対面で行う企業もあります。

従来の採用方法で入社した従業員と衝突することも

ブラインド採用によって多様な人材が集まり、社内に新たな風を吹き込む効果が期待されます。一方で、従来の採用方法で入社した従業員との間で、摩擦が生じる可能性も懸念されるでしょう。価値観が異なることで、業務の進め方やコミュニケーションのスタイルに違いが生じることがあり、それが社内の協調性に影響を与えることがあります。

こうした衝突を未然に防ぐためには、社内の環境整備により一層力を入れなければなりません。例えば、セミナーの実施や従業員同士の交流イベントを開催すると良いでしょう。

応募者にとってなじみがないので抵抗感が出る恐れも

ブラインド採用は、公平な採用を目指す方法として注目されつつありますが、まだ一般的に採用されている手法ではありません。そのため、ブラインド採用に抵抗感を覚え、応募を敬遠する恐れがあります。したがって、ブラインド採用を導入する際には、意義や進め方について丁寧な説明を行うことが重要です。

採用サイトや説明会などで、ブラインド採用が公平性を重視している点を強調することで理解を深めてもらいましょう。

まとめ

ブラインド採用は、学歴や性別などの個人情報にとらわれず、能力や適性を重視して人材を評価する新しい採用手法です。

特にダイバーシティの推進に貢献し、多様な価値観を持つ人材を集めやすくなるメリットがあります。さらに、採用基準が明確になり、ミスマッチが少ない点もメリットです。

一方で、採用の負担が増えたり、応募者が不安にならないように配慮する必要があるでしょう。この記事の内容を踏まえて、適切な対策を講じましょう。

ブラインド採用に限らず、就職先を決めようとしている新卒の学生を採用する場合は、それぞれの多様な価値観や就労に対する意識を考慮する必要があります。

効果的な採用プロセスの設計と実施を支援するために、Kimeteでは「新卒採用成功のポイント」を無料で提供しています。採用の基本フローや計画表の作成方法、採用担当者が持つべき心構えなどがまとめていますので、自社の採用活動にぜひご活用下さい。