アルムナイ採用は、近年注目されている採用手法です。企業にとって、即戦力となる優秀な人材を見つけ、採用することは容易ではありません。しかしアルムナイ制度では、一度は企業を離れた人材がその後の経験を経て再び戻ることで、企業に新たな価値をもたらすことが期待できます。
この記事では、アルムナイを導入するメリット・デメリット、採用の方法と手順、活用のコツなど、網羅的に解説します。アルムナイ採用の全体像を掴み、自社にとってのメリットを最大化する方法を見つけましょう。
アルムナイとは
「アルムナイ」という言葉は卒業生や同窓生を意味していますが、現代ではビジネスの文脈においても広く用いられるようになりました。ここでは、「アルムナイ」という言葉について、以下を解説します。
- アルムナイの意味
- アルムナイ採用とは
アルムナイの意味
アルムナイという言葉は、元々卒業生や同窓生を指す用語として使われていました。しかし、近年のビジネスシーンではその意味が拡張され、企業の退職者やOB・OGなどを含む広範囲のグループを表すようになりました。
この変化は、人材の流動化や働き方の多様化が進む中で、企業が元社員との間の継続的なつながりを重視する、現代の労働市場の傾向を反映しています。アルムナイは、企業にとって再雇用の際に目を向けるべき貴重な人材プールと位置づけられています。
アルムナイ採用とは
アルムナイ採用とは、企業が自社を退職した人を再び雇用する採用手法のことです。アルムナイ採用は、既に企業文化や業務を理解しているために再教育の必要が少なく、すぐに事業に貢献できる即戦力となり得る価値があります。
また、アルムナイ採用は人材採用コストの削減や企業ブランディングの強化、新しいスキルや視点の導入など、企業成長の機会を拡大する有効な手段として注目されています。アルムナイ採用は、企業が迅速に変化する市場環境に適応するための柔軟性と競争力を高める1つの手段です。
アルムナイに注目が集まる理由
アルムナイへの注目が高まっている背景には、労働市場の変化が深く関わっています。労働市場の変化は、企業が元社員であるアルムナイを再び採用することの価値を見直す大きなきっかけです。ここでは、アルムナイに注目が集まる以下の理由について解説します。
- 労働人口が減少している
- 優秀な人材の確保が難しい
- 再雇用に対する考え方が変化した
労働人口が減少している
労働人口の減少は、企業にとって深刻な人材確保の問題を引き起こしています。特に日本では、生産年齢人口の急速な減少が予測されています。
このような背景から、企業は必要な人材を確保するための新たな解決策として、アルムナイ採用に目を向け始めています。過去に自社で働いた経験のある人材を再び雇用することで、人材不足の問題解消につながるのか、期待されています。
2-2 優秀な人材の確保が難しい
現代の労働市場では、優秀な人材の確保が一層困難になっています。売り手市場の昨今、企業は必要な人材を確保する以上に、優秀な人材を見つけることに苦労しています。背景に挙げられるのは、高度なスキルや経験を持つ人材への需要が高まっているのに対して、人材が市場に限られていることです。
このような状況から、企業が自社のアルムナイに目を向けるきっかけとなっています。アルムナイは既に企業文化を理解しており、即戦力として活躍する可能性が高いため、人材確保の新たな戦略として注目されています。
再雇用に対する考え方が変化した
終身雇用制度の崩壊と働き方の多様化が進む中で、再雇用に対する企業と社会の見方が大きく変わっています。かつては、一度離れた社員を再び雇用することに消極的な見方が多かったものの、今では柔軟なキャリアの形成や多様な働き方を受け入れる文化が根付き始めてきました。
こうした社会の変化は、企業が経験豊富で即戦力となるアルムナイを重宝する理由の1つです。労働力不足の解消や組織の活性化に貢献する再雇用の機会を増やすきっかけとなっています。
アルムナイを導入するメリット
アルムナイを導入するメリットは、組織にとって多方面にわたります。ここでは、以下の導入メリットについて解説します。
- 採用・育成コストを削減できる
- 即戦力を採用できる
- 企業のイメージアップにつながる
- アンバサダー・情報源となる
採用・育成コストを削減できる
アルムナイを採用することは、採用と育成にかかるコストを大幅に削減できるメリットがあります。アルムナイは企業の文化や業務プロセスを既に理解しているため、新しい社員のようにゼロから教育する必要がありません。
入社後すぐに業務を開始でき、効率的に貢献してくれることが期待できます。また、アルムナイ採用は、求人広告やリクルート活動にかかる費用も削減できます。求人サイトや広告を使わずに、直接的なコミュニケーションや既存のネットワーク活用で、採用が可能です。
即戦力を採用できる
アルムナイ採用の大きなメリットは、即戦力として活躍してもらえる可能性が高いことです。アルムナイは、以前にも同じ企業で働いていた経験があるため、企業の業務内容や社風、使うシステムや内部の人間関係に既に精通しています。
そのため、新たに採用する場合に比べて研修や指導にかかる時間を大幅に削減でき、迅速に業務に貢献することが期待できます。アルムナイを採用することは、企業にとって効率的であり、戦略的な人材獲得の手段となり得るのです。
企業のイメージアップにつながる
アルムナイ制度を導入することで、企業は「一度離れても再び戻りたくなる職場」というポジティブなイメージを構築できます。退職者が再就職先として元の職場を選ぶという事実は、その企業が働きやすい環境を提供していると外部へ間接的にアピールすることとなるでしょう。
また、アルムナイ制度は既存社員にとっても、企業が社員のキャリアと個々の人生の選択を尊重していることの証となり、社内のモチベーションや社員満足度の向上につながります。結果として、企業のイメージアップにも寄与すると期待できるでしょう。
アンバサダー・情報源となる
アルムナイは企業のアンバサダーとしての役割を果たし、外部の情報源としても機能します。元社員が自社の強みや魅力を外部に広めることで、企業のブランディングや信頼性向上に貢献します。また、異なる業界や企業での経験で得た知見を持ち帰ることで、自社の戦略や革新にもつながるでしょう。
アルムナイは、企業と市場との間で価値ある橋渡しを行い、企業にとって貴重な資源となり得るのです。企業はアルムナイを通じて、業界の最新動向や競合他社の情報を知るきっかけとなり、戦略的意思決定に活かすことも可能となります。
アルムナイを導入するデメリット
では、反対にアルムナイを導入するデメリットは何でしょうか。アルムナイを導入する際には、さまざまなデメリットも考慮する必要があります。ここでは、以下のデメリットについて解説します。
- 既存社員のモチベーションに影響する
- 情報漏えいのおそれがある
- ネットワークづくりにコストがかかる
既存社員のモチベーションに影響する
アルムナイ制度の導入は、即戦力となる退職者を再雇用する利点がある一方で、既存社員のモチベーションに影響を及ぼす可能性も指摘されています。退職者が容易に戻ってこられる環境は、一部の社員にとって退職のハードルを低く感じさせ、企業への長期的なコミットメントを損なう恐れがあります。
また、再雇用されたアルムナイへの特別な待遇や昇進が既存社員の間で不公平感を生じさせ、社内の不満を引き起こすことがあります。問題対処のためには、アルムナイと既存社員との間で公平感を保つための方策や、アルムナイ制度の透明性とコミュニケーションの強化が必要です。
情報漏えいのおそれがある
アルムナイ制度の導入により、企業は元社員へ再雇用の機会を提供できますが、同時に情報漏えいの可能性も抱えています。アルムナイとの交流会などやり取りの際には、いくら元社員といえど、社外秘の情報を不用意に共有してしまわないよう最新の注意が必要です。
情報の取り扱いに関して明確なガイドラインを設け、アルムナイとやり取りを行う社員には情報漏えいにつながる行動をとらないよう、しっかりと教育することが求められるでしょう。
ネットワークづくりにコストがかかる
アルムナイ制度を運用する際のデメリットの1つは、アルムナイネットワークを構築し、維持するために発生するコストです。専用のサイトやコミュニケーションプラットフォームの開発・運営、アルムナイを対象としたイベントの開催など、一定の予算が必要になります。
アルムナイとの関係を継続的に保つことは、企業にとって有益ですが、適切なバランスを見つけ、コスト対効果を考慮しながらアルムナイ制度を管理することが重要です。
アルムナイ採用の方法・手順
アルムナイ採用を取り入れる場合、適切な方法と手順を踏むことが重要です。以下のステップに沿って進めることで、企業は元社員との関係を維持し、スムーズな再雇用が実現できるでしょう。
- 退職時にフォローを行う
- 退職者のコミュニティをつくる手段を決める
- 復職の条件を明確にする
- 復職後の受け入れ体制を整える
退職時にフォローを行う
アルムナイ採用の成功には、退職時の適切なフォローが重要です。円満退職を促進するための支援を行い、アルムナイ制度が存在することを退職者に伝えましょう。退職面談時にアルムナイ制度の詳細を共有し、退職者が企業と継続的に関係を持つことの価値を強調します。
このプロセスは、将来的に退職者が企業に戻りたいと考えた時の土台となり、アルムナイネットワークの強化にも繋がります。企業からの積極的な情報提供とフォローアップが、円滑なアルムナイ採用への道を開きます。
退職者のコミュニティをつくる手段を決める
アルムナイ制度を導入する際、退職者を結びつけるコミュニティの形成方法を検討しましょう。例えば、FacebookやLinkedInなどのSNSプラットフォームを活用して、退職者同士の情報交換や交流の場を提供する方法や、企業からアルムナイへニュースレターを配信して情報提供を行う方法が挙げられます。
さらに、オンラインイベントや対面での集まりを定期的に開催することで、アルムナイ同士の絆を深め、企業と退職者の継続的な関係維持を促進します。活動を通じて、アルムナイが再び企業で働く選択をするきっかけを提供し、貴重な人材の再雇用につなげられるでしょう。
復職の条件を明確にする
アルムナイ採用を実施する際には、復職の条件を明確に設定することが重要です。復職できる勤続年数や復職時の役職、必要なスキルなどを具体的に定めることで、既存社員との間で不公平感を生じさせるのを避けることができます。
また、復職を希望するアルムナイに対して透明性のある基準を提供し、企業としての公正な姿勢を示すことが可能となります。復職条件を明確にすることは、アルムナイだけでなく、既存の社員への信頼構築にも繋がり、組織全体のモチベーション維持に貢献します。
復職後の受け入れ体制を整える
アルムナイ採用を成功させるためには、復職者が再び企業で活躍できるように受け入れ体制を整えることが重要です。復職者に対しては、企業文化や業務の変更点についてのオリエンテーションを実施し、スムーズな職場復帰を支援します。
同時に、既存社員への説明会を開催するなど、適切な情報提供と説明を行うことで、復職者をあたたかく迎え入れる土壌をつくり、組織全体の協調性を促進します。こうした取り組みを通じて、復職者と既存社員双方の満足度を高め、企業の人材活用と組織力の強化につなげられるでしょう。
アルムナイを活用するコツ
アルムナイ採用を成功させるには、組織内での意識の共有と体制の整備が鍵となります。ここでは、アルムナイを活用する以下のコツについて解説します。
- 社内に周知し既存社員への理解を得る
- 多様な雇用形態で働けるようにする
社内に周知し既存社員への理解を得る
アルムナイを活用する際、特に重要なのは、アルムナイ採用の意義やプロセスを社内にしっかりと周知し、既存社員からの理解と支援を得ることです。アルムナイの復職がスムーズに進むように、目的やメリットを明確にし、企業がなぜアルムナイ採用に注力するのかを理解できるように説明する必要があります。
復職者と既存社員が良好な関係を構築することで、組織全体の協力体制の強化につながるでしょう。既存社員への適切な説明とフォローアップを通じて、アルムナイ採用に対する支持を広げ、企業文化の一部として根付かせることが大切です。
多様な雇用形態で働けるようにする
アルムナイを効果的に活用するためには、復職者が再び企業で活躍しやすい環境を整えることが重要です。フルタイム出社という働き方だけでなく、時短勤務、リモートワーク、フレックスタイム制など、多様な働き方の選択肢を提供できる状態にしておくと良いでしょう。
アルムナイのライフステージやキャリアの目標に合わせて働き方を選べる柔軟性があると、より積極的に復職が検討され、企業にとっても有能な人材を確保しやすくなります。
アルムナイを活用して効率的に人材を採用しよう
アルムナイ採用は、労働人口が減少し再雇用への考え方が変わった昨今において、重要な戦略となっています。この記事で紹介したアルムナイ導入のメリットや実施の手順とコツを参考に、貴社の人材戦略にアルムナイを組み込む準備をしませんか?
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